弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人阿南主税の上告趣意第一点について。
 昭和二二年四月四日物価庁許可第一六号による青表の例外価格は、同庁長官が、
物価統制令第二条第一項但書に基づき、A協会及びB農業会の申請を容れ、青表の
その当時における需給関係と取引の実情とに鑑み、品物を正規のルートに乗せる為
め、特定の取引に限つてこれを適用する目的を以つて、真に例外的に許可したもの
と解すべきである。然るに、本件は正規のルートを経ないいわゆる闇取引であつて、
而も被告人は右協会や農業会とは何等の関係がなく、又本件取引の当事者において
別に右規定による許可を受けた事実も認められないから、これに、前記のような特
殊の見地から例外的に許可せられた価格の適用があるとの所論には、たやすく賛同
することができない。又犯意は違法の認識を含まず、法律の錯誤は犯意を阻却しな
いものと解すべきことは、当裁判所の判例とするところであるから、たとい、被告
人が本件取引に右例外許可価格の適用があると信じていたとしても、これを以つて、
直ちに被告人に本件犯行の犯意がなかつたものということはできない。更らに、昭
和二一年九月二日物価庁告示第四三号の七の七第二項には、青表の「販売業者販売
価格の統制額は販売業者団体販売価格の統制額と同じ額とする。」と規定してあつ
て、被告人の本件取引は、その回数、数量、相手方等その態様から考えると、販売
業者間の取引と解するのが相当であるから本件については右告示にいわゆる販売業
者販売価格の統制額の適用があるものというべきである。従つて原判決が本件行為
に対し同告示を適用処断したのは、固より正当で何等所論のような違法はない。論
旨は総べて理由がない。
 同第二点について。
 本件犯行後、青表の販売価格の統制額が、物価庁告示の数次の改廃により幾度か
改正せられた後、昭和二五年一月一〇日同庁告示第七四号を以つて遂に廃止せられ
るに至つたことは所論の通りである。しかし、このように、統制額を指定した告示
が廃止せられたからとて、これを以つて旧刑訴法第三六三条第二号所定の場合とい
うことができないことは、さきに当裁判所が判例として示した通りであつて(昭和
二三年(れ)第八〇〇号、同二五年一〇月一一日大法廷判決参照)、論旨は採用す
ることができない。
 よつて刑訴施行法二条旧刑訴法第四四六条に則り、裁判官全員一致の意見を以つ
て主文のように判決する。
 検察官 十蔵寺宗雄関与
  昭和二六年二月二日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    塚   崎   直   義
            裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎

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