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平成18年10月3日判決言渡
平成15年(ワ)第228号理事長・理事・評議員の地位不存在確認等請求事件
(甲事件)
平成15年(ワ)第561号理事長・理事の地位不存在確認等請求事件(乙事件)
平成17年(ワ)第242号理事長・理事の地位不存在確認等請求事件(丙事件)
【事案の概要】
社会福祉法人である被告法人の理事長及び理事の地位にあった原告X1,理事
及び評議員の地位にあった原告X2が,被告法人における一連の理事長選任決議
等の無効確認を求めるとともに,原告らが理事長等の権利義務を有する地位にあ
ることの確認を求め,さらに,被告Y2ら個々の理事等が理事等の地位にないこ
との確認を求めるという事案。
主文
1原告らの訴えのうち,請求の趣旨第1項(1),(4),(5),第2項(1)ないし
(3)及び第3項(1),(2)にかかる訴え(理事会決議等の無効確認の訴え及び被
告Y2らの地位不存在確認の訴え)をいずれも却下する。
2原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
3訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第1請求の趣旨
1甲事件
(1)被告法人の平成11年3月26日開催の理事会における理事長として被
告Y1を選任する旨の決議,平成12年9月21日仮理事3名による理事
長として被告Y1を選任する旨の理事長選任行為及び同年12月28日開
催の理事会における理事長として被告Y1を選任する旨の決議はいずれも
無効であることを確認する。
(2)原告X1が被告法人の理事長及び理事の権利義務を有する地位にあるこ
とを確認する。
(3)原告X2が被告法人の理事及び評議員の権利義務を有する地位にあるこ
とを確認する。
(4)被告Y2,被告Y3,被告Y4,被告Y5,被告Y6,被告Y7,被告
Y9及び被告Y10は,いずれも被告法人の理事及び評議員の地位にない
ことを確認する。
(5)被告Y11は被告法人の評議員の地位にないことを確認する。
2乙事件
(1)被告法人の平成15年9月27日開催の理事会における理事長として被
告Y8を選任する旨の決議は無効であることを確認する。
(2)被告Y8が被告法人の理事の地位にないことを確認する。
(3)被告法人の平成15年9月27日開催の理事会における理事長として被
告Y7を選任する旨の決議は無効であることを確認する。
3丙事件
(1)被告法人の平成16年2月13日開催の理事会における理事長として被
告Y1を選任する旨の決議は無効であることを確認する。
(2)被告Y1が被告法人の理事の地位にないことを確認する。
第2事案の概要
1本件は,被告法人の理事長及び理事の地位にあった原告X1並びに理事及び
評議員の地位にあった原告X2が,平成11年3月26日開催の被告Y1を理
事長に選任した理事会決議以降,平成16年2月13日開催の理事会決議に至
るまで,被告法人においてなされた理事長,理事及び評議員を選任する旨の一
連の決議がすべて無効であることの確認を求めるとともに,原告X1は理事長
及び理事の権利義務を有する地位に,原告X2は理事及び評議員の権利義務を
有する地位にあることの確認を求め,さらに,被告Y2,被告Y3,被告Y4,
被告Y5,被告Y6,被告Y7,被告Y9及び被告Y10が理事及び評議員の
地位にないこと,被告Y11が評議員の地位にないこと,被告Y8が理事の地
位にないこと,被告Y1が理事の地位にないことの確認をそれぞれ求めるとい
う事案である。
2前提となる事実(各項目掲記の証拠により容易に認められる。)
(1)被告法人は,軽費老人ホーム,老人デイサービスセンター及び在宅介護
支援センターの設置経営等の社会福祉事業を行うことを目的として,平成
8年1月16日に設立された社会福祉法人である(甲1,12)。
(2)被告法人の定款によれば,役員として理事12名,監事2名を置き,理
事のうち1名は,理事の互選により理事長となり,理事長のみが法人を代
表することとされていた(定款4条。以下,代表権を有する理事を「理事
長」といい,その他の理事を「理事」という。)。また,予算,決算,事
業計画や定款の変更その他運営に関する規則の制定及び変更等の事項を審
議する評議員会を設け,評議員会は25名の評議員をもって組織すること
とされており,その選任は,理事会の同意を得て,理事長がこれを委嘱す
るものとされていた。理事会は,理事総数の3分の2以上が出席しなけれ
ば議事を開き,議決することができず(定款5条5項),決議は原則とし
て理事総数の過半数で決定することとされ(同条6項),特別利害関係を
有する理事は当該議事の議決に加わることができない(同条7項)ほか,
理事の選任等に当たっては,理事総数の3分の2以上の同意を得て,理事
