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令和2年5月28日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成30年(ワ)第4851号特許権侵害差止等請求事件
口頭弁論終結日令和2年3月17日
判決
原告パスカルエンジニアリング株式会社5
同訴訟代理人弁護士別城信太郎
同弁理士深見久郎
同佐々木眞人
同高橋智洋
同松田将治10
被告株式会社コスメック
(以下「被告コスメック」という。)
被告株式会社コスメックエンジニアリング
(以下「被告エンジニアリング」という。)
被告ら訴訟代理人弁護士井上裕史15
同松本司
同田上洋平
主文
1被告らは,別紙物件目録記載の被告製品1A~10及び19~21の製造,販売,
輸出若しくは輸入,又は販売の申出(販売のための展示を含む。)をしてはならな20
い。
2被告らは,別紙物件目録記載の被告製品1A~10及び19~21を廃棄せよ。
3被告らは,原告に対し,連帯して,3億4161万8505円及びうち1億
5000万円に対する平成30年6月16日から,うち1億9161万8505円
に対する令和元年8月28日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払25
え。
4原告のその余の請求をいずれも棄却する。
5訴訟費用は,これを3分し,その2を被告らの連帯負担とし,その余を原告
の負担とする。
6この判決は,第3項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由5
第1請求
1被告らは,別紙物件目録記載の被告製品1A~21の製造,販売,輸出若しくは
輸入,又は販売の申出(販売のための展示を含む。)をしてはならない。
2被告らは,前項記載の各被告製品及びその半製品を廃棄せよ。
3被告らは,原告に対し,連帯して,5億4627万2223円及びうち金110
億5000万円に対する平成30年6月16日から,うち金3億9627万222
3円に対する令和元年8月28日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を
支払え。
第2事案の概要等
1事案の概要15
本件は,発明の名称を「クランプ装置」とする特許に係る特許権(以下「本件特
許権」といい,これに係る特許を「本件特許」という。)を有する原告が,別紙物
件目録記載の被告製品1A~21(以下,各製品を「被告製品1A」などといい,これら
を併せて「被告製品」という。)の製造,販売等は本件特許権の侵害と見なされる
として,被告製品を製造する被告エンジニアリング及びこれを販売等する被告コス20
メックに対し,本件特許権に基づき,被告製品の製造,販売等の差止め(特許法1
00条1項)並びに被告製品及びその半製品の廃棄(同条2項)をそれぞれ請求す
るとともに,上記各行為につき,本件特許権侵害の不法行為(民法709条)に基
づき,損害賠償及びこれに対する平成30年6月16日(訴状送達の日の翌日)な
いし令和元年8月28日(最終の不法行為の日)から各支払済みまで民法所定の年25
5分の割合による遅延損害金の支払を請求する事案である。
2前提事実(当事者間に争いがないか,後掲の証拠又は弁論の全趣旨により容
易に認められる事実。なお,本判決における書証の掲記は,枝番号の全てを含むと
きはその記載を省略する。)
(1)本件特許権
原告は,以下の特許権(本件特許権)を有する。5
登録番号特許第5700677号
発明の名称クランプ装置
出願日平成23年10月6日
分割の表示特願2008-160212号の分割
原出願日平成15年6月2日10
登録日平成27年2月27日
特許公報発行日平成27年4月15日
特許請求の範囲別紙「特許請求の範囲」記載のとおり
(以下,請求項1に係る発明を「本件発明1」,請求項3に係る発明を「本件発明
3」といい,両者を併せて「本件発明」という。また,本件特許に係る明細書及び15
図面は,別紙「明細書」及び「図面」のとおりである。以下,この明細書及び図面
を併せて「本件明細書」という。)
(2)構成要件の分説
ア本件発明1の構成要件は,別表1(並びに3,4及び6)の「本件発明
1」欄記載のとおり分説される(以下,同別表に合わせ,各構成要件を「構成要件20
1A」などという。)。
イ本件発明3の構成要件は,別表2(及び5)の「本件発明3」欄記載の
とおり分説される(以下,本件発明1と同様に,各構成要件を「構成要件3A」など
という。)。
(3)本件特許の設定登録に至る経緯等25
ア本件特許は,平成15年6月2日にされた特許出願(特願2003-156187
号)の一部を,平成20年6月19日に新たな特許出願(特願2008-160212号)と
し,更にその一部を平成23年10月6日に新たな特許出願(特願2011-222200号)
として出願されたものである。
イ原告は,平成24年11月29日,特許庁に対し,手続補正書(甲9)
を提出した(以下,これによる手続補正を「本件第1補正」という。)。本件第15
補正後の特許請求の範囲請求項1の記載は,別紙「本件第1補正から本件第2補正
に至る経緯」の「本件第1補正後の特許請求の範囲」欄記載のとおりである。
ウ特許庁審査官は,原告に対し,平成25年6月25日付け起案に係る拒
絶理由通知書(乙2の1)により,特許法36条6項2号及び4項1号所定の要件
を満たしていないとする拒絶理由を通知した(以下「本件拒絶理由通知」とい10
う。)。本件拒絶理由通知には,本件第1補正後の請求項1に関する拒絶理由とし
て,前記別紙「本件拒絶理由通知」欄のとおりの記載がある。
エ原告は,同年8月30日,特許庁に対し,意見書(乙2の2)及び手続
補正書(乙2の3)を提出した(以下,これによる手続補正を「本件第2補正」と
いう。)。本件第2補正後の特許請求の範囲請求項1及び3の記載は,前記別紙15
「本件第2補正後の特許請求の範囲」欄記載のとおりである。
オその後更に拒絶理由通知及び手続補正といった手続が重ねられ,本件特
許につき,平成27年2月6日に特許査定が,同月27日にその設定登録がされた。
カ被告コスメックは,同年5月19日,本件特許につき特許無効審判を請
求した(無効2015-800126号)。これに対し,原告は,平成28年11月17日,20
訂正請求を行った。
特許庁は,平成29年2月28日,上記訂正請求による訂正を認めた上で,特許
無効審判請求不成立との審決をした。
上記審決につき,被告コスメックは,審決取消請求訴訟を提起した(知的財産高
等裁判所平成29年(行ケ)第10076号)。これにつき,知的財産高等裁判所25
は,平成30年3月28日,同被告の請求を棄却し,当該判決が確定したことによ
り,上記審決は確定した。
(4)被告らの行為,被告製品の構成等
ア被告らの行為
被告コスメックは,平成20年10月頃から被告製品を業として販売し,又
は販売の申出(販売等のための展示も含む。)をしている(ただし,後記のとおり,5
被告らは,被告製品1A~18につき,クランプとスピードコントロールバルブとが同
時に譲渡されることがあることは認めつつ,これらをセットとして販売しているも
のではないと主張する。)。また,被告エンジニアリングは,被告製品を製造して
いる。なお,被告エンジニアリングは,被告コスメックの関係会社である。
イ被告製品の構成10
被告製品の客観的な構成は,「第2隙間」の点を除き,別紙被告製品説明書
の各図面に記載のとおりである(後記のとおり,被告製品における「第2隙間」の
有無については当事者間に争いがある。以下,被告製品につき,上記別紙の各カテ
ゴリ番号に従い,「被告製品群1」などということがある。)。
また,本件発明との対比における被告製品群1~6の構成は,構成k1,k2,k3,15
k4,k5及びk6(以下,後記構成k7及びk8も含め,併せて「構成k1等」ということ
がある。)並びにx1,x2,x3,x4,x5及びx6(以下,後記構成x7及びx8も含め,併
せて「構成x1等」ということがある。)を除き,別表1~6の各中央の欄に記載の
とおりである。被告製品群7及び8の構成(クランプ本体のフランジに取り付けた
状態)は,構成k7及びk8並びにx7及びx8を除き,別紙被告製品説明書の「カテゴリ20
7」及び「カテゴリ8」の各「3本件発明との対比における構成」記載のとおり
である。
ウ被告製品群1及び3は,構成要件1C,1K及び1Xを除く本件発明1の構
成要件を充足する。被告製品群2は,構成要件3C,3K及び3Xを除く本件発明3の
構成要件を充足する。被告製品群4及び6は,構成要件1C,1D,1K及び1Xを除く25
本件発明1の構成要件を充足する。被告製品群5は,構成要件3C,3D,3K及び3X
を除く本件発明3の構成要件を充足する。
エ被告製品群1~3は,いずれも「クランプアーム」(本件発明の構成要
件1C及び3C)を取り付ける製品の生産にのみ用いる物である。これらの被告製品に
クランプアームを取り付けたものがクランプ装置である(なお,後記のとおり,被
告製品群4~6が「クランプアーム」(本件発明の構成要件1C及び3C)を取り付け5
る製品の生産にのみ用いる物であることについては,当事者間に争いがある。)。
オ被告製品群7及び8は,被告製品群1~6のスイングクランプないしリ
ンククランプに取り付けて使用されるものである(このほか,リフトシリンダ及び
ワークサポートにも取り付けて使用され得る。)。被告製品群1~6のクランプに
取り付けて使用される場合,被告製品群7及び8は,クランプ装置の生産に用いる10
ものである。
(5)本件発明及び被告製品の概略
アクランプ装置
機械加工に供するワーク等のクランプ対象物を固定するクランプ装置として
は,クランプ本体と,このクランプ本体に進退可能に装着された出力ロッドを有し,15
クランプ本体内に配設された油圧シリンダにより出力ロッドを進退駆動することに
よりワーク等のクランプ対象物をクランプし,また,そのクランプ状態を解除(ア
ンクランプ)するように構成されたものがあり,これにはスイングクランプとリン
ククランプとがある。
スイングクランプとは,出力ロッドが退入側に駆動することによってワークをク20
ランプし,進出側に駆動することによってワークをアンクランプするクランプ装置
である。他方,リンククランプとは,出力ロッドが進出側に駆動することによって
ワークをクランプし,退入側に駆動することによってワークをアンクランプするク
ランプ装置である。
また,被告製品との関係において,「複動」とは,出力ロッド(ピストンロッド)25
の進出側及び退入側への駆動をいずれも油圧により行うことを意味する。他方,
「単動」とは,出力ロッド(ピストンロッド)の進出側又は退入側への駆動の一方
を油圧により行ない,他方を弾性部材(スプリング)により行うことを意味する。
さらに,本件特許及び被告製品との関係において,「メータイン」とは,シリン
ダ穴から油圧を排出するときには逆止弁が開いてバイパス流路が開放され,シリン
ダ穴に油圧を供給するときにはバイパス流路が開放されず弁体部と弁孔との隙間に5
より流量が調整されることを意味する。他方,「メータアウト」とは,シリンダ穴
に油圧を供給するときには逆止弁が開いてバイパス流路が開放され,シリンダ穴か
ら油圧を排出するときにはバイパス流路が開放されず弁体部と弁孔との隙間により
流量が調整されることを意味する。
イ本件発明の概略10
本件発明は,いずれも,少なくともその請求項記載の文言上は,スイングク
ランプに係る発明である(構成要件1D及び3D参照)。また,本件発明1はメータイ
ンの場合を,本件発明3はメータアウトの場合をそれぞれ規定するものである(構
成要件1T及び3T参照)。なお,本件発明が「複動」,「単動」いずれに係る発明で
あるかを示す文言は,特許請求の範囲の記載には見当たらない。15
ウ被告製品の概略
被告製品群1~3はスイングクランプに係る製品である。このうち,被告製
品群1はメータイン・複動スイングクランプ,被告製品群2はメータアウト・複動
スイングクランプ,被告製品群3はメータイン・単動スイングクランプに係るもの
である。20
被告製品群4~6はリンククランプに係る製品である。このうち,被告製品群4
はメータイン・複動リンククランプ,被告製品群5はメータアウト・複動リンクク
ランプ,被告製品群6はメータイン・単動リンククランプに係るものである。
また,被告製品群7はメータインの,被告製品群8はメータアウトのスピードコ
ントロールバルブである。25
3争点
(1)被告製品群1~3の製造,販売等に係る間接侵害の成否(争点1)
(2)被告製品群4~6の製造,販売等に係る間接侵害の成否(争点2)
(3)被告製品群7及び8の製造,販売等に係る間接侵害の成否(争点3)
(4)差止請求及び廃棄請求の成否(争点4)
(5)被告らの過失の有無(争点5)5
(6)原告の損害額(争点6)
(7)消滅時効の成否(争点7)
第3争点に関する当事者の主張
1争点1(被告製品群1~3の製造,販売等に係る間接侵害の成否)について
(原告の主張)10
(1)構成要件の充足
ア以下のとおり,被告製品群1及び3は,それぞれ構成k1及びx1並びにk3
及びx3の構成を有しており,本件発明1の構成要件1K及び1Xを充足する。そうする
と,被告製品群1及び3は,いずれも構成要件1Cを除く本件発明1の全ての構成要
件を充足する。15
また,被告製品群2は,それぞれ構成k2及びx2の構成を有しており,本件発明3
の構成要件3K及び3Xを充足する。そうすると,被告製品群2は,いずれも構成要件
3Cを除く本件発明3の全ての構成要件を充足する。
イ「弁孔」(構成要件1K及び3K)について
(ア)本件発明の構成要件1K及び3Kは,「前記第1油路と前記第2油路との20
接続部に形成された弁孔」と規定しているのみである。「第1油路」と「第2油路」
とを有する「油路」は「クランプ本体の内部」に形成されるものであるけれども
(構成要件1G,1H,3G,3H),「弁孔」が「クランプ本体」により構成されなけれ
ばならない理由はない。
「弁孔」に係る被告らの後記主張は否認し,争う。「弁孔」を被告ら主張のように25
限定解釈すべき理由はない。
(イ)被告製品の構成(なお,被告製品の「弁孔」に係る構成は,被告製品に
共通することから,ここで一括して論ずる。)
被告製品においても,「流量調整弁」を「クランプ本体」に装着した際に,
「先端部材」(別紙被告製品説明書の「流量制御弁」に係る各図面において,「筒状
ケーシング」の「脚部」に取り付けられた部材)の内周に形成された「弁孔」が,5
「クランプ本体の内部」に形成された「第1油路」及び「第2油路」の接続部に形
成されている。そうである以上,被告製品の「弁孔」に係る構成については,構成
k1等のとおり特定されるべきである。
これに対し,被告らは,後記のとおり,被告製品の「弁孔」に係る構成を争う。
しかし,別紙被告製品説明書の「流量制御弁」に係る各図面のとおり,被告製品10
