弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
         理    由
 弁護人免出礦が陳述した控訴趣意は、記録に編綴の同弁護人提出の控訴趣意書に
記載のとおりであるから、これを引用する。
 同控訴趣意について。
 原判決挙示の各証拠に被告人の検察官に対する各供述調書を参酌すれば、昭和三
六年一〇月三〇日熊本国税局において本件宅地の公売競争入札が行われた際、入札
希望者A、B、C、D、E及びDの付添人たる被告人とEの付添人Fが出頭したと
ころ、Aは右宅地の元所有者Bに落札させるため同人との密約に基きC、F及び被
告人に対し「宅地はBに落札させてもらいたい、あんた達は最低評価価格の五六万
円で入札するか或は入札をやめてもらいたい、そうすれば謝札として五万円を出す
から」と申入れたのでCと被告人はこれを諒承し、かくてA、B、C及び被告人の
四名はBに宅地を廉価に落札させて同人から謝礼金五万円を受取ることを協定し、
Cは入札をとりやめ、Bは五六万一〇〇〇円で、A及び被告人の指示を受けたDは
いずれも五六万円で入札した結果Bが右宅地を落札し(尤も、協定申入に応じなか
つたEは八六万円で入札したが時間切れのため無効とされた)、謝礼金として被告
人とAは各一万七〇〇〇円、CとFは各八〇〇〇円を取得した事実が認められる。
 所論は、被告人は当初から入札の意思を有せず専らDの入札を指導するため案内
役をつとめたものであるから、被告人に談合罪は成立しないと主張する。
 なるほど、被告人の検察官に対する各供述調書、Dの司法警察員に対する各供述
調書によれば、被告人は当初から入札の意思を有せずDが入札に無知であつた関係
上入札価格その他の手続につき同人に指示を与えるため同人を同伴して出頭したも
のであり現に入札にも加わつていないことは所論のとおりであるこ<要旨>とが認め
られる。しかし、刑法第九六条の三第二項が公の競売または入札における談合を処
罰する所以は、競売等の主体が国家または公共団体である関係上、特にその
公正を保持することが要請されるためその公正を害する危険のある行為を取締る目
的に出でたものと解すべきであるから競争入札における談合は入札希望者間におい
てのみ行われるのが通常であるとはいえ、入札希望を有しない者については同罪の
成立する余地がないものと断定することは早計であり、公の競売等において談合が
行われるに際し、自らは入札希望を有しない者であつても、苟も自己と特別の関係
にある者によつて入札が行われることを前提として公正なる価格を害し又は不正の
利益を得る目的を以て右談合に加わり、且つこれによつてその公正を害する危険の
存することが認められる限り、その者についても、本罪は成立するものというべき
である。而して被告人は本件入札に際し全く入札希望を有しなかつたものではある
が、入札希望を有するDが入札に無知であつた関係上入札価格等につき同人に指示
を与えるため同人を同伴して来たものであつて、該競争入札に関し、傍観者的な立
場で右入札場に出頭したものではなく、被告人においてBに落札させることを談合
すれば、これに基いてDに入札価格を指示し勢い同人の入札価格に影響を及ぼす立
場にあつたので、前説示のように特別の関係にある者によつて入札が行われること
を前提として前記の目的を以て右談合に加つたものであり、且つ被告人指示のとお
り廉価で入札する可能性が存し、これによつて公の競売の公正を害する危険があつ
たものということができるから、入札希望者に対し前叙の如き立場にある被告人の
談合が前記法条に該当するものであることは到底否み難いところである。そして現
にDが被告人の指示に従い落札をあきらめて最低評価価格で入札していることは同
人の司法警察員に対する各供述調書により認められる。従つて、被告人の所為は談
合罪の実行正犯を構成するもので、所論の如く主体的構成要素を欠如するとか教唆
犯または従犯に当るものとはいわれない。
 次に所論は、被告人とAとの間の話合だけでは談合罪は成立しないと主張する。
 しかし、談合罪は必ずしも入札希望者全員が協定に加わる必要はなく、その一部
の者の間において協定が出来た場合にも同罪が成立するものと解すべく、本件にお
いてEは協定に加らなかつたけれどもその余の出頭者四名間において協定が成立し
ているから、被告人について談合罪が成立すること勿論である。
 また所論は、被告人には公正な価格を害する目的はなかつたと主張する。
 しかし、公正なる価格とは当該入札において公正な自由競争が行われたならば成
立したであろう落札価格をいうものと解すべく、そしてかかる落札価格が本件の如
き数名の入札希望者のある、しかも時価より二〇パーセントも減額して定められた
最低評価価格(Gの検察官に対する供述調書)の宅地の入札においては該価格を上
廻ることは経験則上当然予測し得たものというべきところ、被告人はBに落札させ
るため最低評価価格で入札することを承諾した事実に鑑み、これに被告人の検察官
に対する各供述調書を併せ考察すれば、被告人は当時右宅地の競争入札における公
正な価格を害する意思を有したものと認めざるを得ない。
 なお所論は、不正の利益とは公正な落札価格を引下げることによつて得られる差
益を利得することを指称し、本件の如く入札希望者が故ら落札しなかつたことに対
する謝礼及び日当を含めた金員の供与はこれに該当しないと主張する。
 しかし、被告人は自らは入札希望を有しないで入札に無知なDに入札価格等を指
示するため出頭したものであるに拘らず、Aの申入を受くるや謝礼金に眩惑されそ
の態度を豹変しBに落札させるため最低評価価格の五六万円で入札することを協定
しこれに基いて右金額に僅か一〇〇〇円を加算した金額で落札した同人から謝礼金
五万円の中一万七〇〇〇円の分配を受けたものであつて、しかも右金額は入札につ
いて調査その他の手数や費用を要しない単純な宅地の入札においては所論の日当等
としては多額に過ぎることは社会通念に照し明らかであり、これを社会常識上儀礼
的な謝礼金、その他正当なものとは到底認められないから、これが取得を目的とし
た被告人は不正の利益を得る目的を以て談合したものといわねばならない。尤も、
被告人が右謝礼金を被告人とD両名分の分配金名義を以て受取つていることは所論
のとおりであるが、仮りに両名分と見ても前述の結論に消長を来たすものではない
上に被告人の検察官に対する各供述調書、Dの司法警察員に対する各供述調書によ
れば、被告人は右謝礼金についてはDに話さず自ら全額これを取得する意図であつ
たことが認められる。
 以上説示のとおりであつて、記録を精査しても原判決に所論の如き法律解釈の
誤、事実誤認は存しない。論旨は理由がない。
 そこで、刑事訴訟法第三九六条に則り本件控訴を棄却することとし主文のとおり
判決る。
 (裁判長裁判官 岡林次郎 裁判官 中村荘十郎 裁判官 臼杵勉)

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