弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1被告は,原告に対し,別紙1物件目録記載の建物を明け渡せ。
2訴訟費用は被告の負担とする。
3この判決は,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
主文同旨
第2事案の概要
1要約
本件は,被告(C)が使用している市立中学校の校舎の一部(別紙1物件AB
目録記載の建物。以下「本件建物」という。)について,原告(市)が,所有権A
に基づく返還請求権としての明渡請求権に基づき,明渡しを求めた事案である。
2争いのない事実(請求原因)
被告は,在日韓国・朝鮮人の差別からの解放を目的とする団体(権利能力なき社
団)であり,本件建物は,普通地方公共団体である原告(市)が所有し,地方教A
育行政の組織及び運営に関する法律23条2号の教育財産として市教育委員会A
が管理する市立中学校の校舎の一部である。AB
被告は,昭和54年頃から,市教育委員会社会教育部から旧消防署跡建物内にA
あった社会教育部分室第一会議室の使用を認められ,昭和58年3月31日には,
市長及び市教育委員会教育長と被告との間で「部屋の問題については,社会AA
教育部分室第一会議室を専用貸しする」との記載内容の確認書(別紙2)が締結さ
れた。その後も被告は,社会教育部から,旧消防署跡建物が取り壊されることに伴
い,平成元年4月から市立中学校柔道場跡,柔道場跡が使用できなくなるこAB
とに伴い平成4年4月から本件建物の使用をそれぞれ認められた。
市教育委員会は,被告に対し,平成17年1月,本件建物の使用打ち切りを通A
知したが,被告は,現在に至るまで本件建物を占有している。
3被告の主張(占有権原の抗弁)
()使用貸借契約の成立及び存続1
昭和58年3月31日,原告と被告は,社会教育部分室第一会議室(旧消防署跡
建物)を「専用貸し」するとの合意に達した。上記「専用貸し」の合意に伴い,被
告の排他的,独占的使用を認めるものとして,原告と被告との間で,同会議室を目
的物とする使用貸借契約が成立した。その後,原告と被告は,使用貸借契約の目的
物を変更し,平成元年4月から旧消防署跡建物に代わる場所として市立中学AB
校柔道場跡,平成4年4月から柔道場跡に代わる場所として本件建物を専用貸しす
る合意をした。被告が契約当事者であることは,市長が確認書の合意当事者であA
ることから明らかである。加えて「」の表札が掲げられ,施錠は被告にまかされ,C
被告の問い合わせ先が本件建物になっており,備品類のほとんどが被告の物であり,
被告の電話が2回線設置されているという使用形態からしても,被告が独立した当
事者として本件建物を使用し,原告もこれに同意していたものといえる。
市教育委員会社会教育部長は,平成元年3月17日,市教育委員会に対し,AA
「行政財産使用承認申請書」(甲2の2)を提出しているが,その「使用目的」欄
には,①「社会教育部青少年課在日韓国・朝鮮人教育事業の事業推進にかかる事務
室,学習室として使用する」ことに加えて,②「その他,在日韓国・朝鮮人問題に
ついての講座等の学習室として使用する」と記載されており,この申請に対し,平
成元年4月1日,教育委員会の承認が行われている(教育財産使用承認書,甲2の
3)。上記申請書における使用目的は,2つあり,①は,在日韓国・朝鮮人教育事
業(以下単に「教育事業」ともいう。)にかかわるものであり,②は,被告の固有
の事業にかかわるものである。
すなわち,被告は,先ず,被告固有の活動である在日韓国・朝鮮人問題について
の講座等の学習活動とともに,こうした被告独自の活動に関連する活動のために原
告所有の建物を使用する権原(使用借権)を昭和58年以降原告から供与されてい
る。また,昭和60年に市教育委員会が「在日韓国・朝鮮人教育事業」(現A
「多文化共生・国際理解教育事業」)を創設して「在日・韓国朝鮮人教育事業」に
取り組むようになったことから,被告は,原告の実施する教育事業の共同事業者と
してその事業推進目的を達成するため,原告から「社会教育部青少年課在日韓国・
朝鮮人教育事業の事業推進にかかる事務室,学習室として使用する」ために原告所
有の建物を使用する権原(使用借権)を供与されている。後者は,被告が原告にお
いて取り組みを開始した教育事業の共同事業者となったことにより,従前の使用目
