弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
一 原判決中申立人被控訴人と被申立人延岡郵便局長間の昭和三六年(不)第三二
号救済命令申立事件につき控訴人が昭和四〇年三月八日にした原判決書添付の命令
書記載の主文第二項ならび第三項のうち(1)被控訴人が昭和三六年八月一七日し
た団体交渉の申入れに対する拒否(2)同月一六日の全逓信労働組合宮崎県地区本
部の役員に対する尾行がいづれも不当労働行為を構成しないとしてこれ等の点に関
する被控訴人の救済命令申立を棄却した部分を取消した部分を取消す。
二 参加人の控訴中右主文第二項を取消した原判決の部分の取消を求める部分を却
下する。
三 控訴人および参加人のその余の控訴を棄却する。
四 訴訟費用は第一、二審を通じこれを五分しその二あてをそれぞれ被控訴人およ
び参加人の各負担とし、その余は控訴人の負担とする。
       事   実
第一 当事者の求める裁判
一 控訴人
 昭和四六年(行コ)第六六号事件につき
(一) 原判決中控訴人の敗訴部分を取消す。
(二) 被控訴人および参加人の請求をいずれも棄却する。
(三) 訴訟費用は第一、二審を通じ被控訴人および参加人の負担とする。
二 参加人
 昭和四六年(行コ)第六六号事件につき
(一) 控訴人の控訴を棄却する。
(二) 控訴費用は控訴人の負担とする。
 昭和四六年(行コ)第六七号事件につき
(一) 原判決中被控訴人及び控訴人間の救済命令取消請求事件に関する控訴人の
敗訴部分を取消す。
(二) 被控訴人の請求を棄却する。
三 被控訴人
 昭和四六年(行コ)第六六号及び同第六七号事件につきいずれも控訴棄却する。
第二 当事者の主張
一 参加人の請求原因
 原判決書四枚目表一行目から同六枚目裏四行目までと同一であるからこゝにこれ
を引用する。
二 控訴人の参加人の請求原因に対する答弁
 同八枚目表二行目から同九枚目表六行目までと同一であるからこゝにこれを引用
する。
三 被控訴人の請求原因
 同一〇枚目表一行目から同一七枚目裏一〇行目までおよび同一八枚目裏七行目か
ら同一九枚目裏七行目までと同一であるからこゝにこれを引用する。
四 被控訴人の請求原因に対する控訴人の答弁
 同二二枚目表一行目から同二四枚目裏四行目までおよび同一〇行目から同二五枚
目表三行目までと同一であるからこゝにこれを引用する。
五 被控訴人の請求原因に対する参加人の答弁
(一) A地区本部書記長に対する尾行(被控訴人の請求原因中引用に係る原判決
書一八枚目裏七行目から同一九枚目表五行目までに摘示の事実)について、Bの係
官が右書記長を追尾したのは延岡電報電話局公衆室までで全電通労組事務所まで尾
行し被控訴人組合の秘密連絡場所を発見した事実は否認する。
(二) 昭和三六年八月一四日の被控訴人の組合集会調査監視等(被控訴人の請求
原因中引用に係る原判決書一九枚目表六行目から同裏七行目までの事実)について
右集会の情況を写真に撮影したり、メモによつて記録した事実およびA書記長がC
延岡郵便局長らに対し抗議し集会の場所から退去するように再三要求した事実は否
認する。
と述べたほか参加人の被控訴人の請求原因に対する答弁は控訴人の右請求原因に対
する答弁と同一である。
第三 証拠関係(省略)
       理   由
一 本件救済命令の内容、命令が発せられた日時およびそれが被控訴人に交付され
た日時ならびに本件の背景となる事実の認定については左記の訂正を加えるほか原
審判決書二七枚目表一行目から同三〇枚目表六行目までを引用する。
(一) 同裏一行目から二行目にかけて「同D」の下に「同E(原審および当審)
当審証人F同G同H」を加える。
(二) 同二八枚目裏七行目「同E」の下に「(原審および当審)」を加える。
二 被控訴人支部事務所出入禁止措置について
(一) 右の事実関係および不当労働行為成否についての判断は原審判決書三〇枚
目裏五行目「証人I」の下に「当審証人F同B」を加え同三一枚目裏七行目「証人
J」の下に「当審証人K同L」を加えるほか同三〇枚目表八行目から同三七枚目表
九行目までと同一であるから、ここにこれを引用する。
(二) 条件付救済命令の適否について
 当審は原審と異り本件救済命令主文第二項掲記のような条件を付した救済命令も
適法でありこれを違法として取消した原判決部分はこれを取消すべきものと思料す
るがその理由は次のとおりである。
 当審も原審と同じく参加人の被控訴人支部出入禁止の措置は不当労働行為を構成