長が委嘱する(定款7条)などとされていた(甲1,12)。
原告X1は,被告法人の設立当時の理事であり,平成9年7月22日に
理事長に就任した旨の登記が同年8月29日経由された。原告X2は,被
告法人設立当時,理事であり,かつ評議員であった(甲1,2)。
(3)被告法人の法人登記簿謄本等によれば,理事長の就任及び辞任等につき,
下記のとおり登記が経由されていることが認められる(甲2ないし7,1
7)。
ア平成11年3月26日,原告X1が理事長を辞任,被告Y1が理事長
に就任(いずれも同年5月31日付け登記)。
イ平成12年1月16日,被告Y1が理事長を退任,同年12月28日
に再び理事長に就任(いずれも平成13年2月26日付け登記)。
ウ平成14年9月15日,被告Y1が理事長を辞任,Aが理事長に就任
(いずれも同月17日付け登記)。
エ平成15年3月21日,Aが死亡により退任し,その後,同年9月2
7日,被告Y8が理事長に就任(いずれも同年10月20日付け登記。
なお,被告Y7は,同年9月27日,理事長に就任したが,同日辞任し
ている。)。
オ平成16年2月13日,被告Y1が理事長に就任(同年7月23日付
け登記)。
3争点
(1)平成11年3月26日開催の理事会における理事長選任決議以降,平成
16年2月13日開催の理事会における理事長選任決議に至るまで,被告
法人において行われた理事長選任決議は無効か。
(2)原告X1が理事長及び理事の権利義務を有する地位を,原告X2が理事
及び評議員の権利義務を有する地位を有しているか。
(3)被告Y2,被告Y3,被告Y4,被告Y5,被告Y6,被告Y7,被告
Y9,被告Y10,被告Y11及び被告Y8が理事等の地位にないといえ
るか。
4争点に対する当事者の申立て及び主張
原告らの主張(1)
ア原告らが被告法人の理事長あるいは理事を辞任していないこと
(ア)原告X1は,平成10年12月ころ,平成11年1月21日,同年
3月26日,同年5月13日のいずれのときにも,理事長及び理事を
辞任していない。また,原告X2は,上記のいずれのときにも,理事
及び評議員を辞任していない。
確かに,原告X1は,平成10年12月ころ,辞任届に署名し,こ
れを被告Y1に渡したことがある。しかし,これは,原告X2が,B
から融資を受けた約7000万円について,被告Y1と対立していた
ことが理由であり,原告X1には,辞任の意思はなく,辞任届に押印
もしていない。
また,原告X1は,平成11年1月21日の理事会においても,辞
任していない。
なお,同日付けの理事会議事録は二つ存在しており(甲9,10),
その一方には,原告X2が「今日ここで,私X2とX1理事長の進退
処遇の一切をY1理事に一任したいとの発言がある」「全員一致で一
任の決議を承認,続いて辞任の承認」との記載がある(甲10)が,
上記議事録は,被告法人らが一方的に作成したものに過ぎず,辞任の
承認をしたことなどあり得ない。もう一方の議事録(甲9)には,原
告らの辞任をうかがわせる記載は存在しない上に,その後開催された
理事会においても,原告X1が理事長として挨拶をしていることが認
められ,原告らが平成11年1月21日時点において辞任をしたこと
はあり得ない。
(イ)原告X1が,平成11年3月26日に理事長を辞任した旨の辞任届
(甲8)が存在しているが,上記辞任届に押印された印鑑は原告らの
ものではなく,原告らにおいて押印した事実もない。
(ウ)原告らは,平成11年5月13日開催の理事会でも辞任していない。
同日の理事会議事録には,原告X1が,それまでの理事会で辞任の
意を表したとの点について,「私は当日辞任に同意いたしたわけでも
なく,また新任の方々に理事をお願いしたりする事に同意いたしてお
りません」「私が現在も理事長であり,施設長であると確信いたして
おります」との記載があり,原告X1が同日,辞任したことはあり得
ない。
(エ)よって,原告らは,現在に至るまで,原告X1は,被告法人の理事
長かつ理事としての権利義務を有する者であり,原告X2は,同じく
理事かつ評議員としての権利義務を有する者である。
イ平成12年9月21日の仮理事選任が無効であること
(ア)山梨県知事が平成12年9月21日にした仮理事の選任は,重大か
つ明白な瑕疵があり無効である。
平成12年9月21日当時,原告らは,理事を辞任していなかった
から,理事全員が存在していたことに加え,仮に原告らが平成11年
中に辞任をしていたとしても,1年5か月もの期間が経過しており,
仮理事選任の要件(民法56条)が存在しなかった。
よって,上記仮理事選任は必要性がなかった。
(イ)また,山梨県知事に対し仮理事選任の申立てをしたCは,原告の事
務局長ではなく(当時原告に事務局長という役職はなかった。),仮
理事選任の申立てができる利害関係人ではなかった。
そして,理事の全員が不在であったとすれば,理事12名に相当す
