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平成一〇年(ワ)第三二九七号著作物利用対価請求事件
口頭弁論終結の日 平成一一年七月一六日
判      決
     原         告  A
 原         告  B
  右両名訴訟代理人弁護士  唐澤貴夫
     被         告 株式会社ベネッセコーポレーション
  右代表者代表取締役  C
右訴訟代理人弁護士  伊藤真
被         告 株式会社エヌエイチケイソフトウェア
右代表者代表取締役  D
  右訴訟代理人弁護士  宮川勝之
同高木裕康
  同            中村優子
主      文
 一 原告らの請求をいずれも棄却する。
  二 訴訟費用は、原告らの負担とする。
 事実及び理由
第一 請求
 一 被告らは、原告Aに対し、各自金一四七〇万円及びこれに対する平成一〇年
一二月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 被告らは、原告Bに対し、各自金六三〇万円及びこれに対する平成一〇年一二
月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二 当事者の主張
一請求原因
1原告らは、言語の著作物である「誰でもひとりで転ばずに乗れるようになる自
転車練習法」(以下「本件著作物」という。)の共同著作者である。
 原告らの持分割合は、原告A(以下「原告A」という。)七に対し、原告B(以
下「原告B」という。)三の割合である。
2 原告らは、平成九年六月に、被告株式会社ベネッセコーポレーション(以下
「被告ベネッセ」という。)から、本件著作物をビデオ化する旨の申出を受け、こ
れを承諾した。その際に、原告らは、被告ベネッセとの間において、被告ベネッセ
が原告らに対し本件著作物の利用について相当額の対価を支払う旨の合意をした。
3 被告らは、本件著作物をビデオ化したものを含む「こどもちゃれんじすてっ
ぷ」ビデオ一九九七年一〇月号(以下「本件ビデオ」という。)を製作し、平成九
年一〇月五日に発売した。
4 仮に、原告らと被告ベネッセとの間において、右合意が成立していないとする
と、被告ベネッセは、本件著作物を原告らの許諾を受けることなく利用したものと
いうことができる。本件ビデオと本件著作物の具体的な対比は、別紙のとおりであ
る。したがって、被告ベネッセは、原告らに対し、不当利得の返還として、本件著
作物の利用について相当額の対価を支払う義務を負う。
5 被告株式会社エヌエイチケイソフトウェア(以下「被告エヌエイチケイ」とい
う。)は、原告らから許諾を受けることなく本件著作物を利用したものである。本
件ビデオと本件著作物の具体的な対比は、別紙のとおりである。したがって、被告
エヌエイチケイは、原告らに対し、不当利得の返還として、本件著作物の利用につ
いて相当額の対価を支払う義務を負う。
6 右2、4、5の相当額の対価は、次のとおりである。
(一) 本件ビデオは、付随のテキストとともに一四〇〇円で販売されたところ、ビ
デオの全体価格に占める比率は七五パーセントを下回らない。
(二) 本件ビデオは、全体で二〇分のビデオであり、そのうち本件著作物をビデオ
化した部分は約五分であるが、その内容等からすると、本件著作物をビデオ化した
部分が本件ビデオ全体の価格に占める比率は五〇パーセントを下回らない。
(三) 本件著作物の利用の対価は、本件著作物をビデオ化した部分の価格の二〇パ
ーセントを下回らない。
(四) 本件ビデオ及び付随のテキストの売上げは、二〇万セットを下回らない。
(五) 以上の(一)ないし(四)からすると、本件著作物の利用についての対価相当額
は、二一〇〇万円(原告A一四七〇万円、原告B六三〇万円)を下回らない。