するものと判断するが他方において被控訴人の側にも参加人の業務を妨害した事実
があつたことは前段認定のとおりであるからかゝる状況の下においては使用者側の
非だけを非難するに止まらず労働者の側の非もとがめることによつてバランスをと
り適切妥当な解決を図ることは救済命令の方法として許されることであると解する
からである。けだし元来不当労働行為制度の趣旨は労使間にあるべき正常な関係が
ゆがめられた場合にそれを除去して正常な関係にもどし将来の安定した労使関係を
確立するところにあるから労働者側にも非のある場合、救済の条件として、労働者
側にも謝罪等不利益な行為を要求することは右の制度の趣旨に合するからである。
これに対しては「現行不当労働行為制度は使用者側からの団結権侵害から労働者側
を救済することだけを目的とするものであるから、労働者側の非をも指摘し労使双
方の非の調整する方法で労働関係の安定を図ることは、解雇、懲戒、損害賠償等民
事訴訟手続または調停あつせん手続の担当する事項であつて、労使関係の安定化の
名目の下に労使双方の非を救済命令主文で考慮するとすればそれは調整以外の何も
のでもなく不当労働行為制度における労働委員会の権限を逸脱するものである。条
件付救済命令は労働委員会の権限を逸脱したものであり労働委員会の判定機能と調
整機能との間には混同があつてはならない。また現行不当労働行為制度における救
済命令の名宛人は使用者である。しかるに「条件付救済命令は労働者側が条件とさ
れた一定の行為をしなければ救済を受けられないという意味で、結果的には労働者
側に一定の行為を命じたのと同様になる。」という反論があり得るが救済命令は労
働者側に何等の行為をも命令していないのであつて、労働者側が条件とされた行為
をしないでも命令違反としての制裁が課せられるわけではなくこの点で使用者への
一定の行為を命ずるのとは性質を異にするものであり、名宛人が使用者側であるこ
とに矛盾はない。
三 昭和三六年八月一七日の団体交渉拒否について
(一) 当日の被控訴人の参加人に対する団体交渉申入れおよびこれに対する参加
人の交渉拒否の経過に関する事実認定については、原判決書四一枚目裏三行目「乙
第三四号証」の下に「当審証人FおよびMの各証言」を、同七行目「支障があるか
ら」の下に「同日の」を、同四二枚目表一行目「乙第三六号証」の下に「当審証人
Fおよび同Mの各証言」を各附加するほか原判決書四一枚目表三行目から同四二枚
目表末行までと同一であるからここにこれを引用する。
(二) 以上の認定事実によれば被控訴人支部の団体交渉申入れはいわゆる強制労
働排除についての被控訴人支部組合員の労働条件に関する正当な交渉事項に関する
団体交渉の申入れではあつたが、当日は延岡郵便局長が態本郵政局から同郵便局に
来局した態本郵便局のN業務課長と遅配対策についての業務打合せ中であつたのに
同日午後一時半ごろに同日午後三時からの交渉を求めたのであつて時間的にも切迫
して余裕がなくかつまた成立に争のない乙第一〇号証の五によれば被控訴人支部は
当日の団体交渉の場所を延岡郵便局長室と指定して申入れて来たことが認められる
けれども前段認定のとおり同日は被控訴人支部応援のため外部組合員が多数集合し
ており被控訴人支部長Oが団体交渉申入れに際しその中で団体交渉をすると申入れ
たのであるからたとえ右局長室内で交渉が行われたとしてもその交渉には混乱が伴
い相当長時間に渉ることが予測され前段認定のとおり滞留排送業務に努力中であつ
た延岡郵便局の局長として同日の交渉申入れを拒否したことは無理からぬところが
ありその拒否には正当の理由があつたと認められまた前段認定のようにいわゆる強
制労働の問題は同年同月一一日から同月末までの間の問題であつたから同日に交渉
が行われなくても同日から同月末日までの間にこの交渉が行われれば交渉自体が無
意義になるという事情もなかつたのである。したがつて同日の交渉拒否が不当労働
行為を構成しないとしてこの点に関する被控訴人の救済申立を棄却した控訴人の命
令を取消した原判決の部分は取消を免れない。
四 A書記長に対する尾行について
(一) この点に関する事実の認定については原判決書四六枚目表五行目「乙第三
九号証」の下に「当審証人Bの証言および当審における被控訴人代表者Aの供述」
を加えるほか同四五枚目裏一〇行目から同四六枚目表九行目までを引用する。
(二) そして前記乙第三九号証にはB係官がA書記長を尾行したのは同書記長が
他の門から入局するかもしれないのでこれを阻止するためであつたとの記載があり
