弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     当審の訴訟費用は被告人の負担とする。
         理    由
 弁護人數馬伊三郎の上告趣意第一点について。
 原判決は、第一審判決が再犯の事実を認定しないで刑法五六条五七条により刑の
加重をなし且つその加重刑について同法一四条の制限を適用しなかつたことを理由
として、第一審判決中の有罪部分を破棄した上、訴訟記録並びに第一審裁判所にお
いて取調べた証拠によつて直ちに判決することができるものとして、刑訴法四〇〇
条但書により更に判決をしたものである。そしてこの場合には、第一審で取り調べ
た証拠は更に証拠調手続を経なくとも控訴判決の証拠となし得るのである。されば、
原判決挙示の証拠について原審において証拠調がなされなかつたことを以て訴訟手
続に違背するとなす所論は理由がない。而してこの所論を前提とする憲法違反の主
張については判断するまでもないことになるのであるから、結局論旨は刑訴法四〇
五条所定の事由に当らず、上告適法の理由とならないものといわなければならない。
 同第二点について。
 記録によれば、原審において弁護人は控訴趣意として第一審判決の量刑不当を主
張するに当り、その一理由に犯行が飲酒酩酊の上の行為であつたという事実を述べ
ていることが認められる。この趣旨は、控訴審において右の酩酊の点を勘酌して科
刑を減軽せんことを求める事情を述べたに過ぎないものと解せられるのであつて、
所論の如く心身喪失または心身耗弱の主張であるとは認められないのであるから、
この点につき原判決が判断を示していないことは当然であつて、刑訴法三三五条二
項に違反せず、論旨は理由がない。而して右論旨を前提とする憲法違反の主張につ
いては判断を示すまでもないことになるのであるから、論旨は結局刑訴法四〇五条
所定の事由に当らず、上告適法の理由とならないものといわなければならない。
 同第三点について。
 所論は、原判決の憲法三七条一項違反を主張するけれども、その実質は原判決が
判示建造物損壊罪の成立を認めたことを不当とすることに帰するのであるから、刑
訴法四〇五条所定の事由に当らず、上告適法の理由とならないものというべきであ
る。
 被告人の上告趣意は原判決の事実誤認量刑不当の主張であつて、刑訴法四〇五条
所定の事由に当らず、上告適法の理由とならない。
 よつて刑訴法四〇八条一八一条に従い、裁判官全員一致の意見により、主文のと
おり判決する。
  昭和二六年五月一八日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    谷   村   唯 一 郎

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