の「先端部材」は,「取付け穴」内において「給排路」の開口と「作業ポート」の開
口との間に位置し,「前記給排路と前記作業ポートとの接続部」に設けられている。
したがって,「先端部材」の内周に形成された「弁孔」も「前記給排路と前記作業ポ
ートとの接続部に形成された」ものである。また,被告製品の「弁孔」は「給排路」
と「作業ポート」との間を行き来する作動油の流路を構成しており,油路の途中部15
として機能している。
このように,被告製品の「弁孔」は,位置的にも機能的にも,客観的に見て「給
排路と作業ポートとの接続部に形成」されたものである。仮に被告ら主張に係る構
成k1'等のとおりに被告製品の構成を特定したとしても,この点は同様である。
また,被告製品においても,「調整ロッド」(弁部材)を「弁孔」に対して接近/20
離隔する方向に移動させて「先端部」(弁体部)を「弁孔」内に挿入させた状態(全
閉状態)にすることは可能であるから,本件明細書【0046】記載の効果を奏する。
(ウ)以上によれば,被告製品群1及び3は本件発明1の構成要件1Kを充足
し,被告製品群2は本件発明3の構成要件3Kを充足する。
ウ「第2隙間」(構成要件1X及び3X)について25
(ア)本件発明に係る特許請求の範囲の各記載によれば,本件発明の「第2隙
間」は,「前記弁ケースの前記油圧シリンダの油室側の先端と前記装着穴の内周面と
の間に…形成され」るものであると同時に,「第1油路」が「前記第2隙間に面する
ように前記装着穴の内周面に開口」するものである(構成要件1X,3X)。ここで,
「弁ケース」は,「前記油圧シリンダの油室側の小径部と,前記フランジ部の側面側
の基部とを有し,前記小径部が前記フランジ部に形成された装着穴に内嵌状に螺合5
される」ものである(構成要件1M,3M)。
また,「前記第1シール部材に対して前記油圧シリンダの油室側において前記弁部
材の外周面と前記弁ケースの内周面との間に「第1隙間」が形成」され,「第2隙間」
は,「前記バイパス流路の前記第1流路と前記第1隙間と前記第2隙間とが前記指向
方向に直交する同一平面に位置できるように配置される」ものでもある(構成要件10
1X,3X)。
このような特許請求の範囲の記載によれば,別紙「第2隙間の図面」の「2-1」
記載のとおり,「弁ケース」の「小径部」の先端にある「装着穴」に螺合しない部分
の径方向外側の隙間が「第2隙間」(構成要件1X,3X)である。
被告らの後記主張は否認し,争う。被告らが「第2隙間」とする空間は,第1油15
路40aが「装着穴の内周面に開口する」部分に面するものではなく,弁部材47の外周
面と弁ケース45の内周面との間に形成される「第1隙間」と「指向方向に直交する
同一平面に位置できる」ものでもない。そうである以上,その部分を本件発明の
「第2隙間」ということはできない。
(イ)被告製品の構成(なお,被告製品の「第2隙間」に係る構成は,被告製20
品に共通することから,ここで一括して論ずる。)
被告製品においても,別紙「第2隙間の図面」の「2-2」~「2-4」
記載のとおり,「筒状ケーシング」の先端と「取付け穴」の内周面との間に「隙間」
ないし「空間」が形成されていることは明らかであり,この「隙間」ないし「空間」
が「第2隙間」である。そうである以上,被告製品の「第2隙間」に係る構成につ25
いては,構成x1等のとおり特定されるべきである。
この点に関する被告らの後記主張は否認し,争う。
(ウ)予備的主張
仮に,被告ら主張のように被告製品を特定したとしても,「空間A」は「筒
状ケーシング」の(油室側の)先端と「取付け穴」の内周面との間に形成されるも
のであり,「給排路」,「作業ポート」及び「バイパス流路」が「第1隙間」及び「空5
間A」に連通し,「バイパス流路」の「連通流路」と,「第1隙間」と,「空間A」と
は「指向方向」に直交する同一平面に位置できるように配置されている。そうする
と,「空間A」は「第2隙間」に相当するものといえる。
(エ)以上によれば,被告製品群1及び3は本件発明1の構成要件1Xを充足
し,被告製品群2は本件発明3の構成要件3Xを充足する。10
(2)間接侵害の成立
被告製品群1~3は,いずれも「クランプアーム」(本件発明の構成要件1C及び
3C)を取り付ける製品の生産にのみ用いる物である(前記第2の2(4)エ)。これに
クランプアームを取り付けたものは,本件発明1(被告製品群1及び3について)
及び3(被告製品群2について)の技術的範囲に属する。15
(3)以上より,被告らが被告製品群1~3を製造,販売等する行為は,本件特許
権を侵害する(特許法101条1号)。
(被告らの主張)
(1)原告の主張は否認し,争う。
以下のとおり,被告製品群1及び3は,本件発明1の構成要件1Cのほか,構成20
要件1K及び1Xを充足しない。また,被告製品群2は,本件発明3の構成要件3Cの
ほか,構成要件3K及び3Xを充足しない。このため,被告製品群1~3は,いずれ
も本件発明の技術的範囲に属しない。
(2)被告製品の構成のうち,原告主張の構成k1等及びx1等に相当するものにつ
いては,別紙「被告製品の構成(被告らの主張)」に各記載の構成k1’,k2’,k3’,25
k4’,k5’,k6’,k7’及びk8’(以下,併せて「構成k1’等」ということがある。)並び
にx1',x2',x3',x4’,x5',x6’,x7’及びx8’(以下,併せて「構成x1’等」というこ
とがある。)として特定されるべきである。
なお,筒状ケーシングの脚部に設けられた貫通孔と空間Aの位置は,下図に示す
とおりである。「貫通孔」は,被告製品において,本件発明の「連通」(構成要件
1X,3X)に相当する構成に係る部位の1つである。5
(3)構成要件の非充足
ア「弁孔」(構成要件1K及び3K)について15
(ア)「弁孔」(構成要件1K及び3K)は,「前記第1油路と前記第2油路との
接続部に形成された」とされているところ,「接続部」とは,クランプ本体に設けら
れた油路の「途中部」を意味する。したがって,「弁孔」は,クランプ本体に形成さ
れている。
すなわち,構成要件1K及び3Kが補正により追加される根拠となった当時の明細書20
の記載及び本件明細書の記載によれば,弁孔46はクランプ本体2に形成されている。
また,弁孔46は,「油路40の途中部に形成され装着穴48の前端に連な」っているこ
とから(【0024】),弁孔46は,第1油路40aと第2油路40bの「途中部」に形成され
ていることになる。そうすると,「接続部」(構成要件1K,3K)とは,第1油路40a
と第2油路40bの「途中部」ということになるところ,第1油路40aと第2油路40b25
とからなる「油路40」は,クランプ本体2内に設けられている(【0022】)。したが
空間A
貫通孔
って,「弁孔」は,「クランプ本体」に設けられていることになる。このように理解
することは,本件明細書の図6とも符合する。
(イ)被告製品の構成
被告製品の弁孔は,カートリッジ方式の流量調整弁の構成要素であり,流
量調整弁の内部に形成されている。すなわち,被告製品においては,弁ケース(筒5
状ケーシング)とは「別部材」である「先端部材」を設け,その「先端部材」に
「弁孔」を形成しており,「クランプ本体」には設けられていない。
したがって,被告製品の「弁孔」は,「接続部」(構成要件1K,3K)に形成された
ものではない。
本件発明は,流量調整弁の構成要素である「弁孔」を「クランプ本体」の装着穴10
48の前端に連なる孔部分を利用することで形成したことにより,流量調整弁の部品
数を少なくし,その構成を簡単化できる効果を奏すると説明されている。他方,被
告製品は,上記の構成とした結果,「弁ケース」と「先端部材」とは別部材にせざる
を得ないため,流量調整弁の部品数を少なくすることができず,その構成を簡単化
することもできない。もっとも,被告製品は,カートリッジ方式を採用したことで,15
構成要件1K及び3Kの場合に必要な「クランプ本体の装着穴と弁孔との精密な位置調
整加工」が不要となり,かつ,弁孔が損傷した場合のメンテナンス性において優れ
ており,また,本件発明の第2油路に相当する孔部分の配置の自由度が大きくなる
ので,クランプ装置の設計上の自由度が向上している。
(ウ)以上より,被告製品の弁孔は,本件発明の「弁孔」とは構成,効果が異
なるから,被告製品は構成要件1K及び3Kを充足しない。
イ「第2隙間」(構成要件1X及び3X)について
(ア)本件発明の「第2隙間」(構成要件1X及び3X)について,本件明細書に5
はこれを直接説明した記載はなく,図6で示す具体的構成より導き出された構成で
ある。したがって,図6の具体的構成を参酌しながら,「第2隙間」の意義を確定す
ることになる。
「第2隙間」に関しては,請求項1及び3の記載によれば,「前記弁ケースの前記
油圧シリンダの油室側の先端と前記装着穴の内周面との間に第2隙間が形成され」10
とされている。これによれば,「第2隙間」は,別紙「第2隙間の図面」の「1-1」
の赤線(弁ケースの先端)と緑線(装着穴の内周面)との「間」に形成され,オレ
ンジ矢印で示すように圧油が流れる「空間」と解することができる。また,「前記第
1油路,前記第2油路,および前記バイパス流路は前記第1隙間および前記第2隙
間に連通し」ともされているところ,ここでいう「連通」とは,上記オレンジ矢印
で示すように圧油が流れることを意味する。
したがって,本件発明の「第2隙間」とは,弁ケースの先端と装着穴の内周面と
の間に形成され,上記オレンジ矢印で示すように圧油が流れる空間をいうものと解
される。原告も,訂正請求に際し,当該位置を「第2隙間」としている。5
(イ)被告製品の構成
被告製品の構成x1'等は,図面としては別紙「第2隙間の図面」の「1-2」
のとおりであるところ,「先端部材」(黄色部材)の先端が取付け穴(本件発明の
「装着穴」に相当するもの)と密着しており(上記図面の赤丸部分参照),給排路と
作業ポートは接続されていない。このため,本件発明の「弁ケースの・・・・先端」に10
相当する部分と「装着穴」との「間」には,圧油が流れる「空間」はない。
また,前記のとおり,被告製品においては,「貫通孔」が本件発明の「連通」(構
成要件1X,3X)に相当する構成に係る部位の1つであるけれども,「貫通孔」は,
筒状ケーシングの「脚部」の途中部に形成されており,筒状ケーシングの脚部の
「先端」や「先端部材」と「取付け孔の内周面」との間に形成されるものではない。15
このように,被告製品には,本件発明の「第2隙間」に相当する構成は存在しな
い。
(ウ)以上より,被告製品は構成要件1X及び3Xを充足しない。
2争点2(被告製品群4~6の製造,販売等に係る間接侵害の成否)について
(原告の主張)20
(1)構成要件の充足
ア以下のとおり,被告製品群4及び6は,それぞれ構成k4及びx4並びにk6
及びx6の構成を有しており,本件発明1の構成要件1K及び1Xを充足する。そうする
と,被告製品群4及び6は,いずれも構成要件1C及び1Dを除く本件発明1の全ての
構成要件を充足する。25
また,被告製品群5は,それぞれ構成k5及びx5の構成を有しており,本件発明3
の構成要件3K及び3Xを充足する。そうすると,被告製品群5は,いずれも構成要件
3C及び3Dを除く本件発明3の全ての構成要件を充足する。
イ被告製品群4及び6がそれぞれ本件発明1の構成要件1K及び1Xを充足す
ること,被告製品群5がそれぞれ本件発明3の構成要件3K及び3Xを充足することは,
前記1と同様である。5
(2)均等侵害の成立
ア本件発明1の構成要件1Dを「前記出力ロッドを進出側に駆動するクラン
プ用の油圧シリンダ」に置き換えた場合,被告製品群4及び6は本件発明1の構成
要件1Dを充足する。また,本件発明3の構成要件3Dを「前記出力ロッドを退入側に
駆動するアンクランプ用の油圧シリンダ」に置き換えた場合,被告製品群5は,本10
件発明3の構成要件3Dを充足する。
ここで,「前記出力ロッドを退入側に駆動するクランプ用の油圧シリンダ」(構成
要件1D)及び「前記出力ロッドを進出側に駆動するアンクランプ用の油圧シリンダ」
(構成要件3D)は,いずれも本件発明1及び3の本質的部分ではない(第1要件)。
次に,構成要件1Dを「前記出力ロッドを進出側に駆動するクランプ用の油圧シリン15
ダ」に,構成要件3Dを「前記出力ロッドを退入側に駆動するアンクランプ用の油圧
シリンダ」にそれぞれ置き換えても,本件発明1及び3の目的を達することができ,
同一の作用効果を奏するとともに(第2要件),そのように置き換えることについて
は,当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が,被告製品の製
造等の時点において容易に想到することができた(第3要件)。したがって,被告製20
品群4~6は,本件発明との関係で,均等の成立要件を充足する。
イ間接侵害
被告製品群4~6は,本件発明の構成要件1C及び3Cに相当する「クランプア
ーム」を取り付ける製品の生産にのみ用いる物である。
ウ上記によれば,被告製品群4~6にクランプアームを取り付けたものは,25
本件発明1(被告製品群4及び6について)及び3(被告製品群5について)の技
術的範囲に属する。
したがって,被告製品群4及び6については本件発明1との関係で,被告製品群
5については本件発明3との関係で,被告らがこれらを製造,販売等する行為は,
本件特許権の間接侵害(特許法101条1号)となる。
(3)被告らの主張について5
ア均等の第5要件(意識的除外でないこと)について
(ア)主位的主張
本件第2補正による減縮は,「リンククランプ」の意識的除外に当たらない。
すなわち,本件拒絶理由通知は,明確性要件違反と実施可能要件違反を指摘する
ものであって,「リンククランプ」を開示する先行例を引用する新規性,進歩性欠如10
の拒絶理由を指摘するものではない。しかも,上記指摘は「出力ロッド」の駆動方
向を問題とする記載不備ではない。本件第2補正は,本件拒絶理由通知の指摘を踏
まえ,「流量調整弁」の流量調整の方向を明確にしたものであって,「退入側」,「進
出側」の要件は,本件拒絶理由通知で指摘された拒絶理由を回避するために付加さ
れたものではない。15
以上より,本件第2補正によりリンククランプが特許請求の範囲の文言の範囲か
ら除外されているとしても,リンククランプが意識的に除外されたと当業者である
第三者が信頼するとはいえない
(イ)請求項3についての予備的主張
本件第2補正を行う時点での特許請求の範囲には,別紙「本件第1補正か20
ら本件第2補正に至る経緯」の「本件第1補正後の特許請求の範囲」の「請求項1」
欄記載のとおり,「クランプ用の油圧シリンダ」との記載があった。
他方,本件第2補正に係る手続補正書記載の請求項3は「アンクランプ用の油圧
シリンダ」を規定するものであり,補正前の特許請求の範囲には含まれない範囲を
手続補正により追加したものである。すなわち,請求項3については,手続補正に25
よる減縮の結果として「リンククランプ」が文言の範囲から外れたものではなく,