7 よって、原告Aは、被告らに対し、各自一四七〇万円及びこれに対する履行の
請求の後である平成一〇年一二月二五日から支払済みまで年五分の割合による遅延
損害金の支払を求め、原告Bは、被告らに対し、各自六三〇万円及びこれに対する
履行の請求の後である平成一〇年一二月二五日から支払済みまで年五分の割合によ
る遅延損害金の支払を求める。
二 請求原因に対する認否及び主張
(被告ベネッセ)
1 請求原因1の事実のうち、原告Aが本件著作物の著作者であることは認める
が、原告Bが著作者であることは、否認する。
2 請求原因2の事実は、否認する。
被告ベネッセは、本件ビデオの製作を被告エヌエイチケイに委託したのみであり、
原告らとの間で契約を締結したことはない。
3 請求原因3の事実のうち、被告エヌエイチケイが本件ビデオを製作し、被告ベ
ネッセが、これを平成九年一〇月五日に発売したことは、認めるが、本件ビデオが
本件著作物をビデオ化したものであることは、否認する。
4 請求原因4は争う。
5 請求原因6は争う。
(被告エヌエイチケイ)
1 請求原因1の事実のうち、原告Aが本件著作物の著作者であることは認める
が、その余の事実は知らない。
2 請求原因3の事実のうち、被告エヌエイチケイが本件ビデオを製作し、被告ベ
ネッセが、これを平成九年一〇月五日に発売したことは、認めるが、本件ビデオが
本件著作物をビデオ化したものであることは、否認する。
3 請求原因5は争う。
 本件著作物と本件ビデオを比較すると、台詞などの表現方法はもとより、構成も
異なっており、本件ビデオは本件著作物を翻案したものということはできない。本
件ビデオ中に本件著作物と類似する箇所があるが、それは、本件ビデオを製作する
に当たり原告Aの助言に従ったために生じたものである。また、こうした部分は、
自転車に乗るためのこつであって、それ自体が法的保護の対象となることはない。
4 請求原因6は争う。
 被告エヌエイチケイは、本件ビデオの販売の主体ではないから、その売上げが被
告エヌエイチケイに帰属することはなく、被告エヌエイチケイは、原告らが主張す
るような利得を得ていない。
第三当裁判所の判断
一本件著作物の著作者について
1 請求原因1の事実のうち、原告Aが本件著作物の著作者であることは、当事者
間に争いがない。
2 そこで、原告Bが、本件著作物の共同著作者であるかどうかについて判断す
る。
 証拠(甲一、五、原告B本人)と弁論の全趣旨によると、本件著作物は、原告A
が大人になってから自転車に乗れるようになった体験をもとに、自転車の練習法に
ついて記載したものであること、当初は原告Aが一人で書き始めたものの、原告A
一人ではうまく文章に表現することができなかったため、原告Bが原告Aの文章を
手直しするなどして、本件著作物を完成させたこと、以上の事実が認められる。し
たがって、本件著作物は、原告らの共同著作物であると認められる。
 本件著作物を収録した書籍に掲載された序文には、「この本を書かれたEさん
は、私の出身高校、小山台高校(旧制府立八中)の大先輩の奥さんだとうかがって
います。」との記載があり(甲一)、本件著作物の出版について出版社との間で交
わされた覚書は、原告Aと出版社の間で交わされている(甲五)が、それらのみで
は、いまだ、本件著作物は原告らの共同著作物であるとの右認定を覆すに足りるも
のではない。
3 証拠(甲五)と弁論の全趣旨によると、原告らの持分割合は、原告A七に対
し、原告B三の割合であると認められる。
二 原告らと被告ベネッセの間の契約について
1証拠(甲三ないし五、甲六の一ないし三、甲七、乙三、六、丙一ないし七、丙
八の一ないし三、丙九ないし一七、二〇ないし二二、原告B本人、証人F)と弁論
の全趣旨によると、次の事実が認められる。
(一) 本件著作物の出版について原告Aと出版社との間で交わされた覚書には、発
行部数を一万部とし、返品、販売残等が生じたときは原告Aが引き取る旨の約定が
