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平成30年3月28日判決言渡同日原本交付裁判所書記官
平成27年(ワ)第21897号著作権侵害行為差止等請求事件
平成28年(ワ)第37577号損害賠償請求反訴事件
口頭弁論終結日平成29年12月18日
判決5
本訴原告・反訴被告eBASE株式会社
(以下,単に「原告」という。)
同訴訟代理人弁護士中紀人
同橋本芳則10
同森本純
同橋本阿友子
同藤田雄功
同安井祐一郎
同中原卓也15
同訴訟復代理人弁護士芳賀彩
本訴被告・反訴原告株式会社インフォマート
(以下,単に「被告」という。)
同訴訟代理人弁護士高田弘明20
同牧野義信
同加藤春恵
同近藤秀和
同赤島篤
同日野英一郎25
主文
1原告の本訴請求をいずれも棄却する。
2被告の反訴請求をいずれも棄却する。
3訴訟費用は,本訴反訴を通じてこれを10分し,そ
の9を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。
事実及び理由5
第1請求
1本訴請求
⑴被告は,別紙1被告物件目録記載のデータベースを複製し,又は公衆送信(送
信可能化を含む。)してはならない。
⑵被告は,別紙1被告物件目録記載のデータベース及びその複製物(同データ10
ベースを格納した記録媒体を含む。)を廃棄せよ。
⑶被告は,原告に対し,10億円及びこれに対する平成27年9月2日から支
払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2反訴請求
⑴原告は,被告に対し,1億1000万円及びこれに対する平成28年10月15
1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
⑵原告は,別紙2謝罪広告目録記載の謝罪広告を,同目録記載の条件で各1回
掲載せよ。
第2事案の概要等
1請求の概要20
⑴本訴事件
本訴事件は,原告が,被告に対し,次の請求をする事案である。下記ア③,イ及
びウの各損害賠償請求は,選択的併合の関係にある。
ア著作権侵害を原因とする請求
被告がその管理するサーバ内に構築して顧客に提供している別紙1被告物件目録25
記載のデータベース(以下「被告データベース」という。)は,原告が著作権を有
するデータベース(⑴被告が提供していたサービスである「FOODS信頼ネット」
にデータが登録・蓄積されて形成されたデータベース,又は⑵原告が開発したデー
タベースパッケージソフトウェア「eBASEserver」そのもの。原告は,
この「eBASEserver」がデータベースの著作物に当たると主張している。
なお,原告の主張によれば,「eBASEserver」には,特に対象業界を問5
わないベースソフトウェアと,このベースソフトウェアに食品業界向け情報交換プ
ラットフォームとして動作するためのオプションソフトウェアを加えたものとがあ
るが,以下,「eBASEserver」というときは,特段の断りがない限り後
者を指す。)の複製物又は翻案物であるから,被告が被告データベースを作成する
ことは,原告が有する上記各データベースの著作物の複製権又は翻案権を侵害し,10
被告が被告データベースを顧客にサービスとして提供することは,原告が有する上
記各データベースの公衆送信権を侵害するなどとして,原告が,被告に対し,①著
作権法112条1項に基づき被告データデースの複製及び公衆送信(送信可能化を
含む。以下同じ。)の差止めを求め,②同条2項に基づき被告データベース及びそ
の複製物(被告データベースを格納した記録媒体を含む。)の廃棄を求めるととも15
に,③著作権侵害の不法行為による損害賠償請求権(対象期間は,平成19年4月
1日から平成27年8月4日までである。)に基づき,損害賠償金12億6500
万円の一部請求として,10億円及びこれに対する不法行為後の日である平成27
年9月2日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を請
求するもの。20
イ債務不履行を原因とする請求
被告が,原告から取得した「eBASEserver」のデータベース仕様に基
づいて被告データベースを構築したことは,原被告間の平成19年4月1日付け使
用許諾契約書による契約(以下「本件使用許諾契約」という。)に違反するとして,
債務不履行に基づき,損害賠償金42億1800万円の一部請求として,10億円25
及びこれに対する請求後の日である平成27年9月2日から支払済みまでの民法所
定年5分の割合による遅延損害金の支払を請求するもの。
ウ一般不法行為を原因とする請求
被告が,原告から取得した「eBASEserver」のデータベース仕様を剽
窃して被告データベースを構築したことは,法的保護に値する利益であるところの
体系的構成であるデータベース構造及び原告の営業活動の利益を侵害する不法行為5
であるとして,不法行為による損害賠償請求権に基づき,損害賠償金12億650
0万円の一部請求として,10億円及びこれに対する不法行為後の日である平成2
7年9月2日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を
請求するもの。
⑵反訴事件10
反訴事件は,被告が,原告に対し,次の請求をする事案である。下記イ①及びウ
①の各損害賠償請求,また,下記イ②及びウ②の各謝罪広告請求は,それぞれ選択
的併合の関係にある。
ア本訴の提起が不法行為に当たることを原因とする請求
原告が本訴を提起したことは,裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠15
くものであって,被告に対する不法行為を構成するとして,被告が,原告に対し,
不法行為による損害賠償請求権(民法709条,715条,会社法350条)に基
づき,損害賠償金6億5257万円の一部請求として,1億円及びこれに対する不
法行為後の日である平成28年10月1日から支払済みまでの民法所定年5分の割
合による遅延損害金の支払を請求するもの。20
イ名誉毀損を原因とする請求
原告が虚偽の事実を記載した本訴の訴状及び平成27年8月20日付け訴状訂正
申立書(以下,併せて「訴状等」という。)を提出し,被告の平成27年9月1日
付けプレスリリース(別紙4。以下「被告プレスリリース」という。)に引き続き,
虚偽の事実を記載した同月2日付けプレスリリース(別紙5。以下「原告プレスリ25
リース」という。)を原告のウェブサイトの「IR情報」欄に掲載し,同年10月
7日に開かれた本件の第1回口頭弁論期日において訴状等を陳述した一連の行為,
又はこれら個別の行為がそれぞれ,被告の名誉を毀損する不法行為を構成するとし
て,被告が,原告に対し,①不法行為による損害賠償請求権(民法709条,71
5条,会社法350条)に基づき,損害賠償金5000万円の一部請求として,1
000万円及びこれに対する不法行為後の日である平成28年10月1日から支払5
済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を請求するとともに,②
民法723条に基づき,別紙2の要領にて謝罪広告を各1回掲載するよう請求する
もの。
ウ不正競争防止法(以下「不競法」という。)に基づく請求
原告が原告プレスリリースを掲載した行為が,不競法2条1項15号の不正競争10
行為を構成するとして,被告が,原告に対し,①不競法4条に基づき,損害賠償金
4000万円の一部請求として,1000万円及びこれに対する不正競争行為後の
日である平成28年10月1日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅
延損害金の支払を求めると共に,②不競法14条に基づき,別紙2の要領にて謝罪
広告を各1回掲載するよう請求するもの。15
2前提事実(当事者間に争いがないか,後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容
易に認められる事実。なお,本判決では,書証の枝番号の標記は省略した。)
⑴当事者
原告は,情報処理サービス業並びに情報提供サービス業,情報通信ネットワーク
システムのコンサルティング,開発,設計,施工,保守並びに販売等を目的として20
設立された株式会社である。
被告は,食料品及び日用雑貨の販売,食料品及び日用雑貨の通信販売等を目的と
して設立された株式会社である。
⑵「FOODS信頼ネット」の開発・運営
ア原告と被告は,平成16年9月1日,次の条項を含む「業務提携契約書」(甲25
9。以下「本件業務提携契約書」といい,同契約書により締結された契約を「本件
業務提携契約」という。)を取り交わした。
「第1条(目的)
1.本契約は,甲(判決注:被告をいう。以下同じ。)および乙(判決注:原告
をいう。以下同じ。)が,甲が提供する商品規格書サービス(以下「本サー
ビス」という。)を共同して構築推進するとともに,相互に各々が持つ商品5
およびサービスの拡販を行うことに関する,業務提携の内容を定めるもので
あり,甲乙双方の発展繁栄を主たる目的とするものである。」
「第2条(提供業務内容)
1.甲および乙は,第1条の目的を実現するために,以下の事業を行う。
①甲および乙は共同して,商品・原材料規格書の標準フォーマット(以下「標10
準規格書」という)を策定する。
②甲および乙は共同して,策定した標準規格書が業界標準となるよう働きか
けを行う。
③甲は,本サービスとして以下の内容を行う。
・各事業者からの標準規格書に準拠した情報データの収集を行う。15
・収集したデータの各事業者および消費者への公開を行う。
・各事業者間の標準規格書に準拠した情報データの交換サービスを行う。
④乙は,本サービスに必要なシステム(以下「本システム」という)の開発,
構築を行う。
⑤甲および乙は各事業者向けに,「乙の保有するソフトウェア商品であるe20
BASE,eBASEserver,およびそのシリーズ商品」(以下「e
BASEシリーズ」という)および,本サービスの拡販と導入支援を行う。
〔以下略〕」
「第4条(知的財産権)
1.標準規格書および本システムに関する著作権(著作権法第27条及び第225
8条の権利を含む)及び著作者人格権(著作権法第18条から第20条の権
利をいう)並びにそれに含まれるノウハウ,アイデア,コンセプト,技術,
または特許等の知的財産権は,甲に帰属するものとする。但し,本システム
を設計,開発するにあたって,乙より提供されたeBASEシリーズ等の著
作物については乙に帰属するものとする。
〔以下略〕」5
イ原告は,本件業務提携契約に基づき,食品業界の各事業者が標準フォーマッ
トに準拠した商品・原材料規格書情報をネットワークを介して登録・交換すること
ができるデータベースシステムを構築し,被告は,平成17年4月1日から,この
データベースシステムを利用したサービスに「FOODS信頼ネット」との名称を
付して一般に提供を開始した。10
なお,原被告間の契約により,「FOODS信頼ネット」が構築されたサーバは,
原告が管理・保守を担当していた。また,「FOODS信頼ネット」において,被
告の顧客である各事業者は,「FOODS信頼ネット」に商品・原材料規格書情報
を登録するに際し,原告が開発した「eBASEjr.」との名称のアプリケーシ
ョン・ソフトウェアを用いていた。15
(以上につき,甲11,乙4,10)
⑶サーバ移管と「ASP規格書システム」
上記⑵イのとおり,「FOODS信頼ネット」が構築されたサーバは,原被告間
の契約により,原告の事業所に設置され,原告が管理・保守を担当していたが,原
被告間では,平成18年頃,「FOODS信頼ネット」を被告の事業所に設置され20
たサーバで運用するとの計画が持ち上がり,平成19年1月9日午前9時から,被
告の事業所に設置されたサーバでの運用が開始された(以下,「FOODS信頼ネ
ット」を運用するサーバが原告の事業所に設置されたものから被告の事業所に設置
されたものに変更された一連の作業を「本件サーバ移管」という。)。
被告は,平成19年3月頃,「FOODS信頼ネット」の名称を「ASP規格書25
システム」と改め,リニューアルしたサービスとして提供を開始し,現在に至るま
でその提供を継続している。
また,原告と被告は,平成19年4月1日付けで,被告が,原告が提供した「e
BASEserver」「eB-foods/P」「eBASEjr.」「eB-
fresh」との名称の各ソフトウェアの保守費用として,原告に対して年額61
万2000円(消費税抜)を支払う旨の「ソフトウェア年間保守契約書」を取り交5
わした。
(以上につき,甲13,乙4,23の8,弁論の全趣旨)
⑷本件使用許諾契約の締結
原告と被告は,平成19年4月1日付けで,次の条項を含む「使用許諾契約書」