的に追加されたものである。そして,平成4年4月頃からは,本件建物に関し,上
記各目的のために使用貸借する権原の設定を受けているのである。
前記平成元年4月1日付け教育財産使用承認書(甲2の3)によると,本件建物
の使用は,「在日韓国,朝鮮人問題についての講座等の学習室として使用」するこ
とを目的とし,その使用期間は「使用目的を廃止するまで」とされている。この定
めが本件使用借権の使用期間についても参考にされるべきである。すなわち,原告
が現在実施している多文化共生・国際理解事業(在日韓国・朝鮮人教育事業が含ま
れる。)は,事業の一部が廃止・縮小されたものの現在も存続しており,これにつ
いて被告は現在も協働関係にある。現在においても,教育事業の共同事業者として
本件建物を使用する目的は廃止されていない。また,被告独自の活動についても,
現在も継続している。このように,在日韓国・朝鮮人問題についての講座等の学習
活動とともに,こうした被告独自の活動に関連する活動のために本件建物を使用す
る目的も未だ廃止されていない。したがって,本件建物の使用目的は未だ廃止され
たとはいえず,本件建物の使用承認にかかる使用期間は終了していない。
()権利濫用2
仮に()の被告の主張が認められない場合であっても,当事者や社会の客観的利1
益状況と権利行使者の主観的容態等を考慮して判断すれば,原告の本件建物の明渡
請求は,以下に述べるとおり権利を濫用するものである。
客観的利益状況については,次のとおりである。
本件建物においては,未だ,学校子ども会や地域子ども会を含む市の教育事A
業のみならず,被告が実施している各種講座等が実施されている。子ども会の参加
対象となる小学生,中学生に加えて,高校生(高校生の会)や社会人,高齢者(日
本語識字教室),渡日したばかりで日本語も理解できず,まず日本語を身につけて
学校生活を営むようにできるまでの日本語学習を要する子らまで,あらゆる年代,
環境の在日外国人にとっての社会教育の場所として欠くことのできない場所となっ
ているのである。現時点で市が行っている子ども会だけでは,到底,在日外国人の
ニーズに対応することはできない。在日外国人にとって,被告が本件建物において
教育事業を営むことは大きな利益がある。
他方,原告には,本件建物に関し,具体的な使用予定,必要性が見られない。
また,原告と被告は,協働して教育事業を遂行してきた。マイノリティーの立場
から被告が意見や要望を繰り返し,原告と相互に意見を重ね,ハード面,ソフト面
で密に協力し合ってきたからこそ,他所に先駆けて充実したマイノリティーに対す
る教育事業を実施することができたのである。逆に言えば,被告の協力がなければ,
原告がここまで教育事業を行うことなど,できるはずもなかった。そして,もちろ
ん,原告は,被告が,本件建物において,被告の事業を行っていることを認識して
いた。原告と被告は,長期にわたる協働関係のもと,信頼関係を築き上げてきた。
このような密接な関係にあるにもかかわらず,一言の相談もなく,突然,一方的に
本件建物の明け渡しを求めるなどというのは許されるべきものではない。
原告は,「在日韓国・朝鮮人教育事業」は「多文化共生・国際理解教育事業」に
発展的に解消し,現時点では存在しない,その発展的解消の結果,被告に教育事業
の補助又は協力を求める必要がなくなったと主張する。しかし,従前,在日韓国・
朝鮮人の問題が主であったものが,国際化によって,その他諸外国の国籍を有する
外国人が増えたことから,在日韓国・朝鮮人問題への特化ではなく,在日韓国・朝
鮮人を含む在日外国人の問題への対応をするようになったということである。市教
委が作成した「人権教育推進プラン」においても,「市には,現在,40数カ国A
約3000名(平成12年2月現在)の外国籍の市民が生活しています。その中に
は韓国・朝鮮籍の人が多数を占めています」とある(乙8の2。22頁)。これま
で,在日韓国・朝鮮人の教育事業を協働して遂行してきた被告の協力は,依然とし
て必要不可欠であり,協力を不要とする理由はない。また,現に,在日韓国・朝鮮
人以外の国籍を有する外国人に対しても,被告が対応していたのである。「在日韓
国・朝鮮人教育事業」から「多文化共生・国際理解教育事業」への変更は,単なる
名称変更に過ぎず,教育事業の内容は,名称変更の前後で何ら変わるものではない。
かかる観点からしても,被告の協力を求める必要がなくなったという理由は見当た
らない。