あった。
 原告Aは、平成九年三月までに、右約定によって本件著作物を七三七九部引き取
り、出版社に対して一九二万八一七五円の債務を負うこととなった。この債務は未
だ支払われていない。
 右の引き取った本件著作物のうち六九〇〇部は、同年四月に日教組に寄贈され
た。
(二) 被告ベネッセでは、平成八年九月ころに、本件ビデオの企画の概要を決定し
たが、その中に、幼稚園の年中児に対して補助輪なしで自転車に乗れるこつを教え
るという企画があった。
 被告ベネッセでは、平成九年五月に、本件ビデオの製作を被告エヌエイチケイに
委託することとした。
 被告エヌエイチケイにおいて本件ビデオの製作を担当していたG(以下「G」と
いう。)は、本件著作物の存在を知り、その著者に、本件ビデオの自転車に乗れる
こつを教えるコーナー(以下「本件コーナー」という。)の監修を依頼することに
した。
 そして、被告エヌエイチケイにおいてGとともに本件ビデオの製作を担当してい
たH(以下「H」という。)が、同月二九日に、原告ら宅に電話をかけ、原告Aに
本件コーナーの監修を依頼したい旨述べた。なお、GとHは、本件著作物の著者
は、原告Aであると考えていた。
 同年六月四日、GとHは、原告らと会って、原告Aに対して、本件コーナーの監
修を依頼し、承諾を得た。その際、GとHは、監修料は、通常三万ないし五万円で
あることを説明した。
(三) 原告Bは、同月六日にGが受け取った書面において、Gに対して、本件ビデ
オに、本件著作物を読んだ上で自転車の練習をするようにとのテロップ表示をする
ことを求めたので、Gは、同日、原告Bに対して、右テロップ表示はできないが、
本件ビデオに同封するテキストに本件著作物を参考図書として記載する旨の書面
を、ファクシミリで送付した。
 原告Bは、同日、被告ベネッセに電話をかけ、同社において本件ビデオ及びテキ
ストの編集を担当していたF(以下「F」という。)及びI(以下「I」とい
う。)と同月九日に会う約束をした。
 原告らは、同月九日に、F及びIと会い、原告Bが、本件著作物を本件ビデオに
同封して送付することを求めた。Fがこれを断ると、原告Bは、本件著作物を被告
ベネッセから出版することを求め、同社の社長に宛てたその旨の書面を社長に渡す
よう求めた。Fは、出版は出版部で扱っているので右書面を出版部に渡す旨述べ、
原告Bも、これを了承した。
 原告Bは、同月一一日と一八日に、被告ベネッセの社長に宛てて、本件著作物出
版の申出について早急に検討することを求める書面を送付した。
 被告ベネッセ出版部は、原告Bに対して、本件著作物を被告ベネッセにおいて出
版することはできない旨の書面を送付し、原告Bは、これを同月一九日に受け取っ
た。
 原告Bは、同月二〇日に、被告ベネッセの社長に宛てて、本件著作物出版の申出
について再考することを求める書面を送付した。
 被告ベネッセの社長室長は、同日、原告Bに対して、ファクシミリで、本件著作
物を被告ベネッセにおいて出版することはできない旨の書面を送付した。
(四) 同年七月一日に、本件ビデオの撮影が行われ、原告らが立ち会った。ビデオ
の撮影は、一日で終了した。
 被告エヌエイチケイは、原告Bから催促があったので、同月一四日ころ、監修料
と車代合計一〇万円を、原告Bの銀行口座に振り込んで支払った。
(五) 原告らは、同年九月四日に、被告ベネッセの社長に宛てて、本件著作物を出
版することを求める書面を送付し、同月二四日には、被告ベネッセの社長室長に宛
てて、ファクシミリで、同月二六日までに本件著作物の出版について返答すること
を求める旨の書面を送付した。
 被告ベネッセの社長室長は、同月二五日、原告らに対して、ファクシミリで、本
件著作物を被告ベネッセにおいて出版することはできない旨の書面を送付した。
 原告ら代理人は、同月二六日付けで、被告ベネッセに対して、本件ビデオについ
