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平成22年8月19日判決言渡
平成21年(行ケ)第10422号審決取消請求事件(特許)
口頭弁論終結日平成22年7月20日
判決
原告株式会社ジーシーデンタルプロダクツ
同訴訟代理人弁理士笠井量
被告特許庁長官
同指定代理人豊永茂弘
同高木彰
同北村明弘
同小林和男
主文
1特許庁が不服2007−28041号事件について平成
21年11月5日にした審決を取り消す。
2訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
主文同旨
第2事案の概要
本件は原告が名称を歯科用材料の製造方法とする発明につき特許出願平,,「」(
成9年特許願第123256号。国内優先権主張平成8年4月27日)したとこ
ろ,拒絶査定を受けたので,これを不服として審判請求をしたが,同発明は後出の
引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたもので
あり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとして,請求不
成立の審決を受けたことから,その審決の取消しを求める事案である。
1特許庁における手続の経緯
原告は,平成9年4月26日,上記発明につき特許出願したが,平成19年9月
3日付けで拒絶査定を受けたので,これを不服として,同年10月11日付けで審
判請求をした。
特許庁は,これを不服2007−28041号事件として審理の結果,平成21
年11月5日,本件審判請求は成り立たないとの審決をし,同月28日,その謄本
を原告に送達した。
2本願の特許請求の範囲
平成19年5月21日付け手続補正書(甲19)の記載によれば,請求項1の発
明は,次のとおりである(以下「本願発明」という。なお,請求項は1ないし5ま
で存在するが,請求項2ないし5に関する部分は,以下,省略する。。)
「,多孔質セラミックスにレジンが含浸されてなる歯科用材料の製造方法であって
(a)網目形成酸化物,中間酸化物,および,網目修飾酸化物を含有し平均粒径
が3.0∼50μmのセラミックス粉末と,バインダーを含む混合物を所定形状に
成型し,
(b)前記成型された混合物を焼成し,連通孔を有する多孔質セラミックスブロ
ックを得,
(c)該多孔質セラミックスブロックの連通孔にシランカップリング剤,チタネ
ート系カップリング剤,ジルコアルミネート系カップリング剤のうちから選択され
た少なくとも1つのカップリング剤を超音波中および/または減圧下で浸透させ,
連通孔の表面をカップリング処理し,
(d)前記カップリング処理された多孔質セラミックスブロックの連通孔に,少
なくともエチレン性二重結合を含有するモノマーおよび/またはオリゴマーを超音
波中および/または減圧下で浸透させた後,重合させる
ことを特徴とする歯科用材料の製造方法」。
3審決の理由
審決は,本願発明は,欧州特許出願公開第701808号明細書(甲1。以下
「引用例」という)に記載された発明(以下「引用発明」という)並びに周知技。。
術(参考例として,特開平6−173235号公報(甲3。以下「周知例1」とい
う)及び特開平5−47528号公報(甲4。以下「周知例2」という)に記載。。
された各技術事項)に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるか
ら,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないと判断した。
審決が認定した引用発明等の内容,一致点及び相違点並びに容易想到性の判断内
容は,次のとおりである(なお,以下において引用した審決中の当事者及び公知文
献等の表記は,本判決の表記に統一した。。)
(1)引用例の記載事項
「1.Aprocessforproducingaceramicnetworkmaterialfromaceramicsア(ア)『
uspension,whereinsaidsuspensionincludesdispersedceramicparticlesinamedium
containingwaterandadispersant,comprisingthestepsof:
castingsaidsuspensioninamold;
dryingsaidmoldedsuspensiontodrawsaidwaterfromsaidsuspension;
firingsaiddriedsuspensiontoformaceramicnetwork;and
infusingamonomertoatleastaportionofsaidceramicnetwork.
(請求項1】水および分散剤を含有する媒体に分散されたセラミック粒子を含むセラミッ【
ク懸濁物からセラミック網状構造物を製造するための方法であって,
前記懸濁物を型に注型し;前記成形された懸濁物を乾燥して前記懸濁物から前記水を抜き取り
;前記乾燥した懸濁物を燃焼させてセラミック網状構造物を形成し;前記セラミック網状構造
物の少なくとも一部にモノマーを注入する;各工程を含む方法(第13欄」。)』)
3Theprocessofclaim1or2,whereinsaidmonomerisanacrylicmonomer.(イ)「『.
(請求項2】前記モノマーが,アクリル系モノマーである,請求項1に記載の方法(第【。)』
13欄」)
「6.Theprocessofclaim1,furthercomprisinginfusingatleastaportion(ウ)『
ofsaidceramicnetworkwithasilanecoatingagentbeforeinfusingsaidnetworkwi
thsaidmonomer.