る仮理事の選任をすべきであったにもかかわらず,3名の仮理事が選
任されただけである。
(ウ)仮に,上記仮理事選任が有効であったとしても,被告Y1,被告Y
7,Aの3名の理事で理事長を互選し得る根拠はない。被告法人の定
款では,理事長は,理事の互選で選任されなければならない旨規定さ
れている(4条2項)が,他方,3名の仮理事が理事長を互選できる
といった規定は存在しない。
したがって,被告Y1を理事長に互選したとしても,この措置は根
拠のない無効なものである。被告Y1により行われたその後の理事の
委嘱も,理事長資格のない者による委嘱であるから無効である。
(エ)平成12年12月28日開催の第21回理事会では,被告Y1が評
議員を選任したとされているが,そもそも被告Y1の理事長への互選
はなく,同理事会においてもこれは行われていない。
よって,平成13年2月26日付けの平成12年12月28日被告
Y1の「理事就任」の登記は何ら実体がないものであり,抹消される
べきものである。
ウAが理事長に就任した事実がなく,後任の理事長選任もないこと
(ア)被告法人において平成13年11月28日に開催された第27回理
事会は不存在又は無効である。
上記理事会は,役員資格のない被告Y1が召集をしたものであると
ころ,同人は,(省略:有罪判決)によって執行猶予中であった平成
13年1月25日から平成16年1月24日までの間,役員欠格者で
あった。
役員欠格者が欠格条項に違反して,役員として法人の組織運営等に
関わったとすれば重大な手続上の瑕疵が存することとなり,当該欠格
者が法人理事会の召集,議事,決議等に関わったとすれば当該事項に
は重大な手続上の瑕疵が存することとなる。
被告Y1は,役員資格を欠いていたのに理事会を召集し,理事会の
議事を取り仕切っていたのであり,このような理事会は手続上重大な
瑕疵があり,法律上不存在又は無効というほかない。
(イ)被告法人らは,Aは,上記理事会において理事長に互選されたと主
張するが,上記理事会は不存在又は無効であるから,このような事実
はあり得ない。被告法人らは,上記理事会において,出席理事が8名
であり,その理事8名で選任したから,過半数の7名を超えており,
実質的にはAを理事長に選任した手続が有効であるとする。
しかし,上記理事会に出席した被告Y6及び被告Y7は,原告X1
から理事として委嘱されたことはないから,上記2名と被告Y1を除
外すると,6名で理事長を互選したことになり,理事の過半数である
7名を下回っており無効である。
(ウ)平成14年3月28日開催の第28回理事会も不存在又は無効であ
る。
上記のとおり,第27回理事会でAが理事長に選任されたことはな
いのであるから,Aが理事長として召集した第28回理事会は権限の
ない者が召集した理事会というべきである。
なお,被告Y1は,Aをあらかじめ理事長代理として選任していた
旨供述しているが,そのような事実はあり得ない。
また,被告法人らは,第28回理事会において,Aの理事長選任に
ついて,追認あるいは再度決議された旨主張する。しかしながら,上
記のとおり第27回理事会は不存在又は無効であるから,同理事会で
理事長に就任したことはあり得ず,したがって,その追認ということ
もあり得ない。そして,召集権限のないAが召集した第28回理事会
も不存在又は無効であるから,同理事会における再度の適正な決議と
いうこともあり得ない。
エ後任理事長らの就任の不存在
(ア)Aが理事長に就任したことがないとすれば,第29回理事会以降の
理事会は,権限のない者による理事会の召集であり,当該理事会は不
存在又は無効である。したがって,理事会における理事長の後任者の
選任もあり得ない。
(イ)さらに,第29回理事会は,欠格者である被告Y1が理事として出
席しており,これは重大な事由であり,出席してはならない理事の出
席した理事会は不存在又は無効である。
オ定款変更が無効であること
(ア)被告らは,定款を変更し,平成14年10月2日山梨県知事の認可
を得たとしているが,この定款変更は,旧定款規定に基づく適正な定
款変更手続を履践しておらず無効である。
(イ)被告らは,第28回理事会に出席をした理事は9名であるとするが,
被告Y6及び被告Y7は,理事に委嘱されておらず,定足数の計算上
除外されなければならないから,出席者は7名であり,定足数8名に
達していない。
(ウ)旧定款28条では,理事総数の3分の2以上の同意をもって定款変
更を行う旨規定されているが,上記の定款変更は7名の出席理事によ
って行われたにすぎず,上記規定に違反している。
(エ)上記のとおり定款変更は無効であるから,新しく定められた定款の
規定は無効である。
カ被告Y1が,平成16年2月13日ころ,再度の理事に就任したことは
ないこと
(ア)上記のとおり定款変更は無効であるから,被告Y1の再度の理事へ
の就任はないし,新定款に基づく理事就任も無効であるから,理事長