て著作権に関する契約の締結を求める書面を送付した。これに対して、被告ベネッ
セ代理人は、本件ビデオの権利関係の処理は被告エヌエイチケイが行っている旨回
答したので、原告ら代理人は、同年一一月一一日付けで、被告エヌエイチケイに対
して、本件ビデオについての著作権使用の対価の額についての回答を求める書面を
送付した。
 被告エヌエイチケイが右対価の支払を拒否したため、原告らは、本訴を提起し
た。
2 原告Bは、本人尋問において、原告らは、同年六月九日に、F及びIと会った
際に、本件著作物の著作権使用料についての話をしたところ、Fらが黙ってしまっ
たので、それはあらためて連絡をもらうことにした旨供述し、甲七(原告らの陳述
書)にも、同趣旨の記載がある。
 しかしながら、右1で認定したとおり、その後の原告Bから被告ベネッセに対す
る申入れは、原告ら代理人が同年九月二六日付けで書面を送付するまでは、もっぱ
ら本件著作物の出版についての話に終始している。同年六月九日に右のような著作
権使用料についての話があったのであれば、それについて被告ベネッセに問い合わ
せたり、申入れをしたりすることがあってしかるべきであると思われるが、原告ら
代理人が同年九月二六日付けで書面を送付するまでは、そのような問合せや申入れ
がされたというべき事実は全く認められない。また、Fは、証人尋問において、同
年六月九日に右のような著作権使用料についての話が出たことはない旨証言してお
り、同人の陳述書(丙二)及びIの陳述書(丙三)にも、同趣旨の記載がある。以
上述べたところに右1認定のその他の事実を総合すると、右同日に著作権使用料に
ついての話がされた旨の右供述及び記載を直ちに信用することはできず、他に、こ
の事実を認めるに足りる証拠はない。
 また、原告らと被告ベネッセとの間において、被告ベネッセが原告らに対し本件
著作物の利用について相当額の対価を支払う旨の合意が成立したものというべき他
の事実を認めるに足りる証拠はない。
3 したがって、原告らと被告ベネッセの間の契約に基づく請求は理由がない。三
 不当利得返還請求について
 1 前記一2認定の事実に証拠(甲一)を総合すると、本件著作物は、大人にな
ってから自転車に乗れるようになった原告Aの体験に基づいて、自転車の練習法に
ついて文と絵で記載した、全体で五〇頁の書籍で、次のような構成になっているこ
とが認められる。
(一) 「まえがき」において、本件著作物の方法であれば、ひとりで練習すること
ができ、必ず乗れるようになるなどと、本件著作物の特徴及び目的が述べられてい
る。
(二) 「Ⅰ自転車に転ばずに乗れる」では、自転車には必ず誰でも乗れるようにな
ることが述べられている。
(三) 「Ⅱ練習前の準備」は、「自転車の用意」、「自転車の点検」、「服装」、
「場所」の各項目からなっており、「自転車の点検」では、「1サドルはいちばん
低く固定されているかどうか。他人が使用した後は、サドルを高くしてある場合が
多いと思われるので、練習に入る前にいつも忘れずにチェックしましょう。2ハン
ドルは、前輪と直角に交わるように固定されているかどうか。3ブレーキは、後輪
(左手)前輪(右手)ともによく効くかどうか。4タイヤの空気は、抜けていない
かどうか。」などと記載されている。
(四) 「Ⅲ実地練習」は、「自転車に乗る」、「足で蹴る[いちばん大事な練
習]」「ペダルを踏む」、「仕上げ」の各項目からなっている。
 「自転車に乗る」では、まず自転車に乗って、サドルに身体も車体も左右いずれ
へも傾かないように座ると、「この状態では、地面に着いている両足先には全然力
がかかっていない感じになり、両足先を同時に地面から離しても、少しの間でした
ら倒れません。」と記載されている。その後、前輪と後輪が地面に接する点を結ん
だ線が真っ直ぐ前方に引き伸ばされているところを想定し、その先の方を見ること
が重要であること、無理に体に合わない自転車に乗らないようにすべきことが述べ