意識的に除外されたものとはいえない。
イ「クランプアーム」(構成要件1C及び3C)について
構成要件1C及び3Cに係る請求項の記載は,「該出力ロッドの先端部に連結さ
れワークにクランプ力を出力するクランプアーム」である。リンククランプにおい
ても,ピストンロッド(出力ロッド)の先端部にピンによってクランプアームが連5
結されること,クランプアームが「ワークにクランプ力を出力する」ことは,スイ
ングクランプ用のクランプアームと同様である。
したがって,本件発明の構成要件1C及び3Cとの関係において,リンククランプ用
のクランプアームはスイングクランプ用のクランプアームと変わるところはない。
すなわち,これらの構成要件における「クランプアーム」につき,スイングクラン10
プ用のクランプアームに限定される理由はない。
そうである以上,被告製品群4~6は,本件発明の構成要件1C及び3Cの「クラン
プアーム」を取り付ける製品の生産にのみ用いる物といえる。
(被告らの主張)
(1)被告製品群4及び6が構成要件1C及び1Dを,被告製品群5が構成要件3C及15
び3Dを充足しないことは認める。また,構成要件1D及び3Dにつき,均等の第1要
件~第3要件に係る原告の主張は,争わない。原告のその余の主張は否認し,争う。
(2)被告製品群4及び6が本件発明1の構成要件1K及び1Xを,被告製品群5が
本件発明3の構成要件3K及び3Xをそれぞれ充足しないことは,前記1と同様である。
(3)均等の第5要件(意識的除外でないこと)の非充足20
拒絶理由通知に対する応答による補正が意識的除外に該当するか否かは,特許
発明の技術的範囲に属しないことを承認したもの又は外形的にそのように解される
ような行動をとったものと客観的に評価できるか否かによって判断され,出願人の
主観的な補正目的は考慮されない。
本件特許の出願経過において,原告は,本件拒絶理由通知に対し,本件第2補正25
により本件発明1の構成要件1D及び本件発明3の構成要件3Dのとおり補正した。す
なわち,原告は,本件拒絶理由通知で指摘された拒絶理由を解消するために本件第
2補正を行い,出願時はスイングクランプ及びリンククランプいずれも含む発明で
あったものを,スイングクランプのみを対象とする発明に限定した。この補正に至
る経緯を客観的,外形的に見れば,原告は,リンククランプの構成を除外すること
を承認し,又は外形的にそのように解されるような表明をしたものと理解される。5
したがって,均等の第5要件を充足しないことから,被告製品群4~6につき均
等侵害は成立しない。
(4)「クランプアーム」(構成要件1C及び3C)について(間接侵害の不成立)
本件発明1の構成要件1D及び本件発明3の構成要件3Dに係る構成を有するのは
スイングクランプのみであるから,これらの構成要件の前提となる構成要件1C及び10
3Cの「クランプアーム」は,スイングクランプ用のクランプアームを意味する。本
件明細書を見ても,「旋回するクランプアーム」すなわちスイングクランプのみに用
いられるクランプアームしか開示されていない。また,前記(3)のとおり,本件特許
権に係る出願経過に鑑みれば,リンククランプは,意識的にその技術的範囲から除
外されたものである。15
以上より,本件発明の「クランプアーム」(構成要件1C及び3C)は,スイングク
ランプ用のクランプアームを意味する。
これに対し,被告製品群4~6はリンククランプであり,そのクランプアームは,
スイングクランプ用のクランプアームと構成を異にする。
そうである以上,被告製品群4~6は,いずれも「クランプアーム」(構成要件1C20
及び3C)を取り付ける製品の生産のみに用いる物ではない。
3争点3(被告製品群7及び8の製造,販売等に係る間接侵害の成否)につい

(原告の主張)
(1)被告製品群7及び8は,いずれも本件発明の課題の解決に不可欠なものであ25
り,「アクセサリ」として,被告製品群1~6に付けて使用するために販売されるも
のである。
(2)被告コスメックは,本件特許の設定登録直後に,本件特許について特許無効
審判を請求している(前記第2の2(3)オ,カ)。また,被告エンジニアリングは,被
告コスメックの関係会社である(前記第2の2(4)ア)。したがって,被告らは,本件
特許の設定登録時から被告製品群1~6に係る発明が本件特許に係る発明(本件発5
明)であること,並びに被告製品群7及び8が本件発明の実施に用いられることを
知って,被告製品群7及び8を製造,販売等してきたものといえる。
なお,被告らは,取付け対象であるクランプとは別時期にスピードコントロール
バルブを単体で販売するに当たり,その大部分において実際の用途が個別には不明
であるとしても,通常の使用の一態様としてそれがクランプに使用され得ること,10
すなわち違法な用途にも使用され得ることを認識していた。
(3)以上より,被告らが被告製品群7及び8を製造,販売等する行為は,本件特
許権の間接侵害(特許法101条2号)となる。
(被告らの主張)
(1)被告製品群7及び8が被告製品群1~6の生産に用いる物であることは認め15
る。
しかし,前記1のとおり,被告製品群1,3,4及び6はいずれも本件発明1の
構成要件1K及び1Xを充足せず,被告製品群2及び5はいずれも本件発明3の構成要
件3K及び3Xを充足しない。その結果,被告製品群1~6は,本件発明とは異なり,
流量調整弁の部品数を少なくできず,その構成を簡略化することができない。20
したがって,被告製品群7及び8は,「流量調整弁の部品数を少なくし,その構成
を簡略化する」という本件発明の課題の解決に不可欠なものではない。
(2)被告らが,本件発明が特許発明であることを知っていたことは認める。しか
し,被告らが,被告製品群7が本件発明1の実施に,また,被告製品群8が本件発
明3の実施にそれぞれ用いられることを知っていたことは否認する。25
被告製品群1,3,4及び6は本件発明1の構成要件1K及び1Xを充足せず,被告
製品群2及び5は本件発明3の構成要件3K及び3Xを充足しない以上,被告らは,被
告製品群7及び8が本件発明の実施に用いられるとも認識していない。
4争点4(差止請求及び廃棄請求の成否)について
(原告の主張)
被告らの行為は本件特許権を侵害することから,原告は,被告らに対し,被告5
製品の製造,販売等の差止請求権(特許法100条1項)並びに被告製品及びその
半製品の廃棄請求権(同条2項)を有する。
被告らは,被告製品群7及び8は被告製品群1~6への取付け以外の用途がある
旨主張する。しかし,リフトシリンダやワークサポートに用いられるものは製造販
売量の2割未満にすぎない。そうである以上,被告製品群7及び8の製造,販売に10
より本件特許権が侵害される恐れは相当程度存在する。また,前記3のとおり,被
告製品群7及び8については間接侵害が成立するところ,被告製品群7及び8の製
造,販売により本件特許権が侵害される蓋然性が高いのであるから,被告製品群7
及び8についても差止請求が認められるべきである。
(被告らの主張)15
原告の主張は否認し,争う。
被告製品群7及び8は,被告製品群1~6のほか,リフトシリンダやワークサポ
ートにも用いられており,本件発明の物の生産に用いられないものを相当数包含し
ているし,被告製品群4~6に用いられる物も含むことから,被告製品群1~3の
生産に用いられない数量の方が多い。侵害以外の用途に用いられる物について無限20
定に差止請求を求めることは過剰差止めとして許されず,適切な限定を付さない原
告の差止請求は棄却されるべきである。
5争点5(被告らの過失の有無)について
(原告の主張)
被告らによる被告製品の製造,販売行為は,被告らの故意又は過失(特許法125
03条)に基づくものである。
(被告らの主張)
特許法103条により被告らの過失が推定されることは争わない。原告のその
余の主張は否認し,争う。
本件特許の設定登録後,特許公報発行日である平成27年4月15日までは,同
条による過失の推定は覆滅される。5
6争点6(原告の損害額)について
(原告の主張)
(1)被告らは,平成27年2月27日~令和元年8月28日の間に,被告製品群
1~3を少なくとも●(省略)●製造,販売し,これにより少なくとも●(省略)●の
利益を得た(なお,被告らはスイングクランプとスピードコントロールバルブのセ10
ット販売を否認しつつも,同時に譲渡したことは認める。これは,両製品をセット
で販売していることと異ならない。)。
また,被告らは,上記期間に,被告製品群4~6を少なくとも●(省略)●製造,
販売し,これにより少なくとも●(省略)●の利益を得た。
さらに,被告らは,上記期間に,被告製品群7及び8を少なくとも●(省略)●個15
製造,販売し(ただし,この数量は,被告製品群1~6に含まれるものを除いたも
のである。),これにより少なくとも●(省略)●の利益を得た。
(2)以上より,被告らは,平成27年2月27日~令和元年8月28日の間に,
被告製品の製造,販売により合計●(省略)●の利益を得たところ,特許法102条
2項によりこれが原告の損害額と推定される。20
また,被告らの不法行為と相当因果関係のある弁護士費用相当損害額は,●(省略)
●を下らない。
したがって,原告は,被告らに対し,本件特許権侵害の不法行為に基づき,少な
くとも合計●(省略)●の損害賠償請求権を有する。原告は,その一部請求として,
被告らに対し,被告製品群1~3に係る損害額●(省略)●,被告製品群4~6に係25
る損害額●(省略)●並びに被告製品群7及び8に係る損害額●(省略)●(●(省略)
●)と,これに対応する弁護士費用相当損害額●(省略)●の合計額5億4627万
2223円,さらに,うち1億5000万円に対する平成30年6月16日(訴状
送達の日の翌日)から,うち3億9627万2223円に対する令和元年8月28
日(最終の不法行為の日)から各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支
払を請求する。5
(3)推定覆滅について
ア被告らの後記主張は不知又は否認し,争う。
被告製品群1~3を含むクランプについては,原告と被告らとで日本国内で
の市場シェアをほぼ独占しており,一方の利益が上がればその分だけ他方の利益が
落ちるという関係にある。このような事情を考慮すれば,特許権侵害による損害推10
定額の安易な覆滅を認めるべきではなく,本件特許権の侵害行為により被告らが得
た利益の全額を原告の損害額として認めるべきである。
イ被告製品群1~3について
(ア)本件発明は「クランプ装置」に係るものであり,構成要件として「クラ
ンプ本体」,「出力ロッド」,「油圧シリンダ」等を備え,「流量調整弁」の機能により15
「出力ロッド」の速度制御を行うものである。発明の目的は,クランプ本体をコン
パクトにすること,作動油の流量を調整するための部材の操作性を向上させること
等である。このように,本件発明の構成及び効果はクランプ装置の全体に及ぶこと
から,本件発明は,「スイングクランプ」の全体にわたって実施されているというべ
きものである。20
(イ)仮に,本件発明が侵害品の部分のみに実施されているとしても,直ちに
推定の覆滅が認められるものではない。すなわち,被告製品群1~3は,スイング
クランプとスピードコントロールバルブのセットであって,スピードコントロール
バルブを備えないスイングクランプのみで販売されている事実があることは,推定
を覆滅すべき事情とはいえない。スピードコントロールバルブとスイングクランプ25
とがセットで製造,販売されるのは,個々のスイングクランプにおける速度制御が
必要だからであり,この場合,スピードコントロールバルブは必須なのである。そ
うである以上,被告製品群1~3において本件発明の実施は必須であり,本件発明
は被告製品群1~3において重要な位置付けを有し,強い顧客誘引力を発揮する。
(ウ)後記被告特許1及び2に係る発明の効果は本件発明の実施例の構造によ
っても実現可能なものであり,何ら特別な効果とはいえない。また,被告特許1及5
び3に係る発明は,いずれも被告製品群1~3の一部でしか実施されていないこと
から,これらの被告製品において必須の発明ではない。このため,被告特許1~3
が被告製品群1~3の売上に貢献しているという事情は認められない。
以上より,被告製品群1~3につき,推定の覆滅は認めるべきでない。
ウ被告製品群7及び8について10
(ア)被告らの後記主張は否認し,争う。
特許法102条2項に基づく推定の覆滅については,侵害者である被告らが主張
立証責任を負うところ,被告ら主張に係る事情は客観的事実と明らかに異なり,そ
の立証も十分にされていない。すなわち,スピードコントロールバルブは,取付け
対象であるスイングクランプ,リンククランプ,リフトシリンダ及びワークサポー15
トとセットで販売される場合のほか,これらの取付け対象とは別時期に単体で販売
される場合もあり,被告製品群7及び8につきリフトシリンダやワークサポートに
用いられるものであるとする被告らの主張は客観的事実に反する。また,被告らは,
被告製品群1~6に含まれるものを除く被告製品群7及び8の全てが適法な用途で
あるリフトシリンダやワークサポートに用いられることを立証すべきところ,これ20
をしていない。
したがって,推定の覆滅は認められない。
(イ)予備的主張
スピードコントロールバルブ(被告製品群7及び8)の●(省略)●以上は
クランプ装置に用いられ,リフトシリンダやワークサポートに用いられるものは,25
せいぜい製造販売量の●(省略)●未満にすぎない。よって,仮に推定の覆滅が認め
られるとしても,●(省略)●未満に留まるというべきである。そうすると,以下の
表のとおり算定するのが相当である。
したがって,被告製品群7及び8の製造,販売による損害額に関し,クランプ以
外の使用分について損害額の覆滅を認めるとしても,その覆滅の額は●(省略)●の
限度に留まり,また,仮にスイングクランプ用に限定して損害を認めるとしても,5
被告製品群7及び8に係る損害額として少なくとも●(省略)●が認められるべきで
ある。
(被告らの主張)
(1)被告製品群1~3,7及び8の販売数量及び被告らの利益の額は認める。た
だし,このうち被告製品群1~3に関しては,被告コスメックがクランプとスピー10
ドコントロールバルブを同時に譲渡したことは認めるものの(なお,その場合でも,
当該クランプに被告製品群7及び8のスピードコントロールバルブが用いられてい
るかは不明である。),これらをセットで販売したことは否認する。原告のその余の
主張は否認し,争う。
被告製品群7及び8は,リフトシリンダ又はワークサポートと同時に販売された15
ものである。
(2)推定覆滅
ア被告製品群1~3について
(ア)本件発明は流量調整弁の構成が重要な発明であること
本件発明は,特許請求の範囲の記載によりスイングクランプの発明として20
特定されているものの,その重要な部分はクランプ装置に取り付けられた流量調整
製造販売数量被告ら利益額備考
スイングクランプ用●(省略)●●(省略)●