(請求項5】さらに,前記網状構造物に前記モノマーを注入する前に,前記セラミック網【
状構造物の少なくとも一部にシランコーチング剤を注入する工程を含む,請求項1に記載の方
法(第14欄」。)』)
「Further,aneedhasarisenforarestorativematerialwhichcombinestheb(エ)『
eneficialrestorativequalitiesofpolymerswiththoseofceramics,andyetavoidsd
isadvantagesofpolymers.(0013・・・さらに,ポリマー類の優れた修復性をセラミ【】
,。)』ックスの修復性と組み合わせポリマー類の欠点を回避する修復物質の必要性が生じている
(第4欄第5∼9行」)
「Yetanotherembodimentoftheinventionisaprocessforproducingaceram(オ)『
icnetworkmaterialfromaceramicsuspensionbycastingsaidsuspensioninamoldt
oformablockofrestorativematerial.Thesuspensionincludesceramicparticlesh
avingdiametersinarangeofabout0.1to10μmdispersedinamediumcontainingde
ionizedwaterwithapHselectedfromthegroupofrangesconsistingofabout2to6
andabout8to11andadispersant,suchasaconcentrationofpolyvinylalcoholin
arangeofabout0.1to2%byweight.Theprocesscomprisesthestepsofcastingthe
suspensioninthemoldanddryingthemoldedsuspensiontodrawthewaterfromthe
suspension.Thedriedsuspensionthenisfiredinafurnaceatatemperatureina
rangeofabout600to1400℃toproduceaceramicnetwork.
(0016】本発明のさらにもう一つの実施態様は,セラミック懸濁物を型内に注型して,【
修復物質のブロックを形成することによって,セラミック懸濁物からセラミック網状構造物を
製造するための方法である。懸濁物としては,径範囲約0.1∼10μmを有し,pH範囲約
2∼6およびpH範囲約8∼11からなる群より選択されるpHを有する脱イオン水と,分散
剤,例えば,濃度範囲約0.1∼2重量%のポリビニルアルコールとを含有する媒体に分散さ
れたセラミック粒子が挙げられる。本方法は,懸濁物を型に注型し,成形された懸濁物を乾燥
して懸濁物から水を抜き取る各工程を含む。ついで,乾燥された懸濁物は,炉内,温度範囲約
600∼1,400℃で燃焼して,セラミック網状構造を生成させる(第4欄第46行∼。)』
第5欄第1行」)
「Inasecondembodiment,thisinventioninvolvesaprocessformakingasuspen(カ)『
sioninfusedwithamonomertoproduceamaterialwhichissuitableforuseinthefa
bricationofdentalrestorations,suchasdentalonlays,inlays,crowns,andbridges.
・・・
Thissecondembodimentalsoinvolvesthecolloidalprocessingofceramicparticle
s.Theceramicparticlesagainmayincludemetaloxidesandfeldspathicglasses.The
particlesmayhaveanaverageparticlesizeofabout0.1to10mm.ReferringtoFig.
4,colloidalprocessingofthematerialmaybeaccomplishedbyusingceramicparti
clestocreateasuspension.Seestep40.Iftheceramicparticlesaremetaloxides,
suchasaluminaorzirconia,dopantsinconcentrationsofabout0.15to5%byweight
maybemixedwiththeceramicparticlesinordertoalter,i.e.,increaseordecrea
se,thesinteringtemperatureandcontrolgraingrowthanddensificationofthecer
amicsuspension,asdescribedinstep41.Thedopantseffectthemasstransportoft
hemetaloxides.Thesinteringtemperature,graingrowth,densificationvarywithth
edopantselectedanditsquantity.Thesedopantsmaybeselectedfromthegroupcon
sistingofCaO,SiO2,TiO2,Fe2O3,Cr2O3,MgO,ZnO,Li2O,Na2O,K2O,andPb
O.
(0038】第2の実施態様において,本発明は,懸濁物にモノマーを注入させて,歯科用【
充填物,例えば,歯科用オンレー,インレー,歯冠およびブリッジの製造に使用するのに適当
な物質を製造するための方法を含む・・・。
【0039】この第2の実施態様は,また,セラミック粒子のコロイド処理を含む。セラミ
ック粒子は,再度,金属酸化物および長石を含むガラス類を含んでもよい。粒子は,平均粒子
寸法約0.1∼10mmを有する。図4を参照すると,物質のコロイド処理は,セラミック粒子
を使用して懸濁物を生成させることによって達成される。工程40を参照。セラミック粒子が
,,,,金属酸化物例えばアルミナまたはジルコニアである場合には工程41に記載したように
濃度約0.15∼5重量%のドーパントをセラミック粒子と混合し,焼結温度を変化,すなわ
ち,増減し,粒子の成長およびセラミック懸濁物の緻密化を制御する。ドーパントは,金属酸
化物の物質移動を行う。焼結温度,粒子の成長,緻密化は,選択されるドーパントおよびその
性質とともに変動する。これらドーパントは,CaO,SiO,TiO,FeO,Cr2223
,,,,,。)』23222OMgOZnOLiONaOKOおよびPbOからなる群より選択される
(第9欄第35行∼第10欄第6行」)
「Inasuitablesuspension,about100gramsofceramicparticlesareaddedt(キ)『
oabout150mlofdeionizedwaterandmixed,e.g.,sonicated,withanultrasonicato
r.・・・About150mlofasolutioncontainingabout0.1to2%byweightofpolyviny
lalcoholmaybeaddedtotheceramicsuspension.・・・
・・・Aftermixingofthesuspensioniscomplete,aconcentratedceramicsuspension
maybebroughtout,i.e.,precipitated,usinganon-solvent,suchasacetoneorcitr
icacid,asdescribedinstep42.Thesenon-solventsrenderpolyvinylalcoholinsolub
leinwater.
