弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原決定を取り消す。
     本件を神戸家庭裁判所龍野支部に差し戻す。
         理    由
 本件抗告の趣旨及び理由の要旨は、「抗告人は老齢かつ高血圧症のため長途の旅
行に堪えがたいので、抗告人の肩書地を管轄する神戸家庭裁判所龍野支部において
調停を受け度き旨申添え、昭和三六年八月七日同支部に、徳島県三好郡a町大字b
c番地のdに住所を有するAを相手方とする養育費請求の調停の申立をなしたとこ
ろ、同日同支部は不当にも抗告人の右希望を無視し、相手方の住所地を管轄する徳
島家庭裁判所池田出張所に右事件を移送する旨の審判をなした。よつて、「原決定
を取り消す、本件を神戸家庭裁判所龍野支部に差し戻す」との裁判を求める。」と
いうにある。
 よつて判断するに、調停事件の管轄は相手方の住所地の家庭裁判所又は当事者が
合意で定める家庭裁判所に属するから、家庭裁判所がその管轄に属しない事件につ
いて申立を受けた場合には、これを管轄家庭裁判所に移送するのが原則である(家
事審判規則第一二九条、第四条第一項本文)。しかし、事件を処理するため特に必
要があると認めるときは、これをみずから処理することもできる(同規則第四条一
項但書)。右の裁量にあたつては、調停申立を受けた家庭裁判所が義務履行地であ
るとか(民事訴訟法第五条以下に規定した事由)、著しき損害又は遅滞をさける便
宜があるとか(同法第三一条参照)いつた事情は勿論、其の他経済的理由或は身体
の故障などの理由のため相手方の住所地の裁判所に出頭し難い事情があれば、相手
方の事情と比較の上これらの事情をも考慮に入れるべきであろう。けだし、調停事
件につき、相手方の住所地の裁判所を管轄裁判所とするのは、当事者の利害関係に
基く公平の原則に立脚するものであるが、元来、調停は当事者の互譲による円満解
決を骨子とするものであるから、管轄裁判所と異る裁判所にて調停をなすことによ
り当該調停事件の進行が円滑に行く事情が存するならば、その裁判所にて事件を処
理するのが得策であつて、当事者の一般抽象的利害関係より打算した公平の要請に
拘泥すべきでないからである。しかして、家事審判規則第一二九条と同第四条第一
項但書を比較考察すると、右但書にいわゆる「事件を処理するために特に必要があ
る」と認むべきか否かも、一つの法律問題として、移送の審判に対する抗告の理由
となすことができるものと解せられる。
 ところで、一般に隔地者間の調停事件を適切迅速に処理するためには、特に家事
事件の特質にかんがみ、家庭裁判所として特別の工夫を要する場合が多いのである
が、特に本件のごとく、調停申立書中に申立人が老齢かつ高血圧症のため長途の旅
行に堪えないため御庁に申立てる旨の記載がある場合、もし、この記載が真実とす
れば、抗告人(調停申立人)が移送を受けた裁判所に出頭することは期待し難いか
ら、このような場合には、移送を受けた裁判所は再び原裁判所に調停申立人の申立
の実情、健康、および生活状況、その他調停の進行上<要旨>必要な事項の調査もし
くは審問の嘱託をする必要を生じ、著しく手続を渋滞せしめる慮れもある。従つ
て、原裁判所としては、右のごとき調停の申立を受けた場合には、家事審判
規則第四条第一項但書の法意にかんがみ、相手方任所地の裁判所に移送するか自ら
これを処理するかを決する前提として、少くとも抗告人につき右にかかげた事情の
審問もしくは調査を行うことを要するものと解すべきである。なお、右審問もしく
は調査の結果によつては、相手方の任所地を管轄する裁判所に、相手方側の事情お
よび調停についての意向などの調査または審問の嘱託をなし、その結果を比較考察
して移送するか、或いは自ら処理するかのいずれを選ぶべきかを決するを相当とす
る場合も考えられる。
 かような次第であるから、裁判所が以上の点につき何等の処置をとることなくし
て、調停の申立を受付けたままの段階において、直ちに移送の手続をしたことは、
家事審判規則第四条第一項但書の適用を全く顧慮しなかつた違法があるというのほ
かは無い。
 よつて、本件抗告は理由があるから、民事訴訟法第四一四条、第三八九条第一項
を適用し、主文のとおり決定する。
 (裁判長裁判官 大江健次郎 裁判官 沢井種雄 裁判官 北後陽三)

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