として選任されることもあり得ない。被告Y8及び被告Y7も,被告
Y1と同様の立場にあるから,法的に理事長及び理事の地位に就いた
ことはなかった。また,Aも,被告Y1と同様,理事や理事長に就任
したことはない。
(イ)原告X1が理事長を退任したとされた後,旧定款によって被告Y1
及びAが,新定款によって被告Y7,被告Y8及び被告Y1が理事長
に就任したとされているが,原告X1は,被告法人の理事長及び理事
の権利義務を有する者であり,その後に理事長に選任されたとしてい
る者は,すべてその資格を欠くものである。また,原告X2も,依然
として被告法人の理事及び評議員の権利義務を有する者である。
(2)被告法人らの反論
ア原告X1及び原告X2が理事長あるいは理事を辞任したこと
(ア)平成11年1月21日開催の第13回理事会において,原告X2は,
自分と原告X1の進退処遇の一切を被告Y1に一任する旨の発言をし
たため,被告Y1は,原告らの辞任要請の決議を求め,辞任決議がな
された。
(イ)しかし,原告らは,その後,辞任の効力を争い,原告X1が平成1
1年3月26日開催の第14回理事会に出席するなどして理事会が混
乱したため,同年5月13日開催の第15回理事会には所轄庁である
山梨県や当時の○○町の職員数名が理事会に出席する中,第13回,
第14回理事会決議において,原告らの辞任があったことの確認が行
われた。しかし,原告らがなおも辞任の効力を争ったため,山梨県か
らの指示により,仮理事選任の申立てを行うこととなった。
イ仮理事選任が有効であること
(ア)平成10年4月13日開催の第11回理事会において,被告Y1及
びAが理事に選任されたが,その後,理事の選任,辞任等について紛
糾し,理事会が正常に運営できない状態になった。
(イ)また,被告法人は,山梨県から助成金の不正受給の指摘を受け,そ
の是正を求められたところ,理事会が正常に機能しておらず,適正に
対応することができなかったことから,被告法人の当時の事務局長C
が山梨県と協議した結果,全理事を任期切れで退任させ,社会福祉法
45条を読み替えて準用する民法(平成16年法律第147号による
改正前のもの。以下同じ。)56条により山梨県知事が仮理事を選任
するための申立てをするよう指示を受けた。
そこで,Cは,上記指示に従い,仮理事選任の申立てをしたところ,
平成12年9月21日,山梨県知事によって,被告Y1,A及び被告
Y7が仮理事に選任され,他の理事は理事の職を失ったことが確認さ
れた。
(ウ)仮理事の業務執行については,山梨県から各仮理事に対し,新理事
を早急に選任し,新理事が就任した段階で仮理事を辞任するようにと
の指示があったため,仮理事に就任した被告Y1,A及び被告Y7は,
直ちに被告Y1を理事長に選任した(登記がないからといって理事長
としての権限がないわけではない。)上,平成12年9月25日に第
20回理事会を開催して理事を選任した。さらに,同年12月28日
に第21回理事会を開催し,理事会の同意を得て,理事長であった被
告Y1が評議員を選任した。
(エ)原告らが仮理事の選任無効を主張する点については,本件訴訟で審
理することはできず,山梨県知事を被告として仮理事選任処分取消訴
訟を提起すべきである。
ウ平成13年11月28日開催の第27回理事会以降の理事会決議が有効
であること
(ア)被告Y1は,平成13年1月10日に(省略:刑事裁判で執行猶予
付き懲役刑の有罪)判決を受け,上記判決は同月25日に確定した。
したがって,被告Y1は同日から社会福祉法人の理事の欠格事由が生
じたことになるが,被告Y1は,欠格事由に該当していることを知ら
なかったので,理事長としての職務を続けていた。
被告Y1は,同年11月ころ,自らが理事の欠格事由に該当してい
ることを知り,同月28日,第27回理事会を召集し,開催した。出
席理事は被告Y1を含め9名で,被告Y1はその理事会の席で,理事
長,理事,評議員を辞退する旨申し出,同日の理事会でAを理事長に
選任する旨の決議がなされた。
(イ)被告Y1は,第27回理事会開催当時,役員欠格者であり,その被
告Y1が上記理事会を召集したことはあるが,上記理事会に出席した
理事は8名であり,理事会成立の要件を満たしているし,Aを理事長
に選任する決議を含む審議議案全部について出席理事全員(被告Y1
を除いても8名)の賛成を得ているので,実質的には上記理事会は有
効である。
(ウ)被告Y1が役員欠格者であったことから,被告Y1が召集した第2
7回理事会の召集手続に瑕疵があったとしても,適正に開催された平
成14年3月28日の第28回理事会でAが適正に理事長に選任され
ている。
被告法人の定款では,本件のように理事長に事故あるときは,理事
長があらかじめ指名する他の理事が,順次に理事長の職務を代理する,
とされており(定款第6条。甲1),あらかじめ指名していた理事で
あるAが第28回理事会を召集したのであるから,この理事会の開催