(甲12。以下「本件使用許諾契約書」という。)を取り交わして本件使用許諾契10
約を締結した。
「eBASE株式会社(以後,「甲」と記載)と株式会社インフォマート(以
後,「乙」と記載)は,eBASEのデータベース構造の一部をさまざまな
フォーマットを使用して表現したもの(以後,「本仕様」と記載。),およ
び本契約締結後に乙または乙の取引先(以後,「丙」と記載)のデータベー15
ス内に格納されているデータを,本仕様を使用して書き出したデータ仕様書
(以後,「本仕様書」と記載。)の使用に関し,次のとおり契約(以後,「本
契約」と記載。)を締結する。」
「第1条(使用許諾等)
⑴甲は乙に対し,乙が提供するサービスであるFOODS信頼ネット(以後,20
「信頼ネット」と記載)に,丙がデータ登録をする手段として,丙に本仕様
を使用させることを許諾する。なお,使用場所は日本国内の乙の施設内に限
る。
〔以下略〕」
「第2条(秘密保持義務)25
⑴乙(関連会社を含む。以後本条において同じ)は,本仕様および本仕様書
ならびに本契約に関連して知り得た甲の技術上,業務上その他一切の情報(以
後,「秘密情報」と記載。)を秘密として保持し,甲の事前の書面による許
可なく第三者に開示又は漏洩してはならない。〔以下略〕
⑵前項のほか,乙は,甲の事前の書面による許可なく秘密情報の複製(媒体
の如何を問わない。),改変,結合,秘密情報を元にして行う新たなプログ5
ラムの作成,秘密情報を模倣して行うデータベース構造の作成その他一切の
処分(以後,「改変等」と記載。)を行うことができない。
⑶乙が開発作成したデータベースが本仕様または本仕様書の全部または一部
に類似すると甲が判断した場合には,乙が改変等をしたものとみなす。
⑷乙が,改変等を行った場合には,その作成物の著作権法上の権利その他一10
切の権利は甲に属するものとする。
⑸乙が第1項または第2項に違反し,甲に損害が生じた場合には,乙は,甲
に対し,損害(訴訟費用,弁護士費用等を含む)を賠償するものとする。
⑹乙が第1項または第2項に違反して開発作成したデータベースを商品化し
た場合には,乙またはその関連会社の販売額全額は前項の甲に生じた損害の15
一部とみなす。
⑺本条の規定は,本契約終了後も有効に存続する。」
「第3条(移転等)
本契約は,本仕様,本仕様書に関する甲の知的財産権その他の権利を乙に移
転するものではない。」20
⑸本訴の提起等
ア原告は,平成27年8月5日,本訴を提起した。
イ原告は,本訴の訴状及び平成27年8月20日付け訴状訂正申立書(訴状等)
に,次のような事実を記載していた。
(ア)原告は,本件サーバ移管(前記⑶参照)後の「FOODS信頼ネット」ない25
し「ASP規格書システム」には,原告が開発したデータベースパッケージソフト
ウェア「eBASEserver」がインストールされているものと考えていたが,
平成25年6月になって,はじめて,被告が「eBASEserver」をインス
トールすることなく「ASP規格書システム」を運用していることを知った。(以
下,この事実主張を「原告主張ア①」という。)
また,「ASP規格書システム」では,運用開始から現在に至るまで,「eBA5
SEjr.」からデータを登録し,受信することができる。そうである以上,「A
SP規格書システム」のデータベース構造が「eBASEserver」のデータ
ベース構造と同一であることは,物理的に明らかである。(以下,この事実主張を
「原告主張ア②」という。)
(イ)原告は,平成18年12月ないし平成19年1月頃,「eBASEserv10
er」のデータベース構造及び辞書テーブルの内容の全てを含むファイル「eB-
foodscsvファイルver1.0」をエクセルデータに変換して媒体に
記録したもの(以下「原告データベース仕様」という。)を被告に交付し,被告は,
これをパソコンやサーバに複製して「ASP規格書システム」を構築した。(以下,
この事実主張を「原告主張イ」という。)15
(ウ)原告は,平成16年2月頃,「eBASEserver」を構築した。(以
下,この事実主張を「原告主張ウ」という。)
(エ)平成19年4月1日付けで締結された本件使用許諾契約は,本件サーバ移管
を目的とした原告データベース仕様の開示をも対象として締結されたものである。
(以下,この事実主張を「原告主張エ」という。)20
ウまた,訴状等には,別紙3訴状等表現目録記載の各表現がある(以下,これ
らの表現を併せて「本件訴状等表現」という。)。
⑹プレスリリース等
ア訴状等は,平成27年9月1日,被告に送達された。
被告は,同日,東京証券取引所における上場有価証券の発行者の会社情報の適時25
開示等に関する規則2条⑵dに基づき,別紙4のとおりの被告プレスリリースを,
自社のウェブサイト及び東京証券取引所の適時開示情報閲覧サービス(以下「TD
net」という。)に掲載した。
(以上につき,乙25)
イ原告は,平成27年9月2日,別紙5のとおりの原告プレスリリースを,原
告のウェブサイトの「IR情報」欄に掲載した。原告プレスリリースには,次の表5
現がある(以下,これらの表現を併せて「本件プレスリリース表現」という。)。
(ア)「当社製品のカスタマイズ版である『FOODS信頼ネット』の知的財産権
は,上記の業務提携契約に基づき,そのカスタマイズ部分を除き,当社に帰属する
ものです。」
(イ)「当社に帰属する知的財産権を,当社から許諾を得ることなく,当社の許諾10
の範囲外で使用しています。」
(以上につき,乙26)
3争点
⑴著作権侵害を原因とする本訴請求に関連する争点
ア「eBASEserver」は,データベースの著作物であるか(争点1-15
1)
イ「FOODS信頼ネット」にデータが登録・蓄積されて形成されたデータベ
ースの著作権は,本件業務提携契約書4条1項ただし書の規定により,原告に帰属
していたか(争点1-2)
ウ「ASP規格書システム」のデータベース(被告データベース)は,原告が20
著作権を有するデータベースの著作物(「FOODS信頼ネット」のデータベース
又は「eBASEserver」)の複製物又は翻案物であるか(争点1-3)
エ原告は,本件サーバ移管に際し,被告に対し,被告が「FOODS信頼ネッ
ト」のデータベースの体系的構成及び辞書を複製及び翻案することを許諾したか(争
点1-4)25
オ原告が受けた損害の額(争点1-5)
⑵債務不履行を原因とする本訴請求に関連する争点
ア被告は,原告から取得した「eBASEserver」のデータベース仕様
に基づいて被告データベースを構築したか。また,このことが本件使用許諾契約に
違反する債務不履行に当たるか(争点2-1)
イ原告が受けた損害の額(争点2-2)5
⑶不法行為を原因とする本訴請求に関連する争点
ア被告は,原告から取得した「eBASEserver」のデータベース仕様
に基づいて被告データベースを構築したか。また,これにより,原告の法的保護に
値する利益が侵害されたか(争点3-1)
イ原告が受けた損害の額(争点3-2)10
⑷本訴の提起が不法行為に当たることを原因とする反訴請求に関連する争点
ア本訴の提起は,裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認めら
れるか(争点4-1)
イ被告が受けた損害の額(争点4-2)
⑸名誉毀損を原因とする反訴請求に関連する争点15
ア原告が訴状等を提出し,被告プレスリリースに引き続き,原告プレスリリー
スを掲載し,訴状等を陳述した一連の行為,又はこれら個別の行為はそれぞれ,被
告の社会的評価を低下させるものか(争点5-1)
イ原告の行為は,応酬的言論として違法性を欠くか(争点5-2)
ウ原告の行為は,公共の利害に関する事実に係り,その目的が専ら公益を図る20
ことにあり,前提としている事実の重要な部分又は摘示した事実が真実であるため
に違法性を欠くか。又は,同事実を真実と信ずるについて相当な理由があるために
故意又は過失が否定されるか(争点5-3)
エ被告が受けた損害の額(争点5-4)
オ謝罪広告の必要性(争点5-5)25
⑹不競法に基づく反訴請求に関連する争点
ア原告が原告プレスリリースを掲載した行為は,「競争関係にある他人の営業
上の信用を害する虚偽の事実を告知し,又は流布する行為」に当たるか(争点6-
1)
イ被告が受けた損害の額(争点6-2)
ウ謝罪広告の必要性(争点6-3)5
4争点に対する当事者の主張
⑴争点1-1(「eBASEserver」は,データベースの著作物である
か)について
【原告の主張】
ア平成16年8月10日版「eBASEserver」の完成10
原告は,平成15年頃には,既に食品業界向け商品情報交換プラットフォームと
してのデータベースパッケージソフトウェアを開発していたが(甲37。初期の「e
BASEserver」),その後,生活協同組合連合会コープきんき事業連合,
日本生活協同組合連合会,生活協同組合連合会コープネット事業連合などへの導入
を通じて改良を続け,平成16年8月10日時点での「eBASEserver」15
(原告内では,これを「eB-foods」と称することもあった。)を完成させ
た(以上につき,甲34ないし49)。
イ平成16年8月10日版「eBASEserver」の著作物性
食品業界には様々な事業者があり,それぞれが必要とする商品情報やその整理・
分類の方法は異なるから,平成15年当時,食品の商品情報を広く事業者間で連携20
して共有する方法は実現していなかった。このような状況の中,原告が,商品情報
の項目から,独自に登載すべき項目を取捨選択,整理・分類してデータベースパッ
ケージとして打ち出したものが「eBASEserver」(eB-foods)
である。
平成16年8月10日版「eBASEserver」は,創作性あるデータベー25
ス構成及び辞書を備えている点において,それ自体,データベースの著作物といい
得るものである。
すなわち,体系的構成としては,「基本情報」「仕様変更」「包材・表示情報」
「製造・品質」「原材料リスト」「原材料」の各テーブルを備え,これらのテーブ
ルは,合計600を超える項目から構成され,また,テーブル同士が相互に関連付
けられている。この項目のうち53項目は,さらに,合計22個の辞書ファイルと5
関連付けられ,これを参照するものとしている。これらデータ項目の取捨選択や,
各テーブルへの項目の分類等には,選択の幅が広い中,原告が個性的に表現をした
ものである。
また,合計22個の辞書ファイルは,例えばデータ項目「JICFS中分類」「J
ICFS小分類」「JICFS細分類」を入力する際に参照され,中分類3分類(水10
産,畜産,農産),小分類38分類,細分類545分類の情報を備えた辞書である
「jicfs_bunrui.txt」,データ項目「原産国」を入力する際に参照され,大分類8
分類から中分類,小分類まで多数の情報を備えた辞書である「origin.txt」,デー
タ項目「原材料一般名・添加物物質名」のうち「添加物物質名」を入力する際に参
照され,10342種類の添加物につき,37819個の正式名称及び略称の情報15
を備えた辞書である「alias.txt」など,膨大な量の辞書情報を備えているが,辞書
情報の取捨選択及び分類については,選択の幅が広い中,原告が個性的に表現した
ものである。
そうすると,平成16年8月10日版「eBASEserver」は,①合計2
2個の辞書がそれぞれ様々な辞書情報を備えており,データベースの体系的な構成20
の中で各データ項目と紐付けられて辞書網を構成している点に創作性が認められ,
②個々の辞書が,それ単独でも,体系的構成及び情報の選択において創作性が認め
られるから,データベースの著作物として著作物性が認められるべきである。
【被告の主張】
ア平成16年8月10日時点で同日版「eBASEserver」が完成して25
いたとの事実は否認する。
「FOODS信頼ネット」は,本件業務提携契約書2条1項からも明らかなよう
に,原告と被告が共同して商品・原材料規格書の標準フォーマット(標準規格書)
を策定した上で,策定された標準規格書に準拠した情報データの収集・公開・交換
サービスを提供するためのシステムである。そのため,「FOODS信頼ネット」
のデータベースの体系的構成は,原告及び被告が共同して,また,フード業界トレ5
ーサビリティ協議会を通じて策定される標準規格書の内容により規律されるべき性
質のものである。原告の主張を前提とすれば,標準規格書の内容が定まらない時点
で,既に標準規格書の情報を収集,管理するためのデータベースの体系的構成が定
まっていたこととなり不合理である。標準規格書の内容が原被告の協議やフード業
界トレーサビリティ協議会によって形成され,これが日本生活協同組合連合会で採10
用されたことなどは,原告の担当者が作成した報告書(乙11)の記載からも明ら
かである。