Thesuspension(orthecoacervate)thenmaybecentrifugallycastorpressurecasti
narubber,plaster,orsplit-metalmold.・・・
ReferringagaintoFig.4,thesuspensionmaybecastinarubbermold,asindicate
dinstep43A.Thebaseofthemoldmaybeopentoexposethesuspension,andasla
bofacalciumsulfatehemihydratebasedmaterial,e.g.,agypsumslab,maybeplaced
indirectcontactwiththesuspension.Accordingtostep44A,suchacalciumsulfa
tematerialdrawswaterfromthesuspension.Alternatively,thesuspensionmaybec
astinaplastermold,i.e.,slipcast,accordingtostep43B.Thesuspensionisallo
wedtodrybeforebeingremovedfromthemoldandplacedinthefurnacetoburnoff
remainingdispersant.SeeStep44B.Forexample,inordertoburnoffpolyvinylal
cohol,thesuspensionmaybeheatedtoabout600℃.
(0040】適当な懸濁物においては,約100gのセラミック粒子を約150mlの脱イオ【
ン水に加え,混合,例えば,超音波発生器で音波粉砕する・・・約0.1∼2重量%のポリ。
ビニルアルコールを含有する約150mlの溶液をセラミック懸濁物に加える・・・。
【】,,,,0041・・・懸濁物の混合が完了した後工程42に記載したように非溶剤例えば
アセトンまたはクエン酸を使用して,濃縮させたセラミック懸濁物を生じさせる,すなわち,
沈殿させる。これら非溶剤は,ポリビニルアルコールを水に不溶性とする。
【0042】ついで,懸濁物(またはコアサベート)を,ゴム,石膏またはスプリット金属
型に遠心注型または圧力注型する・・・。
【0043】再度,図4を参照すると,工程43Aに示したように,懸濁物は,ゴム型に注
型される。型の基部を開放して,懸濁物を露出させ,硫酸カルシウム半水和物基体の物質のス
ラブ,例えば,石膏スラブを懸濁物に直接接触させて置く。工程44Aに従い,このような硫
酸カルシウム物質は,懸濁物より水を抜き取る。これとは別に,工程43Bに従い,懸濁物を
石膏型に注型,すなわち,スリップ注型することもできる。型から取り出す前に,懸濁物を乾
燥させ,残留分散剤を燃焼させて除くために炉内に置く。工程44B参照。例えば,ポリビニ
ルアルコールを燃焼して除くためには,懸濁物は,約600℃に加熱される(第10欄第。)』
10∼57行」)
「Thedriedsuspensionisremovedfromthemoldandisplacedinafurnace(ク)『
andfired,e.g.,sintered,suchthatshrinkageislessthanabout1%.SeeSteps45an
d46.Firingtemperaturesmayvaryaccordingtothespecificceramicparticlesincl
udedinthesuspension.Inthecaseoffeldspathicglass,forexample,thefiringt
emperaturemaybeinarangeofabout600to1200℃.Whentheceramicparticlesarem
etaloxides,however,thistemperaturemaybeinarangeofabout1000to1400℃.As
discussedabove,inordertoavoidthermalshock,thedriedsuspensionmaybeplaced
inacoldfurnaceandheatedgraduallytothefiringtemperature.Forexample,the
temperatureofthefurnacemayberaisedatarateofabout2to15℃perminuteu
ntilthedesiredfiringtemperatureisreached.