客観的利益状況については以上のとおりであり,原告の明渡請求を優先させるべ
き事情は見当たらない。
主観的容態については,次のとおりである。
平成17年1月に原告が本件建物の明渡請求を行ったのは,平成16年7月に,
被告と原告が協働して推進してきた在日外国人教育事業を利用してきた子どもら及
び被告会員が,原告が行った在日外国人教育事業の廃止・縮小について,原告に対
し慰謝料等を請求する訴訟(教育権訴訟)を提起したことを原因としている。原告
は,住民監査請求の監査結果(甲6)を明渡請求の端緒のように述べるが,この監
査結果は,平成15年6月23日付けで出されているところ,それから1年半もの
間,被告に対し,本件建物の使用に関し,交渉すらもちかけられなかった。従前,
本件建物を使用するに際して多くの折衝が重ねられてきたが,原告と被告が協働し
て教育事業を遂行してきたことからも,仮に明け渡しを請求するだけの事情が存す
れば,まずは被告との間で話し合いの機会を持つのが通常であろう。また,原告か
らの明け渡しの通知書においては,「当該分室は,今後,本市教委の社会教育活動
の拠点として使用を予定しておりますので」と述べ,監査結果のことは全く触れら
れていない。かかる事情からすると,上記監査結果の存在は,後からつけられた理
由でしかない。
原告は,被告との長年にわたる協働関係を無視して,一方的に,平成13年度か
ら学校子ども会,地域子ども会を廃止ないし縮小し,平成14年12月には教育事
業に従事する非常勤職員らの給与を補塡するための会計事務を担当していた市教委
職員に対する詐欺告訴を行った。
被告が話し合いを求めても,一切応じようともせず,逆に被告がやむを得ず教育
権訴訟を提起すれば,本件建物の明け渡しを求めてきた。この流れを見ても,被告
に対して原告が悪意を有しており,教育権訴訟の提起に対する報復的対応をとった
ものと思わざるを得ない。
4被告の主張に対する原告の反論
()使用貸借契約の成立について1
使用貸借契約の成立は否認する。確認書は,行政としての方針を明らかにしたも
ので,これをもって法的拘束力を伴う合意がなされたわけではない。社会教育部が
被告に履行補助者としての分室の使用を認めたのは,原告が実施する在日韓国・朝
鮮人教育事業の一環として,被告に同事業のサポートを期待したためであり,確認
書の「専用貸し」の意味は,被告に専ら使用させるというだけのことであり,使用
形態として,社会教育部の履行補助者(サポーター)として同分室を被告以外の第
三者と共同で使用するようなことをしないということである。本件建物は,地方自
治法上の行政財産であるから,原則として,これに私権を設定することはできず,
これに違反する行為は無効であって(平成18年法律第53号による改正前の地方
自治法238条の4第1項,第4項),使用借権の設定そのものができないことは
明らかで,被告の本件建物の占有権原の根拠となることはない。
()権利濫用について2
被告は,本件建物において被告が独自に実施している各種講座が在日外国人にと
って大きな利益があるとか,在日韓国・朝鮮人の教育事業への被告の協力は依然と
して必要不可欠であるとか主張しているが,いずれも行政に対する被告の主観的見
解を述べるにすぎず,公共用財産たる本件建物の使用に関する行政裁量権を全く考
慮していない独自の見解であると言わなければならない。
更に,主観的容態として本件明渡請求をする場合,原告は被告との間で話し合い
の機会を持つのが通常で,被告がこのような話し合いを求めても一切応じようとし
なかったのは原告の悪意を示すもので,本件明渡請求は教育権訴訟に対する報復的
対応であるとする点は,以下の経過からして事実に反する。
在日韓国・朝鮮人教育事業の取り組みが十余年を経過する中で,新たに渡日して
きた在日外国人が増加し,在日外国人の状況も大きく変化してきた。そこで,市A
教委は,平成13年度から社会状況の返還に対応するため見直し「在日韓国・朝鮮
人教育事業」を「多文化共生・国際理解教育事業」に改め,従来は,在日韓国・朝
鮮人の児童・生徒を対象とした特別対策的な意味合いが強かったものを,在日外国
人全般を視野に入れた多文化共生の社会づくりに向けた取り組みに改めた。平成1
1年9月には「人権教育基本方針」(甲4)が策定され,「我が国固有の事件問題
である同和問題や歴史的経緯を持つ在日韓国・朝鮮人問題,障害者の人権に関する