イ平成16年8月10日版「eBASEserver」が著作物性を有すると
の主張は争う。
そもそも著作権法においてデータベースとして保護されるのは,情報の集合物で15
あって,体系的な構成ではない。したがって,原告の主張のうち,データベースの
体系的構成のみを理由として「eBASEserver」の著作物性を主張する部
分は,主張自体失当である。
この点を措くとしても,原告が平成16年8月10日版「eBASEserve
r」として提出する書面の中には,各テーブルの関連付けを示すキー項目が存在し20
ないから,原告は,平成16年8月10日版「eBASEserver」の体系的
構成を主張立証していないし,これが,当時複数存在していた競合他社の製品と比
して,いかなる点において創作性を有するかについても,何ら具体的に主張してい
ない。
原告は,平成16年8月10日版「eBASEserver」に搭載されている25
個々の辞書が,それ単独でもデータベースの著作物として保護されるとも主張する
が,原告はすべての辞書ファイルの体系的構成や情報の選択についての創作性につ
いて主張していないし,辞書の情報は,商品登録情報を検索するための入力支援情
報にすぎず,コンピュータで検索することを念頭に整理が施されたものではないか
ら,「電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したもの」と
はいえず,著作権法上の「データベース」には当たらない。5
⑵争点1-2(「FOODS信頼ネット」にデータが登録・蓄積されて形成さ
れたデータベースの著作権は,本件業務提携契約書4条1項ただし書の規定により,
原告に帰属していたか)について
【原告の主張】
上記⑴のとおり,原告は,平成16年8月10日の時点で,データベースの著作10
物である「eBASEserver」を完成させていたところ,その後,これに新
たな創作性を加えない程度のわずかな改変を施し,平成17年1月6日版「eBA
SEserver」を完成させている。
そして,原告は,本件業務提携契約に基づいて「FOODS信頼ネット」を開発
するに際して,この平成17年1月6日版「eBASEserver」に,被告の15
ためのカスタマイズ部分(顧客別等のカスタマイズ要件を実装した入力管理機能,
ユーザー管理機能,ユーザー管理データベース,ワークフロー機能のほか,若干の
辞書情報等の追加)を加えてシステム構築したが,これら被告のためのカスタマイ
ズ部分は,「eBASEserver」とは可分なものである。
そうすると,「FOODS信頼ネット」のシステムのうち,「eBASEser20
ver」に相当する部分は,「本システムを設計,開発するにあたって,乙(原告)
より提供されたeBASEシリーズ等の著作物」(本件業務提携契約書4条1項た
だし書)に当たり,原告に著作権が帰属するものである。
そして,「FOODS信頼ネット」は,参加企業がデータを登録することにより,
自然発生的にデータベースが構築されていく受容型データベースであって,データ25
ベースの体系的構成が,データベースの著作物としての本質的部分であることから
すれば,「FOODS信頼ネット」にデータが登録・蓄積されて形成されたデータ
ベースの著作権は,データベースの体系的構成について著作権を有する原告に帰属
するものと認められるべきである。
【被告の主張】
「FOODS信頼ネット」のうち「eBASEserver」に相当する部分が5
可分であるとの事実は否認し,同部分につき本件業務提携契約書4条1項ただし書
が適用されるとの点は否認し,又は争う。「FOODS信頼ネット」は,全体とし
て共同著作物となるべきものであるが,本件業務提携契約書4条1項本文の規定に
より,被告が単独で著作権を有するものである。
原告は,本件業務提携契約書4条1項ただし書が適用されるなどと主張するが,10
「FOODS信頼ネット」が,同ただし書の「eBASEシリーズ等の著作物」に
該当しないことは明らかであるし,「FOODS信頼ネット」のデータベースの体
系的構成自体は,登録情報とは切り離されたアイデアであり,同ただし書の「著作
物」に該当しないことも明らかであるから,同ただし書が適用される余地はない。
⑶争点1-3(「ASP規格書システム」のデータベース〔被告データベース〕15
は,原告が著作権を有するデータベースの著作物〔「FOODS信頼ネット」のデ
ータベース又は「eBASEserver」〕の複製物又は翻案物であるか)につ
いて
【原告の主張】
前記前提事実(第2,2⑶)のとおり,平成18年から平成19年1月にかけて,20
「FOODS信頼ネット」が構築されたサーバを原告の事業所に設置されたものか
ら被告の事業所に設置されたものへと移管する本件サーバ移管が行われた。その後,
「FOODS信頼ネット」は,「ASP規格書システム」へとリニューアルされた
が,「FOODS信頼ネット」においても「ASP規格書システム」においても,
原告と被告との間では,「eBASEjr.」を商品情報の登録ツールとすること25
が合意されていた。しかし,「ASP規格書システム」は,「eBASEjr.」
のみならず,ウェブ画面からも商品情報を登録することができるようである。
「eBASEjr.」を用いて商品情報を登録する場合には,「eBASEjr.」
が備える辞書情報により,商品情報が正規化されてデータベースに登録される。し
かし,この登録をウェブ画面からも行えるということは,「ASP規格書システム」
は,「eBASEjr.」の複製物を登載しているということである。5
そうすると,被告は,原告が交付した原告データベース仕様(「eBASEse
rver」のデータベース構造及び辞書テーブルの内容の全てを含むファイル「e
B-foodscsvファイルver1.0」をエクセルデータに変換して媒
体に記録したもの)を複製して,「ASP規格書システム」を構築したというべき
であり,その表現上の本質的特徴であるデータベース構造及び辞書情報は,その後10
も維持されているとみるべきであるから,「ASP規格書システム」のデータベー
ス(被告データベース)は,原告が有するデータベースの著作物(「FOODS信
頼ネット」のデータベース又は「eBASEserver」)の複製物又は翻案物
と評価されるべきである。
【被告の主張】15
原告が被告に対して原告データベース仕様(「eBASEserver」のデー
タベース構造及び辞書テーブルの内容の全てを含むファイル「eB-foods
csvファイルver1.0」をエクセルデータに変換して媒体に記録したもの)
を交付したとの事実は否認する。原告は,そもそも交付があった時期等を具体的に
特定して主張していないし,同事実を証する証拠を何ら提出していない。そして,20
被告が原告データベース仕様の交付を受けていない以上,これを複製して「ASP
規格書システム」を構築したということもない。
これらをひとまず措いて,原告が主張するところの平成16年8月10日版「e
BASEserver」に示された体系的構成と,「ASP規格書システム」のデ
ータベースの体系的構成を比較したとしても,テーブル構成のみに着目しても表の25
数や項目数が異なっているから,両者は類似しないことが明らかである。
⑷争点1-4(原告は,本件サーバ移管に際し,被告に対し,被告が「FOO
DS信頼ネット」のデータベースの体系的構成及び辞書を複製及び翻案することを
許諾したか)について
【被告の主張】
原告及び被告は,平成18年4月頃,「FOODS信頼ネット」の新システムを5
被告が開発し,運営するサーバを移管することについて合意したが(本件サーバ移
管),その際,原告は,被告が「FOODS信頼ネット」のデータベースの体系的
構成及び辞書を取り込んで新たなシステムを開発することを,無条件で包括的に認
めたものである。
現に,原告は,本件サーバ移管に関して被告に協力的であり,いったんは平成110
8年10月10日にサーバ移管を実施する予定が組まれてもいたが,暗号化された
データを複合化する仕組みを開発する必要があるなどとしてその予定が平成19年
初頭にずれ込んだものである(乙23)。また,本件サーバ移管後の「FOODS
信頼ネット」も,「ASP規格書システム」も,いずれも「eBASEjr.」か
らの入力が可能となっており,原告の主張を前提とすれば,サーバ移管後の「FO15
ODS信頼ネット」や「ASP規格書システム」のデータベース構成は,サーバ移
管前の「FOODS信頼ネット」のデータベース構成と同一になるというのである
から,原告は,被告がサーバ移管前の「FOODS信頼ネット」のデータベース構
成を新たなシステムにおいて用いることも了承していたことになるはずである。
原告は,本件サーバ移管に関して原被告間で条件が合意されていたと主張するが,20
従前はそのような主張をしておらず,また,これを裏付けるような証拠も全く提出
されていない。
【原告の主張】
原告が,被告に対して,本件サーバ移管に際し,被告が「FOODS信頼ネット」
のデータベースの体系的構成及び辞書を複製及び翻案することを無条件で許諾した25
事実はない。
原告は,平成18年頃から,「FOODS信頼ネット」のシステム運用等に関し,
被告から様々なクレームを受けるようになった。そのクレームの中には,原告の態
勢に原因があるものもあったが,必ずしもそうでないものもあった。そのような中,
被告は,同年5月15日,原告に対し,「FOODS信頼ネット」のデータベース
のコピーを作成したいので,早急に構成図やSQL文,その後はCreate文を5
提供して欲しいと依頼してきた。原告は,その目的を確認した上で,被告からの依
頼を断ったが,そのころから,被告が,「eBASEserver」のデータベー
ス構造を複製するのではないかとの危惧を抱き始めた。
被告は,同年6月23日,原告に対し,「FOODS信頼ネット」の開発及び運
営につき,原告から引き上げて,被告側で開発及び運営を行いたいと通告してきた。10
原告は,被告に対し,被告の新システムのサーバに「eBASEserver」を
インストールする方法と,これをしない方法とを提案したところ,被告は後者を選
択した。原告は,被告の意志が固いこともあって,①被告が開発等する新システム
においても「eBASEjr.」を商品情報登録ツールとして使用し,必要なライ
センス保守契約を締結すること,②被告が開発等する新システムは登録機能を持た15
ず,検索・出力機能のみとすること,③原告が開示する「eBASEserver」
のデータベース仕様につき,複製等を禁止する使用許諾契約を締結することを条件
に,被告の申出に応じることとした。本件使用許諾契約のひな形は,原告が平成1
8年6月頃に作成しており,その後も被告と調整していたものであり,実際には平
成19年2月頃調印されている。20
このような経緯で,原告は,被告が本件サーバ移管をするに際して,「eBAS
Eserver」のデータベース仕様を複製しないことを条件としていたものであ
る。原告は,「FOODS信頼ネット」のサーバを移管することは了承していたが,
「ASP規格書システム」が「eBASEserver」と同じデータベース構造
及び辞書を搭載することまで了承してはいない。25
⑸争点1-5(原告が受けた損害の額)について
【原告の主張】
被告が,原告の有する著作権を侵害した行為により得た利益の額は,著作権法1
14条2項により原告が受けた利益の額と推定されるところ,被告は,被告データ
ベースの提供により,平成19年4月1日から平成27年8月4日までの間に,1
2億6500万円の利益を得た。したがって,同額が,被告の著作権侵害行為によ5
り原告が受けた損害の額である。このうち10億円を請求する。
【被告の主張】
否認し,又は争う。
⑹争点2-1(被告は,原告から取得した「eBASEserver」のデー
タベース仕様に基づいて被告データベースを構築したか。また,このことが本件使10
用許諾契約に違反する債務不履行に当たるか)について
【原告の主張】
「FOODS信頼ネット」では,当初,被告の顧客が「eBASEjr.」を介
して商品情報を個別に登録する仕組みとなっていたが,被告は,被告の顧客が自社
のシステムから商品情報を一括して登録することができるようにもしたいとして,15
そのためのインターフェイスの開発を被告側の業者に行わせたいとの要望を述べた。
さらに,被告は,本件サーバ移管に際し,被告側に構築するシステムには「eBA
SEserver」をインストールしないことを決めたので,新システムにおいて
「eBASEjr.」からのデータを受信するためのコンバーターを開発する必要
が生じた。20
そこで,原告は,平成18年12月ないし平成19年1月頃,被告に対し,原告
データベース仕様(「eBASEserver」のデータベース構造及び辞書テー
ブルの内容の全てを含むファイル「eB-foodscsvファイルver1.