は適正である。また,第28回理事会には,被告Y1を除き,委任状
出席を含む9名の理事が出席していたから,理事会成立のための定足
数(理事総数3分の2以上の出席)を満たしている。そして,決議要
件のための定足数(理事総数の過半数)で,再度,Aを理事長として,
互選する旨の可決を承認したことにより,第27回理事会においてな
された決議が追認あるいは,再度決議が適正になされたのである。
(エ)以上のように,Aが理事長としてなした行為はすべて有効であり,
それ以降の手続も有効である。
第3当裁判所の判断
1上記前提となる事実に,証拠(甲1ないし18,乙1ないし15。枝番を含
む。ただし,甲13,乙13ないし15については,下記認定事実に反する部
分を除く。)及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。
(1)仮理事選任の経緯について
ア原告X1は,被告法人の設立後,平成9年7月22日,理事長に就任
し(同年8月29日登記),この当時,原告X2は,被告法人の理事に
就任し,かつ,評議員の地位にあった。
イ平成11年1月21日開催の第13回理事会では,当時の理事12名
(原告らのほか,被告Y9,A,被告Y3,被告Y1,被告Y5,被告
Y4,被告Y10,被告Y2,D理事及びE理事のうち,被告Y10,
被告Y2,D理事及びE理事を除く8名が出席し,Aを議長として議事
が進行した。当該理事会では,E理事とD理事の辞任の件と,新理事2
名(被告Y7及び被告Y6)の就任の件が議案とされ,出席理事8名の
全員一致で承認がされたほか,原告X2から,原告らの進退処遇を被告
Y1に任せる旨の発言があり,原告らを除く,出席理事6名及び新理事
2名によって,原告らの辞任の議案につき承認することとされた。なお,
当該理事会において,原告X1は,新理事として別の人物を推薦してい
たものの,就任承諾書が得られていなかったことから,継続審議扱いと
されていた。そして,空席となった理事長については,被告Y1が理事
長代理をつとめる旨の議案につき,残りの理事の全員一致で承認がなさ
れた(甲10,乙10)。
ウ同年3月26日開催の第14回理事会は,被告Y1が理事長代理とし
て開催したが,原告X1は理事として出席し,原告X2は肩書きを暫定
理事とし,欠席者として扱われた。この際,原告らが前回第13回理事
会において理事長及び理事を辞任したことが確認され,出席理事7名及
び委任状を提出した理事1名により承認がなされた。また,この際,原
告らが被告法人の理事長印を改印し,被告法人所有不動産上に無断で抵
当権を設定したとの問題が議案として取り上げられ,これにつき,原告
X1が説明をするなどした。そして,原告X1を除いた出席理事らは,
新理事長を被告Y1とすることを承認したとされた(甲11,乙11)。
エしかしながら,原告X1は,上記理事長及び理事の辞任の効果を争い,
結局,同年5月13日の第15回理事会は,原告X1及び原告X2を含
め,A,被告Y5,被告Y1,被告Y10,被告Y3,被告Y4,被告
Y7,被告Y6,被告Y9及び被告Y2の12名が理事として出席した
ほか,監事2名に加え,山梨県から当時の課長補佐ほか2名,○○町か
ら課長1名が立会人として出席して開催され,原告X1は,理事長挨拶
を行った。上記理事会では,社会福祉事業法(平成12年法律第111
号による改正・改称前の社会福祉法。以下同じ。)54条2項に基づく
是正措置命令が議案とされ,第13回理事会における原告らの辞任確認
決議及び第14回理事会における原告X1の辞任確認決議が議事に付さ
れ,賛成者9名によって承認された。また,上記是正措置命令に関し,
被告法人の補助金不正流用疑惑が問題とされていたため,原告X1から
報告がなされ,運営の正常化について活動することも承認された(乙1
2,甲18)。
原告X1は,上記理事会以降も辞任の意思がないとして辞任決議の効
力を争うなどして理事会は混乱し,山梨県から求められていた補助金の
不正利用行為をめぐる是正措置命令についても具体的方策が採られなか
ったため,被告法人の当時の事務局長Cは,山梨県と協議をし,現理事
全員が任期満了により退任し,その後,社会福祉事業法に基づく仮理事
選任の手続を採るよう指導がなされた。
オ平成12年1月16日,理事長の立場にあったとされる被告Y1をは
じめ,その他の理事らは任期満了により理事を退任し,その後,同年9
月21日,山梨県知事は,被告Y1,A及び被告Y7の3名を仮理事に
選任し,同日その旨通知した(乙3)。
被告Y1は,ほか2名との互選により仮の理事長に就任し,同月25
日,第20回理事会を開催し,同理事会において,被告Y1ら3名を含
む合計12名の新理事が選任された(乙6)。
さらに,その後,同年12月28日,被告Y1が代表して第21回理
事会を開催し,出席した理事9名全員の賛成により,同理事会において
