弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人A、同B、同C、同Dの弁護人古屋東の上告趣意第一点、被告人A、同B
の弁護人山崎一郎、同新谷春吉の上告趣意第一について。
 所論は、いずれも事実誤認及びこれを前提とする単なる法令違反の主張であつて、
適法な上告理由に当らない(なお、各論旨は、原判決の引用する第一審判決の判示
第一、(一)乃至(八)、第二、第四、(七)、第五、(一)(三)(2)(4)
の各事実に関する原判示を非難するところがあるが、記録によれば、本件各工事請
負業者は本件各金員の使途につき被告人等が所論事業所の予算不足に伴う諸経費を
補う財源にもあてることを諒解していた一方において、被告人等の遊興、慰安旅行
等個人的用途にあてることを含め、右各金員の処分を被告人等に一任し、もつて被
告人等に利益を供したものであり、これを右事業所に寄贈したものではないこと、
かつ、被告人等において右各金員の賄賂性の認識につき欠くるところはなかつたこ
とを肯認するに十分である。従つて、所論原判示は結局において相当であり、論旨
の非難は当らないものというべきである。)。
 被告人A、同B、同C、同Dの弁護人古屋東の上告趣意第二点について。
 所論は、判例違反をいうところがあるが、所論引用の判例は事案を異にする本件
には適切でないから前提を欠き、その余は単なる法令違反の主張であつて、すべて
適法な上告理由に当らない。
 同第三点について。
 所論は、単なる法令違反の主張であつて、適法な上告理由に当らない。
 のみならず、原判決が、被告人側のみの控訴申立にかかり検察官の控訴申立のな
かつた本件につき、被告人Aに対し金額五七七、八六六円六六銭の追徴を言い渡し
た第一審判決を破棄自判し、右金額を増額した六〇七、八六六円の追徴の言渡をし
たものであることは所論のとおりであるけれども、本来、一、二審判決の刑の軽重
を比較するには、これを形式的にのみ判断することなく、実質的見地から総体的に
考察すべきものであるところ(昭和二五年(あ)第二五六七号、同二六年八月一日
大法廷判決、刑集五巻九号一七一五頁、昭和二八年(あ)第三四三四号、同年一二
月二五日第二小法廷判決、刑集七巻一三号二七四九頁参照)、本件においては、第
一審判決が被告人川口に対し懲役一年、執行行猶予三年を言い渡したのに対し、原
判決は懲役一〇月、執行猶予三年の言渡をしているのであつて、右程度に主刑の刑
期が減ぜられている場合には、追徴金額の点において前記の如き不利益な変更があ
るとしても(本件追徴金額の増額は、原審において新たな事実を認めたことによる
ものではなく、第一審裁判所の計算違いによるものであることは、第一、二審判決
の各判文に徴し明白である。)、前記総体的考察において結局刑訴四〇二条にいわ
ゆる「重い刑」を言いしたことにならないと解するのが相当である。所論違法の主
張は採るをえない(なお、所論引用の高等裁判所判例は事案を異にし本件には適切
でない。)。
 被告人A、同Bの弁護人山崎一郎、同新谷春吉の上告趣意第二、第五は、いずれ
も事実誤認及びこれを前提とする単なる法令違反の主張であり、第三、第四も事実
誤認の主張を出でないものであつて、すべて適法な上告理由に当らない。
 また各被告人につき記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められ
ない。
 よつて同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとお
り決定する。
  昭和三七年六月一八日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    池   田       克
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    山   田   作 之 助

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