0」をエクセルデータに変換して媒体に記録したもの)を交付した。もっとも,原
告データベース仕様は,これを用いることにより「eBASEserver」と同25
一内容のデータベース構造及び辞書を作成できる,機密性の高い情報であった。こ
のため,原告と被告は,平成19年4月1日付けで,本件使用許諾契約を締結して,
被告が上記2つの目的(被告の顧客が商品情報を一括して登録するためのインター
フェイスの開発目的,被告の新システムが「eBASEjr.」からのデータを受
信するためのコンバーターの開発目的)以外に用いないことが約された。
ところが,被告は,交付を受けた原告データベース仕様を目的外使用し,これに5
基づいて,被告データベースを構築したものである。被告の行為は,本件使用許諾
契約書2条2項に反するものであり,本件使用許諾契約上の債務不履行を構成する。
【被告の主張】
被告が,平成18年12月ないし平成19年1月頃,原告から,原告データベー
ス仕様(「eBASEserver」のデータベース構造及び辞書テーブルの内容10
の全てを含むファイル「eB-foodscsvファイルver1.0」をエ
クセルデータに変換して媒体に記録したもの)を受領したという事実は存在しない。
したがって,被告が「eBASEserver」のデータベース仕様に基づいて被
告データベースを構築したということもない。
本件使用許諾契約は,「FOODS信頼ネット」を使用する被告の顧客が,「F15
OODS信頼ネット」に対応した自社のシステムを開発する際に,「FOODS信
頼ネット」のデータベースの仕様を用いる必要があったために締結したものであっ
て,本件サーバ移管を対象として締結されたものではない。このことは,本件サー
バ移管については平成18年4月頃に基本的な合意がされ,平成19年1月には完
了しているのに対して,本件使用許諾契約が同年4月1日付けで締結されているこ20
と,本件サーバ移管について本件使用許諾契約が適用されることとなれば,被告は,
同契約を締結したと同時に同契約に違反することとなるが,そのようなことは考え
られないことから明白である。
したがって,本件サーバ移管につき本件使用許諾契約の債務不履行をいう原告の
主張は失当である。25
⑺争点2-2(原告が受けた損害の額)について
【原告の主張】
本件使用許諾契約書2条6項は,被告が同条2項の規定に反して開発作成したデ
ータベースを商品化した場合には,被告の販売額全額を原告に生じた損害の一部と
みなす旨規定されている。
そして,被告は,被告データベースの商品化により,平成19年4月1日から平5
成27年8月4日までの間に,少なくとも42億1800万円の売上高を得ている
から,原告が被告の債務不履行行為により受けた損害の額は,42億1800万円
である。
【被告の主張】
否認し,又は争う。10
⑻争点3-1(被告は,原告から取得した「eBASEserver」のデー
タベース仕様に基づいて被告データベースを構築したか。また,これにより,原告
の法的保護に値する利益が侵害されたか)について
【原告の主張】
被告が,原告から取得した「eBASEserver」のデータベース仕様に基15
づいて被告データベースを構築したことは,争点2-1について主張したとおりで
ある。
「eBASEserver」は,原告が約3年の期間と約3億円の費用をかけて
開発したものであり,現在までの開発費用は約25億円にのぼる。原告は,このよ
うな先駆的なデータベースパッケージソフトウェアである「eBASEserve20
r」について,公正かつ自由な競争を逸脱した手段によりその営業活動を妨害され
ない営業上の利益を有しており,同利益は法的保護に値するものである。ところが,
被告は,原告との業務提携契約上の地位を利用して,原告に「eBASEserv
er」のデータベース構造及び辞書の全てを開示させ,これをデッドコピーした被
告データベースを構築し,参加企業が「eBASEjr.」を使用することなく商25
品情報等を登録できるようにして,原告の上記営業上の利益を侵害したと評価でき
る。
また,昭和61年の著作権法改正当時,データベースの体系的構成そのものの保
護の必要性が十分に認識されていなかったことから,データベースの体系的構成そ
れ自体は著作権法上,十分に保護されていないところがある。しかし,データベー
スの体系的構成の価値は高まり,これは昭和61年の著作権法改正当時は想定され5
ていなかったものであるから,一般不法行為法により保護されるべき利益といえる。
したがって,被告が「eBASEserver」のデータベース仕様を剽窃して被
告データベースを構築したことは,原告の上記法的保護に値する利益を侵害したと
評価できる。
以上より,被告が,原告から取得した「eBASEserver」のデータベー10
ス仕様に基づいて被告データベースを構築することは,原告に対する不法行為を構
成するというべきである。
【被告の主張】
最高裁平成21年(受)第602号,同第603号同23年12月8日第一小法
廷判決・民集65巻9号3275頁(以下「平成23年最高裁判決」という。)は,15
ある著作物が著作権法6条各号所定の著作物に該当しないものである場合には,当
該著作物を独占的に利用する権利は,法的保護の対象にならないとし,さらに,当
該著作物の利用行為は,著作権法が規律の対象とする著作物の利用による利益とは
異なる法的に保護された利益を侵害するなどの特段の事情がない限り,不法行為を
構成しないとする。20
原告が著作物と主張する平成16年8月10日版「eBASEserver」に
著作物性が認められないことは既に主張したとおりである。もとより,被告が自由
競争の範囲を逸脱して被告データベースを構築し,原告の営業を妨害したとの事実
はないが,原告が主張する営業活動の利益なるものは,平成16年8月10日版「e
BASEserver」に関する独占的な利用の利益に他ならないから,平成2325
年最高裁判決の説示に従えば,法的保護の対象とならない。
原告は,昭和61年の著作権法改正時には想定されていなかったデータベースの
体系的構成の価値が高まっており,一般不法行為法による保護の対象とされるべき
とも主張するが,データベースの体系的構成の保護の要否について昭和61年の著
作権法改正当時議論がされていなかったわけではなく,想定していなかったという
ものではない。したがって,データベースの体系的構成が,一般不法行為により保5
護されるべき法的利益となるものではない。
⑼争点3-2(原告が受けた損害の額)について
【原告の主張】
被告による不法行為がなければ,原告は,被告が被告データベースの運営により
得た利益である12億6500万円を得ることができたというべきであるから,被10
告の不法行為により原告が受けた損害の額は,12億6500万円と認められる。
【被告の主張】
否認し,又は争う。
⑽争点4-1(本訴の提起は,裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を
欠くと認められるか)について15
【被告の主張】
訴えの提起は,これを提起した者が主張した権利又は法律関係が事実的,法律的
根拠を欠くものである上,訴えを提起した者が,そのことを知りながら又は通常人
であれば容易に知り得たのにあえて訴えを提起したなど,裁判制度の趣旨目的に照
らして著しく相当性を欠くときは,相手方に対する不法行為を構成する。20
原告は,平成27年8月5日に本訴を提起したが,前記前提事実(第2,2⑸イ)
のとおり,訴状等には原告主張ア①,同ア②,同イ,同ウ及び同エの各事実が記載
されていた。これらの事実は,いずれも原告の本訴請求(既に取り下げられたもの
を含む。)を基礎付ける主要事実であるか,少なくとも重要な間接事実である。
しかるところ,原告主張ア①及び同ア②について,原告は,本件サーバ移管後の25
「FOODS信頼ネット」ないし「ASP規格書システム」に「eBASEser
ver」がインストールされていないことを熟知していたのに,本件サーバ移管か
ら6年以上経った平成25年6月頃,突如として,原告は被告が「eBASEse
rver」をインストールしてないことを知らず,これにより,被告による著作権
侵害行為が判明したとの虚偽の主張(原告主張ア①,同ア②)を展開し始めたもの
である。しかし,原告は,被告による反論や,裁判所からの求釈明を受けて,この5
主張を維持することができずに撤回しているし,同様に原告主張ウ及び同エも撤回
している。原告主張イについても,原告は客観的な証拠を提出できておらず,端的
にいって虚偽の主張というほかない。なお,被告は,訴訟前の原告との交渉におい
ても,「ASP規格書システム」には「eBASEserver」はインストール
されていないこと,原告もこれを了承しているはずであることなどを真摯に説明し10
てきており,原告は,原告主張ア①ないし同エが根拠を欠くものであることを知っ
ており,少なくとも容易に知り得たというべきである。
原告は,平成27年1月頃,訴訟前の被告との交渉を突然打ち切ったが,その後
7か月間にわたり訴えを提起していなかったところ,被告が同年秋口に東京証券取
引所市場第一部(以下「東証一部」という。)に市場変更する準備をしているタイ15
ミングを見計らって本訴を提起した。このため,東京証券取引所による上場審査が
延期されることとなった。結果として東証一部への市場変更は認められたが,被告
の基幹サービスである「ASP規格書システム」の差止めや40億円を超える損害
賠償額を主張する本訴の訴状等の内容は,被告の東証一部への市場変更が否定され
かねないものであった。原告は,故意に被告への打撃を加える目的で,虚偽の事実20
主張(原告主張ア①ないし同エ)とともに本訴を提起したものである。なお,原告
代表者及び取締役,特に,本訴の提起を主導した原告の取締役であるA(以下「A」
という。)は,本訴を提起するに際し,本件サーバ移管当時も現在も原告の取締役
であるB(以下「B」という。)から事情を聴取して訴状等を作成したはずであり,
Bは,本件サーバ移管当時から本訴の提起に至るまで,原告主張ア①ないし同エが25
虚偽であることを当然に認識していたはずであるから,結局,原告主張ア①ないし
同エが虚偽であることを知りながら,本訴を提起したものというほかない。
以上のとおり,原告による本訴の提起は,事実的又は法律的根拠を欠くものであ
り,原告もそれを十分に認識しながら,被告に経済的打撃を加える目的であえてさ
れたものであって,裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くものである
から,被告に対する不法行為(民法709条,715条,会社法350条)を構成5
するというべきである。
【原告の主張】
本訴は,被告が主張するような東証一部への市場変更を見越したタイミングで被
告に経済的打撃を加える目的で提起されたものではない。原告は,①被告が「AS
P規格書システム」の構築に当たり,「eBASEserver」のデータベース10
構造及び辞書をデッドコピーしたことの法的責任を追及すること,②訴訟前の交渉
段階において,被告がした「eBASEserver」のデータベース構造及び辞
書の著作権が原告に帰属していないとの主張が,原告にとって看過できないもので
あり,事実関係を明らかにする必要があることの2点を目的として,本訴を提起し
たものである。15
①について,被告は,「FOODS信頼ネット」の管理・保守を原告から引き上
げたが(本件サーバ移管),原告としては,被告が,新たに構築するシステムにお
いて,原告が開発したデータベース構造や辞書をそのまま用いるとは想像していな
かった。ところが,平成23年5月頃,原告は,顧客から,「ASP規格書システ
ム」においては,商品情報の登録が,「eBASEjr.」を通じなくとも,ウェ20
ブ画面からも行われるようになったこと,そのデータ登録画面が「eBASEjr.」
とほぼ同一であることを知らされた。この時点で,被告が,「eBASEserv
er」のデータベース構造及び辞書をデッドコピーしたとの疑念を抱き,ただその
確信が持てなかったところ,原告の現場レベルでは了承していた「被告が『eBA
SEserver』をインストールしていない事実」を覚知し,被告によるデッド25
コピーを確信して,本訴の提起に至ったという経緯がある。被告が「eBASEs
erver」をインストールしていないことを知らなかったとの原告主張ア①は,
結果として誤っていたが,被告が「eBASEserver」のデータベース構造
及び辞書をデッドコピーして「ASP規格書システム」を構築している事実には変
わりはない。
②について,被告は,平成27年1月15日付け回答書(甲20)において,「e5
BASEserver」につき原告が著作権を有するとの原告の主張に対し,「そ
もそもそうした前提となる御社のご認識自体が根本的に誤っている」として,原告
が費用を時間を投下して開発し,重要な事業の一つとして位置付けていた「eBA
SEserver」の著作権を原告が有することすら否定した。このような被告の
