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判決言渡平成20年7月16日
平成19年(行ケ)第10434号審決取消請求事件
口頭弁論終結日平成20年7月14日
判決
原告日立ツール株式会社
訴訟代理人弁理士堀城之
被告オーエスジー株式会社
訴訟代理人弁理士池田治幸
同池田光治郎
主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
特許庁が無効2006−80111号事件について平成19年11月26日
にした審決を取り消す。
第2事案の概要
1本件は,発明の名称を「荒切削用総形フライス」とし原告を特許権者とする
特許第3354905号に対し,被告からその請求項1∼4につき特許無効審
判請求がなされたところ,差戻決定後においても特許庁が平成19年11月2
6日付けでこれを無効とする審決をしたことから,原告がその取消しを求めた
事案である。
,(「」),2争点は無効とされた請求項3に係る発明以下本件発明3というが
下記甲1,2に記載された発明との関係で進歩性(特許法29条2項)を有す
るか,等である。
なお,原告は無効とされた上記請求項1,2,4については,これを争わな
い。

・甲1:特開昭48−20176号公報(発明の名称「粗削りフライスカッ
ター,出願人株式会社神戸製鋼所,公開日昭和48年3月13」
日。以下この発明を「引用発明」という)
・甲2:特開平6−315817号公報(発明の名称「ラフィングエンドミ
」,,。ル出願人日立ツール株式会社公開日平成6年11月15日
以下この発明を「甲2発明」という)
・甲3:特開平11−267916号公報(特願平10−72461号の願
書に最初に添付した明細書及び図面,発明の名称「総形回転切削工
具,出願人オーエスジー株式会社,出願日平成10年3月20」
日,公開日平成11年10月5日。以下,この明細書及び図面を
「先願明細書」といい,そこに記載された発明を「先願発明」とい
う)
第3当事者の主張
1請求の原因
(1)特許庁等における手続の経緯
ア原告は,平成10年8月4日の優先権(日本)を主張して,平成11年
8月4日特許出願(特願平11−220850号)をし,平成14年9月
27日,名称を「荒切削用総形フライス」とする発明につき特許第335
(。〔〕。4905号として設定登録を受けた請求項1ないし4甲4特許公報
以下「本件特許」という。。)
これに対し,平成18年6月9日付けで被告から本件特許の請求項1な
いし4について特許無効審判請求がなされたので,同請求は無効2006
−80111号事件として係属したところ,特許庁は,平成19年1月2
2日「特許第3354905号の請求項1乃至4に係る発明についての,
特許を無効とする」旨の審決(第1次審決)をした。
イ原告は,平成19年2月28日に第1次審決の取消しを求める訴えを知
的財産高等裁判所に提起し(平成19年(行ケ)第10088号事件,)
平成19年4月10日付けで特許庁に上記特許の訂正審判請求(甲10)
をしたところ,同裁判所は,平成19年6月13日,特許法181条2項
に基づき上記審決を取り消す旨の決定(差戻決定)をした。
ウ上記決定により特許庁において特許無効審判請求につき再び審理される
ことになり,その中で原告は平成19年7月2日付けで上記訂正審判の請
求書に添付した明細書等を援用(特許法134条の3第3項。以下「本件
訂正」という)をしたが,特許庁は,平成19年11月26日「訂正を,
認めない。特許第3354905号の請求項1乃至4に係る発明について
の特許を無効とする」旨の審決(第2次審決)をし,その謄本は平成1。
9年12月5日原告に送達された。
そこでこれに不服の原告は,平成19年12月28日,上記審決(第2
次審決。以下単に「審決」という)の取消しを求める訴え(本件訴訟)を
知的財産高等裁判所に提起した。
エなお原告は,本件訴訟係属中の平成20年1月29日付けで,特許庁に
対し,本件特許の請求項1ないし4をさらに訂正することなどを内容とす
()(,),る訂正審判請求訂正2008−390011号をした甲56が
平成20年3月17日付けでこれを取り下げ(甲12,再び平成20年)
3月25日付けで本件特許の請求項1ないし4をさらに訂正することなど
を内容とする訂正審判請求をしている(甲13。)
(2)発明の内容
本件訂正前(設定登録時)の発明の内容は,次のとおりである(本件発明
3は【請求項3。】)
【請求項1】曲率が変化する曲線を含んだフォ−ムを形成する複数の
切れ刃を備えた総形フライスにおいて,該切れ刃には1刃と次刃とで
異なる位置に波形切れ刃を設け,該波形切れ刃は凸略円弧と凹略円弧
の連続した波形で形成したことを特徴とする荒切削用総形フライス。
【請求項2】請求項1記載の荒切削用総形フライスにおいて,該波形