られている。
 「足で蹴る[いちばん大事な練習]」では、まず、「前述の・・・想定した、両
輪を結ぶ直線上の、前方に定めた視線を目標とし、両足で地面をうしろへ蹴って、
自転車を発進させます。蹴ったら足は地面から少しはなしてください。」と記載さ
れており、この練習を一日一時間くらいは繰り返すことを勧めている。そして、
「左右いずれかへ傾いて、バランスが崩れそうになったら、左(後輪)のブレーキ
レバーを軽く握り締めると止まりますから、両足先を地面へ着けてください。」と
記載されている。さらに、「続けて何回か足で蹴っても、うまくバランスを失わな
いで走れるようになってくると、練習もぐんと楽しくなり、いよいよ次の段階へと
進みます。」と記載されており、この記載に続いて、「ここまでくれば、もう乗れ
るようになったも同然です。」と記載されている。
 「ペダルを踏む」では、まず、「両足で地面を蹴って発進させ、バランスを崩さ
ずに走っているうちに、上にあがっているほうのペダル(右が上になっていると思
います)を踏んでください。バランスを崩さずに走れたら、今度は反対側のペダル
を踏みます。そのまま交互にペダルを踏み続ければよいわけです。車体が左へ倒れ
そうになったらハンドルを左へ、右へ倒れそうになったら右へ(つまり倒れそうに
なった側へ)、ハンドルをきり、スピードを落とさないようにペダルを踏み続けま
す。そうすると、ひとりでにバランスがとれて、倒れないで走れます。どのくらい
ハンドルをきったらよいものかは、何回も練習しているうちにこれもひとりでにつ
かめてきます。止まるときは、左(後輪)のブレーキレバーを軽く握り締めると止
まりますから、車体を左に傾け、左足を先に地面に着けてください。」と記載され
ている。次に、足で蹴らずに最初からペダルを踏むことを勧めるとともに、その場
合の注意が記載されており、さらに次に、最初からペダルを踏む場合の停止、発進
について記載されており、最後に、方向転換について記載されている。
 「仕上げ」では、左回りの練習、右回りの練習、左回りと右回りの交互の練習、
ジグザグ走行の練習、直線走行の練習、総仕上げについて記載されている。
(五) 「Ⅳ安全運転」では、安全運転の重要性について述べ、参考になる書籍を紹
介している。
(六) 「あとがき」では、自転車の便利さなどが記載されている。
2 前記二1認定の事実に証拠(乙一、二、検甲一)と弁論の全趣旨を総合する
と、本件コーナーは、幼稚園の年中児に対して補助輪なしで自転車に乗れるこつを
教えるためのもので、自転車マンと男の子の対話によって進行すること、その内容
は別紙の本件コーナー欄記載のとおりであり、全体の時間は四分一七秒であるこ
と、以上の事実が認められる。
3 以上認定したところに基づき、本件著作物と本件コーナーを対比して、本件コ
ーナーが本件著作物の翻案に当たるかどうかについて判断する。
(一) 本件著作物は、原告Aの体験に基づいて自転車の練習法について文と絵で記
載したもので、読者は特に限定されていないのに対し、本件コーナーは、幼児向け
に補助輪なしで自転車に乗れるこつを教えるもので、自転車マンと男の子の対話に
よって進行するという違いがある。
(二) 本件著作物、本件コーナーともに、練習前の準備として、自転車の点検を取
り上げているが、練習前に自転車を点検するのは、それ自体としては当然のことで
ある。そして、本件著作物では、点検項目は、サドルの高さ、ハンドル、ブレー
キ、タイヤの空気の順で記載されているのに対し、本件コーナーでは、タイヤの空
気、ハンドル、ブレーキ、サドルの高さの順で点検を行っている上、その具体的な
点検方法も異なっている。すなわち、本件著作物では、サドルの高さについては、
サドルがいちばん低く固定されているかどうかという点検方法が記載されているの
に対し、本件コーナーでは、足が地面にちゃんと着くかどうかという観点から点検