主張は,原告にとって到底受け入れられるものでなかったことから,原告は,事実10
関係を明らかにするため,本訴を提起したものである。
原告は,本件訴訟の手続の過程で,原告主張ア①,同ア②,同ウ及び同エを撤回
するに至ったが,これは,本件サーバ移管当時の経緯が,すべて原告の経営陣に報
告・共有されていたわけではなかったところ,本件サーバ移管当時の原告の担当者
であるBのパソコンが,本訴の提起の前後には壊れており,その後,原告のサーバ15
内のデータを調査するなどして事実関係が明確になったためであって,意図的に虚
偽の事実関係を主張していたものではない。
被告は,原告が,被告の東証一部への市場変更を妨害し,経済的打撃を与える意
図を持って本訴を提起したなどと主張するが,原告は被告の市場変更の予定など知
りようがないし,原告としては,本訴提起の直前である平成27年6月5日まで,20
被告と交渉を続けていたのであり,交渉を打ち切ってから7か月間も本訴の提起を
待って被告に経済的打撃を与えるタイミングを計っていたということもない。
以上のとおり,原告による本訴の提起は,正当な目的によるものであり,また,
意図的に虚偽の事実を主張したものではないから,裁判制度の趣旨目的に照らして
著しく相当性を欠くということはできず,被告に対する不法行為とはなり得ない。25
⑾争点4-2(被告が受けた損害の額)について
【被告の主張】
ア公募増資の払込金額の減少
被告の株価は,本訴提起に関する適時開示(被告プレスリリース)により,翌日
の終値が前日終値の1295円から1188円と107円(8.26パーセント)
低下し,その後も株価は低調に推移した。被告は,その後公募増資を行ったが,そ5
の発行価格は,低下した株価を基準とした1120円とされた。原告による違法な
本訴提起がなければ,被告は,これを107円上回る1227円で発行することが
できたはずであり,107円×公募による発行株式数450万株=4億8150万
円の払込金額を減少をもたらした。このうち6000万円を請求する。
イ信用毀損10
上記アのとおり,本訴の提起により,被告の株価は大きく下落し,その時価総額
は最大118億円減少した。本訴が係属している間,被告は,常に主要事業である
「ASP規格書システム」の差止め及び最大42億円の損害賠償を求められかねな
い企業として認識されており,毎年,株主総会において株主から質問を受けている
など,本訴の提起により,被告の信用は大きく毀損された。これを金銭に評価する15
と,少なくとも1億円を下らない。このうち1000万円を請求する。
ウ弁護士費用
10億円の損害賠償請求に対する応訴費用だけでも,旧日本弁護士連合会報酬規
定に基づけば7107万円の弁護士費用が発生する(「ASP規格書システム」の
差止請求や反訴に係る弁護士費用も併せれば,その額は1億円を超える。)。この20
うち3000万円を請求する。
【原告の主張】
ア公募増資の払込金額の減少について,被告は,原告による本訴提起がなけれ
ば,発行価格1227円で公募増資ができたことを前提とするが,一般に公募増資
時には株価は下落する傾向にあるほか,被告の株価は当時下落傾向にあったこと,25
本訴提起後の株価の下落は数週間で解消されていたこと,公募増資の発行価格がブ
ックビルディングを経て決定されることなどからして,そのような前提を取ること
自体が誤りである。
イ被告が主張するその余の損害については否認し,又は争う。
⑿争点5-1(原告が訴状等を提出し,被告プレスリリースに引き続き,原告
プレスリリースを掲載し,訴状等を陳述した一連の行為,又はこれら個別の行為は5
それぞれ,被告の社会的評価を低下させるものか)について
【被告の主張】
前記前提事実(第2,2⑸及び⑹)のとおり,原告が提出し,その後陳述した訴
状等には,別紙3のとおりの表現(本件訴状等表現)があり,また,原告が自社の
ウェブサイトに掲載した原告プレスリリースには,本件プレスリリース表現がある。10
原告は,訴状等を提出し,まず被告に被告プレスリリースによる市場での適時開
示をさせた上で,開示義務もないのに原告プレスリリースを掲載したものである。
これら一連の表現行為は,一般人の通常の注意と読み方を基準とすると,被告が提
供する「ASP規格書システム」は,原告の著作権を侵害するサービスであること,
被告は他者の知的財産権を侵害するコンプライアンス上問題のある企業であること,15
これにより,「ASP規格書システム」が差し止められ,10億円の損害賠償義務
を被告が負担することなどの事実を摘示するものであり,被告の社会的評価を低下
させるものである。現に,本訴の提起及び原告プレスリリースの掲載により,被告
の株価は大幅に下落したのである。
【原告の主張】20
被告は,訴状等の表現,被告プレスリリースの掲載及び原告プレスリリースの掲
載を「一連の行為」などとして名誉毀損の成否を論じているが,これらは独立した
行為であり,個々に名誉毀損該当性が判断されるべきものである。
まず,原告プレスリリースについていえば,これに先立つ被告プレスリリースに
おいて,被告は,原告の基幹システムである「eBASEserver」の知的財25
産権までも被告に帰属するかのような主張をしており,このままでは,投資家が,
原告に対する判断を誤る可能性があった。このため,原告は,やむを得ず,適時開
示として,原告プレスリリースを掲載し,自己の法的見解を表明したものである。
そして,紛争の一方当事者による意見表明は,一般人の通常の注意と読み方をして
みれば,相手方の社会的評価を低下させるようなものではないというべきである。
次に,訴状等の記載についてみると,そもそも訴状等は,性質上,紛争の一方当5
事者が一方的に自己の立場を発信するものであって,これらを読む者は,通常,そ
の表現によって相手方の評価を直ちに変えることはない。また,本件において訴状
等は,第三者による閲覧に供されていない。したがって,訴状等の記載によって被
告の社会的評価が低下したということはない。
⒀争点5-2(原告の行為は,応酬的言論として違法性を欠くか)について10
【原告の主張】
原告プレスリリースは,被告プレスリリースによって原告の基幹商品である「e
BASEserver」の知的財産権が被告に帰属するかのような主張がされてい
たところ,これに対抗するために掲載したものである。このように,自己の正当な
利益を擁護するため,やむを得ずした言動については,相手方の言動と対比して方15
法,内容において適当と認められる限り,応報的言論として違法性を欠くものと解
すべきである(最高裁昭和34年(オ)第1019号同38年4月16日判決・民
集17巻3号476頁参照)。しかるところ,原告プレスリリースは,被告プレス
リリースに記載された主張に対応して,これに応える形で記載されており,被告に
よる表現と対比して,方法及び内容の両面において適当と認められる限度内で行わ20
れているものである。
また,訴状等に関していえば,裁判を受ける権利を保障すべきことや,訴訟を提
起する上で事実を主張し,法的立場を表明することが不可欠であることからすれば,
仮に訴状等の記載により被告の社会的評価が低下したとしても,違法性を欠くもの
と解されなければならない。25
【被告の主張】
原告は,被告プレスリリースにより原告の社会的評価が低下したことを前提に,
原告プレスリリースの掲載を応酬的言論として正当化しようとするが,そもそも被
告プレスリリースによって原告の社会的評価が低下したということはない。原告は,
被告に経済的な打撃を与えることを企図して本訴を提起したのであり,原告プレス
リリースの掲載もその一環であるから,原告の正当な利益を擁護するためやむを得5
ずしたというものではない。
⒁争点5-3(原告の行為は,公共の利害に関する事実に係り,その目的が専
ら公益を図ることにあり,前提としている事実の重要な部分又は摘示した事実が真
実であるために違法性を欠くか。又は,同事実を真実と信ずるについて相当な理由
があるために故意又は過失が否定されるか)について10
【原告の主張】
訴状等及び原告プレスリリースは,紛争の当事者による法的見解の表明であって,
意見ないし論評を記載したものである。そして,原告プレスリリースは,いずれも
上場企業である原告と被告との法的紛争に関し,当事者としての法的立場を投資家
等に伝えるものであるから,公共の利害に関するものであり,専ら公益を図る目的15
でされているところ,原告プレスリリース表現に係る事実はいずれも真実であるし,
そうでなくとも原告にはこれらを真実と信ずべき相当の理由があった。
したがって,仮に訴状等及び原告プレスリリースが被告の社会的評価を低下させ
るとしても,その掲載行為は違法性を欠くか,又は故意若しくは過失が否定され,
名誉毀損の不法行為は成立しない。20
【被告の主張】
訴状等及び原告プレスリリースは,意見ないし論評ではなく,事実を摘示するも
のである。そして,摘示されたこれらの事実(本件訴状等表現,本件プレスリリー
ス表現)がいずれも虚偽であり,かつ,原告が虚偽であることを知っていたことは,
既に主張したとおりであるから,原告の行為について違法性が阻却され,又は故意25
若しくは過失が否定されることはない。
仮に,訴状等及び原告プレスリリースを意見ないし論評とみたとしても,その前
提としている事実は真実でないし,原告がこれらを真実と信ずることについて相当
な理由があったということもできないから,いずれにしても違法性が阻却されるこ
とはないし,故意又は過失が否定されることもない。
⒂争点5-4(被告が受けた損害の額)について5
【被告の主張】
本件訴状等表現及び本件プレスリリース表現により被告の名誉及び信用が毀損さ
れた結果,被告が受けた損害は,5000万円を下ることはない。このうち100
0万円を請求する。
【原告の主張】10
否認し,又は争う。
⒃争点5-5(謝罪広告の必要性)について
【被告の主張】
原告は,広く投資家及び一般大衆に向けて被告の名誉を毀損したものであるから,
被告の名誉を回復するには,損害賠償金の支払いに加えて,謝罪広告を掲載させる15
ことが不可欠である。
【原告の主張】
謝罪広告請求は,謝罪を求められる側の思想良心の自由を侵害し得るものである
から,その必要性が特に高い場合に限って認められるべきものである。仮に,被告
が勝訴した場合には,被告はTDnetや自社のウェブサイトでその旨を投資家等20
に周知することができ,これにより名誉を回復することができるのであるから,謝
罪広告の必要性が高いとは到底いえない。
⒄争点6-1(原告が原告プレスリリースを掲載した行為は,「競争関係にあ
る他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し,又は流布する行為」に当たる
か)について25
【被告の主張】
原告と被告は,いずれも食品業界において商品情報交換プラットフォームを運営
する類似の業務を行っているから,競争関係にあることは明らかであるところ,本
件プレスリリース表現は,いずれも虚偽の事実であって被告の営業上の信用を害す
るものであるから,原告が原告プレスリリースを自社のウェブサイトに掲載した行
為は,不競法2条1項15号の不正競争行為に当たるといえ,同不正競争行為につ5
き,原告に故意又は過失があることも明らかである。
なお,不競法2条1項15号の「虚偽の事実」については,法的評価を含む一定
の事実状態を含むものとされているところである。
【原告の主張】
原告プレスリリースに記載されている本件プレスリリース表現は,いずれも真実10
を記載したものであって,虚偽の事実を告知するものではない。そして,原告プレ
スリリースは,これらの事実を前提として,紛争の一方当事者としての法的見解を
示すものであるから,被告の営業上の信用を害するものでもない。
⒅争点6-2(被告が受けた損害の額)について
【被告の主張】15
原告の不正競争行為により被告の信用が害された結果,被告が受けた損害の額は,
4000万円を下ることはない。このうち1000万円を請求する。
【原告の主張】
否認し,又は争う。
⒆争点6-3(謝罪広告の必要性)について20
【被告の主張】
原告は,競争関係にある被告につき,あたかも原告の知的財産権を侵害している
かのような虚偽の事実を告知しており,何らの回復措置もとられていないことから
すれば,被告の信用を回復するため,損害賠償金の支払いに加えて,謝罪広告を掲
載させることが不可欠である。25
【原告の主張】
争点5-5について述べたとおり,本件において謝罪広告を認めるべき高い必要
性はないというべきである。
第3当裁判所の判断
1著作権侵害を原因とする本訴請求に関連する争点について
⑴争点1-1(「eBASEserver」は,データベースの著作物である5
か)について
原告は,原告が平成16年8月10日に完成させた同日版「eBASEserv
er」は,①合計22個の辞書がそれぞれ様々な辞書情報を備えており,データベ
ースの体系的な構成の中で各データ項目と紐付けられて辞書網を構成している点に
創作性が認められ,②個々の辞書が,それ単独でも,体系的構成及び情報の選択に10