問題などについても,様々な取り組みが進められ,解決に向けて前進しました。」
と記した後に「国際化の進展に伴う渡日外国人の問題,…など,社会の変化に伴う
新たな人権問題も生じてきています。」と社会変化への対応を明らかにしている。
これを受けて平成12年4月に策定された「人権教育推進プラン」(甲4)も,
「在日韓国・朝鮮人教育の推進」とともに,「渡日外国人児童生徒や複数の文化を
受け継いでいる児童生徒の教育の推進」や「多文化共生教育の推進」,「多文化共
生社会づくりの推進」を挙げ,さらに,平成13年1月1日に策定された「第4次
市総合計画」(甲3)で「多文化共生の社会づくり」を謳っている。A
このような経緯で市教委は,平成13年6月,「今日の在日外国人教育,国A
際理解教育の進展に鑑み,現行の教育事業を見直し,今後の教育事業の役割および
在日外国人教育の在り方について検討・協議するとともに,多文化共生・国際理解
教育事業の内容についての具体的な方向性を提言すること」を目的として,社会教
育,学校教育,人権問題を担当する市職員9人によって構成する「市多文化共生A
・国際理解教育事業検討委員会」を設置し,同検討委員会は,7回の会議を経て,
平成13年9月4日に「在日外国人教育の今後の在り方について(提言)」(甲
9)をとりまとめた。
市教委は,この提言の内容を被告に説明して理解を求めたが,強い反発を受けA
たため,平成14年度から提言を実施することを延期せざるを得なくなり,平成1
5年度からの提言の実現を目指して,平成15年1月28日に,社会教育部長,青
少年課長が出席する説明会を開催したところ,60人∼70人の被告関係者が参加
して,糾弾集会のような状態となった。同年2月27日には教育長が出席して話し
合いを行う予定であったが,被告は,そのホームページで「教育長交渉に参加
を!」と参加を呼びかけ,「みなさまの絶大なる支持をバックに,市教委の思惑A
を変えさせていきたいと思います。」と訴え,集団による交渉を意図していること
が明らかとなり,参加者の人数制限を申し入れたが受け容れられず,当日の話し合
いは実現しなかった。被告は,翌日から,ビラの配布や,ホームページでの抗議行
動などを展開し,市教委との対決姿勢を明確にし,話し合いによる解決が困難な状
況となった。
このように,提言に基づく事業の見直しについての調整が難航していた折り,教
育事業に関わる指導員への報償費の支払を現金支給から口座振込に変更することに
端を発して,不正経理が明らかとなり,原告は被疑者不詳で告訴する事態となった。
市教委は,このような状況の下では,被告と平穏な話し合いによる理解は困難であ
ると判断し,平成15年度から学校子ども会と高校生の会への指導員の派遣を廃止
した。その結果,指導員に支払っていた「報償費」の予算が削減され,合わせて事
業担当職員を配置転換することとなった。一方,市教委は,平成15年6月には,
渡日の中国人,フィリピン人が居住する地区に「子ども会」を新設することとaa
し,予算を増額し,1年有期の非常勤職員の任用終了などの措置がとられた。
被告は,この学校子ども会と高校生の会への指導員派遣の廃止に対し,激しい抗
議行動を展開するとともに,被告の学校子ども会のメンバーや配置転換となった職
員,任用終了となった非常勤職員が,平成16年7月14日付けで原告らを被告と
する国家賠償請求訴訟(被告のいう教育権訴訟)を提起するに至った。
市教委は,このように,社会変化に対応するため,在日韓国・朝鮮人教育事業A
を多文化共生・国際理解教育事業に発展的に解消し,具体的な事業の見直しについ
て被告の理解を得ようとしたが,被告は,旧来のように「交渉」という形態に固執
し,被告の合意を得なければならないという姿勢を崩そうとはしなかった。ことこ
こに至って,市教委は,社会変化に対応するため,従来の施策を見直し,新たな施
策を構築することは地方自治体の責務であり,その場合,施策の対象となる当事者
の理解を得ることは望ましいことではあるが,当事者の同意を得なければ施策を変
更できないものではなく,最終的には,市民の声,市議会の意向なども考慮して,
総合的に判断すべきものであるとの観点に立って,やむなく本件訴訟提起となった。
第3裁判所の判断
1判断の大要
()使用貸借契約の成立について1
確認書に基づき本件建物が被告に「専用貸し」されたことが,使用貸借契約の成
立を意味するものとは認められない。
