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平成15年10月17日判決言渡 平成15年(手ワ)第186号 約束手形金請
求事件
手形判決
主         文
1 本件訴えを却下する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
 被告は,原告に対し,金200万円及びこれに対する平成15年10月1日
から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
1 本件は,原告が被告から約束手形の振出しを受けたとして,同手形金200
万円とこれに対する同手形に記載の支払期日の翌日からの手形法所定の法定利息金
の支払を,手形訴訟により求めた事案である。
2 請求原因
(1) 被告は,次の約束手形(本件手形)を振り出した。
ア 金  額  200万円
イ 支払期日  平成15年9月30日
ウ 支払場所,支払地
        東京都世田谷区ef丁目gのh 
エ 振出日  平成15年9月18日
オ 振出地  東京都世田谷区ef丁目gのh
カ 振出人  A
キ 受取人  B
(2) 原告は,平成15年9月30日,支払場所において支払のため本件手形を
呈示したが,支払を拒絶された。
(3) 原告は,本件手形を所持している。
第3 当裁判所の判断
1 本件手形は,A4版用紙に「約束手形」の表題の下に原告主張の手形要件が
記載されているものであり(甲1),いわゆる私製手形である。その記載に照らす
と,本件手形は,被告が原告に対して支払期日に被告方において200万円を支払
うことを約束した文書であり,どうしてこのような文書が原・被告間で授受された
か明らかでないが,単なる金銭支払約束書で,借用書の類というべきものである。
 本件手形は,上記のとおり「約束手形」と記載され,「上記金額をあなたま
たはあなたの指図人へこの約束手形と引替にお支払いいたします。」と記載されて
いる(甲1)が,暴力金融取立業者でもない限りこれを取得しようとする者がいる
とはおよそ考えられず,正常な取引により第三者へ転々流通譲渡されることは全く
予定されておらず,かつ,不可能であることが明らかである。手形は金銭支払の手
段として利用され,約束手形は一般に信用利用の用具として用いられるものである
が,本件手形は,そのような手段性,用具性が全く認められず,形式的には手形要
件が記載されているものの,上記のとおり手形としての本来の性質を何ら見出せな
いものである。
 それにもかかわらず,原告が被告をして本件手形を作成させたのは,手形訴
訟により,被告の抗弁を封じ,かつ,簡易・迅速に債務名義を取得して,被告に対
して強制執行手続をし,又は,同手続をすることを示して圧力をかけて金銭の取立
てをすることを目的としているものと推認される。
 手形訴訟制度が,証拠制限をし,簡易・迅速に債務名義を取得させることと
しているのは,手形の信用を高め流通を促進するために,その簡易・迅速な金銭化
が強く要請されるからであるところ,本件手形が手形の信用と流通とは無縁のもの
であることは上記説示から明らかである。
 以上に説示したところを併せ考慮すると,原告が本件手形により提起した本
件手形訴訟は,手形制度及び手形訴訟制度を濫用(悪用)したもので,不適法なも
のというべきである。
2 よって,本件訴えは不適法でその不備を補正することができないから,口頭
弁論を経ないでこれを却下することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第7部
裁判長裁判官  杉  山  正  己
裁判官  田  村  政  巳
裁判官  井  筒  径  子

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