切れ刃の凹凸の差は隣接する波形切れ刃凸部頂点の間隔の0.01倍
∼0.8倍,及び/または切れ刃に連なる凸略円弧の半径は該間隔の
.。02倍∼5倍の値で設けたことを特徴とする荒切削用総形フライス
【請求項3】請求項1または請求項2記載の荒切削用総形フライスに
おいて,切れ刃のフォ−ムがフライスの回転軸と直交する平面に対し
て30度以下の角度で傾斜するとき,該角度よりさらに小さい角度で
傾斜する直線部分を凸略円弧と凹略円弧の間に設けたことを特徴とす
る荒切削用総形フライス。
【請求項4】請求項1ないし請求項3記載の総形フライスにおいて,
切れ刃のフォ−ムの一部を切れ刃ごとに交互に間引いたことを特徴と
する荒切削用総形フライス。
()審決の内容3
ア審決の内容は別添審決写しのとおりである。その理由の要点は,①本件
訂正は本件明細書に記載した事項の範囲内のものではないからこれを認め
ない,②本件発明3は,引用発明,甲2発明及び周知技術から容易に発明
をすることができたから,特許法29条2項により特許を受けることがで
きない,③本件発明3は,先願発明と同一であり,特許法29条の2によ
り特許を受けることができない,等としたものである。
イなお,審決は,上記容易想到性の判断に関し,引用発明の内容を次のと
おり認定し,本件発明3との相違点は,本件発明1,2との共通の相違点
1∼3に加えて下記相違点4のとおりとした。
〈引用発明の内容〉
任意の曲線を含んだフォ−ムを形成する複数の切れ刃を備えたフラ
イスカッターにおいて,該切れ刃には波形切れ刃を設け,該波形切れ
刃は波形で形成した粗削りフライスカッター。
〈相違点1〉
本件発明1は「曲率が変化する曲線を含んだフォ−ムを形成する複,
数の切れ刃を備えた総形フライス」であるのに対して,引用発明は,任
意の曲線を含んだフォ−ムを形成する複数の切れ刃を備えたフライスカ
ッターである点。
〈相違点2〉
本件発明1では,切れ刃には1刃と次刃とで異なる位置に波形切れ刃
を設け,該波形切れ刃は凸略円弧と凹略円弧の連続した波形であるのに
対して,引用発明は,波形切れ刃が1刃と次刃とで異なる位置にあるか
否か,凸略円弧と凹略円弧であるか否か不明である点。
〈相違点3〉
本件発明2では「該波形切れ刃の凹凸の差は隣接する波形切れ刃凸,
部頂点の間隔の0.01倍∼0.8倍,及び/または切れ刃に連なる凸
略円弧の半径は該間隔の0.2倍∼5倍の値で設けた」のに対して,引
用発明ではそのように特定されていない点。
〈相違点4〉
本件発明3では「切れ刃のフォ−ムがフライスの回転軸と直交する,
平面に対して30度以下の角度で傾斜するとき,該角度よりさらに小さ
い角度で傾斜する直線部分を凸略円弧と凹略円弧の間に設けた」のに対
して,引用発明ではそのように特定されていない点。
ウまた審決は,特許法29条の2の適用に関し,先願発明の内容を次のと
おり認定し,本件発明3との一応の相違点は,本件発明1,2との共通の
相違点6,7に加えて相違点8のとおりとし,その余の点では一致すると
した。
〈先願発明の内容〉
曲率が変化する曲線を含んだフォ−ムを形成する複数の切れ刃を備え
た総形回転切削工具において,複数の切れ刃には,それぞれ径寸法が周
期的に滑らかに変化する波形のラフィング切れ刃が設けられているとと
もに,そのラフィング切れ刃の位相はその複数の切れ刃の相互間で軸方
向にずれており,このラフィング切れ刃は,径寸法変化が比較的小さい
部分に設けられる荒切削用総形回転切削工具。
〈相違点6〉
本件発明1では「該波形切れ刃は凸略円弧と凹略円弧の連続した波,
形で形成し」てあるのに対して,先願発明では,凸略円弧と凹略円弧の
波形は径寸法変化が比較的小さい部分に設けられる点。
〈相違点7〉
本件発明2では「該波形切れ刃の凹凸の差は隣接する波形切れ刃凸,
部頂点の間隔の0.01倍∼0.8倍,及び/または切れ刃に連なる凸
略円弧の半径は該間隔の0.2倍∼5倍の値で設けた」のに対して,先
願発明では,そのように特定されていない点。
〈相違点8〉
本件発明3では「切れ刃のフォ−ムがフライスの回転軸と直交する,
平面に対して30度以下の角度で傾斜するとき,該角度よりさらに小さ
い角度で傾斜する直線部分を凸略円弧と凹略円弧の間に設けた」のに対
して,先願発明では,そのように特定されていない点。
()審決の取消事由4
しかしながら,審決のうち本件発明3についての特許を無効とした部分
は,以下に述べる次第により誤りであるから,違法として取り消されるべ
きである。
ア取消事由1(容易想到性に関する相違点4についての判断の誤り)
(ア)審決は,相違点4についての判断につき「切れ刃のフォ−ムがフ,
ライスの回転軸と直交する平面に対して小さな角度で傾斜する部分を有
する総形フライスは例示するまでもなく従来周知であるとともに,切れ
刃のフォームの位置によって切削負荷等の切削性能が異なることも自明
である(18頁21行∼24行)とし,相違点4に係る本件発明3の」