おいて創作性が認められるから,それ自体が,データベースの著作物と認められる
べき旨主張する。
原告の主張によれば,「eBASEserver」は,食品の商品情報を広く事
業者間で連携して共有する方法を実現するためのデータベースを構築するためのデ
ータベースパッケージソフトウェアであって,食品の商品情報が蓄積されることに15
よりデータベースが生成されることを予定しているものである。そうすると,この
ような食品の商品情報が蓄積される前のデータベースパッケージソフトウェアであ
る「eBASEserver」は,「論文,数値,図形その他の情報の集合物」(著
作権法2条1項10号の3)とは認められない。
原告は,「eBASEserver」に搭載されている辞書情報を「情報」と捉20
え,この集合物をもって「データベース」と主張するものとも解されるが,原告の
主張によっても,これらの辞書ファイルは,商品情報の登録に際して,当該商品情
報のうち特定のデータ項目を入力する際に参照されるものにすぎないのであって,
辞書ファイルが備える個々の項目が,「電子計算機を用いて検索することができる
ように体系的に構成」(著作権法2条1項10号の3)されていると認めることは25
困難である。
したがって,「eBASEserver」は,著作権法上の「データベース」に
当たるものとは認められないから,その創作性につき検討するまでもなく,データ
ベースの著作物ということはできない。
⑵争点1-2(「FOODS信頼ネット」にデータが登録・蓄積されて形成さ
れたデータベースの著作権は,本件業務提携契約書4条1項ただし書の規定により,5
原告に帰属していたか)について
原告は,被告が提供していたサービスである「FOODS信頼ネット」にデータ
が登録・蓄積されて形成されたデータベースにつき,その著作権が本件業務提携契
約書4条1項ただし書の規定により原告に帰属していた旨主張する。
前記前提事実(第2,2⑵)によれば,「FOODS信頼ネット」は,本件業務10
提携契約に基づき,原告が構築したデータベースシステムであり,本件業務提携契
約書において「本システム」として定義されているところ(同契約書2条1項4号),
同契約書4条1項は,その本文において「…本システムに関する著作権(著作権法
第27条及び第28条の権利を含む)及び著作者人格権(著作権法第18条から第
20条の権利をいう)並びにそれに含まれるノウハウ,アイデア,コンセプト,技15
術,または特許等の知的財産権は,甲(判決注:被告を指す。)に帰属するものと
する。」と規定しているのであるから,「FOODS信頼ネット」に形成されたデ
ータベースが著作権法上のデータベースの著作物であるとしても,同規定により,
その著作権は被告に帰属する旨が,原被告間で合意されていたことが明らかである。
原告は,「FOODS信頼ネット」のシステムと,そのうち「eBASEser20
ver」に相当する部分とは可分であり,本件業務提携契約書4条1項ただし書に
いう「本システムを設計,開発するにあたって,乙(判決注:原告を指す。)より
提供されたeBASEシリーズ等の著作物」に当たるから,同ただし書の規定によ
り原告に著作権が帰属する旨主張する。しかし,仮に,「FOODS信頼ネット」
のシステム中に「eBASEserver」に相当する部分が観念できるとしても,25
「eBASEserver」それ自体が著作権法上の「データベースの著作物」に
当たらないことは前記⑴において認定説示したとおりであって,「FOODS信頼
ネット」にデータが蓄積されて形成されたデータベースの著作物中に,別途分離し
て観念できるような別個の「データベースの著作物」が存在することにはならない
から,本件業務提携契約書4条1項ただし書の規定により直接,原告に帰属する「デ
ータベースの著作物」を観念することはできない。5
原告は,「FOODS信頼ネット」に形成されたデータベースがいわゆる受容的
データベースであり,その体系的構成が,データベースの著作物としての本質的部
分であるから,当該体系的構成について著作権を有する原告に,データベースの著
作権が帰属するとも主張するが,本件業務提携契約書4条1項の規定に,そのよう
な解釈を読み込むことは困難であるから,同主張も採用することができない。10
⑶小括
以上によれば,その余の争点(争点1-3ないし同1-5)につき検討するまで
もなく,本訴請求のうち,著作権侵害を原因とする部分には理由がない。
2債務不履行を原因とする本訴請求に関連する争点について
⑴争点2-1(被告は,原告から取得した「eBASEserver」のデー15
タベース仕様に基づいて被告データベースを構築したか。また,このことが本件使
用許諾契約に違反する債務不履行に当たるか)について
原告は,被告が,平成18年12月ないし平成19年1月頃に原告から原告デー
タベース仕様(「eBASEserver」のデータベース構造及び辞書テーブル
の内容の全てを含むファイル「eB-foodscsvファイルver1.0」20
をエクセルデータに変換して媒体に記録したもの)の交付を受け,同交付を受ける
目的(被告の顧客が商品情報を一括して登録するためのインターフェイスの開発目
的,被告の新システムが「eBASEjr.」からのデータを受信するためのコン
バーターの開発目的)以外に用いないことを平成19年4月1日付け本件使用許諾
契約により約したにもかかわらず,原告データベース仕様に基づき被告データベー25
スを構築し,原告データベース仕様を目的外使用したとして,同行為が本件使用許
諾契約に違反する債務不履行に当たる旨主張する。
しかし,まず,原告は,平成18年12月ないし平成19年1月頃,被告に対し,
原告データベース仕様を交付したと主張するものの,同事実を認めるに足りる的確
な証拠はない。
次に,証拠(甲66ないし69,乙23)によれば,被告は,平成18年6月頃5
には,原告に対し,「FOODS信頼ネット」のシステム開発及び運営を原告から
引き上げ,被告において独自にシステムを構築する旨を通告し,同年8月には新た
に構築するシステムに「eBASEserver」をインストールする旨の原告の
提案も拒絶し,システム切換後も「eBASEjr.」をデータの入力ツールとし
て被告の顧客が引き続き使用することに伴う暗号化及び復号化の仕様の開示等を原10
告に求め,一度は同年10月初旬にシステムの移行を予定していたこと,その後,
原告の協力も得て,平成19年1月6日から同月9日にかけて,本件サーバ移管が
現実に行われたことがそれぞれ認められるから,被告は,遅くとも平成18年12
月には移行後のシステムの開発を終えていたものと推認できるところ,原告が主張
するとおり同月に原告データベース仕様の交付を受け,その後これに基づき新たな15
システムを構築することは,作業に要する時間との関係で相当の困難が伴うと考え
られる。
さらに,本件使用許諾契約書は,平成19年4月1日付けで締結されており,同
日に先立ち締結されたことを認めるべき客観的な証拠や事情はうかがわれないから,
同日に締結されたと推認すべきところ,上記のとおり,本件サーバ移管は同年1月20
初旬に行われているほか,本件使用許諾契約書には,「乙(判決注:被告を指す。)
が提供するサービスであるFOODS信頼ネットに,丙(判決注:被告の取引先を
指す。)がデータ登録をする手段として,丙に本仕様を使用させることを許諾する。」
と記載されており,本件サーバ移管後の被告の新システムにおいて「eBASEj
r.」からのデータを受信するためのコンバーターの開発を目的とするなどの記載25
はないことに照らしても,本件使用許諾契約が,本件サーバ移管に伴う原告データ
ベース仕様の交付について締結されたものと認めることも困難である。
以上によれば,原告が,被告の債務不履行行為として主張するところの事実関係
は,本件全証拠によっても認めるに至らないというほかない。
⑵小括
以上によれば,その余の争点(争点2-2)につき検討するまでもなく,本訴請5
求のうち,債務不履行を原因とする部分には理由がない。
3不法行為を原因とする本訴請求に関連する争点について
⑴争点3-1(被告は,原告から取得した「eBASEserver」のデー
タベース仕様に基づいて被告データベースを構築したか。また,これにより,原告
の法的保護に値する利益が侵害されたか)について10
原告は,被告が原告から取得した「eBASEserver」のデータベース仕
様に基づき被告データベースを構築したことについて,先駆的なデータベースパッ
ケージソフトウェアである「eBASEserver」について構成かつ自由な競
争を逸脱した手段によりその営業活動を妨害されないという原告の営業上の利益を
侵害するものであり,また,法的保護に値する利益であるところのデータベースの15
体系的構成を剽窃するものとして,不法行為が成立すると主張する。
しかし,前記2⑴において認定説示したとおり,被告が,原告から取得した原告
データベース仕様に基づいて,被告データベースないしそのシステムを構築したと
認めるには至らないから,被告が不法行為責任を負うものとは認め難い。
⑵小括20
以上によれば,その余の争点(争点3-2)につき検討するまでもなく,本訴請
求のうち,不法行為を原因とする部分には理由がない。
4本訴の提起が不法行為に当たることを原因とする反訴請求に関連する争点に
ついて
⑴争点4-1(本訴の提起は,裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を25
欠くと認められるか)について
ア被告は,原告による本訴の提起が,裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相
当性を欠くものであるとして,被告に対する不法行為を構成すると主張する。
イ訴えの提起が相手方に対する違法な行為といえるのは,当該訴訟において提
訴者の主張した権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を欠くものである上,提訴
者が,そのことを知りながら,又は通常人であれば容易にそのことを知り得たとい5
えるのにあえて訴えを提起したなど,訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして
著しく相当性を欠くと認められるときに限られるものと解するのが相当である(最
高裁昭和60年(オ)第122号同63年1月26日第三小法廷判決・民集42巻
1号1頁,最高裁平成7年(オ)第160号同11年4月22日第一小法廷判決・
裁判集民事193号85頁参照)。10
本件についてこれをみると,原告は,本訴の提起に際し,訴状等に,①「eBA
SEserver」のデータベース構造及び辞書テーブルの内容の全てを含むファ
イルである「eB-foodsCSVファイルver1.0」は,原告が著作
権を有するプログラムの著作物であり,被告が「ASP規格書システム」を運用す
るに際して使用するプログラムは,同プログラムの著作物の複製物である,②「F15
OODS信頼ネット」にデータが蓄積されて形成されたデータベースは,本件業務
提携契約書4条1項ただし書の規定により,原告が著作権を有するデータベースの
著作物であり,被告データベースは,上記データベースの著作物の複製物である,
③原告データベース仕様は,原告が著作権を有する編集著作物であり,「ASP規
格書システム」のデータベース構造は,同編集著作物の複製物である,④原告デー20
タベース仕様は,原告の営業秘密に該当するところ,被告が原告から提供を受けた
原告データベース仕様を,その提供の目的に反して使用し,「ASP規格書システ
ム」を構築したことは,不競法2条1項7号の不正競争行為に当たるほか,⑤本件
使用許諾契約に違反し,また,⑥不法行為にも当たる,との権利ないし法律関係を
主張していたものである(当裁判所に顕著である。)。25
このうち,「eBASEserver」のデータベース構造を原告が開発したと
の事実認識に基づき,原告が何らかの権利(プログラム著作物,編集著作物,デー
タベースの著作物の各著作権及び営業秘密)を有する旨の権利関係の主張について
は,結果として本訴の手続の過程において主張が撤回されたり(プログラム著作物,
編集著作物及び営業秘密に関する主張),既に認定説示したとおり,原告に権利が
帰属しているとは認め難いものであった(データベースの著作物)ものの,原告が,5
平成16年頃には「eBASEserver」のデータベース構造の多くを構築し
ていたことをうかがわせるような一定の証拠があって(甲8,24ないし29,3
4ないし49),このような成果物について原告が何らかの権利を有するものと考
えることも無理からぬところがあり,知的活動の成果としての知的財産権の成否に
ついては法的評価たる側面が相応にあることからしても,原告においてかかる主張10
をしたことにつき,事実的,法律的根拠を欠くものである上,原告がそのことを知