すなわち,被告が本件建物を占有使用するに至った理由は,被告の活動が原告の
行うべき在日韓国・朝鮮人教育事業その他の在日・韓国朝鮮人問題に対する行政施
策の推進に直結するものと認められたことから,本件建物をその活動拠点として無
償で使用することを認めて被告の活動を支援することにより,原告の行政目的に資
するためであったと認められる。しかし,市立中学校の校舎の一部である本AB
件建物は,行政財産であって私権を設定することができないことから,あえて確認
書に基づき「専用貸し」という曖昧な性質での使用が認められたものと考えられる。
したがってその性質は,当時の地方自治法上無効とされていた使用借権の設定がさ
れたものと解すべきではなく,原告が行うべき在日韓国・朝鮮人教育事業その他の
在日韓国・朝鮮人問題に対する行政施策のために被告の協力が必要とされる限度で,
本件建物を管理する市教育委員会社会教育部の占有を前提としてこれを補助すA
る立場で使用を認められたものに過ぎないと解するのが相当である。
()権利濫用の主張について2
原告の被告に対する本件建物の明渡請求は,権利の濫用には当たらない。
被告が本件建物を無償で使用するに至った経緯は,当時における在日韓国・朝鮮
人問題に対する行政の取り組みの重要性に鑑み,被告の活動を支援する行政上の必
要が強く認められたことによるものと考えられる。他方で,新たに渡日してきた在
日外国人が増加し,在日外国人の状況も大きく変化してきたという社会状況の変化
に対応し,原告が従来実施してきた在日韓国・朝鮮人教育事業の見直しを進める中
で,被告はこれに強く反発してきた経緯があり,このような状況では,もはや本件
建物を被告の活動拠点として無償で使用させて被告の活動を支援することが原告の
行政目的に資することに直結するとはいえない状態にあるといわざるを得ない。
一方で,被告の活動拠点が他の場所ではなく本件建物でなければならないという
理由は認められず,本件訴訟の提起が,被告の会員らの提起した訴訟に対する原告
の悪意に基づく報復的対応であると認めるべき根拠もない。
2認定事実
証拠(甲7,18,甲25,証人,被告代表者本人及び後記証拠)及び弁論のD
全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
()被告の目的,事業及び組織1
被告(甲1)は,昭和42年にの名称で当初組織された在日韓国・朝鮮人にE
対するあらゆる差別とそれに伴う生活実態から在日韓国・朝鮮人を完全に解放する
ことを目的とする権利能力なき社団であり(規約3条),この目的を達成するため,
①在日韓国・朝鮮人差別に対する社会教育を中心とする諸活動,②在日韓国・朝鮮
人問題に関する調査,研究,資料収集,資料作成,③在日韓国・朝鮮人問題に関す
る啓発その他の事業を行うこととされ(規約4条),会員は,会の規約を承認し所
定の手続きを経て加入する韓国・朝鮮人と日本人の混血者を会員とし,また,会員
の配偶者及び日本人は役員会の承認によって会員とすることができるとされている
(規約5条)。被告の活動として具体的には,地域子ども会や日本語識字教室など
が行われ,原告は,被告の社会教育活動の行政上の意義を認め,補助金を支出して
いた。
()本件建物の「専用貸し」に至る経緯及び使用状況2
昭和54年12月,被告からの活動の場の確保の要求に対し,市の教育委員会A
社会教育部長,総務部長,企画財政部長と被告は,被告の活動場所の確保について
社会教育部長が責任をもつことを合意し(乙2∼6),その頃,被告は,社会教育
部長から旧消防署跡建物内にあった社会教育部分室第一会議室の使用を認められた。
そして,昭和58年3月31日,市長,市教育委員会教育長と被告は,別紙2AA
の確認書(乙1)により,「部屋の問題については,社会教育部分室第一会議室を
専用貸しとする」ことを合意した。「専用貸し」の合意がされるまでは,部屋を使
うたびに使用申込みをして教育委員会の許可を受けていたが,その合意後は,使用
申込みの手続はなくなり,教育委員会が会議等に使う場合に被告の了解を求めるよ
うになり,部屋の鍵は,原告の教育委員会と被告がそれぞれ管理するようになった
(被告代表者本人調書26∼28頁)。昭和60年から,被告が行っていた地域子
ども会,高校生の会,日本語識字教室,学校子ども会の4つの事業は,原告の教育
委員会が在日韓国・朝鮮人教育事業として被告の協力を得て実施するようになり