●(省略)●
リンククランプ用●(省略)●●(省略)●
クランプ以外(リフトシリ
ンダ/ワークサポート)
●(省略)●●(省略)●●(省略)●
合計●(省略)●●(省略)●
弁の構成であり,実質的には流量調整弁に係る発明である。
このことは,被告らがスピードコントロールバルブとスイングクランプをセット
で販売しておらず,両者がセットで使用されている数量も把握していないことから
もうかがわれる。これは,被告製品群7及び8は被告製品群1~3のスイングクラ
ンプとの関係ではアクセサリにすぎず,被告製品群1~3のスイングクランプは,5
被告製品群7及び8の製品がなくとも,スピードコントロールバルブのないスイン
グクランプとして使用可能で,現にそのようにユーザーにおいて使用されているこ
とによる。また,被告製品群7及び8は,当該製品のカタログを見なければその機
能がわからず,スイングクランプのカタログだけからでは明らかでないことから,
スイングクランプそれ自体に対する顧客誘引力は低い。10
したがって,被告製品群1~3については,「侵害品の部分のみに実施されている
場合」と同様に,特許法102条2項に基づく推定を覆滅する事情として考慮され
るべきであり,これに加え,コントロールバルブの被告製品中における位置付け及
び本件発明の顧客誘引力等の事情を総合的に考慮すれば,相当割合の推定覆滅が認
められるべきである。15
(イ)他の特許発明の実施品であること
被告製品は,被告コスメックが保有する他の特許(特許第4440215号,特
許第5037356号及び特許第4040947号。以下,これらの特許を順に「被告特許1」な
どという。)に係る発明の実施品である。しかも,これらの特許発明の実施は被告製
品の売上に貢献している。20
すなわち,被告製品は被告特許1に係る発明(請求項1及び7記載のもの)の実
施品であるところ(ただし,被告製品2A,2B,3,4A,4B及び10には,一部の構
成を備えないものが被告製品群1~3全体の●(省略)●存在する。),その作用効果
により,その実施は被告製品の売上に貢献している。
また,被告製品は被告特許2に係る発明(請求項1記載のもの)の実施品である25
ところ,その作用効果に加え,その効果を製品カタログに記載していることにより,
その実施は被告製品の売上に貢献している。
さらに,被告製品1A,1B,2A,2B,5A,5B,8及び9は被告特許3に係る発明
(請求項1及び2記載のもの)の実施品であるところ(これらの被告製品を除いた
被告製品群1~3の台数は,全体の●(省略)●にすぎない。),その作用効果に加え,
その効果を製品カタログに記載していることにより,その実施は被告製品の売上に5
貢献している。
(ウ)以上の事情に鑑みれば,本件特許の実施が被告製品群1~3の売上に寄
与した割合は微々たるものであり,これらの製品の販売により被告らの得た利益の
うち少なくとも7割については推定が覆滅されるべきである。
イ被告製品群7及び8について10
特許発明の物の生産に用いられなかった特許法101条2号の物の譲渡につ
いては,そもそも原告に損害が発生したとは認められないことから,特許法102
条2項に基づく推定を覆滅する事情に該当する。
被告製品群7及び8の製品は,被告製品群1~6のクランプのみならず,リフト
シリンダやワークサポートにも用いられていること,スピードコントロールバルブ15
が単体で販売されることはほとんど考えられないことから,被告製品群7及び8は,
いずれもリフトシリンダ又はワークサポートと同時に譲渡され,その生産に用いら
れたものである。
したがって,被告製品群7及び8の製造,販売により得た被告らの利益を原告の
受けた損害の額と推定することはできない。20
7争点7(消滅時効の成否)について
(被告らの主張)
(1)平成27年5月31日までの期間に係る請求について
ア原告は,平成27年2月27日以前から,被告らが被告製品を製造,販
売している事実を知っていた。25
イ被告らが被告製品群1~3の販売により得た利益の額は1日当たり●(省
略)●であり,被告製品群7及び8の販売により得たそれは1日当たり●(省略)●
である(いずれも,「平成27年2月27日~令和元年8月28日の間の販売数量÷
当該期間の日数×製品1個当たりの利益=1日当たりの被告らの利益の額」との計
算式に基づく。なお,販売数量については,訴え変更後においては,変更後の請求
の根拠となっている平成27年2月27日~令和元年8月28日の間の製造販売数5
量●(省略)●を案分して算定すべきである。)。
そうすると,平成27年2月27日~同年5月31日の間(94日間)における
被告製品群1~3の販売による被告らの利益の額は●(省略)●,被告製品群7及び
8の販売による利益の額は●(省略)●となる。
また,これらと相当因果関係が認められる弁護士費用相当損害額は,●(省略)●10
である。
したがって,原告の請求のうち,平成27年2月27日~同年5月31日の間の
損害分は,●(省略)●となる。
ウ被告らは,原告に対し,上記損害分に係る原告の損害賠償請求権につき
消滅時効を援用する(令和元年11月1日実施の第9回弁論準備手続期日において15
陳述。)。
(2)一部請求の残部について
ア原告が訴えの変更により請求を拡張したのは令和元年8月29日であり,
本件訴えの提起日(平成30年6月1日)の3年前である平成27年6月1日~平
成28年8月28日の期間に係る原告の損害賠償請求権のうち訴え提起時の残部20
(拡張部分)については,消滅時効が完成している。
イ原告が訴えの変更により請求を拡張した平成27年6月1日~平成28
年8月28日の期間に係る残部の金額は,被告製品群1~3について●(省略)●,
被告製品群7及び8について●(省略)●,合計●(省略)●である。
また,これらと相当因果関係が認められる弁護士費用相当損害額は,●(省略)●25
である。
したがって,原告の請求のうち,平成27年6月1日~平成28年8月28日の
間の損害分に係る訴えの変更による拡張部分は,●(省略)●となる。
ウ被告らは,原告に対し,上記拡張部分に係る原告の損害賠償請求権につ
き消滅時効を援用する(令和元年11月1日実施の第9回弁論準備手続期日におい
て陳述。)。5
エ上記拡張部分に係る原告の損害賠償請求について,原告により裁判上の
催告がされたことは争わない。
(原告の主張)
(1)平成27年5月31日までの期間に係る請求について
ア平成27年5月31日までの期間中に発生した原告の損害賠償請求権が10
時効消滅することは争わない。ただし,その金額は争う。
イ本件において消滅時効を主張するに当たっては,被告らが上記期間の販
売数量を立証しなければならない。しかるに,被告らはこの点の立証をしない。そ
うである以上,被告らの主張する消滅時効の援用は認められない。
ウ仮に被告らの主張が認められるとしても,1日当たりの販売数量は,平15
成27年2月27日~令和元年8月28日までの販売数量ではなく,訴状記載の販
売数量と販売期間により算出すべきである。そうすると,平成27年2月27日~
同年5月31日までの94日間に,被告製品群1~3の販売により被告らが得た利
益の額は1940万8235円,被告製品群7及び8の販売により得た利益の額は
232万8988円となる。20
また,これらの合計額(2173万7223円)と相当因果関係のある弁護士費
用相当損害額は,217万3722円である。
したがって,被告らによる消滅時効の主張が認められるとしても,時効消滅する
金額は,2391万0945円を超えることはない。
(2)一部請求の残部について25
被告らの主張は否認し,争う。
明示的一部請求の訴えが提起された場合,債権者が将来にわたって残部をおよそ
請求しない旨の意思を明らかにしているなど,残部につき権利行使の意思が継続的
に表示されているとはいえない特段の事情のない限り,当該訴えの提起は,残部に
ついて,裁判上の催告として消滅時効の中断の効力を生ずる。したがって,被告ら
主張に係る部分につき,消滅時効は完成していない。5
第4当裁判所の判断
1争点1(被告製品群1~3の製造,販売等に係る間接侵害の成否)について
(1)前記(第2の2(4)イ~エ)のとおり,被告製品群1~3の構成は,構成k1
等及びx1等を除き別表1~3の各中央の欄記載のとおりである。また,被告製品群
1及び3は本件発明1の構成要件1Cを,被告製品群2は本件発明3の構成要件3Cを10
いずれも充足せず,被告製品群1及び3は構成要件1C,1K及び1Xを除く本件発明
1の構成要件を,被告製品群2は構成要件3C,3K及び3Xを除く本件発明3の構成
要件をそれぞれ充足する。さらに,被告製品群1~3は,いずれも「クランプアー
ム」(本件発明の構成要件1C及び3C)を取り付ける製品の生産にのみ用いられる物
である。15
(2)本件発明の技術的意義
本件明細書の記載によれば,本件発明の技術的意義は,以下のとおりと認めら
れる。
ア技術分野
本件発明は,出力ロッドを進退駆動する油圧シリンダに給排する作動油の流量を20
調整可能なクランプ装置に関する(【0001】)。
イ背景技術
従来,機械加工に供するワーク等のクランプ対象物を固定するクランプ装置には,
クランプ本体とクランプ本体に進退可能に装着された出力ロッドとを有し,クラン
プ本体内に配設された油圧シリンダで出力ロッドを進退駆動することにより,クラ25
ンプ対象物をクランプしたり,そのクランプ状態を解除したりするものがある。
クランプ対象物が大きい場合は,一般に,このようなクランプ装置を複数個同時
に使用してクランプ対象物を固定するが,これら複数のクランプ装置間で油圧シリ
ンダへの作動油の供給速度(供給流量)が異なると,クランプ対象物をクランプす
るタイミングにばらつきが生じ,その間にクランプ対象物が所定の位置からずれ,
所定の位置に確実に固定できなくなるおそれがある。このため,作動油の供給流量5
又は排出流量を調整可能なクランプ装置として,例えば,クランプ本体にニードル
バルブを上下方向に移動可能に装着し,ニードルバルブの先端部をクランプ本体内
で水平に延びる油路内に突入させて,油路を流れる作動油の流量を調整できるよう
にしたものや,油圧供給用及び油圧排出用の各油路のそれぞれに流量調整弁を設け,
各流量調整弁はクランプ本体内の油路の途中部に形成された弁座と,弁座に水平方10
向に対向して設けられ,弁座と協働して油路を開閉する弁体としての鋼球と,クラ
ンプ本体に螺着され鋼球を下方へ押圧可能な調整スロットルとを備えるものとし,
調整スロットルを操作して鋼球を所定量下方へ押し下げることにより鋼球と弁座と
の間の隙間を調整して,油路を流れる作動油の流量を調整できるようにしたものが
提案されている(【0002】~【0005】)。15
ウ発明が解決しようとする課題
前者のクランプ装置には,出力ロッドの近傍部にニードルバルブが上方から装着
されている関係上,作動油の流量を調整するニードルバルブが操作しにくいという
欠点がある。後者のクランプ装置には,必然的に部品数が多くなって作動油の流量
調整のための構成が複雑になり,この複雑な構成を含むクランプ本体をコンパクト20
にすることが困難である,鋼球を弁座側へ直接移動させる場合に比べて作動油の流
量の微調整が困難である,調整スロットルが出力ロッドの近傍部に上方から装着さ
れるため,やはり操作性の面で不利な場合がある,といった問題がある。
本件発明の目的は,作動油の流量を容易かつ確実に微調整可能にすること,流量
調整のための構成を簡単化して,その構成を含むクランプ本体をコンパクトにする25
こと,作動油の流量を調整するための操作部材の操作性を向上させること等である
(【0007】~【0009】)。
エ課題を解決するための手段
本件発明は,前記ウの目的を達成するために,請求項1及び3各記載の構成を備
えるものである(【0010】)。
オ発明の効果5
本件発明によれば,クランプ本体に対して相対移動可能な弁部材を備え,弁
体部と弁孔との隙間を調整することで流量を調節することができるため,油圧の流
量を容易かつ確実に調整できる。具体的には,流量調整弁において,弁体部を有す
る弁部材を直接弁孔に対して接近/離隔する方向に移動させることができることに
より,作動油の流量を容易かつ確実に調整できるし,流量調整弁の部品数を減らし10
てその構成を簡単にすることができる。また,弁体部に切り欠き状の溝部が設けら
れ,その溝は弁体部の先端側ほど深く形成されているため,弁体部の弁孔への突入
量を調整することで,油路を流れる作動油の流量を微調整することができる。さら
に,弁部材の内部に,隙間をバイパスするバイパス流路を一方向にのみ閉止する逆
止弁が設けられているため,油圧シリンダに油圧を供給する場合(油圧シリンダか15
ら油圧を排出する場合)にはその流量を調整し,逆に油圧シリンダから油圧を排出
する場合(油圧シリンダに油圧を供給する場合)には迅速に排出(供給)すること
ができるとともに,逆止弁を流量調整弁とは別に設ける場合に比べてクランプ装置
をコンパクトにすることができる(【0011】,【0046】~【0048】,【0052】~
【0054】)。20
(3)「弁孔」(構成要件1K及び3K)について
ア「弁孔」とは,その文言からは,弁の部分に形成された孔すなわち一定
の範囲に画された空間を意味することがうかがわれる。
また,特許請求の範囲の記載によれば,本件発明の「弁孔」は,「前記第1油路と
前記第2油路との接続部」に形成される(構成要件1K,3K)。「第1油路」は「前記25
油圧ポートに接続された」もの,「第2油路」は「該第1油路に接続されて前記出力
ロッドの移動方向に直交する方向を指向して前記シリンダ穴に至る」ものであり
(構成要件1H,3H),クランプ本体の内部に設けられた油圧ポートから油圧シリン
ダを構成するシリンダ穴に至る「油路」を構成する(構成要件1G,1H,3G,3H)。
さらに,「流量調整弁」は,「一端が前記フランジ部の外周面から突出し,他端が
前記第1油路と第2油路との接続部に至る」ものである(構成要件1I,3I)ところ,5
この「流量調整弁」は,「弁孔」,「弁部材」,「弁ケース」等を備える。「弁部材」は,
「前記クランプ本体に対して前記第2油路の前記指向方向に相対移動可能な弁体部
および前記弁体部の基端に連なる…大径の軸部を有し,前記弁体部が前記弁孔に挿
入された全閉状態から前記弁体部が前記弁孔から離間した全開状態に至るまで前記
弁体部を移動させて前記弁体部と前記弁孔との間の隙間を調節可能な」ものである10
(構成要件1L,3L)。「弁ケース」は,「前記油圧シリンダの油室側の小径部と…基
部とを有し,前記小径部が前記フランジ部に形成された装着穴に内嵌状に螺合され
る」ものである(構成要件1M,3M)。
そして,「第1油路」は「前記油圧ポートから前記装着穴に向か」い,「前記弁ケ
ースの前記油圧シリンダの油室側の先端と前記装着穴の内周面との間」に形成され15
た「第2隙間に面するように前記装着穴の内周面に開口」するように配置される
(構成要件1X,3X)。
