弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破毀する。
     被告人を懲役四年に処する。
         理    由
 弁護人徳見広元上告趣意第一点について。
 原判示二の事実につき、原判決の確定したるところは、窃盗は未遂(障碍未遂)
に終つたものであること明らかである。しからば、窃盗未遂犯人による準強盗行為
の場合は、準強盗の未遂を以つて問擬すべきものであることは当然であるにかゝわ
らず、原審はその擬律において刑法第二三八条同第二三六条を適用し、以つて準強
盗の既遂をもつて問擬したのは違法である。けだし、窃盗未遂犯人による準強盗は、
財物を得なかつた点において、恰かも強盗の未遂と同一の犯罪態様を有するに過ぎ
ないものである。しからば、強盗未遂の場合には刑法第二四三条の適用があるにか
ゝわらず、これと同一態様の窃盗未遂の準強盗を、強盗の既遂をもつて論ずるとき
は、右刑法第二四三条の適用は排除せられることゝなり彼此極めて不合理の結果を
生ずるに至るからである。したがつて、論旨は正に理由あり、原判決はこの点にお
いて破毀を免がれない。しかし以上原審の違法は、事実の確定に影響を及ぼさない
擬律錯誤の違法である。
 同第二点について。
 所論は原審公判調書並びに起訴状の記載中の誤記をば単に誤記として指摘するに
止まり、何等原判決に対する不服申立の趣旨を包含するものではないので、これを
以つて、適法な上告の理由とするわけにはゆかぬ。従つて論旨は理由なきものと云
うの外はない。
 以上論旨第一点の理由により、刑訴施行法第二条並びに旧刑訴第四四八条に従い、
原判決を破毀し更に当裁判所において判決すべきものであるところ、原判決の確定
したる事実を法律に照せば、原判示一の窃盗の所為は刑法第二三五条第六〇条に、
同二の準強盗未遂の所為は刑訴第二三八条第二三六条第二四三条第六〇条に各該当
し以上両所為は連続犯の関係にあるから、昭和二十二年法律第一二四号附則第四項
の規定により、その改正前の刑法第五五条及び刑法第一〇条により重い準強盗未遂
の刑に従い、尚右準強盗は未遂者なるをもつて、刑法第四三条本文及び同第六八条
第三号により減軽した刑期の範囲内において被告人を懲役四年に処するを相当と認
める。
 仍つて主文のとおり判決する。
 この判決は、裁判官全員一致の意見である。
 検察官 橋本乾三関与
  昭和二四年七月九日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎

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