特定事項のような直線部分を設けることは設計的事項にすぎないと判断
した。
しかし,本件発明3における直線部分については本件特許出願前の文
献に開示がなく,審決のこの認定は切れ刃のフォームの位置によって切
削負荷等の切削性能がどの程度異なるかとの本件発明3についての作用
,,「」,効果について検討せず単に自明であるからとしたものであって
その判断内容も誤りである。
(イ)さらに審決は「…本件発明3の作用効果についてみても,引用発,
明,甲第2号証に記載された発明及び従来周知の事項から当業者が予測
し得る範囲内のものであって,格別顕著なものとはいえない。したがっ
て,本件発明3は,引用発明,甲第2号証に記載の発明及び従来周知の
事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである」。
(18頁27行∼31行)と認定したが,これは本件発明3の顕著な効
果を看過したものであり,誤りである。
(ウ)すなわち,本件発明3には,以下に述べる顕著な効果があり,審決
はこれを看過している。
本件明細書(甲4)の段落【0012】には,最大直径118mm,
切れ刃の幅20mm,刃数8刃の実施例が,段落【0013】には「…
切削諸元は工具軸方向の切り込み15mm,工具半径方向の切り込み1
0mm,工具の回転数65回転/min,送り速度65mm/minで
ある。…」との記載がある。
ここで1刃当たりの送り量=送り速度÷工具の回転数÷刃数からする
と,1刃当たりの送り量fz=0.125mm/刃,となる。
そして,原告が本件明細書の図3,図5,図6(ただし,図6は,左
右を反転)を拡大して一つの図面上に記載した甲11に基づき計算する
と,本件発明3において切削する長さは,
図5(軸方向に平行)1×単位長さ
図6α(フォームの傾斜角)3.1×単位長さ
図6θ(切れ刃の傾斜角)5.7×単位長さ
と急傾斜部ほど長くなる。
次に,切屑の厚さは,
図5(軸方向に平行)1×fz
図6α(フォームの傾斜角)0.38×fz
図6θ(切れ刃の傾斜角)0.25×fz
と急傾斜部ほど薄くなる。
そうすると,本件発明3は,急傾斜部では,同時に切削する刃が3倍
以上に増え,かつ切屑の厚さは1/3程度と薄くなるため,切削負荷が
増し,擦過が起こりやすくなるのを直線部分を設けてこれを回避する顕
著な効果を奏するものである。
(エ)さらに本件発明3の作用効果を敷衍して説明すれば,本件発明3は
ガタつき・振動・切削抵抗の軽減等を解決しようとし,急傾斜部の波形
切れ刃が非切削物に擦過することにより生じることを見いだし,当該山
部分が非切削物に擦過しないように直線状にすることを発明したもので
ある。甲15(参考図4)は,原告代理人が本件明細書(甲4)の図5
を拡大して直線部分を頂点から底に向かう角度θの斜線で書き入れたも
のであるところ,波形切れ刃の刃先が,凸円弧状の刃先位置から斜線で
示した刃先位置に後退する。この時,波形切れ刃の大径側は通常の波形
切れ刃のまま,小径側には直線部分を設ける。これにより,波形切れ刃
の山部分の一部を後退させることにより,非切削物に擦過しないように
なるとともに,次刃の波形切れ刃,例えば,波形切れ刃の間隔と1/2
異なる位置に設けられた次刃では,次刃の波形切れ刃の大径側の山部分
では,2刃分の送り量に相当する分が切削されるため,擦過することな
く,通常に切削を行うことができる。本件発明3に係る直線部分につい
ては,このような顕著な効果を奏するものである。
(オ)なお被告は,本件発明3の構成は,本件明細書(甲4)の実施例に
,(【】)開示されておらず本件明細書の図6及びその説明段落0012
にも凸略円弧と凹略円弧の間に直線部分を設けた切れ刃形状が記載され
ていないから本件発明3は空虚なものであるとも主張するが,原告代理
人の作成した甲14(図面の直線性の検証)は本件明細書(甲4)の【】
図6を拡大して検証したものであるところ,これによれば凸略円弧と凹
略円弧との間に直線部分が存在することがみてとれるものである。
(カ)本件発明3に係る商品は,出願前から実験開発がされ,発電所のタ
ービンに用いられているものであることも付言する。
イ取消事由2(特許法29条の2の適用に関する相違点8についての判断
の誤り)
(ア)審決は,相違点8について「…本件発明3における直線部分の傾斜
角度に格別意味があるということはできず,また,該大径側の凸部円弧
と小径側の凹部をつなぐ滑らかな切れ刃として通常用いられる直線状と
する場合に,凸略円弧と凹略円弧とを滑らかに接続するためには切れ刃
のフォ−ムが傾斜する角度よりさらに小さい角度で傾斜する直線部分と
するのが普通であるから,上記相違点8は,課題解決のための具体化手
段における微差にすぎないものである。したがって,本件発明3は先願
発明と同一である(22頁6行∼12行)と認定した。。」