当審証人Bもその証言において同趣旨の供述をしているけれども、当時延岡郵便局
長が各門に職員を配置してA書記長らの上部組合役員の入局を禁止する措置をとつ
ていたことは先に認定したとおりであるから(引用に係る原判決書理由第三項
(一)記載の事実)他の門からの入局を阻止するためには延岡郵便局の通用門を立
去つた同書記長を尾行して同郵便局庁舎の裏側にある延岡電報電話局舎庁内までも
追行する必要はなくその尾行には行過ぎた点があつたといえるかもしれない。しか
しながら右証人Bの証言によれば右電報電話局庁舎内の被控訴人支部の秘密の連絡
場所を同証人が発見したのは全く遇然であつてスパイ行為をする意思があつたと認
められないから右の尾行行為を目して不当労働行為に当るとすることはできない。
五 昭和三六年八月一四日の集会監視について
 この点に関する事実認定および判断については原判決書四七枚目表五行目から同
四八枚目裏五行目までを引用しかつ左記を附加する。
 本件においては、郵便局長らは組合を監視し、しかも再三組合員から再三退去を
要求されながらこれに応じなかつたのであるから、たとえその間状況を記録しまた
は写真に撮影するなどのことがなかつたとしても、組合員の意思に暗黙の圧力を加
えその発言が意思決定に影響を及ぼす虞れがないとはいえず、かゝる監視は被控訴
人組合に対する不当な支配介入と評価されて然るべきものであつて、これが不当労
働行為に当らないとする控訴人の主張はその理由がなく従つてこの点に関する控訴
人および参加人の控訴はいづれも失当である。
六 (一) なお原判決はその理由中において参加人の被控訴人支部組合事務所出
入禁止措置を控訴人の本件救済命令と同じく不当労働行為に当るとしながら右命令
第二項の条件付の救済命令は違法であるとして右命令の当該部分を取消したのであ
るが、原判決の右命令部分の取消は参加人の右措置が不当労働行為に当らないとの
主張を是認したものではなくたゞ参加人は原判決において右命令中の当該部分取消
の形式的な勝訴の判決を得たにすぎず、むしろ控訴人が参加人に対し原判決の当該
部分については実質的に勝訴の判決を得ているというべきであるから控訴人の参加
人に対する昭和四六年(行コ)第六六号事件の控訴は控訴の利益を欠き右控訴は不
適法として却下すべきではないかとの疑義については、たとえ原判決がその理由中
において右出入禁止措置は参加人の不当労働行為に当るとして参加人に不利控訴人
に有利な判断を示めしていたとしてもその理由の判断については当該判決の既判力
ないし拘束力は生ずるものではなくそれはただ本件救済命令主文第二項を違法とし
てこれを取消すべきものとする原判決の主文についてのみ生ずるものと解するから
形式的にもせよその点に関し参加人が勝訴している以上控訴人の右控訴は適法とい
うべくこれを却下すべきでない。
(二) しかしながらこれとは逆に参加人の被控訴人に対する第六七号事件の控訴
中控訴人の本件救済命令主文第二項を取消した原判決の部分の取消を求め当該部分
の被控訴人の請求の棄却を求める部分は前示の如く原判決が被控訴人の支部組合事
務所の出入禁止措置を不当労働行為であるとした点において参加人の主張を排斥し
ているものであるが右命令第二項の条件は違法であるとして結局同項の命令を取消
し形式的には同項の命令の取消を求める参加人が勝訴の結果を得ているのであるか
ら、控訴の利益がないものとしてこれを却下すべきである。
 よつて控訴人の本件控訴中本件不当労働行為救済命令のうちその主文第二項およ
び第三項のうち(1)被控訴人組合が昭和三六年八月一七日した団体交渉の申入れ
に対する拒否(2)同月一六日の全逓労働組合宮崎県地区本部の役員に対する尾行
がいづれも不当労働行為を構成しないとしてこれ等の点に関する被控訴人の救済命
令申立を棄却した部分を取消した原判決の部分の取消を求める部分および参加人の
控訴中右主文第二項(1)および(2)掲記の事実がいづれも不当労働行為を構成
しないとしてこれ等の点に関する被控訴人の救済命令申立を棄却した部分を取消し
た原判決の部分の取消を求める部分はこれを正当として認容し参加人の控訴中右主
文第二項を取消した原判決の部分の取消を求める部分はこれを不適法として却下し
その余の控訴人ならびに参加人の控訴はこれを失当として棄却すべきものとし訴訟
費用の負担について民事訴訟法第八九条第九二条を適用して主文のように判決す
る。
(裁判官 菅野啓蔵 舘忠彦 安井章)

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