弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中被告人A、同B、同C、同D、同Eに関する部分(但しEにつ
いては有罪の部分)を破棄する。
     被告人Aを懲役八月に、同Bを懲役六月に、同Cを懲役十月に、同Dを
懲役六月に、同Eを懲役一年に処する。
     但し、この裁判確定の日から被告人A、同Bに対しては各四年間、被告
人Eに対しては五年間右刑の執行を猶予する。
     被告人Aから金参万参千九百参拾弐円を、同Bから金五万壱千円を、同
Cから金参拾万参千六百五拾七円を、同Dから金拾七万弐千弐百参拾弐円を、同E
から金弐拾壱万八千円を追徴する。
     訴訟費用中原審証人F、同G(昭和二十八年六月十七日出頭の分)Hに
支給した分は被告人Bの負担、原審証人I同Jに支給した分は被告人Cの負担、原
審証人K同L(昭和二十八年四月一日出頭の分)同M(前同日出頭の分)に支給し
た分は被告人Cと相被告人G、原審相被告人Nとの連帯負担、原審証人Oに支給し
た分は被告人Cと相被告人Gとの連帯負担、原審証人P、同Q、同R、同N、同
S、同G(昭和二十八年五月六日出頭の分)は被告人Dの負担、当審証人Tに支給
した分は被告人Eの負担とする。
     被告人S、同Gの本件各控訴を棄却する。
     当審における訴訟費用中国選弁護人近岡孝吉に支給した分は被告人Sの
負担、国選弁護人藤原義之に支給した分は被告人Gの負担とする。
         理    由
 第三、 被告人C、同Dに関する控訴趣意について
 一、 島田弁護人の控訴趣意第一点(憲法違反)について
 Uは銀行その他一般の金融機関から資金の融通を受けることを困難とする国民大
衆に対し必要なる事業資金の供給を行うことを目的として設立せられた公法人であ
つてその資本金は政府の全額出資にかかり、その業務は同法所定の公庫業務方法書
に従い適正に行わるべきものであるから、右公庫の行う業務は公共的性格を有し、
民法上の法人又は商法上の商事会社のように私的な金融業務を行うものとはその性
質を異にするものである。U法はかかる業務の公共性に鑑み、その役員及び職員の
権利義務を国家若しくは公共団体の官吏公吏その他法令により公務に従事する職員
の職務権限と実質的に異ならないものとし、昭利二十七年五月二十八日法律第百五
十三号を以て改正される前のU法(以下旧法と称する)に於ては公庫の役員及び職
員の身分を国家公務員とする旨の規定を置き、同法による改正後のU法(以下改正
法と称する。)においては、刑法その他罰則の適用についてはこれを法令により公
務に従事する職員と看做す旨<要旨>の規定を設けたものである。而してUの役員及
び職員たる地位は、それが公務員とされると否とに拘わらずその役職員とな
ろうとする者の自由意思に基き任命権者の任命により取得される身分関係であるか
ら、憲法第十四条にいわゆる社会的身分には該当せず、かかる役職員に対し一般人
と異る職権職務を定め、これに対応する刑事責任、懲戒又は服務規律を定めたから
と云つて憲法第十四条にいわゆる法の下における平等に反するものではない。また
公務員に対し、その権利義務の内容を定める法規がその職務内容に応じ、他の公務
員と比較して多少の実質的な相異があつたからと云つて、それが法の下における平
等と云う理念に照し不合理と認められない限りは、かかる内容を有する法規が憲法
第十四条に違反するものであると云うこともできない。所論はUの役職員が、その
雇用、服務、給与、災害補償等において、一般の公務員と同等の待遇を受けていな
いのに刑法上公務員として涜職の責任を問われるのは不当であるとし前記U法の規
定は憲法第十四条に違反するものであると主張するのであるが、所論は旧法時にお
ける公庫の役職員の処遇については必ずしも当らないのみならず仮に所論のような
処遇上の差異があるとしても、これを以て直ちに同公庫の役職員に対し、不合理な
差別待遇を加えたものとは認められないから、所論のU法の規定は憲法第十四条に
反する無効のものであるとすることはできない。故にこの点に関する論旨はすべて
理由がない。
 次に職権により原判決の法令適用の当否につき審究するに(昭和三十年八月九日
附控訴趣意補充申立書参照)旧法第十七条によれば公庫の役員及び職員は刑法第七
条にいわゆる公務員として、また改正法第十七条によれば罰則の適用に関する限り
刑法第七条所定の公務員として、刑法上これと同一の責任を負担すると共に同一の
保護を受けるものであるから右役員又は職員がその職務に関し賄賂を収受したとき
は刑法第百九十七条第一項にいわゆる公務員がその職務に関し賄賂を収受した場合
に該当するものとして同法条を以て間擬されるものである。原判決はこの趣旨の下
に判示法条を適用したものであることは判文を通読ナれば自ら明らかであるから、
原判決には法令の適用を誤つたものと云う違法は存しない。
 (その他の判決理由は省略する。)
 (裁判長判事 谷中董 判事 坂間孝司 判事 荒川省三)

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