しかし,上記「本件発明3における直線部分の傾斜角度に格別意味が
あるということはできず」との審決の認定は,本件発明3に係る上記ア
(ウ)のとおりの顕著な効果を看過したもので,誤りである。
(イ)そもそも,審決が認定の根拠とする甲3(先願明細書)の図4の総
形フライスの急傾斜部は,総形フライスのフォームに合わせて設けられ
ており,図4の急傾斜部から直線部分は看取できないし,甲3の発明の
詳細な説明等にも直線である旨の記載や示唆も無い。
仮に直線部分が存在するとしても,先願発明(甲3)は,総形のフォ
ームが直線部分であったにすぎず,通常の切れ刃を設けたものであるの
に対し,本件発明3は急傾斜部での切削の状況に合わせて,波形切れ刃
の形状を変更したものであり,違いがある。
さらに,甲3の図4では総形のフォームを通常の切れ刃で結んでいる
にすぎないのに対し,本件発明3では急傾斜部での切削の状況に合わせ
て,波形切れ刃の形状を変更し,凸略円弧−直線部分−凹略円弧を一組
としてそれらが連続しているものであって,先願明細書(甲3)の図4
記載の発明と本件発明3とは明らかに異なるものであって,審決の認定
は誤りである。
(ウ)本件発明3の直線部分は,原告代理人が本件明細書(甲4)の図6
を拡大して作成した甲15(参考図4)において示すように,刃先を三
日月状のふくらみよりも直線部分として後退させ波形切れ刃の間隔凸,(
略円弧の頂点と次の凸略円弧の頂点との間隔)を表した寸法補助線と凸
略円弧の交点より,角度θ(甲4,図6に記載)の一次直線を設けたも
のであり,この直線部分の存在により上記ア記載の顕著な効果を奏する
ものである。
2請求原因に対する認否
請求原因()ないし()の各事実は認めるが,同()は争う。134
3被告の反論
審決の認定判断に誤りはなく,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。
()取消事由1に対し1
原告は,本件発明3の顕著な効果について「急傾斜部では同時に切削す,
る刃が3倍以上に増え,切屑の厚さは1/3程度と薄くなるため,切削負荷
が増し,擦過が起こりやすくなる」と結論付けるだけで「切削する刃」の,
定義,計算の根拠や目的も明らかではなく,切削する刃の増加及び切屑厚さ
の低下と切削負荷の増加との因果関係,切削負荷の増加と擦過が起こり易く
,,なることとの因果関係も不明でありそれらの間には技術的な整合性がなく
本件発明3には顕著な効果はない。
また本件明細書(甲4)の実施例についての段落【0012】における図
6についての説明では「図6は急斜面部分で波形切れ刃の底に斜面の角度,
よりさらに小さい角度の直線部分を設けたものである」と記載されている。
にすぎず,図6にも凸略円弧と凹略円弧の間に直線部分を設けた切れ刃形状
が記載されていない。結局,本件発明3は,本件明細書(甲4)の実施例に
記載されておらず空虚なものである。
(2)取消事由2に対し
甲3(先願明細書)の図4には,明らかに直線状の切れ刃が凸略円弧と凹
略円弧との間に設けられている点がみてとれる。また,図4の直線部分が通
常の切れ刃か否か及び総形のフォームを通常の切れ刃で結んでいるか否かは
原告の主観にすぎず,原告の主張は理由がない。
また,この直線部分は,切れ刃の急傾斜部分において凹凸を加工する際の
技術的な制約から加工条件に従って大なり少なり形成されるものであり,加
工条件を変化させることによって影響される直線部分をどのように形成する
かは単なる設計事項である。
第4当裁判所の判断
1請求原因(1)(特許庁等における手続の経緯,(2)(発明の内容,(3)(審))
決の内容)の各事実は,いずれも当事者間に争いがない。
2本件発明1,2,4についての特許を無効とした審決部分について
原告は,本件発明1,2,4についての特許を無効とした審決部分の違法事
由を何ら主張しないから,本訴請求のうち上記審決部分の取消しを求める部分
は理由がない。
3本件発明3についての特許を無効とした審決部分に関する取消事由1(容易
想到性に関する相違点4についての判断の誤り)について
(1)原告は,審決が本件発明3と引用発明との相違点4について,これを設
計的事項にすぎないとし,作用効果についても引用発明,甲2発明及び周知
技術から予測しうるもので格別顕著なものとはいえないとした点はいずれも
誤りであると主張するので,以下検討する。
(2)甲2(特開平6−315817号公報,発明の名称「ラフィングエンド
」,,),ミル出願人日立ツール株式会社公開日平成6年11月15日には
以下の記載がある。
ア特許請求の範囲
【請求項1】工具本体1の外周に複数のねじれた波形状の切れ刃2を有
する金属材料等の荒切削に用いるラフィングエンドミルにおいて,該波
形状の山部5のアール半径R1が工具外径3の1/10以下であり,谷
部6のアールR2半径が山部5のアール半径R1の0.4∼0.8倍で
