弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
本件上告を棄却する。
当審における未決勾留日数中110日を本刑に算入する。
理由
弁護人松井克允及び被告人本人の各上告趣意は,いずれも単なる法令違反,事実
誤認の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
なお,所論にかんがみ,強制わいせつ致傷罪の成否について,職権で判断する。
原判決及びその是認する第1審判決の認定によれば,被告人は,深夜,被害者宅
に侵入し,就寝中の被害者が熟睡のため心神喪失状態であることに乗じ,その下着
の上から陰部を手指でもてあそび,もって,人の心神喪失に乗じてわいせつな行為
をしたが,これに気付いて覚せいした被害者が,被告人に対し,「お前,だれやね
ん。」などと強い口調で問いただすとともに,被告人着用のTシャツ背部を両手で
つかんだところ,被告人は,その場から逃走するため,被害者を引きずったり,自
己の上半身を左右に激しくひねるなどし,その結果,被害者に対し,右中指挫創,
右足第1趾挫創の傷害を負わせたというのである。
上記事実関係によれば,被告人は,被害者が覚せいし,被告人のTシャツをつか
むなどしたことによって,わいせつな行為を行う意思を喪失した後に,その場から
逃走するため,被害者に対して暴行を加えたものであるが,被告人のこのような暴
行は,上記準強制わいせつ行為に随伴するものといえるから,これによって生じた
上記被害者の傷害について強制わいせつ致傷罪が成立するというべきであり,これ
と同旨の原判断は正当である。
よって,刑訴法414条,386条1項3号,181条1項ただし書,刑法21
条により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官横尾和子裁判官甲斐中辰夫裁判官泉徳治裁判官
才口千晴裁判官涌井紀夫)

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