これらの記載によれば,本件発明のクランプ装置において,「弁孔」は,第1油路
と第2油路との「接続部」に形成されるものであると同時に,「流量調整弁」を構成
する要素でもある。また,「弁孔」と「弁体部」との間には,弁体部を挿入/離間さ20
せるように移動させることで調節可能な隙間が存在する。このほかに,「弁孔」の配
置や形状等に具体的に言及する記載は見当たらない。
もっとも,本件発明のクランプ装置における「油路」は,「第1油路」と「第2油
路」とを有し,クランプ本体の内部に設けられた前記油圧ポートから前記油圧シリ
ンダを構成する前記シリンダ穴に至るものであるものの,「第1油路」は「第2隙間25
に面するように前記装着穴の内周面に開口」している。そうすると,「第1油路」と
「第2油路」とは,両者間に少なくとも「装着穴」である空間が存在することを前
提とし,「第2油路」が少なくともこの空間を介して「該第1油路に接続されて…前
記シリンダ穴に至る」ものとして連結されることにより,「油路」を構成しているこ
とが理解される。このような理解によれば,「弁孔」が形成される第1油路と第2油
路との「接続部」とは,第1油路と第2油路との間にあって作動油の流路となる空5
間部分を含むものと解される。
この点を措くとしても,特許請求の範囲の上記各記載によれば,弁孔は,少なく
とも,第1油路と第2油路の間の作動油の流路となる部分に形成され,弁体部との
間に隙間があり,弁体部からは独立しており,かつ,弁体部を挿入し得る形状であ
る必要があるものの,「クランプ本体」に設けられるものに限定されるとは必ずしも10
解されない。
イ本件明細書の記載によれば,本件発明の「弁孔」と弁部材を構成する弁
体部との間には隙間が存在する(【0011】)。
また,本件明細書記載の実施例において,「弁孔」は,「油路40の途中部に形成さ
れ装着穴48の前端に連なる」ものとして「流量調整弁42」に備えられ(【0024】),15
「その穴径が装着穴48よりも小さく形成され,この弁孔46に油圧シリンダ5の油室
20に連なる第2油路40bが接続されている」(【0025】)ものとされている。さらに,
「弁体部47aは,弁孔46に前後摺動自在に挿入可能であり,弁体部47aには,装着穴
48と弁孔46との間の段部に係合してそれ以上の弁体部47aの前方への移動を係止す
る係止部50が形成されている」(【0027】),「弁体部47aが最も後側の位置にある全開20
状態(図6参照)と,弁体部47aが最も前側の位置にある全閉状態(図7参照)の間
で,弁体部47aを前後に移動させると,弁体部47aと弁孔46との間の隙間が変化して
その間を流れる作動油の流量が調整される。」(【0028】。【0046】も同旨。)との記載
もある。これらの記載並びに図6及び7によれば,油路40を構成する第1油路40aと
第2油路40bとは,装着穴48及び弁孔46の各空間を作動油が流れることによって連25
結されているといえる。この実施例において,弁孔46は,弁体部47aとともに作動油
の流量調整を可能とするものである点で,流量調整弁を構成すると共に,装着穴48
とは別に,「クランプ本体2」に形成された「穴」すなわち空間と見ることができる。
もっとも,上記実施例は「機械加工に供するワークをクランプする複数のクラン
プ装置のうちの1つに本発明を適用した一例」であり(【0014】),本件発明がこれに
限られることをうかがわせる記載は本件明細書には見当たらない。5
また,本件発明の技術的意義は,クランプ本体に対して相対移動可能な弁部材を
備え,弁体部と弁孔との隙間を調整することで流量を調節することができるため,
油圧の流量を容易かつ確実に調整できるようにしたことにある。このような技術的
意義との関係では,弁孔は,第1油路と第2油路との間の作動油の流路となる空間
の少なくとも一部につき一定の範囲を画して形成されたものであれば足り,クラン10
プ本体に形成されることが必然的に求められるものではない。
ウ以上より,「弁孔」(構成要件1K及び3K)は,「第1油路」と「第2油路」
との間の作動油の流路となることで両者を接続する空間の少なくとも一部につき一
定の範囲を画して形成されることを要し,それで足りると解される。
エ被告製品の「弁孔」に係る構成については,原告は構成k1等を主張し,15
被告らは構成k1'等を主張するものの,客観的には,別紙被告製品説明書の各「流量
制御弁」の図面記載のとおりであり,筒状ケーシングの脚部に取り付けられた先端
部材により形成される点では,当事者間に争いがない。これによれば,被告製品の
「弁孔」は,いずれも,「給排路」(「第1流路」に相当するもの)と「作業ポート」
(「第2油路」に相当するもの)との間の作動油の流路となる空間の一部につき一定20
の範囲を画して形成されていることが認められる。
したがって,被告製品の「弁孔」は,いずれも本件発明の「弁孔」(構成要件1K
及び3K)に相当する。
オ小括
そうである以上,被告製品群1及び3は本件発明1の構成要件1Kを,被告製25
品群2は本件発明3の構成要件3Kを,それぞれ充足する。
カこれに対し,被告らは,「弁孔」につき,「前記第1油路と前記第2油路
との接続部に形成された」の「接続部」とは,クランプ本体に設けられた油路の
「途中部」を意味するから,クランプ本体に形成されるものであるなどと主張する。
しかし,被告らの上記主張は本件明細書等の記載(本件明細書【0024】等)及び
図面に基づくものであるところ,これらの記載等はいずれも実施例に関するものに5
すぎず,本件発明が実施例に限定されるべきものと理解すべき理由はない。
また,流量調整弁が取り付けられる「装着穴」は,クランプ本体の上部にあるフ
ランジ部に形成されるものであるから(構成要件1E,1M,3E,3M),これもクラ
ンプ本体に形成されるものということができる。そうすると,被告らの主張を前提
としても,被告製品の「弁孔」は,取付け穴(「装着穴」に相当するもの)の内部に10
形成されている以上,なおクランプ本体に形成されたものということも可能である。
したがって,この点に関する被告らの主張は採用できない。
(4)「第2隙間」(構成要件1X及び3X)について
ア特許請求の範囲の記載によれば,本件発明の「第2隙間」(構成要件1X及
び3X)は,「前記弁ケースの前記油圧シリンダの油室側の先端と前記装着穴の内周面15
との間に」「形成され」るものである。ここで,「装着穴」とは,フランジ部に形成
されるものであり,「弁ケース」が有する「前記油圧シリンダの油室側の小径部」が
「内嵌状に螺合される」ものである(構成要件1M,3M)。また,「先端」とは,そ
の文言から,弁ケースの油圧シリンダの油室側の「最も先端の部分」に限定した意
味に理解することも,弁ケース全体の構成の中で「最先端部分を含む一定の広がり20
を持った部分」の意味に理解することも,いずれも可能である。
さらに,「前記第1油路,前記第2油路,およびバイパス流路は前記第1隙間およ
び前記第2隙間に連通し,前記第1油路は…前記第2隙間に面するように前記装着
穴の内周面に開口し,前記バイパス流路の前記第1流路と前記第1隙間と前記第2
隙間とが前記指向方向に直交する同一面内に位置できるように配置される」(構成要25
件1X,3X)という関係にある。ここで,「バイパス流路」とは,「前記弁体部と前記
弁孔との間の隙間をバイパス」するものであり(構成要件1T,3T),「前記弁体部の
内部に前記流量調整弁の前記一端から前記他端に向かう方向に延びる第1流路と,
前記第1流路から外周側に延びる第2流路とを含」む(構成要件1U,3U)。「第1隙
間」は,「前記第1シール部材に対して前記油圧シリンダの油室側において前記弁部
材の外周面と前記弁ケースの内周面との間に」「形成され」る(構成要件1X,3X)。5
もっとも,これ以上に,「第2隙間」の具体的な位置等に言及した記載は見当たら
ない。このため,特許請求の範囲の記載のみによっては,「第2隙間」の具体的な位
置等は必ずしも理解し得ない。
イ本件明細書の図6によれば,弁ケース45の小径部45aのうち,装着穴48
と内嵌状に螺合している部分よりも油圧シリンダの油室側の部分は,装着穴48の内10
周面との間に隙間を形成しているとともに,その隙間部分に面するようにして,装
着穴48の内周面に第1油路40aが開口していることが理解される。加えて,「油圧ポ
ート21から油室20に油圧を供給する場合には,鋼球56が弁座55に密着してバイパス
流路51が閉止されているため,油圧は弁体部47aと弁孔46との隙間のみを流れるこ
とになる。」(【0031】)という記載と図6とを照らし合わせると,第1油路40aから15
バイパス流路52及びバイパス流路51を経て第2油路40bに至る油圧の流路が存在す
ることが理解できる。この流路が存在する以上,第1隙間のほか,弁ケース45の小
径部45aの先端と装着穴48との間にも隙間がなければならないことが理解できる。
また,上記隙間部分と,バイパス流路の第1流路51,及び油圧シリンダの油室側
において弁部材47の外周面と弁ケース45の内周面との間に形成される第1隙間とは,20
「前記指向方向」すなわち「前記出力ロッドの移動方向に直交する方向」(構成要件
1H,3H)に直交する同一面内に位置できるように配置されている。さらに,上記隙
間部分に対応する弁ケース45の小径部45aの部分について,弁ケース45全体におけ
る「最先端部分を含む一定の広がりを持った部分」という意味での「先端」と位置
付けることは,何ら不自然ではない。25
ウ以上によれば,「第2隙間」(構成要件1X及び3X)とは,弁ケースの小径
部のうち,装着穴と内嵌状に螺合している部分よりも油圧シリンダの油室側の部分
と装着穴の内周面との間に形成される隙間(別紙「第2隙間の図面」の「2-1」
記載の「第2隙間」の部分)を意味するものと理解するのが相当である。
エ被告製品の「第2隙間」に係る構成について,原告は構成x1等を主張す
るのに対し,被告らは,被告製品には本件発明の「第2隙間」に相当する構成は存5
在せず,原告主張に係るx1等に相当する構成として,構成x1'等を主張する。
しかし,この点に関する被告製品の構成は,客観的には別紙被告製品説明書の各
「流量制御弁」の図面記載のとおりである。これによれば,被告製品の「筒状ケー
シング」(弁ケースに相当するもの)の「脚部」(弁ケースの小径部に相当するもの)
は,「取付け穴」(装着穴に相当するもの)に内嵌状に螺合されているところ,その10
螺合されている部分よりも油圧シリンダの油室側の部分は,「取付け穴」の内周面と
の間に隙間を形成していることが認められる。被告製品の給排路(第1油路に相当
するもの)は,この隙間部分に面するようにして取付け穴の内周面に開口している。
また,この隙間部分と,バイパス流路の連通流路(第1流路に相当するもの)及び
油圧シリンダの油室側において調整ロッド(弁部材に相当するもの)の外周面と筒15
状ケーシングの内周面との間に形成される第1隙間とは,ピストンロッド(出力ロ
ッドに相当するもの)の移動方向に直交する方向に直交する同一面内に位置できる
ように配置されているといえる。
したがって,被告製品の上記隙間部分は,いずれも本件発明の「第2隙間」(構成
要件1X及び3X)に相当する。20
オ小括
そうである以上,被告製品群1及び3は本件発明1の構成要件1Xを,被告製
品群2は本件発明3の構成要件3Xを,それぞれ充足する。
カこれに対し,被告らは,本件発明の「第2隙間」につき,別紙「第2隙
間の図面」の「1-1」の赤線(弁ケースの先端)と緑線(装着穴の内周面)との25
間に形成され,オレンジ矢印で示すように圧油が流れる「空間」を意味するなどと
主張する。
しかし,「第2隙間」につき被告ら主張に係る意味に解した場合,「前記第1流路
と前記第1隙間と前記第2隙間とが前記指向方向に直交する同一面内に位置できる
ように配置される」必要があることと整合しないことになる。そうである以上,「第
2隙間」につき,被告ら主張の解釈によることはできない。5
したがって,この点に関する被告らの主張は採用できない。
(5)以上より,被告製品群1~3にクランプアームを取り付けたものは,本件発
明1(被告製品群1及び3について)及び3(被告製品群2について)の技術的範
囲に属する。
したがって,被告らが被告製品群1~3を製造,販売等する行為は,本件特許権10
の間接侵害(特許法101条1号)を構成する。
2争点2(被告製品群4~6の製造,販売等に係る間接侵害の成否)について
(1)前記(第2の2(4)イ,ウ)のとおり,被告製品群4~6の構成は,構成k1
等及びx1等を除き別表4~6の各中央の欄記載のとおりである。また,被告製品群
4及び6は本件発明1の構成要件1C及び1Dを,被告製品群5は本件発明3の構成要15
件3C及び3Dを,いずれも充足しない。さらに,被告製品群4及び6は構成要件1C,
1D,1K及び1Xを除く本件発明1の構成要件を,被告製品群5は構成要件3C,3D,
3K及び3Xを除く本件発明3の構成要件を,それぞれ充足する。
加えて,前記1(3)及び(4)と同様の理由により,被告製品群4及び6は本件発明1
の構成要件1K及び1Xを,被告製品群5は本件発明3の構成要件3K及び3Xを,それ20
ぞれ充足する。
(2)均等の第5要件(意識的除外でないこと)について
ア特許権侵害訴訟において,相手方が製造等をする製品又は用いる方法
(対象製品等)に特許請求の範囲記載の構成と異なる部分が存する場合,対象製品
等は特許発明の技術的範囲に属するとはいえない。しかし,特許請求の範囲に記載25
された構成中に対象製品等と異なる部分が存する場合であっても,当該部分が特許
発明の本質的部分ではなく(第1要件),当該部分を対象製品等のものと置き換えて
も,特許発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏し(第2要件),その
ように置き換えることに,当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有す
る者(当業者)が,対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができ
(第3要件),対象製品等が,特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当5
業者がこれから右出願時に容易に推考できたものではなく(第4要件),対象製品等
が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに
当たるなどの特段の事情もないとき(第5要件)は,当該対象製品等は,特許請求
の範囲に記載された構成と均等なものとして,特許発明の技術的範囲に属するもの
と解される。これは,特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外した10
など,いったん特許発明の技術的範囲に属しないことを承認するか,又は外形的に
