弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を禁錮四月に処する。
         理    由
 弁護人樺島年太郎が陳述した控訴趣意は、記録に編綴の同弁護人提出の控訴趣意
書に記載のとおりであるから、これを引する。
 同控訴趣意第一点、第二点について。
 しかし、刑法第二一一条のいわゆる業務とは、各人が社会生活上の地位に基き反
覆継続して行う行為であつて一般に人の生命身体に対し危険を伴うものを指称し、
その行為が職業としてなされたものであると娯楽その他としてなされたものである
とは問うことなく、苟も同種行為を反覆継続して行えば業務と解するのが相当で<要
旨>ある。従つて、日頃、自動車運転の練習に従事し、継続して自動車を運転してい
る者が、たまたまそれ以外の目的で運転した場合であつてもこれが運転は業
務に当るものといわねばならない。原判決挙示の証拠によれば被告人は当時一ヶ月
前から練習のため毎日のように小型四輪自動車を運転していた事実が認められるか
ら、右練習運転が常に所定の広場で且つ有資格者指導の下に行われ、本件の如く公
道上で指導者もなくしかも家業の集金のため自動車を運転したのは初めてのことに
属すること所論のとおりであるとしても、只その目的、態様を異にするだけで自動
車の運転練習に従事する者の運転たることに相違はないから刑法第二一一条のいわ
ゆる業務に当るものというべく、従つて被告人は本件につき業務上過失の責を免れ
ない。原判決に所論の如き証拠の欠缺、理由不備、法律解釈の誤、事実誤認は存し
ない。論旨は理由がない。
 同控訴趣意第三点について。
 よつて記録を精査するに、被告人は被害者に対し慰藉料等として合計二四万円を
支払い被害者も被告人の寛大な処分を望んでいることその他諸般の情状を考察すれ
ば、被告人の過失が重大にして被害の程度の大なることを考慮にいれても原審の被
告人に対する科刑は重きに過ぎ不当であるから、原判決は破棄を免れない。論旨は
理由がある。
 そこで、刑事訴訟法第三九七条第一項に則り原判決を破棄し、同法第四〇〇条但
書に従い更に判決する。
 原判決の確定した事実に法律を適用すれば、被告人の原判示所為中業務上過失致
死傷の点は刑法第二一一条前段罰金等臨時措置法第三条に、無免許運転の点は道路
交通法第六四条第一一八条一項一号に当るところ、前者は一個の行為にして二個の
罪名に触れるから刑法第五四条第一項前段第一〇条により犯情重い業務上過失致死
の刑を以て処断し所定刑中禁錮刑を選択し、無免許運転については懲役刑を選択
し、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから同法第四七条第一〇条により重い
前者の刑に法定の加重をした上被告人を禁錮四月に処すべきものとする。
 よつて主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 岡林次郎 裁判官 中村荘十郎 裁判官 臼杵勉)

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