を行っているし、ハンドルについても、本件著作物では、ハンドルが前輪と直角に
交わるように固定されているかどうかという点検方法が記載されているのに対し、
本件コーナーでは、そのような点検方法の指摘はない。また、ブレーキについて
も、本件著作物では、ブレーキが後輪前輪ともよく効くかどうかという記載である
のに対し、本件コーナーでは、ブレーキのかけ方を説明するのみであり、タイヤの
空気についても、本件著作物では、タイヤの空気が抜けていないかどうかという記
載であるのに対し、本件コーナーでは、具体的に点検方法を説明している。なお、
以上のような点検項目は、自転車の点検項目としてはありふれたものである。
(三) 本件著作物、本件コーナーともに、自転車の練習を、両足を蹴って自転車を
走らせ、それができるようになると、ペダルを蹴って進むという順序で行うことを
述べているが、そのような自転車の練習方法自体は、アイデアであって、著作権法
で保護されるものではない。
 本件著作物では、まず、自転車に乗って、サドルに左右いずれへも傾かないよう
に座ると、両足先を同時に地面から離しても、少しの間であれば、倒れないという
状態について記載し、その後、前輪と後輪が地面に接する点を結んだ線が真っ直ぐ
前方に引き伸ばされているところを想定し、その先の方を見ることが重要であるこ
とが述べられているが、本件コーナーでは、少し体を前に倒して、両足を地面から
離す動作をすることを勧めており、右のような目を向ける方向には触れられていな
い。
 本件著作物では、両足で地面を蹴って自転車を発進させる場合の記載の中で、右
に述べた目を向ける方向についての記載があるが、本件コーナーでは、体をまっす
ぐにして前を見るという当然の事項についての説明しかない。続いて、本件著作
物、本件コーナーともに、倒れそうになったときの運転方法について触れており、
「左のブレーキをかけて、両足を地面に着ける。」という点では、両者ともに同じ
ことを述べているが、そのこと自体は、あたりまえのことである上、具体的な表現
はかなり異なっている。
 本件著作物、本件コーナーともに、両足を蹴って自転車を走らせることができる
ようになると、ペダルを踏む次の段階へ進むとされているが、そのこと自体は、右
のとおりアイデアに過ぎない上、両者の具体的な表現はかなり異なっている。
 本件著作物では、ペダルを踏む際に、上にあがっているほうのペダルを踏むこと
が記載されているが、本件コーナーには、そのような説明はない。本件著作物、本
件コーナーともに、交互にペダルを踏むと述べているが、それは、ペダルの踏み方
としてはあたりまえのことであって、ペダルの踏み方を説明する以上、そのように
ならざるを得ない。続いて、本件著作物、本件コーナーともに、倒れそうになった
ときの対処の仕方と止まるときの方法について述べているが、初めてペダルを踏ん
で進むことを説明する場合に触れるべき重要な点がこの二点であることは明らかで
ある。また、その内容においても、本件著作物と本件コーナーでは、似かよった点
があるが、そこで説明されていることは、自転車の運転方法としては、広く知られ
ている常識的な事項であるということができる。そして、両者の具体的な表現は異
なっている。
(四) 以上述べたところを総合すると、本件コーナーが本件著作物の翻案に当たる
とまで認めることはできない。
4 その他、本件コーナーが本件著作物を利用したものであって、被告らが不当に
利得したというべき事実は認められないから、不当利得返還請求も理由がない。
四結論
以上の次第で、原告らの本訴請求はいずれも理由がない。
東京地方裁判所民事第四七部
裁判長裁判官森      義  之
裁判官榎  戸   道  也
  裁判官岡  口   基  一

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