そのように解されるような行動を取った特許権者が後にこれと反する主張をするこ
とは,禁反言の法理に照らし許されないことなどによる(最高裁平成10年2月2
4日第三小法廷判決・民集52巻1号113頁参照)。
もっとも,出願人が,特許出願時に,特許請求の範囲に記載された構成中の対象15
製品等と異なる部分につき,対象製品等に係る構成を容易に想到することができた
にもかかわらず,これを特許請求の範囲に記載しなかった場合であっても,それだ
けでは,対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的
に除外されたものに当たるなどの特段の事情が存するとはいえない。他方,上記の
場合において,客観的,外形的に見て,対象製品等に係る構成が特許請求の範囲に20
記載された構成を代替すると認識しながら敢えて特許請求の範囲に記載しなかった
旨を表示していたといえるときには,対象製品等が特許発明の特許出願手続におい
て特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情が存する
というべきである(最高裁平成29年3月24日第二小法廷判決・民集71巻3号
359頁)。このことは,特許請求の範囲につき複数回行われた前後の補正の経緯を25
検討する場合においても同様である。
また,均等の第1~第5要件の主張立証責任については,第1~第3要件は対象
製品等が特許発明と均等であると主張する者が,第4及び第5要件は対象製品等に
ついて均等の法理の適用を否定する者が,それぞれ負担すると解される。
本件において,原告は,被告製品群4及び6が本件発明1の構成要件1Dを,被告
製品群5が本件発明3の構成要件3Dをそれぞれ充足しない点について均等侵害の成5
立を主張するところ,均等の第1~第3要件の充足は当事者間に争いがない。また,
被告らは,均等の第4要件の非充足につき主張しない。そこで,均等の第5要件の
充足の有無について,以下検討する。
イ原告の主位的主張について
(ア)本件第1補正から本件第2補正に至る経緯等は,別紙「本件第1補正か10
ら本件第2補正に至る経緯」記載のとおりである(前記第2の2(3))。
(イ)このうち,本件第1補正後と本件第2補正後の特許請求の範囲の各記載
を見ると,本件第1補正後の特許請求の範囲は,スイングクランプ及びリンククラ
ンプいずれのタイプのクランプ装置をも含むと解し得る記載であるのに対し,本件
第2補正後の特許請求の範囲は,「出力ロッドを退入側に駆動するクランプ用の油圧15
シリンダとを備え」(請求項1)及び「出力ロッドを進出側に駆動するアンクランプ
用の油圧シリンダとを備え」(請求項3)とあるとおり,スイングクランプタイプの
クランプ装置であることを明記しており,文言上はリンククランプタイプのクラン
プ装置を含むとは解し得ない。
(ウ)本件特許に係る明細書においては,出願当初から本件明細書に至るまで,20
従来技術としてスイングクランプタイプのクランプ装置に関する特許文献1及びリ
ンククランプタイプのクランプ装置に関する特許文献2が挙げられるとともに,本
件発明の実施例としてスイングクランプタイプのクランプ装置が示されている(甲
2,3,公知の事実)。
(エ)本件拒絶理由通知記載の拒絶理由は明確性要件違反であり,具体的には,25
本件第1補正後の特許請求の範囲請求項1の記載につき,「本願発明が如何なるクラ
ンプ装置を意図しているのか,その外縁が明確に特定できない」こと,「「第2油路」
が具体的に想定できない」こと及び「「流量調整弁」が具体的に想定できない」こと
が挙げられている。換言すれば,スイングクランプ,リンククランプいずれのタイ
プのクランプ装置をも含むと解し得る記載となっていることによって新規性又は進
歩性が欠如するとの無効理由は指摘されていないことから,本件第2補正は,こう5
した無効理由を回避するためにされたものではない。また,明確性要件違反の指摘
においても,スイングクランプ,リンククランプいずれのタイプのクランプ装置を
も含むと解し得る記載であるが故に不明確とされているわけでもない。
もっとも,上記拒絶理由のうち「本願発明が如何なるクランプ装置を意図してい
るのか,その外縁が明確に特定できない」とは,より具体的には,油圧シリンダの10
具体的な規定がなく,その油室の数が不明であり,そのために,第1油路,第2油
路及び流量調整弁の機能ないし役割が不明であるといった問題点を指摘するもので
ある。これは,当業者にとって,クランプ装置のタイプを含む装置の前提的な構成
の不明確さを指摘する趣旨のものと理解されると思われる。
(オ)原告は,本件第2補正の際に提出した意見書(乙2の2)で,請求項115
に係る補正につき,本件拒絶理由通知での審査官の指摘に対して,「補正後の請求項
1では,「前記出力ロッドを退入側に駆動するクランプ用の油圧シリンダ」と規定し
ております。…補正後の請求項1に係る本願発明において,「第1油路」及び「第2
油路」や,両流路の接続部にある「流量調整弁」が,何のために在って何をしてい
るのかという点については明確であると思料いたします。よって,ご指摘の記載不20
備は解消し得たものと思料致します。」との補足説明をしている。
(カ)以上の事情を踏まえて本件第1補正から本件第2補正に至る経緯を見る
と,客観的,外形的には,原告は,本件第1補正後の特許請求の範囲請求項1の記
載によれば,その構成はスイングクランプとリンククランプいずれのタイプのクラ
ンプ装置も含むものであることを認識しながら,本件拒絶理由通知を受けて行った25
本件第2補正により,敢えて補正後の特許請求の範囲にリンククランプのタイプの
クランプ装置を含むものとして記載しなかった旨を表示したものと理解される。
そうである以上,本件においては,本件第2補正においてリンククランプのタイ
プのクランプ装置が特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるという特
段の事情が存する。
したがって,被告製品群4~6は,本件発明との関係で,均等の第5要件を充足5
しない。この点に関する原告の主位的主張は採用できない。
ウ原告の予備的主張について
原告は,予備的主張として,本件第1補正後の特許請求の範囲請求項1記載
の「クランプ用の油圧シリンダ」は「アンクランプ用の油圧シリンダ」(本件第2補
正後の特許請求の範囲請求項3)を含まないとの理解を前提として,本件第2補正10
後の特許請求の範囲請求項3は補正前の特許請求の範囲に含まれないものを手続補
正により追加したものであり,請求項3については意識的に除外されたものとはい
えないなどと主張する。
しかし,本件第1補正後の特許請求の範囲請求項1記載のクランプ装置は,「クラ
ンプ本体に進退可能に装着された出力ロッド」及び「出力ロッドを駆動するクラン15
プ用の油圧シリンダ」等を備えることは記載されているものの,「出力ロッド」が退
入側・進出側いずれに駆動することによってワークをクランプするものであるかを
うかがわせる記載はない(なお,この時点での請求項2~4にも,クランプのタイ
プに関係する記載はない。)。このことと,従来技術としてはスイングクランプ及び
リンククランプの両タイプが挙げられていることに鑑みれば,本件特許に係る明細20
書においては出願当初よりリンククランプのタイプのクランプ装置も除外されてい
ないといえることを併せ考えると,本件第1補正後の特許請求の範囲請求項1は,
スイングクランプのみならずリンククランプのタイプのクランプ装置をも含むもの
と理解される。本件第2補正後の特許請求の範囲請求項1において「クランプ用の
油圧シリンダ」とし,請求項3において「アンクランプ用の油圧シリンダ」とされ25
たのは,本件拒絶理由通知を受けた対応として,クランプ装置の構成をより具体的
に特定したことに伴うものと理解することができるから,本件第2補正の前後で
「クランプ用の油圧シリンダ」を異なる意味に解することはなお合理的である。
したがって,原告の予備的主張はその前提を欠くから,これを採用することはで
きない。
エ小括5
以上より,均等侵害として,被告製品群4及び6は本件発明1の技術的範囲
に属するとはいえず,また,被告製品群5は本件発明3の技術的範囲に属するとは
いえない。そうである以上,被告らによる被告製品群4~6の製造,販売等は,本
件特許権を侵害するものとはいえない。
したがって,被告製品群4~6に係る原告の被告らに対する製造等の差止請求,10
廃棄請求及び損害賠償請求は,いずれも理由がない。
3争点3(被告製品群7及び8の製造,販売等に係る間接侵害の成否)につい

(1)前記(第2の2(4)オ)のとおり,被告製品群7及び8は,被告製品群1~
3のクランプに取り付けて使用される場合にクランプ装置の生産に用いるものであ15
る。
また,特許法101条2号の趣旨によれば,「発明による課題の解決に不可欠なも
の」とは,それを用いることにより初めて「発明の解決しようとする課題」が解決
されるような部品等,換言すれば,従来技術の問題点を解決するための方法として,
当該発明が新たに開示する特徴的技術手段について,当該手段を特徴付けている特20
有の構成等を直接もたらす特徴的な部品等が,これに該当するものと解される。
本件発明において,作動油の流量の微調整を容易かつ確実に可能とすることなど
の課題を解決する直接的な手段となるものは,相対移動可能な弁体部を有する弁部
材をその構成に含む「流量調整弁」である。このため,「流量調整弁」は,本件発明
が新たに開示する特徴的技術手段における特徴的な部品等ということができる。被25
告製品群7及び8(スピードコントロールバルブ)は,この「流量調整弁」に相当
するものであるから,「その発明による課題の解決に不可欠なもの」(特許法101
条2号)に該当する。
これに対し,被告らは,被告製品群1及び3が本件発明1の構成要件1K及び1Xを
充足せず,被告製品群2が本件発明3の構成要件3K及び3Xを充足しないことから,
被告製品群7及び8は本件発明の課題の解決に不可欠なものではないと主張する。5
しかし,前記1のとおり,被告製品群1~3は本件発明の上記各構成要件を充足す
る。そうである以上,この点に関する被告らの主張はその前提を欠き,採用できな
い。
(2)被告らが,本件発明が特許発明であることを知っていたことについては,当
事者間に争いがない。10
また,被告らは,被告製品群7を被告製品群1及び3の,被告製品群8を被告製
品群2のアクセサリとしてそれぞれ製造,販売していること(甲6,10,11,
乙9,10)に鑑みると,被告製品群7及び8が本件発明の実施品である被告製品
群1~3に用いられることを知っていたことが認められる。
なお,被告製品群7及び8は,スイングクランプのほか,リンククランプ,リフ15
トシリンダ,ワークサポートにも使用可能なものである(甲6,10,乙4,5,
9,10)。
しかし,特許法101条2号の趣旨に鑑みれば,発明に係る特許権の侵害品「の
生産に用いる物…がその発明の実施に用いられること」とは,当該部品等の性質,
その客観的利用状況,提供方法等に照らし,当該部品等を購入等する者のうち例外20
的とはいえない範囲の者が当該製品を特許権侵害に利用する蓋然性が高い状況が現
に存在し,部品等の生産,譲渡等をする者において,そのことを認識,認容してい
ることを要し,またそれで足りると解される。
本件においては,後記6のとおり,被告製品群7及び8に属する製品がスイング
クランプと組み合わせて販売される割合が大きいことに鑑みると,これを購入等す25
る者のうち例外的とはいえない範囲の者が被告製品群7及び8を特許権侵害に利用
する蓋然性が高い状況が現に存在するとともに,被告らはそのことを認識,認容し
ていたものといえる。そうである以上,上記事情は本件における間接侵害の成立を
妨げるものではない。
これに対し,被告らは,被告製品群7が本件発明1の実施に,被告製品群8が本
件発明3の実施にそれぞれ用いられることを認識していないなどと主張する。しか5
し,被告らは,当然に被告製品群1~3の構成を認識していると考えられるところ,
被告製品群1~3が本件特許権侵害を構成する以上,被告製品群7及び8について
も,本件発明の実施に用いられるものであることを知っていたといえる。この点に
関する被告らの主張は採用できない。
(3)小括10
以上より,被告らが被告製品群7及び8を製造,販売する行為は,本件特許権
の間接侵害(特許法101条2号)を構成する。
4争点4(差止請求及び廃棄請求の成否)
(1)前記1及び3に加え,本件における被告らの応訴態度を踏まえると,被告ら
に対する被告製品群1~3,7及び8の製造,販売等の差止請求を認める必要性が15
あるといえる。
これに対し,被告らは,被告製品群7及び8につき差止を認めることは過剰差止
として許されないなどと主張する。しかし,前記3(2)のとおり,被告製品群7及び
8については,これを購入等する者のうち例外的とはいえない範囲の者が特許権侵
害に利用する蓋然性が高い状況が現に存在することなどから,その製造,販売等に20
つき間接侵害が成立するのであるから,用途に係る限定を付すことなく差止請求を
認めたとしても過剰とはいえない。この点に関する被告らの主張は採用できない。
(2)弁論の全趣旨及び本件における被告らの応訴態度に鑑みると,被告らは,な
お被告製品群1~3,7及び8を所持していることが推認される。そうである以上,
その廃棄請求を認めるべき必要性があるといえる。これに反する被告らの主張は採25
用できない。
他方,これらの半製品に関しては,前記(3(2))のとおり,被告製品群7及び8
には他の適法な用途もあること,被告製品群1~3に含まれるクランプも,被告製
品群7及び8と組み合わせることなく単独で取引され得る製品であること(甲6,
10,11,乙9)に鑑みると,その廃棄を認めるべき必要性は,その完成品が間
接侵害を構成することを踏まえても,なお乏しいというべきである。したがって,5
被告製品群1~3,7及び8の半製品の廃棄請求は認められない。これに反する原
告の主張は採用できない。
5争点5(被告らの過失の有無)について
被告らは,本件特許の特許公報発行日である平成27年4月15日までの過失
の推定の覆滅を主張するところ,後記7のとおり,この期間は原告の損害賠償請求10
権につき消滅時効の成立する期間に含まれることから,この点については判断しな
いこととする。
他方,平成27年6月1日以降につき,被告らは,特許法103条により被告
らの過失が推定されることは争わない。これを覆滅すべき事情の主張立証もない。
したがって,平成27年6月1日以降については,被告製品群1~3,7及び8の15
製造,販売による本件特許権侵害につき,少なくとも被告らの過失が認められる。
6争点6(原告の損害額)について
(1)被告らの販売数量及び利益の額
ア被告らが,平成27年2月27日~令和元年8月28日の間に,被告製
品群1~3を少なくとも●(省略)●製造,販売し,これにより少なくとも●(省略)20
