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平成28年6月2日判決言渡
平成28年(行コ)第21号地位確認等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成
27年(行ウ)第417号,第426号,第427号)
主文
1本件控訴をいずれも棄却する。
2控訴人らの当審における追加請求に係る訴えをいずれも却下する。
3当審における訴訟費用は控訴人らの負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2被控訴人らに適用される公職選挙法別表第3の東京都選挙区及び神奈川県選
挙区に関する配分議員数(東京都12名,神奈川県8名)は,憲法前文,同第
14条及び選挙権に関するその他の憲法各条に違反し無効であることを確認す
る。
3控訴人らが,次回の平成28年施行予定の参議院議員通常選挙について,議
員1人当たりの人口が平等に配分された状態で選挙権の行使をすることができ
る権利を有することを確認する。
4内閣は,前記2の状態が解消されるまで,平成28年施行予定の参議院議員
通常選挙を行ってはならない。
5内閣は,国会に対し,遅くとも平成28年5月31日までに,前記2の状態
を解消する法律案を提出せよ。
第2事案の概要
1本件は,平成28年に施行予定の参議院議員通常選挙(以下「本件選挙」と
いう。

の選挙人となることが予定されている控訴人らが,
参議院選挙区選出議
員(以下,単に「議員」ということがある。
)の選挙区及び各選挙区において選
挙すべき議員の数を定める公職選挙法別表第3の定めは,平成27年7月28
日に成立した公職選挙法の一部を改正する法律(平成27年法律第60号)に
よる改正後も,人口に比例して議員の数を配分する内容となっておらず,憲法
の定める代議制民主制
(前文,
43条1項)

公務員の選定罷免権
(15条1項)

選挙権の平等(14条1項,44条)等に違反しているなどとして,①本件選
挙について,控訴人らが,参議院選挙区選出議員の選挙区間における投票価値
の著しい不平等状態が解消されて議員が人口に比例して配分された法律に基づ
いて投票をすることができる地位にあることの確認(以下,同確認請求に係る
訴えを「本件確認の訴え」という。

,②内閣が参議院選挙区選出議員の選挙区
間における投票価値の著しい不平等状態のもとで本件選挙を実施することの差
止め(以下,同差止め請求に係る訴えを「本件差止めの訴え」という。

,③内
閣が国会に対し参議院選挙区選出議員の選挙区間における投票価値の著しい不
平等状態を解消して議員を人口に比例して配分する法律案を提出することの義
務付け(以下,同義務付け請求に係る訴えを「本件義務付けの訴え」という。

を求めた事案である。
原判決は,控訴人らの本件各訴えをいずれも不適法なものとして却下したと
ころ,これに不服の控訴人らが控訴をした。
控訴人らは,当審において,上記①の訴えを,本件選挙について,控訴人ら
が,議員1人当たりの人口が平等に配分された状態で選挙権の行使をすること
ができる権利を有することの確認請求(前記第1の3)に,上記②の訴えを,
控訴人らに適用される公職選挙法別表第3の配分議員数につき違憲無効の状態
が解消されるまで,内閣が本件選挙を実施することの差止め請求(前記第1の
4)に,上記③の訴えを,内閣が,国会に対し,控訴人らに適用される公職選
挙法別表第3の配分議員数につき違憲無効の状態を解消する法律案を提出する
ことの義務付け請求(前記第1の5)にそれぞれ変更した(変更後の各訴えに
ついても,変更前と同様,それぞれ「本件確認の訴え」

「本件差止めの訴え」

「本件義務付けの訴え」と呼称する。

。また,控訴人らは,当審において,控
訴人らに適用される公職選挙法別表第3の東京都選挙区及び神奈川県選挙区に
関する配分議員数が憲法に違反し無効であることの確認
(前記第1の2。
以下,
同確認請求に係る訴えを「本件配分無効確認の訴え」という。
)を求める訴えを
提起し,前記各請求に係る訴えと併合審理された。
2前提事実及び当事者の主張の要点は,次項のとおり原判決を補正し,第4項
のとおり本件配分無効確認の訴えに関する控訴人らの主張を付加するほかは,
原判決の「事実及び理由」欄の「第2事案の概要等」の2及び3に記載のと
おりであるから,これを引用する。
3原判決の補正
(1)7頁5行目から次行にかけての
「選挙権が侵害されない状態で投票できる
地位にあることの確認」を「選挙権が侵害されない,すなわち議員数が平等
に配分された状態で選挙権の行使をすることができる権利を有することの確
認」に改める。
(2)8頁15行目から次行にかけての
「法律に基づいて投票できる地位にある
ことの確認」を「状態で選挙権の行使をすることができる権利を有すること
の確認」に改める。
(3)9頁7行目から12行目までの全文を削る。
4本件配分無効確認の訴えについて(控訴人らの当審における追加請求)
選挙区間における投票価値の著しい不平等状態が解消されなければならない
ことは,平成26年大法廷判決が明らかにしたとおりである。そして,憲法が
特定の選挙制度の採用までは求めていないとしても,国会議員の定数配分が人
口に比例していなければならないことは憲法上の要請であり,裁判所が判決に
おいてこの憲法の趣旨を明らかにすることは,司法権の作用として何ら問題は
ない。本件配分無効確認の訴えは,裁判所に特定の立法の採用を求めているの
ではなく,人口分布に比例した議員数の配分がされていない平成27年法が憲
法14条等に反して無効であることの確認を求めるものにすぎず,これは有権
者である控訴人らと被控訴人との公法上の法律関係についての確認の訴えとし
て認められるべきである。
第3当裁判所の判断
1当裁判所も,控訴人らの訴え(当審における追加請求を含む。)はいずれも
不適法であるから,その訴えを却下すべきものと判断する。その理由は,次項
のとおり原判決を補正し,第3項のとおり控訴人らの当審における追加請求に
対する判断を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第3当裁判
所の判断」の1及び2に認定説示するとおりであるから,これを引用する。
2原判決の補正
(1)25頁18行目の「訴えを提起している」の次に「(その後,当審におい
て,ほぼ同趣旨の選挙権の行使をすることができる権利を有することの確認
請求に訴えを変更した。)」を加え,21行目の「その状態が解消された」
から次行の「地位にあることの確認」までを「それが解消され選挙権が平等
に配分された状態,すなわち新たな法律による平等な定数配分のもとで選挙
権の行使をすることができる権利を有することの確認」に改める。
(2)26頁26行目の
「投票することができる地位を有することになる」