(乙85),以後,教育事業を担当する教育委員会社会教育部青少年課の職員も勤
務するようになった(被告代表者本人調書26∼31頁)。
Aその後,被告は,旧消防署跡建物が取り壊されることに伴い平成元年4月から
市立中学校柔道場跡,柔道場跡が使用できなくなることに伴い平成4年4月かB
ら同中学校の校舎の一部である本件建物の使用をそれぞれ上記確認書の合意に基づ
き社会教育部長から認められた。現在,本件建物には「」の表札が掲げられ,部C
屋の鍵は原告と被告がそれぞれ管理し,教育委員会の電話と被告の電話が設置され,
備品も教育委員会の物と被告の物とが置かれ,現在も教育委員会の職員が勤務して
いる(証人調書26頁)。D
その間,社会教育部長は,平成元年3月17日,市教育委員会に対し,「使用A
目的」欄に「社会教育部青少年課在日韓国・朝鮮人教育事業の事業推進にかかる事
務室,学習室として使用する。その他,在日韓国・朝鮮人問題についての講座等の
学習室として使用する。」と記載し,「使用方法」欄に「在日韓国・朝鮮人教育事
業専門員,指導員の事務,地域子ども会児童生徒の学習,日本語識字学級教室,高
校生等青少年活動,民族・芸能講座教室,在日韓国・朝鮮人問題等の学習活動」と
記載し,「使用期間」欄に「平成元年4月1日から使用目的を廃止するまで」と記
載した「行政財産使用承認申請書」(甲2の1・2)を提出し,この申請に対し,
平成元年4月1日,教育財産使用承認書(甲2の3)により,使用目的を「在日韓
国,朝鮮人問題についての講座等の学習室として使用」とし,使用期間は「平成元
年4月1日∼使用目的を廃止するまで」として,教育委員会から承認が行われてい
る。
()在日韓国・朝鮮人教育事業の見直し及び廃止・縮小3
平成12年4月,市教育委員会は,「人権教育推進プラン」(甲5)を策定し,A
在日外国人教育の推進について,戦後半世紀が過ぎ,在日韓国・朝鮮人教育の課題
も変化しており,祖国とのつながりがなくなっている家庭や新たに渡日した家庭,
日本人との結婚で複数の文化をもつ児童生徒など,置かれている立場や意識,考え
方が多様化している中では,民族としての自覚と誇りを持つことのみにとらわれる
のではなく,在日韓国・朝鮮人の子どもたちが,自分自身を多文化共生の社会を切
り拓く存在として肯定的に捉え,自らの進路を切り拓き自己実現をめざす力を身に
つけていくことの重要性から,在日韓国・朝鮮人教育を多文化共生教育として発展
させていく必要があるとした上で,在日外国人教育を推進していくため,これまで
の実績と手法を活かし,在日韓国・朝鮮人教育事業を,多文化共生教育の視点に立
って,21世紀に対応できる在日外国人教育事業として発展させるよう努めること
とした。そして,平成13年度から,在日韓国・朝鮮人教育事業は,多文化共生・
国際理解教育事業に改められた。
平成13年9月,市教育委員会に設置された多文化共生・国際理解教育事業検A
討委員会は,「在日外国人教育の今後の在り方について(提言)」(乙9)をまと
めた。この提言は,在日外国人の状況も多民族化が進行するなど大きく変化してき
ており,在日外国人にかかわる施策は,今までの在日韓国・朝鮮人のみを対象とし
た取り組みから,新たに渡日してきた在日外国人をも対象にした施策に転換してい
くことが求められているとして,①現在のような8校に限定した学校子ども会活動
への行政的支援は廃止することが望ましい,②地域子ども会や高校生の会の活動に
参加している児童・生徒の減少により活動そのものが成立しにくい実態が出てきて
いる上,在日韓国・朝鮮人生徒については一定の成果を上げてきたことから,今後
は地域子ども会活動等への行政的支援は廃止することが望ましい,③在日韓国・朝
鮮人一世を対象にしてきた日本語識字教室は,行政的支援の役割を終えていくこと
が望ましいなど,従来被告の協力を得て実施してきた教育事業の廃止,縮小を提言
した。しかし,被告は,この提言を受けた原告のこれら教育事業の廃止・縮小の方
針に強く反発し,提言の撤回を求めたため,平成14年度は,事業の廃止・縮小は
されなかった。
原告は,平成15年度から,学校子ども会と高校生の会を全廃し,地域子ども会
の事業が概ね週3回の活動を週1回に縮小し,多文化共生・国際理解教育事業にか
かわる職員も,正職員2名を1名に,非常勤職員2名を1名にそれぞれ減員し,予
算規模で約1174万円から約624万円に減らした。その過程で,教育事業に携