被告Y1が理事長に就任することが承認されたほか,新たに評議員を選
出する旨が決議された(乙7)。
カなお,平成10年2月ころから4月ころ,被告法人は,経営が厳しか
った上,原告X2自身の負債の返済等に資金が必要であるなど,その資
金繰りに窮していたため,原告らは,被告Y1に依頼し,その知人であ
るBから5000万円以上の融資を受けるなどしていた。その後,原告
らは同年8月ころにもまた,被告Y1に金策を依頼したが,原告X2の
金員の使途や原告X1の保有する理事長印の不正利用を疑った被告Y1
は,自ら被告法人の負債の返済に当たるとともに,原告X1から理事長
印を預かるなどしたことがあった(甲14)。
被告Y1と原告X1との間では,このころから,原告らが理事長等の
役職を離れる旨の話が出るようになっており,平成11年1月ころには,
原告X2が被告Y1に対して進退処遇を任せる旨の発言をしたこともあ
った。
キまた,被告Y1は,平成12年12月28日理事長に就任していたも
のの,平成13年1月10日,(省略:刑事裁判において執行猶予付き
懲役刑の有罪判決)を受け,上記判決は同月25日確定した。これによ
り,被告Y1は同日をもって理事の資格を失った(社会福祉法36条4
項3号)が,これに気づかず理事長職を継続し,その後の同年11月2
8日開催の第27回理事会を召集し,同理事会の議事進行を行うなどし
た。上記理事会において,被告Y1は,理事長,理事及び評議員を辞退
し,次期理事長にAを推薦する旨発言し,出席した9名(被告Y1及び
Aを含む。)の理事によりAを理事長として選出する旨が承認された。
また,その後の議案として,本年開催の理事会と評議会決議の成立の再
確認をする旨が上記出席理事9名により承認された(甲16,乙8)。
2(1)原告らは,原告らの理事長等の辞任や辞任に関する理事会決議の効力を
争い,これに引き続き行われた山梨県知事による仮理事選任の効力,その
後の理事長選任決議がいずれも無効である旨主張するため,検討する。
ア被告法人における平成11年開催の第13回ないし第15回理事会で
は,原告らの辞任に関する決議が行われているため,まず,原告らが辞
任したといえるかが問題となるところ,原告X1は,平成10年12月
ころ,自ら署名した辞任届を被告Y1に渡したことがあるとしているほ
か,原告X1の名前の記載と「X1」名の丸印で捺印された平成11年
3月26日付け(なお,月の数字である「3」の記載は「8」とも読め
るが,登記との符合に照らせば,「3」と記載したものとみるのが相当
であり,当事者もこの点を特には争わない。)の辞任届が存在する(甲
8)。
上記辞任届には原告X1の署名はなく,原告X1自身も自ら作成した
ものではない旨説明しているほか,被告Y1は,何時作ったかは定かで
ないがおそらく被告法人をめぐる事件が発覚した平成11年5月以降の
ことで,文書自体は被告Y1が作成し,これに原告X1が捺印したもの
であると,原告X1とは異なる説明をしている(甲13,乙13ないし
15)。
イ上記1のとおり,そもそも原告らの理事長等辞任に関する問題は,原
告らと被告Y1との間では平成10年ころから生じていたものとみられ,
理事会においても,平成11年1月21日開催の第13回理事会におい
てはじめて議案として取り上げられたことが認められる。しかしながら,
原告らは,その後も辞任の効力を争い,同日の理事会議事録の内容をみ
ても,辞任をめぐる議案の記載をめぐり議事録が複数作成された(甲9,
10)とみられる状況があること,その後の第14回及び第15回理事
会においても,原告らがなお理事としての地位を有することを前提とし
て議事が進行し,辞任をめぐる決議が継続して議案に挙げられていたこ
と,原告X1において理事長として行動,発言等していた状況(甲11,
18,乙11,12)などに照らせば,平成11年当時,原告らの辞任
の効力をめぐり,理事会に相当の混乱が生じていたものと認められる。
そして,原告X1の上記辞任届をめぐる説明内容や,理事会での言動
等に照らせば,原告らが自ら被告法人の理事長あるいは理事を辞任する
意思を有していたとは認め難く,原告らが平成11年1月21日あるい
は同年3月26日開催の理事会において辞任したとの事実は認められな
いというほかない。
また,上記理事会において,原告らの解任決議がなされた経過も認め
られないから,平成11年5月31日付けでなされた,同年3月26日
の原告X1理事長辞任,被告Y1理事長就任に関する登記は,実体に一
致していない登記と認められる。
以上の次第で,原告X1の辞任届(甲8)は,真正に成立したものと
は認められない。
(2)アそこでさらに検討するに,上記のとおり,原告らの辞任の効力が生じ
ておらず,被告Y1の理事長就任の登記が実体に一致していないもので
あるとしても,被告法人においては,その後,山梨県知事により,社会