●の利益を得たこと,被告製品群7及び8を少なくとも●(省略)●製造,販売し
(ただし,被告製品群1~6に含まれるものを除く。),これにより少なくとも●(省
略)●の利益を得たことは,いずれも当事者間に争いがない。
イ被告らの主張について
(ア)被告らは,被告製品群1~3につき,クランプとスピードコントロール25
バルブを同時に譲渡したことを認めつつ,セットで販売したものではないなどと主
張する。
しかし,証拠(乙9,10)によれば,被告製品群1~3を構成するクランプは
いずれもその配管方式を「C:ガスケットタイプ」(以下「Cタイプ」という。)と
するものであるところ,被告製品群1~3を含む被告らのクランプ製品の各モデル
においてスピードコントロールバルブを取付け可能なのはこのCタイプのみである5
こと,スピードコントロールバルブは「アクセサリ」と位置付けられ,Cタイプの
クランプにも付属しておらず,クランプとは別売品であることが認められる。
そうすると,被告らの取扱製品としてクランプとスピードコントロールバルブと
は別の製品であり,殊更「セット」という形式で販売されていないといえる。
もっとも,敢えてCタイプのクランプをスピードコントロールバルブと同時に購10
入する顧客は,スピードコントロールバルブを取り付けてクランプ装置として使用
することを当然予定しているといってよい。そうである以上,被告らとしても,当
然,Cタイプのクランプとスピードコントロールバルブとが同時に購入される場合,
顧客がこれらを組み合わせて使用することを念頭に置いているものと考えられる。
このような取引の実情を踏まえると,クランプとスピードコントロールバルブと15
の同時の譲渡をもって「セット」での譲渡と見ることに不合理な点はない。本件に
おいて特許権侵害行為とされる被告製品群1~3の製造,販売も,現にこれが行わ
れたものである。そうである以上,これを「同時の譲渡」と表現するか,「セットで
の譲渡」とするかを論ずる実益はない。
(イ)被告らは,被告製品群7及び8につき,上記のとおり,販売数量及び被20
告らの利益の額は認めつつ,これらはリフトシリンダ及びワークサポートと同時に
販売されるものに関するものであると主張する。この点については,特許法102
条2項に基づく推定の覆滅との関連で検討する。
(2)推定覆滅について
ア特許法102条2項に基づく推定の覆滅については,侵害者が主張立証25
責任を負うものであり,侵害者が得た利益と特許権者が受けた損害との相当因果関
係を阻害する事情がこれに当たると解される。例えば,特許権者と侵害者の業務態
様等に相違が存在すること(市場の非同一性),市場における競合品の存在,侵害者
の営業努力(ブランド力,宣伝広告),侵害品の性能(機能,デザイン等特許発明以
外の特徴)などの事情を推定覆滅の事情として考慮することができるものと解され
る。また,特許発明が侵害品の部分のみに実施されている場合においても,推定覆5
滅の事情として考慮することができる。もっとも,特許発明が侵害品の部分のみに
実施されていることをもって直ちに上記推定の覆滅が認められるのではなく,特許
発明が実施されている部分の侵害品中における位置付け,当該特許発明の顧客誘引
力等の事情を総合的に考慮してこれを決するのが相当である。
イ被告製品群1~3について10
(ア)被告らは,推定覆滅の事情として,本件発明は流量調整弁の構成が重要
な発明であることなどを指摘し,被告製品群1~3については「侵害品の部分のみ
に実施されている場合」と同様に推定覆滅の事情として考慮すべきこと,コントロ
ールバルブの被告製品中における位置付け及び本件発明の顧客誘引力等の事情を総
合的に考慮すれば,相当割合の推定覆滅が認められるべきであるなどと主張する。15
しかし,本件発明は「クランプ装置」に係るものであり,流量調整弁に係る発明
ではない。そうである以上,被告製品群1~3について,クランプアーム(スイン
グレバー)を備えていない点を除き,本件発明が「侵害品の部分のみに実施されて
いる場合」ということはできない。
また,「流量調整弁」は本件発明における特徴的な部品等ということができること20
(前記3(1)),この「流量調整弁」に相当するスピードコントロールバルブ(被告製
品群7及び8)はアクセサリとしてクランプとは別売品とされていること(前記(1)
イ(ア))は,いずれも本件において推定を覆滅すべき事情ということは必ずしもでき
ない。すなわち,前記((1)イ(ア))のとおり,被告らのクランプ製品の各モデルには
スピードコントロールバルブを取付け可能なCタイプ以外のタイプも存在する。に25
もかかわらず,顧客が敢えてクランプとスピードコントロールバルブの組合せであ
る被告製品群1~3を同時に購入したのは,スピードコントロールバルブの流量調
整機能に着目し,これをクランプに取り付けることを予定していたからこそと理解
される。そうすると,被告製品群1~3においては,スピードコントロールバルブ
を取付け可能であることが強い顧客誘引力として作用したものといえる。スピード
コントロールバルブがアクセサリとして別売品とされていることも,Cタイプのク5
ランプにおけるスピードコントロールバルブの取付け位置には,そのほかにエア抜
き弁等も取付け可能なこと(乙9,10)に鑑みると,顧客のニーズに応じた選択
を可能とするためと理解される。これを前提とすると,被告製品群1~3に関して
は,複数取付け可能な部材の中から敢えてスピードコントロールバルブが選択され,
Cタイプのクランプと共に購入されたものといえることから,やはりスピードコン10
トロールバルブを取付け可能であることが強い顧客誘引力として作用したことがう
かがわれる。
なお,被告らは,スピードコントロールバルブの機能はそのカタログを見なけれ
ば分からず,スイングクランプのカタログだけからでは明らかでないなどとも指摘
する。しかし,スイングクランプとスピードコントロールバルブとは同一のカタロ15
グ(乙9,10。なお,被告らは,作成日を異にする別の書証としてこれらを提出
するが,その内容及びページ数に鑑みると,同一カタログ中に両製品が掲載されて
いることがうかがわれる。)の別ページに掲載されているにすぎない。その上,スイ
ングクランプの各モデルの掲載ページでは,それぞれ,「ダイレクトマウント可能な
スピードコントロールバルブ」などと,スピードコントロールバルブを直付け可能20
であることを訴求しつつ,スピードコントロールバルブが別売品であること,これ
を取付け可能なものはCタイプのものであることに繰り返し言及している。しかも,
偶数ページの右端には掲載商品のモデルがカテゴリを分類した上で一列に列挙され
ており,所望の商品の当該カタログ中におけるおおよその掲載場所を容易に把握し
得る。そうである以上,カタログ中の掲載場所を異にする点は,スピードコントロ25
ールバルブの顧客誘引力についての上記評価を左右するほどのものとはいえない。
以上より,本件発明における特徴的な部品等である流量調整弁がクランプ装置の
一部を構成するにすぎないことなどの被告ら指摘に係る事情は,被告製品群1~3
においては,むしろその存在こそが強い顧客誘引力として作用しているものと考え
るべきであって,これをもって特許法102条2項の推定を覆滅すべき事情とする
ことは必ずしもできず,覆滅の事情とされるとしても,その程度は限定的というべ5
きである。この点に関する被告らの主張は採用できない。
(イ)被告らは,推定覆滅の事情として,被告製品が被告特許1~3の実施品
であり,その実施がいずれも被告製品の売上に貢献していることも主張する。
この点について,証拠(乙6~10)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が
認められる。10
すなわち,被告特許1に係る発明は,発明の名称を「流量制御弁および流量制御
弁付きシリンダ装置」とし,逆止機能と絞り機能とを備えた流量制御弁及びその流
量制御弁を付設したシリンダ装置に関するものであり(乙6【0001】),流量制御弁
付きシリンダ装置を小形に造ることができると共に,流量制御弁がカートリッジ式
に構成されるため,メンテナンス時の交換が容易である上,既設のシリンダ装置に15
も比較的容易に取付け可能である(同【0013】)などの作用効果を奏する。ただし,
製品カタログ(乙9,10)中の説明には,このような作用効果に言及するものは
見当たらない。
被告特許2に係る発明は,発明の名称を「圧力流体の排出装置」とし,油圧シリ
ンダ等の流体機器内の圧力流体を外部へ排出する装置に関し,その流体機器内の圧20
抜きやエア抜きを簡素な構成で容易に行えるようにする技術に関するものであり
(乙7【0001】),供給された圧油を円滑に排出でき,その圧油の排出と同時に,装
置の内部に溜まったエアも外部へ排出可能である(同【0008】),圧油等の圧力流体
を供給した状態で圧抜き又はエア抜き等の排出作業を行えるため,従来例と異なり,
圧力流体の供給と停止を繰り返す必要がなくなり,その排出作業が容易になるとと25
もに,その圧力流体の排出時にはガスケットを環状溝に確実に保持できるため,そ
のガスケットの損傷を防止できる(同【0009】),といった作用効果を奏する。製品
カタログ(乙10)においても,「スピードコントロールバルブ本体を緩めることで,
回路中のエア抜きが可能です。」との記載がある。
被告特許3に係る発明は,発明の名称を「旋回式クランプ」とし,クランプロッ
ドを旋回させる形式のクランプに関する発明であり(乙8【0001】),各係合ボール5
から旋回溝に作用する摩擦力が小さくなることで,クランプロッドが軽い力で円滑
に旋回する(同【0006】),クランプロッドの旋回に必要なストロークを小さくして,
旋回式クランプをコンパクトに造ることができる(同【0008】),などの作用効果を
奏する。製品カタログ(乙9)中においても,被告製品1A及び1B並びに2A及び2B
につき「高速動作と高い耐久性の旋回機構ボールガイド部はピストンロッドの旋10
回と鋼球の転がりに合わせてアウターレースが回転し,旋回時の抵抗を極限まで抑
えます。」といった記載があるとともに,被告製品5A及び5B,8並びに9につき,
その回転構造に関するイメージ図が掲載されている。
もっとも,被告製品群1~3が厳密な意味での被告特許1~3の実施品に当たる
かは,必ずしも明らかでない。この点を措くとしても,被告特許1に係る発明につ15
いては,被告製品2A,2B,3,4A,4B及び10には,その一部の構成を備えないも
のが存在すること(なお,被告らは,その割合は被告製品群1~3全体の●(省略)
●であるとするが,これを裏付けるに足りる証拠はない。),被告特許3に係る発明
については,1A,1B,2A,2B,5A,5B,8及び9が実施品であり,被告製品群1
~3の全てではない(なお,被告らは,上記実施品を除いた被告製品群1~3の台20
数は全体の●(省略)●にすぎないとするが,これを裏付けるに足りる証拠はない。)
ことは,被告ら自身の認めるところである。
また,被告製品群1~3のスピードコントロールバルブ(被告製品群7及び8)
については,製品カタログにおいて,上記エア抜きが可能であることと共に「レン
チ操作により,流量を調整します。クランプの動作スピードを個別に調整できます。」25
とも記載されている。しかも,エア抜きは,エア抜き弁によっても「レンチ操作に
より回路中のエア抜きが可能です。」とされており(乙10),スピードコントロー
ルバルブ固有の機能ではない。そうすると,被告製品群1~3の購入者にとって,
被告特許2に係る発明の顧客誘引力の程度は,むしろ付随的ないし二次的なものに
とどまると見られる。
さらに,被告特許3に係る発明は,クランプ本体に関する発明であり,流量調整5
弁に関するものではない。被告製品群1~3に関しては,スピードコントロールバ
ルブを取付け可能であることが強い顧客誘引力として作用していることに鑑みると,
被告特許3に係る発明についても,その顧客誘引力の程度は付随的ないし二次的な
ものにとどまると見られる。
そうすると,被告製品群1~3が被告特許1~3に係る各発明の実施品(ないし10
これに類する機能を有する製品)であったとしても,その売上に対する被告特許1
~3の貢献の程度は必ずしも高くないと見るのがむしろ相当である。この点に関す
る被告らの主張は採用できない。
(ウ)このほか,証拠(甲12)及び弁論の全趣旨によれば,原告と被告らと
は,被告製品群1~3を含むクランプについて国内の市場シェアをほぼ独占し,一15
方の利益が上がれば他方の利益がその分減少するという関係にあると認められるこ
とから,市場はほぼ同一である上,原告,被告ら以外の他の競合品を考慮する余地
は乏しい。また,被告らによる特に顕著な営業努力に関する主張立証はなく,被告
特許1~3に係る発明の実施の点を除き,侵害品である被告製品群1~3の性能に
関する主張立証もない。20
これらの事情を総合的に考慮すると,侵害者が得た利益と特許権者が受けた損害
との相当因果関係を阻害する事情として,被告製品群1~3には本件発明の実施に
よる機能以外の機能があることに鑑み,被告製品群1~3による被告らの利益の2
割の限度で,特許法102条2項に基づく推定の覆滅を認めるのが相当である。
(エ)そうすると,被告製品群1~3の製造,販売により被告らが得た利益●25
(省略)●のうち●(省略)●をもって,原告が受けた損害の額と認められる。
ウ被告製品群7及び8について
(ア)証拠(乙4,5,9,10)及び弁論の全趣旨によれば,被告製品群7
及び8は,スイングクランプに使用し得るほか,リンククランプ,リフトシリンダ
及びワークサポートといった本件特許権の侵害とならない適法な用途に使用するこ
とも可能な製品であることが認められる。平成27年2月27日~令和元年8月25
8日の間に製造,販売された被告製品群7及び8(ただし,この数量は,被告製品
群1~3のほか,リンククランプである被告製品群4~6に含まれるものも除かれ
ている。)のそれぞれが使用された用途を具体的に裏付けるに足りる証拠はないもの
の,こうした複数の用途があるにもかかわらず,その全てがスイングクランプへの
使用という違法な用途に使用されると考えることには,およそ合理性がない。原告10
従業員の陳述書(甲12)においても,被告製品群7及び8がリフトシリンダやワ
ークサポートに用いられるケースもあることを認めつつ,それに限定されることも
なく,スイングクランプ及びリンククランプに用いられるケースもあると考えなけ
ればならない,とされている。
そうすると,被告製品群7及び8のうち,スイングクランプ以外の用途に用いら15
れる分については,これら製品による被告らの利益と原告の損害との相当因果関係
を阻害する事情として,特許法102条2項に基づく推定を覆滅する事情というべ
きである。
なお,被告らは,被告製品群7及び8につき,その全てがリフトシリンダ又はワ
ークサポートと同時に譲渡され,その生産に用いられた旨を主張する。しかし,被20
