弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
         理    由
 彼告人の控訴趣意は別紙記載の通りである。
 控訴趣意第一、第三点について。
 被告人はA、Bなる者を知らず、又この両名が本件銅線約四百貫を横領したもの
であることを知らないのであるから犯人隠避罪の犯意を欠くものであると主張する
のであるが、原判決挙示の証拠にょれば高知県幡多郡a町b電気通信管理所資材係
主任A、同倉庫係Bが共謀の上昭和二十五年八月頃から同年十月初頃までの間に数
回その業務上占有に係る同管理所保有の国有銅線約四百貫を擅にC、Dに売渡し、
被告人はその頃C、Dからこれを買受けたところ同年十月十七日高幡地区警察署に
於て右銅線の出所に付いて取調を受け、其の旨Cに電話し翌十八日CとDが高知市
の被告人営業所に被告人を訪ね、実は右品は右管理所から出たものでこの事が判明
したら管理所の役人が馘になるから助けてやつてくれと頼み、そこで被告人は従弟
のEを通じC、D、Fと相談の上Fが高知県幡多郡の農業協同組合から右銅線を買
受けこれをDに売りDが被告人に転売したことに申合をしFからD宛の虚偽の仕切
書を作成交付させ、Fは同年十月二十一日高幡地区警察署に出頭し、其の取調に対
し右申合に符合する供述をしたことが認められるのである。これらの事実より推せ
ば被告人は同年十月十八日にはA、Bという人物を知らなかつたのであるが、兎に
角右電気通信管理所の職員某が同管理所の資材である本件銅線を不法に処分したも
のではないかと察知し、右職員某のこの犯罪を隠くすため銅線の出所は農協であ
り、Fがこれを買受けてDに売り、Dがこれを被告人に転売したように虚構の事実
を作り上げ、Fにそのように供述させて捜査権の作用を妨害したものであることは
間違いないと思われるである。被告人の援用する事実及び原審の取調ベた全証居を
検討しても原判決には所論のような事実誤認はない。
 又被告人が右犯罪がどんな犯罪か犯人の氏名がどうかを知らなくても犯人隠避罪
の成立には消長を来たさない。故に論旨は理由がない。
 同第二点について。
 被告人は原審が犯人隠避だと解した本件行為前に既に本犯は検挙せられていたの
であるから国家の捜査権を侵害して居らないと主張するのである、(但し趣意書に
は被告人が隠避行為の疑で取調を受ける前に既に本犯は検挙せられているから云々
と記載せられているからこの点についても判断することにするが、其の主張の核心
は上記の通りと解する)が、本件記録並びに原審の取調べた証拠によると、本件銅
線について被告人が高幡地区警察署の取調を受けたのが昭和二十五年十月十七日以
降であり(犯人隠避の疑で取調を受けたのは同月二十四日である)、Fが同署の取
調を受けて虚偽の供述をしたのが同月二十一日、Aが同署の取調を受けたのが同月
二十四日以後、Bが同署で取調を受けたのは同月二十二日以後、Cは同じく同月二
十八日以降、Dは同じく同月二十一日以降であることが窺われる。
 これらの一連の事実から推すと、本件銅線横領事件の発端は被告人の取調から起
つたものであり、同月十八日の犯人隠避の共謀、同月二十一日のFの虚偽の供述当
時にはA、Bが既に本件約四百貫の銅線横領の件そのものについて司法官憲に発見
逮捕せられていたとは認められない。(又被告人が犯人隠避の疑で取調を受けたの
が同月二十四日であるから、A、Bの両名が取調を受けた後であること従つて既に
両名が発見逮捕せられた後であることは明白であるが、この二十四日の取調の際は
被告人は真実を供述し犯人隠避行為の形跡はないのであるからとの点については被
告人が刑責を負わないこと勿論である。)尤もAに対する取調が昭和二十五年十月
二十四日第二回供述調書となつて居りBに対する取調が同月二十二日第四回供述調
書となつていること、従つて各自の第一回供述調書はこれより先に作成せられてい
ることが窺えるのであるから、木犯であるA、Bの両名は同月二十一日のFの右虚
偽の供述より先に本件約四百貫の銅線横領とは別個の犯罪について嫌疑を掛けられ
検拳取調を受けていたものではないかと察せられる<要旨>のである。而して犯人隠
避罪とは蔵匿以外の方法で犯人の発見逮捕を妨げる一切の行為であつて隠避の方法
段にも制限がなく、従つて本件のように犯人であるA、Bが既に別個の犯
罪で司法官憲の嫌疑を受け検挙せられ、その取調を受けている際に、被告人がC、
D、F等と共謀の上A、B両名を本件約四百貫の銅線横領の罪により処罰せられる
ことを免れしめる目的でFをA、B両名の身代りとして同人をして警察署に出頭せ
しめ司法官憲の取調に対し右銅線は自分が農業協同組合から買入れDに売つたもの
である。そしてDはこれを被告人に売つたものと思う旨虚偽の供述を為さしめた場
合は捉え易い典型的な犯人隠避行為とけ謂えないが、それと同じく犯人の発見を困
難にし捜査権の作用を妨害しているのであるから、犯人隠避罪が成立するものと解
すべきであり、又更に仮にA、Bの両名が本件銅線横領の被疑真実そのものについ
て検拳取調を受けている際であつたとしても前叙のような虚偽の供述を為さしめる
ことは犯人であることを晦さんとして捜査を妨害しているのであるから、これ又同
罪と断ぜざるを得たいのであつて、捜査段階におけるこのような偽証類似の行為は
罪刑法定主義の現行刑法の解釈として犯人隠避罪成立の余地がないものと形式的な
解釈をするととは出来ない。論旨は理由がない。
 仍て本件控訴は理由がないから刑事訴訟法第三百九十六条により主文の通り判決
する。
 (裁判長判事 坂本徹章 判事 塩田宇三郎 判事 浮田茂男)

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