わる会計担当職員の告訴・配置転換,非常勤職員の雇止めなどが行われたが,それ
らは,虚偽の告訴とはいえず,配置転換・雇止めも事業の廃止・縮小等に伴う必要
性が認められるものであった(甲7,17,21,22,25)。しかし,被告は,
原告の教育事業の廃止・縮小に対し,強く反発した(乙15,17)。上記職員や
被告の会員らは,原告の教育事業の廃止・縮小がマイノリティの教育権を侵害する
などとして,平成16年7月,原告に対し国家賠償等を請求する訴訟を提起した。
()住民監査請求及び明け渡しの通知4
平成15年4月24日,市監査委員に対し,①本件建物を被告に貸し与えていA
ることは,違法・不当に財産の管理を怠る事実に当たるので,本件建物を被告の事
務室として使用させない措置を請求する,②光熱費等必要経費を徴収していないこ
とは,不当に公金の徴収を怠る事実に当たるので,光熱費等を過去にさかのぼって
徴収する措置を請求する旨の住民監査請求が行われた。監査委員は,平成15年6
月23日,監査結果については,「本件建物を被告が事務室とし,その事務室にお
いて被告が独自の活動も行っている事実は認められる。しかし,これまでの経過等
から,教育委員会が被告の協力のもと,事業を遂行し,また被告が本件建物を事務
室として使用することを容認してきたことも事実である。このことは,地方自治法
及び原告公有財産規則にのっとった行政財産の使用許可処分によりなされたもので
はないが,明らかに違法・不当に財産の管理を怠る事実にあたるとまではいえな
い。」と判断して措置の必要はないとしながら,要望として,現状の本件建物の使
用実態においては,地方自治法238条の4第4項及び市公有財産規則の規定A
にのっとって処理されるべきであるにもかかわらず,処理,手続において,不十分
であったことは否めないので,教育委員会においては,事業の取組みについて早急
に整理し,行政財産の適正な管理を行い,的確に事務処理をされたいと述べた(甲
6)。
原告の教育委員会は,平成17年1月17日,被告に対し,被告は昭和58年以
来,従前の事業とのかかわりで青少年課分室の一部を使用してきたが,その使用目
的は終了し,また,当該分室は,今後,市教委の社会教育活動の拠点として使用を
予定しているので,本件建物を平成17年3月末日の期限までに明け渡すよう通知
した。
3使用貸借契約の成立について
被告は,確認書による「専用貸し」の合意を使用貸借契約の成立であると主張す
る。たしかに上記確認書は,被告からされた活動の場を確保する要望に対して合意
されたものであり,その後,被告が鍵を管理し,被告の事務室として被告独自の活
動がなされ,その部屋の鍵を原告も管理し原告職員も常勤していたことからすれば,
被告の事務室として,具体的な行政の事業を超える独自の活動を含めて本件建物を
使用することが原告から認められていたことは明らかである。
しかし,平成18年法律第53号による改正前の地方自治法238条の4第1項,
4項によれば,現行の同条2項4号のような例外はなく,行政財産を貸し付けるこ
とはできず,これに反して貸し付けをしてもその行為は無効とされていたのである。
したがって,上記確認書の「専用貸し」によって,原告と被告が使用貸借契約を締
結する意思があったと解するのは相当とはいえない。むしろ,その当時における在
日韓国・朝鮮人問題に対する行政施策が極めて重要であり,被告の行う社会教育活
動がこれに寄与することを原告が認めて支援していたことから,原告としては,被
告が原告の行政財産を事務室として使用し,独自の活動を行うことを認めることに
よって,行政目的に資することとしたと解するのが相当である。しかし,被告によ
る本件建物の使用が,独自の活動も含めて行政目的に資すると認められたからとい
って,上記のとおり使用借権の設定は無効とされることから,そのような方法をと
ることなく,社会教育部の会議室ないし事務室の一部を被告に「専用貸し」するこ
とにとどめたものと考えられる。そうであるとすれば,「専用貸し」の趣旨は,社
会教育部の会議室ないし事務室の一部を社会教育部の占有を継続させる前提で補助
者として占有させるにとどまり,私法上の権利として使用借権が発生するような使
用貸借契約を成立させたものとは解されないというべきである。
被告は,本件建物を使用することは,行政財産の目的内使用であると主張するが,
地方自治法上,行政財産の使用が行政目的に資するか否かにかかわらず,使用借権
