弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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【判示事項の要旨】
 夫は自殺したとの主張を排斥し,高齢の妻である被告人が殺害したと認定し
た事例
            主       文
    本件控訴を棄却する。
    当審における未決勾留日数中120日を原判決の刑に算入する。
            理       由
第1 本件控訴の趣意は,弁護人横山慶一作成の控訴趣意書に記載のとおりで
  あるから,これを引用するが,論旨は事実誤認の主張であり,被告人は,
  被害者とされる夫を殺害してはおらず,被告人の捜査段階での自白には信
  用性がないのに,これを根拠に有罪認定した原判決には事実の誤認がある,
  というのである。
第2 そこで,記録を調査して検討すると,原判決は,(事実認定の補足説
  明)第2において,被告人の捜査段階の自白は,その供述する犯行の動機,
  内容の具体性・迫真性,内容の合理性及び自白に至る経過とその後の継続
  状況に照らし,十分信用でき,同時に,弁護人の主張する自白内容に対す
  る疑問も,自白の信用性を左右するようなものでないとし,一方で,夫は
  自殺したものであるという被告人の原審公判での供述は,不自然不合理で,
  客観的状況とも矛盾し,到底信用できないと判断した上,被告人が被害者
  を絞殺した事実は優に認定できるとしているのであるが,原判決のこの判
  断,認定は,そのまま正当として是認できる。
 1 すなわち,被告人の捜査段階の自白においては,自身や被害者の病気,
  家庭の状況など,本件に至る経緯や衝動的に殺害を決意するまでの過程が,
  深刻に思い悩む心情を交えて供述されており,殺害の方法や,その際の被
  害者の様子など,犯行状況についても,具体的に臨場感をもって説明され
  ているのであって,その内容は,被害者の致命傷になった頸部索痕の形状,
  巻かれていたスカーフの状態,室内の様子,死体の横たわっていた位置,
  本件当時,被告人や被害者以外の者が家屋内に侵入した痕跡はないことな
  ど,死体や現場の客観的な状態によく合致した,自然なものとなっている。
   また,被告人は,家族同様の間柄にあった店の従業員が,被告人からの
  「お父さんが死んでしまった」旨の電話連絡を受けて,駆けつけた際には,
  泣きながら「自分が殺した」旨わめき,また,同従業員からの通報で出動
  した救急隊員に対して,「自分が殺した」「自分がやった」旨述べ,駆け
  つけた警察官に対しても,「私が夫の首を絞めて殺しました」旨述べてい
  ることが,関係者の供述から認められ,そうした言動以後,捜査段階では
  一貫して自白をし,上記のような具体的,詳細な供述をしているのである。
   以上のような,犯行直後からの言動を含めて捜査段階での供述状況及び
  その供述内容からすれば,被告人の捜査段階での自白は,十分に信用でき
  るといえる。
 2 被告人は,原審公判で夫は自殺したものであると供述する。しかし,被
  告人の同供述によると,被告人が階下に降りていた短時間の間に,被害者
  は,家具と自分の頸にスカーフを複雑に巻き付けた上,それを自ら引っ張
  るなどという,わざわざ手の込んだ自殺の方法を取ったことになるが,自
  殺を図るにしては,その状況,方法は極めて不自然といわざるを得ず,し
  かも,被告人の供述するところは,死体の状態や室内の状況など客観的な
  状況とも矛盾している。また,関係者らの供述によれば,被害者は難聴で
  はあったものの,意気軒こうに天ぷら店の仕事をこなし,元気に日常生活
  を送っていたことが認められ,思い悩んだり,変調を来しているような様
  子はなく,被告人の供述によっても,本件当夜は普段どおりに仕事を終え
  た後,直前まで被告人と共にくつろいでテレビを見ていたというのである
  から,自殺を図るというのは余りにも唐突で,不自然不合理である。さら
  に,夫が自殺しているのを発見したというのなら,被告人としては自ら救
  命措置を取り,更に救急車を呼ぶなどの措置を取るのが当然と考えられる
  のに,上記従業員や息子に電話をしたのみで,自ら夫の回復を図る行動を
  とらず,むしろ拱手傍観の態度をとっていたというのであるから,自殺し
  た夫を前にした妻の態度としては,余りに不合理というべきである。この
  ように,夫は自殺したという被告人の原審公判供述は,到底信用できるも
  のではない。
   所論は,原判決の判断を非難し,被告人が被害者を殺害したとするには
  不自然な点,あるいは被害者が自殺したとしても不自然ではない点などを
  主張するが,原判決の判断はいずれも是認でき,所論が主張する点は,根
  拠を欠くものといえる。
第3 よって,控訴趣意は理由がないので,刑訴法396条により本件控訴を
  棄却し,当審における未決勾留の算入につき刑法21条を適用して,主文
  のとおり判決する。
  平成16年1月14日
    仙台高等裁判所第1刑事部
      裁判長裁判官   松   浦       繁
         裁判官   根   本       渉 
         裁判官髙   木   順   子

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