あり,さらに該山部の頂点7間のピッチPが山部5のアール半径R1と
谷部6のアール半径R2の和の1.2∼1.8倍であることを特徴とす
るラフィングエンドミル。
【請求項2】工具軸直角断面における外周切れ刃2のすくい角αを5°
∼12°に設定したことを特徴とする請求項1記載のラフィングエンド
ミル。
【請求項3】工具材質に粉末高速度鋼または微粒子超硬合金を用いたこ
とを特徴とする請求項1ないし2記載のラフィングエンドミル。
イ発明の詳細な説明
・「従来の技術】金属材料等の荒切削に用いるラフィングエンドミル【
については,従来より,切れ刃にニックを施したものや切れ刃自体を波
形状にする等により,切り屑を分断し,かつ切削抵抗を軽減する工夫が
なされていた。後者は特開昭61−284313または,特開昭63−
34010に示されるように,鈍角側に主切れ刃を設け,波形状の位相
をずらす等,異常損耗の抑制及び切削抵抗の軽減等の工夫がなされてい
る(段落【0002)。」】
・「問題を解決するための手段】本発明は,上記の目的を達成するた【
めに,外周切れ刃において波形状の山部のアール半径R1を工具外径3
の1/10以下に設定し,該波形状の谷部のアール半径R2を山部のア
ール半径R1の0.4∼0.8倍に設定したものであり,かつ該山部の
頂点間のピッチPを山部のアール半径R1と谷部のアール半径R2の和
の1.2∼1.8倍に,また,工具軸直角断面における外周切れ刃のす
くい角αを5°∼12°に設定することにより一層の効果を得るという
技術的手段を講じたものである。…(段落【0006)」】
・「作用】本発明を適用することにより,切削抵抗を抑えたまま,切【
れ刃波形状の山部にかかる抵抗を分散し,チッピングおよび欠けの発生
を抑制することができ,長寿命化が計れる。ここで,山部のアール半径
R1が工具外径3の1/10を越えると谷部のアール半径R2をいくら
小さくしたところで波形状の山部頂点間のピッチPが大きくなり,かつ
波の高さHが低くなり,切り屑分断力が弱まり荒切削用としてのラフィ
ングエンドミルの効果が薄れる。また,谷部のアール半径R2が山部の
アール半径R1の0.8倍を越えるか,または0.4倍未満になると山
部に応力集中が発生し易くなる(段落【0007)。」】
・「さらに山部の頂点間のピッチの設定であるが,山部のアール半径R
1と谷部のアール半径R2の和の1.8倍を越えると前者同様の傾向,
.。,12倍未満であれば後者同様の傾向が見られるこれらの理由により
山部のアール半径,谷部のアール半径及び山部の頂点間のピッチを設定
した。…(段落【0008)」】
・「また,工具軸直角断面における外周切れ刃のすくい角αを5°∼1
2°に設定することにより,切れ味及び刃先強度がともに得られ,チッ
ピングおよび欠けの発生を一層抑制することができた。さらに,工具材
質に粉末高速度鋼または,微粒子超硬合金を用いた場合,従来耐チッピ
ング性に問題があり,短寿命となっていたが,本発明との相乗効果によ
り,より一層の長寿命化が計れ,かつ,とくに難削材の荒切削において
良好な切削が可能となった(段落【0010)。」】
ウ図面
・【図3】図3は図1の切れ刃部分拡大図である。
【図3】
・【図5】図5は本発明の切削過程を示す模式図である。
【図5】
()ア上記によれば,甲2には,本件発明3と同一の技術分野に属する,複3
数の波形切れ刃を備えた荒切削用エンドミルにおいて凸略円弧(波形状の
山部5)と凹略円弧(波形状の谷部6)との間に連続した波形の切れ刃を
形成すること(請求項1,アール半径R1の山部とアール半径R2の谷)
部との間は,なだらかに連続して接続しており(図3,図5,それらア)
ール半径(R1,R2)や山部の頂点間のピッチ(P)の設定は,切削抵
抗や切屑の分断力の強度等により決定されるものであること(段落【00
07【0008)がそれぞれ記載されている。】,】
そうすると,アール半径R1の山部とアール半径R2の谷部との間のな
だらかな接続部の形状は,切削抵抗や切屑の分断力等を考慮して,当業者
が適宜決定する事項であると理解することができる。
以上の検討によれば,引用発明における切れ刃の波形を設ける位置及び
波形の形状として,甲2に記載された凸略円弧と凹略円弧との間の連続し
た接続部の切れ刃を適用する際に,そのなだらかな接続部の形状を直線部
分とすること(相違点4の構成)も,当業者が適宜設定する設計的事項に
すぎないものと認められる。
イまた,上記(2)イによれば,甲2発明も,切り屑を分断し,切削抵抗を
低減する従来技術を踏まえ(段落【0002,切削抵抗を抑えたまま切】)
れ刃波形状の山部にかかる抵抗を分散して,チッピングおよび欠けの発生
を防いで長寿命化をはかる一方切り屑分断力が弱まるのを防ぎ段落0,(【
007,切れ味を保ち,良好な切削を可能とする(段落【0010)】)】