が設定できないことには変わりがないから,上記のとおり「専用貸し」をした当事
者の意思解釈をすることが左右されるものではない。なお,原告が所有する公有財
産について行政財産の使用許可と使用貸借契約がされた例があるが(乙97),現
行地方自治法238条の4第2項2号では庁舎等の行政財産についてその床面積に
余裕がある場合に当該余裕がある部分を貸し付けるときは使用貸借契約をすること
が認められているから,これらはその例外にあたると解することも可能であり,そ
のことが確認書にいう「専用貸し」の合意を使用貸借契約の成立とみるべき理由に
はならない。
4本件請求が権利濫用にあたるか
前記認定事実によれば,被告が在日韓国・朝鮮人問題に取り組み,原告の教育事
業に協力して在日韓国・朝鮮人教育事業の成果を上げてきたことは事実であると認
められる。その意味で,確認書で,「専用貸し」が認められた当時においては,被
告が行政財産である校舎の一部を独占的・排他的に事務室及び独自活動を含む活動
に使用することを認めることにも,十分な行政的な意義が認められたといえるであ
ろう。
しかし,他方で,国際化の進展等に伴い,在日外国人教育全体の中に占める在日
韓国・朝鮮人教育事業の位置づけが変化し,在日韓国・朝鮮人教育事業を多文化共
生・国際理解教育事業に転換し,これに伴い従来被告と協力して行っていた学校子
ども会,高校生の会,地域子ども会などの事業を廃止・縮小するに至ったのである
から,このような社会情勢の変化の中で,前記のとおり被告の独自活動の拠点とし
ての利用も含めて被告の事務室として学校の校舎の一部を独占的・排他的に使用さ
せることの行政上の必要性・相当性は,客観的に見れば乏しくなってきたと言わざ
るを得ない。
そして,「専用貸し」というような曖昧な合意ないし手続に基づき,あくまで私
的団体である被告が,その事務室及び独自活動の拠点としても,行政財産である校
舎の一部を使用することに対しては,住民から監査請求がされ,監査委員からも問
題が指摘されるに至ったのである。しかも,事務室や独自活動の拠点として見た場
合,被告が,他の場所ではなく校舎の一部である本件建物を使用し続けなければな
らない必要性は,特段見当たらない。
以上の事実によれば,在日韓国・朝鮮人教育事業を今後引き続き在日外国人の人
権教育のために推進する必要があるか,在日韓国・朝鮮人教育事業のために今後も
本件建物を使用する必要があるか,あるいはその事業のために引き続き被告の協力
を得る必要があるか,さらには原告において本件建物を使用する具体的な必要性が
あるかなどの点について判断するまでもなく,被告が行政財産である本件建物を被
告の事務室や独自事業も含む活動のために無償で使用し続けることを原告が認めず,
本件建物の明け渡しを求めることが,公共用財産(教育財産)である校舎の一部と
しての本件建物を管理する原告にとって,権利の濫用であるとは到底言えないとい
うべきである。
被告は,本件明渡請求が,教育事業の廃止・縮小という原告の政策の不当性を主
張して訴訟(被告のいう教育権訴訟)を会員らが提起した被告に対する悪意に基づ
く報復的対応であるかのように主張する。しかし,上記認定判断によれば,原告の
本件請求は,被告の独自活動を伴う事務室として公共用財産(教育財産)の排他的
な使用を続けることを止めるように求めているにすぎない。原告の教育事業の廃止
・縮小に被告が強く反発し,原告と被告の意見が対立し対話が可能な状況になかっ
たという経緯もある。さらに,原告が,被告に対し,本件建物の明渡しを求めた平
成17年1月17日から本件訴訟の提起(平成18年11月20日)までの間に約
1年10か月が経過している。これらの事情からすれば,被告会員らの訴訟提起後
に本件訴訟が提起され,その際,明け渡しに関する被告との事前の話し合いがなか
ったとしても,それだからといって訴訟提起に対して報復するような悪意が原告に
あったとは認めるに足りない。
以上検討したとおり,原告の本件請求が権利濫用にあたるということはできない。
5結論
以上によれば,被告の占有権原の抗弁が認められないから,所有権に基づく返還
請求権に基づき本件建物を明け渡しを求める原告の請求は理由がある。
大阪地方裁判所第13民事部
裁判長裁判官小林久起
裁判官府内覚
裁判官脇田未菜子

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