りながら,又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのにあえて主張
したものと評価することは困難である。
次に,被告が提供する「ASP規格書システム」に搭載されているデータベース
システムについて,これが「eBASEserver」のデータベース構造を複製15
して構築されたものであるとの主張については,これを認めることができないこと
は,前記2⑴のとおりである。もっとも,証拠(甲61,62,証人A)によれば,
原告は,本訴の提起に先立ち,「ASP規格書システム」を使用している被告の顧
客の協力を得て,「ASP規格書システム」の画面表示項目と「eBASEser
ver」のデータベース構造及び画面表示項目を対比させたところ,その多くが一20
致し,また,「ASP規格書システム」の辞書と「eBASEserver」の辞
書とを比較したところ,「eBASEserver」の辞書に搭載された明白な誤
りも含めて多くが一致したことが認められるところ,これに基づき,「ASP規格
書システム」のデータベース構造が,「eBASEserver」を模倣したもの
ではないかとの疑いを抱いたとしても無理からぬところがあり,原告がかかる主張25
をしたことにつき,事実的,法律的根拠を欠くものである上,原告がそのことを知
りながら,又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのにあえて主張
したと評価することはできない。
したがって,原告が,本訴を提起するに際し,上記①ないし⑥の権利ないし法律
関係を主張したことについて,事実的,法律的根拠を欠くものである上,原告がそ
のことを知りながら,又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのに5
あえて主張したものとまで認めることはできないというべきである。
ウこの点に関して,被告は,原告が本訴の提起に際してした事実主張として,
⑴原告は,本件サーバ移管後の「FOODS信頼ネット」ないし「ASP規格書シ
ステム」には,原告が開発したデータベースパッケージソフトウェア「eBASE
server」がインストールされているものと考えていたが,平成25年6月に10
なって,はじめて,被告が「eBASEserver」をインストールすることな
く「ASP規格書システム」を運用していることを知ったとの事実主張(原告主張
ア①),⑵「ASP規格書システム」は,「eBASEjr.」からデータを登録・
受信することができる以上,「ASP規格書システム」のデータベース構造が「e
BASEserver」のデータベース構造と同一であることは,物理的に明らか15
であるとの事実主張(原告主張ア②),⑶原告は,平成18年12月ないし平成1
9年1月頃,原告データベース仕様を被告に交付し,被告は,これをパソコンやサ
ーバに複製して「ASP規格書システム」を構築したとの事実主張(原告主張イ),
⑷原告は,平成16年2月頃「eBASEserver」を構築したとの事実主張
(原告主張ウ)及び⑸本件使用許諾契約は,本件サーバ移管を目的とした原告デー20
タベース仕様の開示をも対象として締結されたものであるとの事実主張(原告主張
エ)を挙げて,これらの事実はいずれも虚偽の事実であるから,原告による本訴の
提起は事実的根拠を欠くものであったと主張する。
このうち,原告主張ア①についてみると,証拠(甲67,68,証人B)及び弁
論の全趣旨によれば,本件サーバ移管に際して,原告(当時の担当者はB)は,被25
告が新たに構築するシステムに「eBASEserver」を残すことを勧めたの
に対し,被告がこれを受け入れなかったこと,この経過については,原告社内でデ
ジタル化されている週報システムにおいて報告されており,本訴の審理の過程にお
いて原告が再調査して判明したことなどが認められるから,原告が本訴を提起した
時点で原告の取締役の地位にあったBは,「ASP規格書システム」に「eBAS
Eserver」がインストールされていない事実を認識していたか,少なくとも5
認識し得る立場にあったというべきであるし,原告の代表者及び本訴の提起を主導
したAにおいても,週報を調査することにより,「ASP規格書システム」に「e
BASEserver」がインストールされていないことを認識することができた
というべきであるから,原告が,平成25年6月になってはじめて「eBASEs
erver」が「ASP規格書システム」にインストールされていない事実を知っ10
たという事実主張(原告主張ア①)は,原告側の認識として正確さを欠くものであ
ったというべきである。しかし,この事実主張は,本訴において,原告がいかにし
て被告による侵害の疑いを覚知したかに関する主張であって,それ自体が原告が本
訴で求めた権利ないし法律関係そのものを構成するものではないから,原告主張ア
①が正確さを欠くものであったとしても,そのことにより,原告による本訴の提起15
が,事実的根拠を欠くものであったとまで評価することはできない。
次に,原告主張ア②についてみると,「ASP規格書システム」が,入力ツール
としての「eBASEjr.」からデータを登録・受信することができたとしても,
このことから,「eBASEserver」と「ASP規格書システム」の各デー
タベース構造が当然に一致するということはできないのであるから,これを「物理20
的に明らか」とする事実主張(原告主張ア②)は,正確さを欠くものであったとい
うべきである。しかし,この事実主張は,「eBASEserver」と「ASP
規格書システム」の各データベース構造が類似することを立証命題とし,これを推
認させる間接事実及び同推認に関する経験則の主張に他ならないところ,本訴提起
時点において「ASP規格書システム」のデータベース構造を入手し得る立場にな25
い原告において,様々な間接事実及びこれに関連する経験則を用いてこれを立証し
ようとすることは自然であり,前記のとおり原告が本訴提起に際して「ASP規格
書システム」の画面表示項目等を調査し,それによれば「eBASEserver」
との類似性が一定程度認められていたこと,一般に,データベースへのデータの入
力ツールが,当該データベースのデータベース構造を反映していることは少なくな
いと考えられることからしても,原告が「物理的に明らか」と主張したことにより,5
本訴の提起が事実的根拠を欠くものであったということにはならないというべきで
ある。
原告主張ウについてみると,上記イにおいて認定説示したとおり,原告が平成1
6年頃には「eBASEserver」のデータベース構造の多くを構築していた
ことをうかがわせるような一定の証拠があったことからすれば,原告においてかか10
る主張をしたことが,事実的根拠を欠くものであったということはできない。
最後に,原告主張イ及び同エについて検討する。前記2⑴に認定説示したとおり,
原告が平成18年12月ないし平成19年1月頃に被告に対して原告データベース
仕様を交付し,被告がこれを複製して「ASP規格書システム」を構築したとの事
実(原告主張イに係る事実)や,本件使用許諾契約は本件サーバ移管を目的とした15
原告データベース仕様の開示をも対象として締結されたとの事実(原告主張エに係
る事実)は,原告の主張を裏付けるような客観的な証拠がなく,また,本件使用許
諾契約書の記載内容とも整合しないことから,いずれも認めることができない。そ
して,原告主張イについては,被告が原告の著作物を複製するためにいかにして原
告の著作物を入手したかに係る事実関係の主張であるし,原告主張エについては,20
債務不履行責任の請求原因事実たる契約の内容に関する主張であるから,本訴にお
ける原告の請求を成り立たせる上で,相応に重要な事実の主張であったといえ,客
観的証拠に乏しい中,原告が,これらの主張に基づき,10億円の損害賠償や被告
の事業に属する被告データベースの使用等の差止めを求める本訴を提起した点につ
いては,やや軽率であったとの評価も考えられるところである。しかし,上記イに25
おいて指摘したように,原告において開発・構築を進めてきたデータベース構造の
成果物について何らかの権利関係を有するものと認識し,かつ,「ASP規格書シ
ステム」の利用者の協力を得て調査したところ,その画面表示項目や辞書の一部が
自らの成果物と類似していることが判明したのであるから,「ASP規格書システ
ム」のデータベース構造が,「eBASEserver」を模倣したものではない
かとの疑いを抱くことも無理からぬところがあり,訴訟の進行に応じて証拠が開示5
されるなどして事実関係が解明される可能性も残されていたのであるから,本訴の
提起が全く事実的根拠を欠くものであったとまでは断じ難いというべきである。
以上のとおり,被告の主張するところを考慮しても,原告が,本訴について,事
実的,法律的根拠を欠くものである上,そのことを知りながら,又は通常人であれ
ば容易にそのことを知り得たといえるのにあえて提起したとまで評価することはで10
きない。
⑵小括
以上によれば,その余の争点(争点4-2)につき検討するまでもなく,反訴請
求のうち,本訴の提起が不法行為に当たることを原因とする部分には理由がない。
5名誉毀損を原因とする反訴請求に関連する争点(争点5-1ないし同5-5)15
について
⑴被告は,原告が訴状等を提出し,被告に被告プレスリリースによる適時開示
をさせた上で,原告プレスリリースを掲載した一連の表現行為について,被告の社
会的評価を低下させるものであり,名誉毀損の不法行為が成立すると主張する。
しかし,原告による訴状等の表現と,原告プレスリリースの掲載は,客観的にみ20
て別個の行為であり,これらを目にする者が,訴状等の表現と原告プレスリリース
上の表現とを同時に,併せて読むことが通常とも考えにくいから,それぞれについ
て名誉毀損が成立するかを検討するのが相当である。
⑵訴状等の記載について
民事訴訟は,私的紛争の当事者が相互に攻撃防御を尽くして事実関係を究明する25
と共に,法律的見解について論争を展開し,裁判所が双方の主張・立証活動を踏ま
えて判断を示すことにより紛争を解決する制度であり,当事者の法律上又は事実上
の利害関係が鋭く対立するにつれて相互の利害や感情の対立も激しくなるという傾
向があり,時には一方当事者の主張・立証活動が相手方当事者等の名誉・信用を損
なうような事態を招くこともある。しかし,それは,飽くまでも紛争を解決するた
めの訴訟手続の過程における当事者の暫定的又は主観的な主張・立証活動の一環に5
すぎず,もしそれが一定の許容限度を超えるものであれば,裁判所がそれを指摘し
て適切に訴訟指揮権を行使することによって適宜是正することが可能であるし,相
手方には,それに反駁し,反対証拠を提出するなどの訴訟活動を展開する機会が制
度上保証されているほか,当事者の主張・立証の当否等は最終的に裁判所の裁判に
よって判断されるから,これにより一旦は損なわれた名誉・信用を回復することが10
できる仕組みになっている。このような民事訴訟における訴訟活動の特質及び仕組
みに照らすと,当事者の主張・立証活動について,相手方等の名誉等を損なうよう
なものがあったとしても,それが直ちに名誉毀損として不法行為を構成するもので
はなく,訴訟行為と関連し,訴訟行為遂行のために必要であり,主張方法も不当と
は認められない場合には,違法性が阻却されると解するのが相当である(知財高裁15
平成28年(ネ)第10094号同29年3月22日判決等参照)。
本件における訴状等の記載についてこれをみると,被告が問題とする表現は別紙
3のとおりであり,そのいずれも,被告の行為が著作権侵害行為,不正競争行為,
債務不履行行為又は不法行為に当たる旨並びにこれに基づき原告が被告に対して損
害賠償請求権,差止請求権及び廃棄等請求権を有すると主張するにとどまるもので20
あって,訴訟行為と関連し,その遂行のために必要なことは明らかであって,主張
方法が不当であるとも認められない。
したがって,仮に,訴状等の記載が,被告の社会的評価を低下させるものと解す
る余地があったとしても,同表現は,違法性があるものとは認められず,名誉毀損
の不法行為は成立しない。25
⑶原告プレスリリースの記載について
次に,原告プレスリリースの記載についてみるに,その記載内容は別紙5のとお
りであって,要旨,原告が,本件業務委託契約に基づき,カスタマイズ部分を除き,
「FOODS信頼ネット」の知的財産権を有するところ,被告は,原告の許諾なく,
「FOODS信頼ネット」のリニューアル版であるところの「ASP規格書システ
ム」の知的財産権を使用しているから,これが著作権侵害に当たるという,法的な5
見解を表明するものと認めるのが相当である。
そして,法的な見解の表明は,事実を摘示するものではなく,意見ないし論評の
範ちゅうに属するものというべきところ,ある事実を基礎としての意見ないし論評
の表明による名誉毀損にあっては,その行為が公共の利害に関する事項に係り,か
つ,その目的が専ら公益を図ることにあった場合に,上記意見ないし論評の前提と10
している事実が重要な部分について真実であることの証明があったときには,意見