告従業員の陳述書(乙15)以外に,この点についての具体的な立証はない。そう
である以上,この点に関する被告らの主張は採用できない。
(イ)前記(イ(ウ))のとおり,原告と被告らは,クランプ装置の市場を2社
でほぼ独占していることに鑑みると,クランプ等の製品タイプごとの販売数量の構
成割合が原告と被告らとで概ね異ならないと考えることには相応の合理性がある。25
そこで,本件においては,原告従業員の陳述書(甲12)に基づき,原告における
上記構成割合を参考にし,被告製品群7及び8についても,リフトシリンダ及びワ
ークサポートに使用されるものは被告らに有利に考慮しても●(省略)●程度であり,
残る●(省略)●は,スイングクランプ及びリンククランプの販売数量に応じて案分
するのが合理的と思われる(なお,リンククランプの販売数量については,弁論の
全趣旨より,●(省略)●と認める。)。5
そうすると,被告製品群7及び8の製造,販売に係る被告らの利益の額のうち●
(省略)●が,原告が受けた損害の額と認められる(端数切捨て)。
被告製品群7及び8に係る利益の額:●(省略)●
リフトシリンダ及びワークサポートの販売数量:●(省略)●
スイングクランプ用の販売数量:●(省略)●10
被告製品群7及び8に係る被告らの利益の額:●(省略)●
(3)以上より,被告製品群1~3,7及び8の製造,販売による原告の損害額は,
合計●(省略)●と推定される。
また,これと相当因果関係にある弁護士費用相当損害額は,●(省略)●と認め
られる。15
そうすると,原告の損害額は,合計●(省略)●となる。
7争点7(消滅時効の成否)について
(1)平成27年2月27日~同年5月31日の期間に係る請求について
ア本件特許権侵害が認められる期間のうち,平成27年2月27日~同年
5月31日までの期間の被告らの製造,販売分に係る原告の損害賠償請求権が時効20
消滅することについては,当事者間に争いがない。もっとも,原告は,その金額に
ついての被告らによる立証がないため,結局,被告らの主張する消滅時効の援用は
認められない旨を主張する。
しかし,原告自身,上記期間における被告らの不法行為を主張し,これが認めら
れるにもかかわらず,消滅時効との関係では,被告らによる時効消滅すべき損害賠25
償額の立証がないことを理由に,結局消滅時効の援用が認められないとすることは,
不合理というほかなく,上記期間における利益の額を推計するのが合理的である。
この点に関する原告の主張は採用できない。
イこの推計について,被告らは,本件における不法行為の始期から終期の
全期間における販売数量及び1個当たりの利益に基づき行うべき旨を主張する。し
かし,本件においては,訴状記載の不法行為期間の始期(平成27年2月27日)5
と終期(平成30年5月31日)の間における被告製品群1~3,7及び8の製造,
販売による被告らの利益の額(被告製品群1~3につき2億4570万円,被告製
品群7及び8につき2948万4000円)につき,当事者間に争いがない。そう
である以上,推計の基礎としては,本件においては,上記訴状記載の期間における
利益の額を基礎とするのが相当である。10
これによれば,平成27年2月27日~同年5月31日までの94日間に,被告
製品群1~3の販売により被告らが得た利益の額は1940万8235円,被告製
品群7及び8の販売により得た利益の額は232万8988円となる(いずれも端
数切捨て。本項において以下同じ。)。
被告製品群1~3:¥245,700,000*94/1190=¥19,408,23515
被告製品群7及び8:¥29,484,000*94/1190=¥2,328,988
これに,前記6に係る推定覆滅を考慮すると,上記期間の原告の損害額は,被告
製品群1~3につき1552万6588円,被告製品群7及び8につき●(省略)●,
●(省略)●となる。
被告製品群1~3:¥19,408,235*(1-0.2)=¥15,526,58820
被告製品群7及び8:●(省略)●
また,この合計額と相当因果関係のある弁護士費用相当損害額は,●(省略)●で
ある。
そうすると,上記期間に係る原告の損害額は,合計●(省略)●となる。
ウ以上より,本件においては,原告の被告らに対する損害賠償請求権のう25
ち,平成27年2月27日~同年5月31日に係る●(省略)●の限度で,時効によ
る消滅が認められる。これに反する原告及び被告らの主張はいずれも採用できない。
(2)平成27年6月1日~平成28年8月28日の期間に係る請求について
被告らは,平成27年6月1日~平成28年8月28日の期間に係る原告の損
害賠償請求権のうち,訴え提起時において請求されなかった残部(拡張部分)につ
いて,消滅時効の完成を主張する。5
数量的に可分な債権の一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴えが提起さ
れた場合,当該訴えの効力はその一部についてのみ生じ,残部について,裁判上の
請求に準ずるものとして消滅時効の中断の効力を生ずるものではない(最高裁昭和
34年2月20日第二小法廷判決・民集13巻2号209頁参照)。もっとも,上記
の場合,債権者が将来にわたって残部をおよそ請求しない旨の意思を明らかにして10
いるなど,残部につき権利行使の意思が継続的に表示されているとはいえない特段
の事情のない限り,当該訴えの提起は,残部について,裁判上の催告として消滅時
効の中断の効力を生ずるというべきであり,債権者は,当該訴えに係る訴訟の終了
後6か月以内に所定の措置を講ずることにより,残部について消滅時効を確定的に
中断することができると解される(最高裁平成25年6月6日第一小法廷判決・民15
集67巻5号1208頁参照)。
本件において,原告は,数量的に可分な債権である不法行為に基づく損害賠償請
求権の一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴えを提起したものであり,そ
の残部について,裁判上の請求に準ずるものとして消滅時効の中断の効力を生ずる
ことはない。もっとも,被告らは,原告によって残部につき裁判上の催告がされた20
ことは争わないことから,残部につき権利行使の意思が継続的に表示されていると
はいえない特段の事情はなく,本件訴えの提起によって,残部については裁判上の
催告として消滅時効の中断の効力を生ずる。
したがって,被告ら主張に係る残部については,裁判上の催告による消滅時効の
中断の効力が生じており,いまだ消滅時効は完成していない。この点に関する被告25
らの主張は採用できない。
(3)小括
以上によれば,原告の被告らに対する合計●(省略)●の損害賠償請求権のうち,
●(省略)●の限度で当該請求権は時効消滅したことが認められる。したがって,原
告の被告らに対する損害賠償請求権の残額は,3億4161万8505円となる。
8遅延損害金について5
原告は,平成27年2月27日~平成30年5月31日の間の不法行為に基づく
損害賠償請求権の一部である1億5000万円の部分につき,訴状送達の日の翌日
からの遅延損害金を請求している。
上記期間における被告らの利益は,被告製品群1~3の製造,販売に係る分が●
(省略)●,被告製品群7及び8の製造,販売に係る分が●(省略)●であるところ,10
推定覆滅事情を考慮すると,原告の損害額は,被告製品群1~3につき●(省略)●,
被告製品群7及び8につき●(省略)●,合計●(省略)●となる(端数切捨て)。
被告製品群1~3:●(省略)●
被告製品群7及び8:●(省略)●
また,この合計額と相当因果関係のある弁護士費用相当損害額は,●(省略)●で15
ある。
そうすると,上記期間に係る原告の損害額は,合計●(省略)●となる。ただし,
前記7のとおり,このうち●(省略)●の限度で,原告の被告らに対する損害賠償請
求権は時効消滅していることから,その残額は,●(省略)●となる。
したがって,遅延損害金請求権については,不法行為に基づく3億4161万820
505円の損害賠償請求権のうち1億5000万円に対する平成30年6月16日
から,1億9161万8505円に対する令和元年8月28日から,各支払済みま
で民法所定の年5分の割合によるものが認められる。
9まとめ
以上より,原告は,被告らに対し,本件特許権に基づき,被告製品群1~3,725
及び8の製造等の差止請求権及び完成品の廃棄請求権を有するとともに,本件特許
権侵害の不法行為に基づき,連帯して,3億4161万8505円の損害賠償請求
権及びうち1億5000万円に対する平成30年6月16日から,うち1億916
1万8505円に対する令和元年8月28日から,各支払済みまで民法所定の年5
分の割合による遅延損害金請求権を有する。
第5結論5
以上より,原告の請求は主文第1項~第3項の限度で理由があるから,その限度
でこれを認容し,その余の請求はいずれも理由がないから,これを棄却する。また,
主文第1項及び第2項については,仮執行の宣言を付すのは相当でないから,これ
を付さないこととする。
大阪地方裁判所第26民事部10
裁判長裁判官
杉浦正樹
裁判官野上誠一及び同大門宏一郎は,いずれも異動のため署名押印することがで
きない。
裁判長裁判官
杉浦正樹25
別紙
物件目録
被告製品1A:型式BZL0●●0-A(スピードコントロールバルブ)と
型式LHA●●●●-C●(複動スイングクランプ)のセット5
被告製品1B:型式BZL0●●0-B(スピードコントロールバルブ)と
型式LHA●●●●-C●(複動スイングクランプ)のセット
被告製品2A:型式BZL0●●0-A(スピードコントロールバルブ)と10
型式LHC●●●●-C●(複動スイングクランプ)のセット
被告製品2B:型式BZL0●●0-B(スピードコントロールバルブ)と
型式LHC●●●●-C●(複動スイングクランプ)のセット
被告製品3:型式BZL0●●0-B(スピードコントロールバルブ)と
型式LHE●●●●-C●(複動スイングクランプ)のセット
被告製品4A:型式BZL0●●0-A(スピードコントロールバルブ)と
型式LHS●●●●-C●(複動スイングクランプ)のセット20
被告製品4B:型式BZL0●●0-B(スピードコントロールバルブ)と
型式LHS●●●●-C●(複動スイングクランプ)のセット
被告製品5A:型式BZL0●●0-A(スピードコントロールバルブ)と25
型式LHW●●●●-C●●(複動スイングクランプ)のセット
被告製品5B:型式BZL0●●0-B(スピードコントロールバルブ)と
型式LHW●●●●-C●●(複動スイングクランプ)のセット
被告製品6:型式BZT0●●0-A(スピードコントロールバルブ)と5
型式TLA●●●●-2C●(複動スイングクランプ)のセット
被告製品7:型式BZT0●●0-A(スピードコントロールバルブ)と
型式TLB●●●●-2C●(複動スイングクランプ)のセット
被告製品7αA:型式BZL0●●0-A(スピードコントロールバルブ)と
型式LHV●●●●-C●●(複動スイングクランプ)のセット
被告製品7αB:型式BZL0●●0-B(スピードコントロールバルブ)と
型式LHV●●●●-C●●(複動スイングクランプ)のセット15
被告製品7βB:型式BZL0●●0-B(スピードコントロールバルブ)と
型式LHD●●●●-C●●(複動スイングクランプ)のセット
被告製品8:型式BZL0●●0-A(スピードコントロールバルブ)と20
型式LT●●●●-C●(単動スイングクランプ)のセット
被告製品9:型式BZL0●●0-A(スピードコントロールバルブ)と
型式LG●●●●-C●(単動スイングクランプ)のセット
被告製品10:型式BZT0●●0-A(スピードコントロールバルブ)と
型式TLA●●●●-1C●(単動スイングクランプ)のセット
被告製品11A:型式BZL0●●0-A(スピードコントロールバルブ)と
型式LKA●●●●-C●(複動リンククランプ)のセット
被告製品11B:型式BZL0●●0-B(スピードコントロールバルブ)と
型式LKA●●●●-C●(複動リンククランプ)のセット
被告製品12A:型式BZL0●●0-A(スピードコントロールバルブ)と
型式LKC●●●●-C●(複動リンククランプ)のセット10
被告製品12B:型式BZL0●●0-B(スピードコントロールバルブ)と
型式LKC●●●●-C●(複動リンククランプ)のセット
被告製品13:型式BZL0●●0-A(スピードコントロールバルブ)と15
型式LKE●●●●-C●(複動リンククランプ)のセット
被告製品14A:型式BZL0●●0-A(スピードコントロールバルブ)と
型式LKW●●●●-C●●(複動リンククランプ)のセット
被告製品14B:型式BZL0●●0-B(スピードコントロールバルブ)と
型式LKW●●●●-C●●(複動リンククランプ)のセット
被告製品15:型式BZT0●●0-A(スピードコントロールバルブ)と
型式TMA●●●●-2C●(複動リンククランプ)のセット25
被告製品15αA:型式BZL0●●0-A(スピードコントロールバルブ)と
型式LKV●●●●-C●●(複動リンククランプ)のセット
被告製品15αB:型式BZL0●●0-B(スピードコントロールバルブ)と
型式LKV●●●●-C●●(複動リンククランプ)のセット5
被告製品16:型式BZL0●●0-A(スピードコントロールバルブ)と
型式LM●●●●-C●(単動リンククランプ)のセット
被告製品17:型式BZL0●●0-A(スピードコントロールバルブ)と10
型式LJ●●●●-C●(単動リンククランプ)のセット
被告製品18:型式BZT0●●0-A(スピードコントロールバルブ)と
型式TMA●●●●-1C●(単動リンククランプ)のセット
被告製品19:型式BZL0●●0-A(スピードコントロールバルブ)
被告製品20:型式BZT0●●0-A(スピードコントロールバルブ)
被告製品21:型式BZL0●●0-B(スピードコントロールバルブ)20
各型式中の「●」は算用数字又は英文字を示す。
以上
※以降の別紙は省略25

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採用情報


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弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
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興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
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71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
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