との作用効果を達成するものであることが認められる。
この点については引続き以下の作用効果の観点から検討する。
()ア甲1(特開昭48−20176号公報,発明の名称「粗削りフライス4
」,,。カッター出願人株式会社神戸製鋼所公開日昭和48年3月13日
引用発明)には,その作用効果に関し,以下の記載がある。
(ア)特許請求の範囲
「直径が漸次変化する切刃部にスパイラル状の切刃を形成するととも
に,該切刃を連続した螺旋状の波形に形成したことを特徴とする荒削り
フライスカッター」。
(イ)発明の詳細な説明
①「即ち,第3図に示されるように,柄部()に連続して切刃部先端12
から後端にいたるにしたがって直径が漸次変化する切刃部()を有13
し,該切刃部の外周面に工具軸の回りに巻回するスパイラル状の切刃
()となるように刃溝()を研削あるいは切削加工し,この切刃()141514
に前記刃溝と直交するように前記工具軸とわずかな角度でもって巻回
するつる巻線に沿って波形切刃()を形成したものであり…(2頁16」
左上欄2行∼9行)
②「…即ち,切刃部の直径の変化に起因し,小径部から大径部にいた
るにしたがいそのねじれ角がβ=20°∼β=44°と変化し(判14
決注:第4図のうちの上の図,このねじれ角の変化は,切刃の各部)
におけるアキシアルレーキに変化をもたらし,各切刃部の切削機構が
異なり,連続的に安定した切削加工を保証し得ず,また,切削工具の
製作過程に於ける刃溝加工時の加工工具の干渉によりラジアルレーキ
にも変化をもたらし,さらには,二番角も同様に均一な二番角とする
ことが困難となり,切削工具の加工精度にバラつきを生じるが,切刃
()が切刃部()の直径の変化に関係なく常に等角度のねじれ角αを1314
与える(判決注:第4図のうちの下の図)ことにより,各部における
アキシアルレーキ,ラジアルレーキは均一なものとなり,安定した切
削が可能となり,切削工具の精度も極めて高精度なものを得ることが
出来る(2頁右上欄1行∼16行)。」
③「切刃の形態による効果,即ち,切刃を波形に形成することにより
切刃に作用する切削抵抗を分散し,さらに,切削によって生成する切
屑が小さなものとなり,切屑相互の干渉を減少せしめ,重切削を可能
とし,極めて切削効率を高める等の効果を奏するものである(2頁。」
左下欄7行∼12行)
(ウ)図面
・第3図は本発明になる粗削りフライスカッターの説明図
【第3図】
・第4図は同じく本発明の粗削りフライスカッターの代表的な二つ
の形態を示す説明図
【第4図】
イ上記によれば,引用発明(甲1)も,切刃を連続した螺旋状の波形に形
成し(特許請求の範囲の記載,安定した切削を可能とし切削工具の精度)
も安定させることができ(発明の詳細な説明②,切刃に作用する切削抵)
抗を分散し,切削によって生成する切屑も小さなものとなるとの効果を奏
する(同③)ことが認められる。
()ア一方,本件明細書(特許公報,甲4)には以下の記載がある。5
(ア)発明の詳細な説明
・「産業上の利用分野】本願発明は,工作機械で曲率が変化する曲【
線を含んだフォ−ムの荒切削に用いる総形フライスに関する(段落。」
【0001)】
・「発明が解決しようとする問題点】ところが従来技術に記載した【
ニック付きの総形フライスは,切屑の分断に着目していたため,切れ
刃長さに比してニックとニックの間隔が広くて切削抵抗の改善効果は
なく,したがって荒切削用として切削条件を高めて加工能率を向上さ
せることを期待できるものではなかった。また,V字形,U字形ニッ
クを不用意に設けると切れ刃とニックの交差部に損耗が集中して切削
精度を損なうことがあり,工具寿命が短く,荒切削と言えども総形フ
,,ライスに採用するには問題があり特に曲率の大きなフォ−ムの場合
フライスの回転軸に対して大きな角度で傾斜するフォ−ムの場合等で
は問題である(段落【0003)。」】
・「本願発明の目的】本願発明は以上のような背景のもとになされ【
たものであり,総形フライスのニックの形状及び配置を改良すること
によって,複雑なフォ−ムであっても良好な切屑排出性を得るととも
に,切削抵抗を減じて送り速度を高めることができる加工能率を向上
させた荒切削用の総形フライスを提供することを目的とする(段落。」
【0004)】
・「作用】本発明を適用することにより,波形切れ刃により切れ刃【
,,,長さが長い場合であっても切屑を細かくし排出を容易にできまた
波形切れ刃の主切れ刃とその側面切れ刃とを丸みをもって滑らかに連
なるようにしたから,切れ刃の損耗が局部に偏ることがなく,切削条
件を高めることが可能となり,また成形したフォ−ム上に波形切れ刃
に起因する食い込み傷やバリ等の発生がなく,滑らかな加工面を得る
ことができる(段落【0006)。」】
「,,・該波形切れ刃は凸略円弧と凹略円弧の連続した波形状とし更に
波形切れ刃の凹凸の差は隣接する波形切れ刃凸部頂点との間隔の0.