「選
挙権を行使することができる状態になる」に改める。
(3)27頁4行目の「地位にあること」の次に「やそのような選挙権の行使を
することができる権利を有すること」を加える。
(4)27頁13行目の「地位の確認を求める利益」を「権利の確認を求める利
益」に改め,21行目末尾の次に改行して以下のとおり加える。
「また,控訴人らは,本件確認請求について裁判所が選挙制度や基準を設
定することを求めているのではなく,憲法上保障されている権利の確認を
求めているにすぎないと主張する。しかしながら,本件選挙において控訴
人らが行使することになる選挙権の内容は,前記(2)に説示するとおり,国
会においてその裁量的判断で定められる具体的選挙制度により決定される
ものであり,そこでは投票価値の平等が唯一,絶対の基準となるものでは
ないのであり,それにもかかわらず,裁判所が「議員1人当たりの人口が
平等に配分された状態」での選挙権行使を控訴人らの権利として認める判
断をするには,その前提として,裁判所において,単に憲法の定めやその
趣旨を一般的,抽象的に確認するにとどまらず,前記「平等に配分された
状態」を示す具体的な選挙制度の内容やあるべき基準を定めることが不可
欠となる。そして,国会が具体的な選挙制度を決定する前に,裁判所がそ
のような内容を定め,有権者がそれに基づく選挙権の行使をする権利を有
することの確認をするようなことは,三権分立の趣旨に反するものといわ
ざるを得ない。」
(5)28頁8行目末尾の次に「この点,控訴人らは,全ての行政事務の頂点に
立つ内閣に対して選挙に関する全ての事務を行わないよう求めるものである
などと主張するが,本件差止めの訴えの請求として示された「内閣は(…)
平成28年施行予定の参議院議員通常選挙を行ってはならない。」との内容
に,前記の各国家機関の行為(これには内閣が行為主体となっていないもの
も含まれる。)が全て含まれると解し得るか疑問であり,内閣が行為主体と
なっていない行為と本件差止めの訴えとの関係も不明である。そうすると,
控訴人らの上記主張を斟酌しても,控訴人らが差止めを求める対象が特定さ
れているということはできない。」を加える。
3本件配分無効確認の訴えに対する判断
(1)控訴人らは,同人らに適用される公職選挙法別表第3の東京都選挙区及び
神奈川県選挙区に関する配分議員数が憲法に違反し無効であることの確認を
求める請求を当審で追加し,その訴えは公法上の法律関係の確認を求める訴
え(行政事件訴訟法4条)であると主張するが,このような訴えが適法であ
るというためには,前記引用に係る原判決の理由中の第3の1(1)で説示する
とおり,その対象が「法律上の争訟」として,①当事者間の具体的な権利義
務ないし法律関係の存否に関する現実の紛争であって,かつ,それが②法令
の適用によって終局的に解決できるものであることを要する。
しかしながら,
本件配分無効確認の訴えについて,
その請求内容をみれば,
控訴人らと被控訴人との間の具体的な現実の紛争を離れ,公職選挙法別表第
3の定める内容が憲法に反するものであることを一般的,抽象的に確認する
よう求めるものであると認められ,「法律上の争訟」に当たるとみることは
できない。
(2)この点,控訴人らは,同人らに適用される場面における違憲無効の確認を
求めているから,抽象的に法令の違憲審査を求めているものではないと主張
するが,
公職選挙法を始めとする法律は,
広く一般人を名宛人とする一般的,
抽象的法規範としての性格を有するものであることに照らせば,特定人との
関係における法律の適用場面のみを取り上げて当該法律の合憲性を判断しよ
うとしても,当該法律の一般的合憲性を判断することと実質において異なら
ないというべきである。また,本件選挙も実施されていない現時点で,公職
選挙法別表第3の定めがその適用を受ける特定個人の具体的権利義務や法的
地位に直接影響を及ぼしているとは認められないから,
その合憲性について,
控訴人らと被控訴人との間の関係のみを取り出して見る実質的利益があると
もいえない(控訴人らが主張するような選挙権の価値に関する具体的紛争が
被控訴人との間にあるということはできない。)から,控訴人らのこの点の
主張は前記判断を左右するものではない。
(3)よって,本件配分無効確認の訴えは不適法であるといわざるを得ない。
4結論
以上によれば,控訴人らの本件訴えをいずれも不適法であるとして却下した
原判決は相当であり,本件控訴はいずれも理由がないから,これを棄却し,控
訴人らの当審における追加請求に係る訴えも不適法なものであるから,その訴
えを却下することとして,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第21民事部
裁判長裁判官中西茂
裁判官畠山新
裁判官藤田正人

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