ないし論評としての域を逸脱したものでない限り,上記行為は違法性を欠くという
べきであり,仮に上記証明がないときにも,行為者において上記事実の重要な部分
を真実と信ずるについて相当な理由があれば,その故意又は過失は否定される(最
高裁平成6年(オ)第978号同9年9月9日第三小法廷判決・民集51巻8号315
804頁,最高裁平成15年(受)第1793号,第1794号同16年7月15
日第一小法廷判決・民集58巻5号1615頁参照)。
原告プレスリリースの記載は,いずれも上場会社である原告及び被告のサービス
に関する権利関係の帰属についての紛争の情報を投資家や顧客に提供するものであ
るから,公共の利害に関する事項に係ることが明らかであって,その目的が専ら公20
益を図ることにあると認められる。そして,原告プレスリリースが前提としている
事実は,①原告が,「FOODS信頼ネット」の開発に携わり,被告との間で締結
された本件業務委託契約には,原告がその知的財産権を保有するとみるべき記載が
あること,及び,②被告による「ASP規格書システム」の使用については,原告
の許諾がないことであると認められるところ,①については,原告が「FOODS25
信頼ネット」の開発に携わったことは真実であり,また,本件業務委託契約書4条
1項ただし書には,その成果物について原告に著作権を留保する旨の記載があるか
ら,この点も真実であるといえる(これらの事実関係に基づき,「FOODS信頼
ネット」に蓄積されたデータベースの著作物の著作権を原告が取得するとの法的判
断に至るかは,別論である。)。②については,少なくとも,原告と被告との間に,
「ASP規格書システム」の使用について明示的に許諾等がされたことを示す明確5
かつ客観的な証拠はうかがわれないのであるから,原告が,同事実を真実と信ずる
について相当な理由があると認めるべきである。
したがって,仮に,原告プレスリリースの記載が,被告の社会的評価を低下させ
るもので,違法性を欠くとまではいえないとしても,同表現につき,原告に故意又
は過失があったとはいえないから,名誉毀損の不法行為は成立しない。10
⑷小括
以上によれば,その余の争点(争点5-4,同5-5)について検討するまでも
なく,反訴請求のうち,名誉毀損を原因とする請求にはいずれも理由がない。
6不競法に基づく反訴請求に関連する争点(争点6-1ないし同6-3)につ
いて15
被告は,原告プレスリリースに含まれる本件プレスリリース表現(第2,2⑹イ
参照)は,いずれも虚偽の事実であって被告の営業上の信用を害するものであると
して,不競法2条1項15号の不正競争行為に当たり,同行為について原告に故意
又は過失があることも明らかと主張する。
そこで検討するに,被告が指摘する本件プレスリリース表現は,要旨,「FOO20
DS信頼ネット」は,原告の製品のカスタマイズ版であり,本件業務委託契約に基
づき,原告に知的財産権が帰属すること,及び,被告が,原告の許諾を得ることな
く,「FOODS信頼ネット」のリニューアル版である「ASP規格書システム」
を使用していることであるが,これらの表現が前提としている事実が,①原告が,
「FOODS信頼ネット」の開発に携わり,被告との間で締結された本件業務委託25
契約には,原告がその知的財産権を保有するとみるべき記載があること,及び,②
被告による「ASP規格書システム」の使用については,原告の許諾がないことで
あることは,前記5⑶において認定説示したとおりである。そして,既に認定説示
したところによれば,①については真実であるといえるし,②については,原告が,
同事実を真実と信ずるについて相当な理由があると認められる。
したがって,仮に,原告プレスリリースによる本件プレスリリース表現が,不競5
法2条1項15号の不正競争行為に当たる余地があるとしても,少なくとも,原告
には故意又は過失があったとはいえず,損害賠償請求及び謝罪広告掲載請求は認め
られない。
以上によれば,その余の争点(争点6-2,同6-3)について検討するまでも
なく,反訴請求のうち,不競法に基づく請求にはいずれも理由がない。10
7結論
以上のとおり,原告の本訴請求及び被告の反訴請求にはいずれも理由がないから,
主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官
嶋末和秀
裁判官
天野研司
裁判官
西山芳樹
(別紙1)
被告物件目録
データベース「ASP規格書システム」
以上5
(別紙2)
謝罪広告目録
第1謝罪文の内容
1見出し
株式会社インフォマート様に対する信用毀損に関するお詫び5
2本文
当社は,平成27年8月7日付で,東京地方裁判所に対し,株式会社インフ
ォマート様を被告として,当社に帰属する「FOODS信頼ネット」の知的財
産権を侵害したこと等を理由として,株式会社インフォマート様が運営する「A
SP規格書システム」(「FOODS信頼ネット」のリニューアル版)の使用10
差止及び10億円の損害賠償を求める著作権侵害行為差止等請求訴訟(東京地
方裁判所平成27年(ワ)第21897号事件,以下「本訴」といいます。)
を提起致しました。
また,当社は,同年9月2日付で,当社公式ウェブサイトにおいて,「株式
会社インフォマートに対する訴訟提起に関するお知らせ」と題するIRニュー15
スを公表し,株式会社インフォマート様に対して本訴を提起したこと,本訴を
提起した理由として,「『ASP規格書システム』(「FOODS信頼ネット」
のリニューアル版)では,当社に帰属する知的財産権を,当社から許諾を得る
ことなく,当社の許諾の範囲外で使用しています。」等と記載し,「ASP規
格書システム」(現在のサービス名は「BtoBプラットフォーム規格書」)20
が当社の知的財産権を侵害している旨の事実を公表いたしました。
当社による本訴の提起に対し,株式会社インフォマート様からは,本訴が虚
偽の事実に基づく不当提訴であるとして平成28年11月7日に反訴(東京地
方裁判所平成28年(ワ)第37577号損害賠償請求反訴事件)が提起され
ましたが,本訴及び反訴の判決において,当社が本訴において主張した事実の25
重要部分が虚偽であること,「ASP規格書システム」の著作権は株式会社イ
ンフォマート様に帰属しており,株式会社インフォマート様は当社の知的財産
権を何ら侵害していないことが認定されました。
当社は,上記IRニュースの公表等により,株式会社インフォマート様の信
用を毀損し,多大なご迷惑をお掛け致しましたことを,ここに慎んで心よりお
詫び申し上げます。5
平成年月日
eBASE株式会社代表取締役C
第2掲載条件
1掲載場所,掲載期間
⑴本判決の確定した日から30日以内に,朝日新聞,読売新聞,毎日新聞,10
日本経済新聞及び産経新聞については,各朝刊全国版社会面広告欄に横幅1
6センチメートル×2段,東京新聞及び中日新聞については朝刊社会面広告
欄に横幅10センチメートル×2段,日本食糧新聞(東京都中央区八重洲1
-9-9東京建物ビル5階所在)及び食品産業新聞(東京都台東区東上野2
-1-11サンフィールドビル8階所在)については一面広告欄に3段2分15
の1(縦103ミリメートル×横192ミリメートル)
⑵反訴被告公式ウェブサイト(http://<以下略>)において,本判決の確定
した日から30日以内に,謝罪文全文を掲載し,掲載開始日から6か月間以
上継続して記載
⑶反訴被告公式ウェブサイト(http://<以下略>)のトップページ上部(ス20
クロールをしなくても閲覧できる箇所)において,本判決の確定した日から
30日以内に,謝罪文の見出し及び⑵の謝罪文全文が掲載されたページへの
ハイパーリンクを掲載し,掲載開始日から6か月間以上継続して掲載
2使用活字
見出しについては,12ポイント・ゴシック活字25
本文については,11ポイント
(別紙3)
訴状等表現目録
(末尾の頁数は平成27年8月20日付け訴状訂正申立書の頁数を示す。)
1「これらの被告の行為は,原告が著作権を有する『eB-foodscsv
ファイルver1.0』及び原告データベース仕様に対し,複製権及び翻案権5
を侵害する違法な行為である。」(43頁),「したがって,原告は,被告に対
し,著作権法112条1項に基づき,被告プログラムの使用,複製,公衆送信(送
信可能化を含む。)の差止請求権を有する。また,原告は,被告に対し,著作権
法112条2項に基づき,被告プログラム及びその複製物(同プログラムを格納
した記録媒体を含む。)の廃棄請求権を有する。」(46頁)10
2「被告の上記行為は,本件データベースの複製権を侵害する行為である。」(4
4頁),「したがって,原告は,被告に対し,著作権法112条1項に基づき,
データベース『ASP規格書システム』の複製,公衆送信(送信可能化を含む。)
の差止請求権を有する。また,原告は,被告に対し,著作権法112条2項に基
づき,データベース『ASP規格書システム』及びその複製物(同データベース15
を格納した記録媒体を含む。)の廃棄請求権を有する。」(47頁)
3「被告による上記行為は,不正の利益を得る目的で,原告から開示された営業
秘密を使用する行為であって,不正競争防止法2条1項7号の不正競争に該当す
るものである。」(44頁),「したがって,原告は,被告に対し,不正競争防止
法3条1項に基づき,『ASP規格書システム』における営業秘密たる原告デー20
タベース仕様の使用につき差止請求権を有する。」(48頁),「したがって,
原告は,被告に対し,不正競争防止法3条2項に基づき,被告プログラム及びそ
の複製物(同プログラムを格納した記録媒体を含む。),ならびに『ASP規格
書システム』及びその複製物(同データベースを格納した記録媒体を含む。)の
廃棄請求権を有する。」(48頁)25
4「被告による著作権侵害行為及び不正競争行為によって原告が受けた損害の額
は,著作権法114条2項及び不正競争防止法5条2項により,少なくとも12
億6500万円と算定され,被告は,原告に対し,少なくとも12億6500万
円の損害賠償義務を負担する。」(50頁)
5「かような被告の行為は,原告の法的保護に値する利益を侵害するものであり,
不法行為を構成するものである。」(45頁),「したがって,被告は,原告に5
対し,不法行為に基づき,少なくとも12億6500万円の損害賠償義務を負担
する。」(51頁)
6「被告の使用許諾契約違反によって原告が受けた損害の額は,使用許諾契約書
2条6項により,少なくとも42億1800万円と算定され,被告は,原告に対
し,少なくとも42億1800万円の損害賠償義務を負担する。」(50頁)10
7「原告は,著作権侵害,不正競争,使用許諾契約違反及び不法行為に基づく損
害賠償の一部請求として(選択的請求),10億円及びこれに対する本訴状送達
の日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める。」(5
2頁)
以上15

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採用情報


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弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
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「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
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ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
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応募資格
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従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

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◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

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メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
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独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
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