福祉法45条が準用する民法56条に基づき,平成12年9月21日付
け通知により被告Y1,A及び被告Y7の3名を仮理事として選任する
ものとされ(乙3),仮理事らによって開催された理事会決議に基づい
て,同年12月28日には被告Y1が理事長に就任したとされている。
原告らは,理事等の地位を失っていなかったし,民法56条の要件に
も該当しないから仮理事選任の必要性はなかったし,事務局長などとい
う役職は被告法人には存在しなかったから,仮理事選任の経緯も問題で
あり,その後開催された理事及び理事長選任決議についてもその効力を
争う旨主張している。
イこの点,被告法人の定款には事務局長との役職に係る規定は設けられ
ておらず,Cがいかなる役割を果たし,山梨県との間でいかなる協議が
持たれたかについては判然としないところもある。
しかしながら,仮理事の選任は行政庁である山梨県知事による一種の
行政処分であるところ,その効力を本件訴訟をもって争うことはできな
いといわざるを得ない。
ウまた,原告らが仮理事選任の必要性や経緯等の手続を問題にし,これ
に引き続き行われた理事等選任決議の効力を問題にしているものとみて
も,社会福祉法あるいは社会福祉事業法に基づき設立される社会福祉法
人については,行政庁からの一般的監督が及んでおり(社会福祉法56
条,社会福祉事業法54条),法令や行政処分等に反し,運営に著しく
適正を欠くと認めるときには,必要な措置を採るよう命じることができ
る(それぞれ上記同条2項)ほか,これに従わない場合には,業務の全
部または一部の停止命令や,役員の解職勧告(それぞれ上記同条3項)
をもなし得るとされている。
平成11年から平成12年にかけて,被告法人理事会は,原告らの理
事長等辞任問題によって混乱した状況にあった上,補助金の不正流用問
題について是正措置命令を受けながら有効な方策が採られずにいたこと
などに照らせば,被告法人に対し,その運営の適正化を求めるため,何
らかの措置を採る必要があったことは明らかである。そして,Cの役職
の有無にかかわらず,仮理事の選任請求は利害関係人あるいは職権によ
りなし得るものであるところ(社会福祉法45条後段,社会福祉事業法
43条後段),当時任期満了となっていた理事ら全員を退任させた上,
所轄庁である山梨県知事により仮理事選任を行ったという経緯に何らの
問題点も認められない。また,理事長は,理事の互選により選任され,
理事会を招集するとされているところ(定款4条2項,5条2項。甲
1),仮理事らが互選により仮の理事長を選任し,理事会を開催した上,
新しく定款所定数の理事の選任を行うことも手続上問題があるとは認め
られない。
エ上記認定事実に基づき,本件における手続の具体的流れをみると,被
告Y1を含む当時の理事らは,平成12年1月16日をもって任期満了
により退任し,その後,同年9月21日には,山梨県知事により,社会
福祉法により3人以上と定められた理事の定数(同法36条1項)に即
して,上記のとおり被告Y1ほか2名の合計3名が仮理事として選任さ
れた。仮理事選任の通知を受け,被告法人では,同月25日,被告Y1
を仮の理事長として,上記3名が出席して第20回理事会が開催され,
上記仮理事3名を含む12名の選任理事,2名の監事がそれぞれ選任さ
れ(乙6),その後の同年12月28日開催の第21回理事会では,上
記12名の理事のうち9名が出席し,出席理事全員の賛成により被告Y
1を理事長に選出したほか,評議員25名の選任を行うなどした(乙
7)。そして,被告Y1の同年1月16日理事長退任及び同年12月2
8日理事長就任は,平成13年2月26日付けの登記を経ている。なお,
理事長の選出に関しては,理事長選出者である被告Y1を除いても,理
事8名の承認が得られているのであり,これは定款上理事の選任等に関
する必要同意数を満たすものである。
オ上記のとおり,被告Y1が平成12年12月28日に理事長に就任す
るまでの仮理事選任等の経緯をはじめ,理事会の開催及び理事等の選任
決議の手続や内容に適正さを欠く点は見当たらない。
(3)アなお,既にみたとおり,平成11年3月26日の原告X1の理事長辞
任と,同日の被告Y1の理事長就任に関する登記は実体にそぐわないも
のであったことが認められるものの,被告法人の理事の任期は2年とさ
れている(甲1。さらに,社会福祉事業法34条2項にも,2年を超え
ることはできないとされている。)ところ,平成9年7月22日に理事
長に就任した原告X1は,2年の経過をもって任期が満了していたこと
が認められ,原告X2の理事及び評議員の地位についても同様の時期に
その任期が満了したものとみられる。
イそうであれば,原告X1及び原告X2は,平成9年7月22日から2
年の経過により理事長及び理事の任期を満了していたのであり,その後
の手続により,遅くとも平成12年1月16日には,当時の理事ら全員
とともに任期満了により退任したことが認められる。そして,その後の