01倍∼0.8倍としたのは,0.01倍未満では切り屑を十分に分
断することができず,0.8倍を越えると滑らかに結びづらくなるた
め,波形切れ刃の深さは隣接する波形切れ刃との間隔の0.01倍∼
0.5倍とした。また,切れ刃に連なる凸円弧の半径を該間隔の0.
2倍∼5倍としたのは,0.2倍未満では円弧が小さすぎて設ける意
味が無く,5倍を越えた大きな値で設けると切れ刃として長くなり過
ぎるため,切れ刃に連なる凸略円弧の半径は該間隔の0.2倍∼5倍
とした。これらの数値とすることにより,波形切れ刃間隔を小さくし
て1刃の波形切れ刃と次刃の波形切れ刃とが位置をずらして重なった
ラフィング刃様とすることができ,このとき波形切れ刃によって切れ
刃の輪郭が総形フォ−ムから外れることがあったとしても該波形切れ
刃の深さは上述の範囲で浅くてもよいから成形するフォ−ムの狂いを
。,,,極小に抑えることができるまたV字形U字形切れ刃においても
波形切れ刃同様に主切れ刃部を大きな円弧で滑らかに結ぶことにより
同様の作用,効果を得ることができる(段落【0008)。」】
「,,・次に総形フライスの切れ刃のフォ−ムは多岐多様にわたるため
その態様について説明する。まず,切れ刃のフォ−ムが該フライスの
回転軸と直交する平面に対して小さな角度である場合には,切れ刃の
,,斜面が切削するように作用し切屑厚みが薄くなって擦過現象が増し
また波形切れ刃を刻み込む方向が切削方向とは一致しなくなるため,
その効果が希薄になって切削抵抗が増加する。従って切れ刃のフォ−
ムが30゜以下の角度で傾斜するときは,該角度より小さい角度で傾
斜する直線部分を凸略円弧と凹略円弧の間に設けることによって波形
切れ刃凸部頂点の間隔を大きくして本来の波形切れ刃の効果を得るこ
とができる(段落【0009)。」】
・「実施例】図3は,最大直径は118mm,切れ刃の幅は20m【
m,刃数8刃の総形フライスである。総形のフォ−ムは図4に拡大図
示されているように,最外周部を構成する凸円弧部とこれに連なる急
斜面と小径部を構成する凹円弧部からなっている。波形切れ刃は切れ
刃に沿って深さ0.2mm,幅1∼1.5mmの間隔で設けている。
ここで,波形切れ刃の詳細は図5,図6のとおりである。すなわち,
図5は最外周の凸円弧部に設けた凸略円弧と凹略円弧の連続した波形
状の波形切れ刃を示し,図6(判決注:本件発明3の構成に相当)は
急斜面部分で波形切れ刃の底に斜面の角度よりさらに小さい角度の直
線部分を設けたものである(段落【0012)。」】
・「これを用いてステンレス鋼SUS410材の平板を上記のフォ−
ムに成形切削を行った。切削諸元は工具軸方向の切り込み15mm,
工具半径方向の切り込み10mm,工具の回転数65回転/min,
送り速度65mm/minである。本発明例では,加工物1ケを45
分で完成させることができた。比較のため,同一フォ−ムを加工する
従来技術に記載したカッタを用いた場合は,回転数を大きくできない
ため,加工物1ケに250分を要していた(段落【0013)。」】
・「発明の効果】以上のように本願発明によれば,波形切れ刃の形【
状及び配置を改良することによって良好な切屑排出性を得るととも
に,切削抵抗を減じて送り速度を高めることができる加工能率を向上
させた荒切削用の総形フライスが得られたのである(段落【001。」
5)】
(イ)図面
・図6】図6は,図3の他1部の波形切れ刃の構成を示す。【
【図6】
イ上記によれば,本件発明3も,波形切れ刃の形状及び配置を改良するこ
とにより良好な切屑排出性を得るとともに,切削抵抗を減じて送り速度を
高めることができ加工能率を向上させる効果を奏するものであるところ
(段落【0015,その具体的な効果については段落【0013】に記】)
載があるものの,そこには本件発明3に係る実施例として「切削諸元は工
具軸方向の切り込み15mm,工具半径方向の切り込み10mm,工具の
回転数65回転/min,送り速度65mm/minである。本発明例で
は,加工物1ケを45分で完成させることができた」とし,これとの比。
較例として「同一フォ−ムを加工する従来技術に記載したカッタを用いた
場合は,回転数を大きくできないため,加工物1ケに250分を要してい
た」とあるのみであって,本件発明3の奏する作用効果も,甲2発明,。
引用発明に比し格別顕著なものともいえないというべきである。
ウ以上の検討によれば,審決が,相違点4につき,当業者(その発明の属
する技術の分野における通常の知識を有する者)が適宜設計することので
きた設計的事項にすぎないとした点,及び本件発明3の作用効果も,引用
発明,甲2発明等から当業者が予測し得る範囲内のものであるとし,結論
として本件発明3が引用発明,甲2発明,及び周知技術に基づき容易に発
明できたと判断したことに誤りはないというべきである。
()原告の主張に対する補足的判断6
ア原告は,審決は切れ刃のフォームの位置によって切削負荷等の切削性能
がどの程度異なるかを検討せず,単に自明であるからとし,本件発明3の