被告法人理事会が行った新理事や新理事長の選任手続は適正になされた
ことが明らかであるから,任期満了時点から平成12年1月16日まで
の間には理事長あるいは理事等の地位を喪失し,遅くとも平成12年1
2月28日に新理事が選任され,新理事長が選任された時点をもって,
原告らは,理事長あるいは理事の権利義務を有する地位を確定的に失っ
たというべきである。
(4)ア本件訴えは,社会福祉法人における理事長や理事等役員にかかる選任
決議の無効確認等を求めるもの(争点(1)),原告ら自らが理事長や理事
等役員たる権利義務を有する地位にあることの確認を求めるもの(争点
(2)),他者である各役員が理事長や理事たる地位にないことの確認を求
めるもの(争点(3))であり,これらはいずれも確認訴訟であるから,上
記の各訴えが適法となるためには,確認の利益が認められることが必要
である。
確認の利益がある場合とは,ある基本的な法律関係から生じた法律効
果につき現在法律上の紛争が存在し,現在の権利又は法律関係の個別的
な確定が必ずしも紛争の抜本的な解決をもたらさず,かえって,これら
の権利又は法律関係の基本となる法律関係を確定することが,紛争の直
接かつ抜本的な解決のため最も適切かつ必要と認められる場合をいう
(最高裁昭和47年11月9日第一小法廷判決・民集26巻9号151
3頁)と解されるところ,本問では,原告らが上記確認の利益を主張し
得る立場にあるか,すなわち,原告らに原告適格があるかが問題となる。
イ原告らは,上記のとおり,遅くとも平成12年12月28日には理事
長あるいは理事等,被告法人の役員たる権利義務を有する地位を確定的
に失ったことにより,被告法人及びその理事会との間でも第三者にすぎ
ない立場となった。第三者の原告適格を肯定するには,組織上,理事長
や理事といった役員の任免に関与するなどその地位に影響を及ぼすべき
立場にあるか,又は自らが理事長によって任免される立場にあるなど,
役員の地位について法律上の利害関係を有していることを要すると解さ
れる(最高裁平成7年2月21日第三小法廷判決・民集49巻2号23
1頁)。
ウ原告らは,平成12年12月28日に確定的に被告法人の役員たる権
利義務を有する地位を失っているところ,改めて社会福祉法や被告法人
定款所定の手続を経ない限り,理事長や理事に就任することはできない
立場にあったのであるから,被告法人の理事長や理事等役員の選出に影
響を及ぼすべき立場にあったとも,法律上の利害関係を有していたとも
認められない。
エしたがって,原告らが被告法人理事会における一連の理事長等の選任
決議の無効確認を求める訴え(争点(1))及び他者である各役員が理事長
や理事等役員の地位にないことの確認を求める訴え(争点(3))は,いず
れも不適法であり却下すべきである。
オなお,被告Y5,被告Y9及び被告Y10が被告法人の理事及び評議
員の地位にないこと,被告Y11が被告法人の評議員の地位にないこと
は,いずれも当事者間に争いがない。しかしながら,法人を相手とする
役員の地位確認を請求する場合,事柄の性質上,何人にもその権利関係
の存在を認めるべきものであり,請求を認容する確定判決は対世効を有
すると解される(最高裁昭和44年7月10日第一小法廷判決・民集2
3巻8号1423頁)ところ,上記の役員たる地位の合一的確定の要請
は,役員の地位不存在確認においても同様というべきである。
したがって,本件において,当事者間に争いがないことをもって自白
の成立は認められないというべきである。
また,原告らは,被告法人理事会における理事長等の選任決議の無効
確認の訴えの中で,被告法人のみでなく,当該選任決議によって理事長
に選任されたとする被告Y1(甲事件),被告Y7(乙事件)を被告と
するが,上記訴えは,決議の効力自体を争うものであるから,法人のみ
に被告適格があるというべきであり(最高裁昭和36年11月24日第
二小法廷判決・民集15巻10号2583頁,最高裁昭和59年9月2
8日第二小法廷判決・民集38巻9号1121頁),この意味でも,原
告らの争点(3)にかかる被告Y1及び被告Y7に対する訴えは却下すべき
である。
(5)次に,原告ら自らが理事長等の権利義務を有する地位にあることの確認
を求める訴え(争点(2))については,現在,法律上の紛争が存在し,その
法律関係を確定することが適切かつ必要と認められるので,確認の利益を
否定することはできない。
しかしながら,既に検討したとおり,原告らは遅くとも平成12年12
月28日には確定的に理事長等の権利義務を有する地位を喪失したものと
認められるから,原告らの主張は理由がないというほかない。
3よって,主文のとおり判決する。
甲府地方裁判所民事部
裁判長裁判官新堀亮一
裁判官岩井一真
裁判官青木美佳

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