作用効果について,急傾斜部では,同時に切削する刃が3倍以上に増え,
且つ,切屑の厚さは1/3程度と薄くなるため,切削負荷が増し,擦過が
起りやすくなるのであり,従来における刃において切削負荷等が増し擦過
が起こりやすくなるものが存在することを主張して,切れ刃のフォームの
位置によって切削負荷等の切削性能がどの程度異なるかを検討していない
し,また本件発明3に係る顕著な効果を看過していると主張する。
しかし,引用発明における切れ刃の波形を設ける位置及び波形の形状と
して,甲2に記載された凸略円弧と凹略円弧との間の連続した接続部の切
れ刃を適用する際,そのなだらかな接続部の形状を直線部分とすることは
当業者が適宜設定することができた事項であることは上記で検討したとお
りであり,また原告の主張は,従来技術に属する刃において切削負荷等が
増し擦過が起こりやすくなるものが存在するということだけであり,本件
発明3が従来におけるものと比較して,どのような格別の差異が生じるも
のであるのかについて何ら示していないうえ,本件発明3の作用効果が格
別のものと認められないことは上記のとおりである。したがって,原告の
上記主張は採用することができない。
イまた原告は,本件発明3の作用効果として,本件発明3はガタつき・振
動・切削抵抗の軽減等を解決するため,急傾斜部の波形切れ刃が非切削物
に擦過することにより生じることを見いだし,当該山部分が非切削物に擦
,,過しないように直線状にすることを発明した甲15の参考図4によれば
波形切れ刃の山部分の一部を後退させることにより,非切削物に擦過しな
いようになるとともに,次刃の波形切れ刃,例えば,波形切れ刃の間隔の
1/2異なる位置に設けられた次刃では,次刃の波形切れ刃の大径側の山
部分では,2刃分の送り量に相当する分が切削されるため,擦過すること
なく,通常に切削を行うことができるとの顕著な効果を奏するものである
と主張する。
しかし甲2にも,上記(2)イに摘記したように段落【0002】には鈍
角側に主切れ刃を設け波形上の位相をずらす等の記載がされており,原告
が主張する「次刃の波形切れ刃,例えば,波形切れ刃の間隔の1/2異な
る位置に設けられた次刃では,次刃の波形切れ刃の大径側の山部分では,
2刃分の送り量に相当する分が切削されるため,擦過することなく,通常
に切削を行う」ことができる。さらに,上記(2)記載の甲2の段落【00
06】∼【0008】の記載,及び図3,図5からすると,甲2において
もアール半径R1の山部とアール半径R2の谷部との間は,なだらかに連
,,続して接続しておりそれらアール半径や山部の頂点間のピッチの設定は
切削抵抗や切屑の分断力の強度等により決定されるものであることが記載
されていて,アール半径R1の山部とアール半径R2の谷部との間のなだ
らかな接続部の形状も,切削抵抗や切屑の発生等を考慮して,当業者が適
宜決定する事項であると解されることも既に検討したとおりである。そう
すると,非切削物に擦過しないように波形切れ刃の山部分の一部を後退さ
せ直線部分とするとの原告主張の本件発明3の構成についても,当業者に
おいて容易に想到できたものと認められる。したがって,原告の上記主張
は採用することができない。
ウなお原告は,原告代理人の作成した甲14(図面の直線性の検証)【】
は本件明細書(甲4)の図6を拡大して検証したものであるところ,これ
によれば凸略円弧と凹略円弧との間に直線部分が存在することがみてとれ
るとも主張する。
しかし,本件明細書(甲4)の図6は,上記(5)ア(イ)記載のとおりで
あり,角θが図面に図示され,凹凸の波形の切り刃に,角θの直線が図示
されているだけで,凸略円弧と凹略円弧の間に直線部分を設けた切れ刃形
状がこの図6に記載されているかについては不明であるといわざるを得な
い。なお,原告代理人の作成した上記甲14は,図6の拡大図から抽出し
た点を原告代理人がX−Y軸上にプロットし,最小自乗法により直線を求
め,図6に重ね記載したとするものであるところ,相関係数と寄与率との
関係で直線を導き出すとする仮定に基づくものであるから,この計算によ
り導き出される直線が本件明細書(甲4)の図6に示されているとは到底
いえないというべきである。したがって,原告の上記主張は採用すること
ができない。
()以上によれば本件発明3が引用発明及び甲2発明との関係で進歩性特7,(
許法29条2項)を有しないとした審決の判断は正当として是認できる。し
たがって,その余(取消事由2)について判断するまでもなく,本件発明3
についての特許を無効とした審決部分の取消しを求める請求も理由がない。
4結語
よって,原告の請求は全て理由がないことになるからこれを棄却することと
して,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官中野哲弘
裁判官今井弘晃
裁判官清水知恵子

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