(0044】乾燥された懸濁物を型から取り出し,炉内に置き,収縮が約1%未満となるよ【
うに,燃焼,例えば,焼結する。工程45および46参照。燃焼温度は,懸濁物に含まれる特
定のセラミック粒子に従い,変動する。長石を含むガラスの場合には,例えば,燃焼温度は,
約600∼1,200℃の範囲内である。しかし,セラミック粒子が金属酸化物である場合に
は,この温度は,約1,000∼1,400℃の範囲内である。上記考察したように,熱的な
ショックを回避するために,乾燥した懸濁物は,冷たい炉内に置かれ,徐々に燃焼温度に加熱
される。例えば,炉の温度は,速度約2∼15℃/分で,所望の燃焼温度に到達するまで高め
られる(第10欄第58行∼第11欄第13行」。)』)
「Referringtostep47,afterfiring,thesuspension,i.e.,theceramicnetw(ケ)『
ork,isinfusedwithacoatingagent,suchassilane,andamonomerwithanindexo
frefractionclosetothatoftheceramicinordertoproduceatranslucentmateria
l.Suitablemonomersmayconsistofalight-curedorheat-curedmonomer,orboth.Fo
rexample,asdiscussedabove,aheat-curedmonomersmaybecuredinalowheatfurn
aceatabout40to75℃forabout24hourswhilealight-curedmonomermaybecuredw
ithlightinthevisiblebluespectrumforabout15minutes.
(0045】工程47を参照すると,懸濁物,すなわち,セラミック網状構造物にコーチン【
グ剤,例えば,シラン,および,セラミックの屈折率に近い屈折率を有するモノマーが注入さ
れ,半透明の物質を生成させる。適当なモノマー類は,光硬化または熱硬化されるモノマーあ
るいはこの両者からなる。例えば,上記考察したように,熱硬化されるモノマー類は,低温加
熱炉内,約40∼75℃の温度で,約24時間硬化され,他方,光硬化されるモノマーは,可
視青色スペクトルの光で,約15分間硬化される(第11欄第14∼24行」。)』)
「上記(エ)の『ポリマー類の優れた修復性をセラミックスの修復性と組み合わせ,ポイ
リマー類の欠点を回避する修復物質』との記載から,引用例はポリマー(重合体)に言及して
おり,重合反応が示唆されているといえる」。
「記載事項(カ)の『セラミック粒子は,再度,金属酸化物および長石を含むガラス類ウ
を含んでもよい』との記載と,長石が,アルミノケイ酸塩を主成分とするものであることと。
を併せて考慮すると,引用例において,金属酸化物および長石を含むガラス類を含むセラミッ
ク粒子は,アルミノケイ酸塩を主成分とする長石を含むガラス類及び金属酸化物を含有するも
のである」。
「また,記載事項(カ)の『セラミック粒子は・・・。粒子は,平均粒子寸法約0.1エ,
∼10mmを有する』との記載は,引用例の中で扱っている粒子が,歯科用充填物を構成す。
る粒子であること,及び,記載事項(オ)の『懸濁物としては,径範囲約0.1∼10μmを有
し・・・媒体に分散されたセラミック粒子』との記載から『セラミック粒子は・・・。粒,,,
子は,平均粒子寸法約0.1∼10μm』の誤記と認める」。
「記載事項(キ)の『懸濁物は,ゴム型に注型される。型の基部を開放して,懸濁物をオ
露出させ,硫酸カルシウム半水和物基体の物質のスラブ,例えば,石膏スラブを懸濁物に直接
接触させて置く。工程44Aに従い,このような硫酸カルシウム物質は,懸濁物より水を抜き
取る。これとは別に,工程43Bに従い,懸濁物を石膏型に注型,すなわち,スリップ注型す
ることもできる』との記載,及び『型から取り出す前に,懸濁物を乾燥させ,残留分散剤を。,
燃焼させて除くために炉内に置く。工程44B参照。例えば,ポリビニルアルコールを燃焼し
て除くためには,懸濁物は,約600℃に加熱される』との記載,並びに,記載事項(ク)の。
『乾燥された懸濁物を型から取り出し,炉内に置き,収縮が約1%未満となるように,燃焼,
,。』,,,例えば焼結するとの記載から懸濁物を所定の型に成型し成型された懸濁物を焼結し
セラミック網状構造物を得るものである」。
「記載事項(ケ)の『懸濁物,すなわち,セラミック網状構造物にコーチング剤,例えカ
ば,シラン,および,セラミックの屈折率に近い屈折率を有するモノマーが注入され』との,
記載と,記載事項(ウ)の『前記網状構造物に前記モノマーを注入する前に,前記セラミック網
状構造物の少なくとも一部にシランコーチング剤を注入する』との記載を併せてみると,引用
例には『セラミック網状構造物にコーチング剤,例えば,シランが注入され,その後,セラミ
ックの屈折率に近い屈折率を有するモノマーが注入され』ること,すなわち『セラミック網,
状構造物にシランを注入し,その後,前記シランが注入されたセラミック網状構造物にモノマ
ーを注入させ』ることが開示されている」。
「以上から,引用例には,次の方法が記載されている。キ
セラミック網状構造物にモノマーを注入して硬化させる工程を含む歯科用オンレー,インレ
ー,歯冠およびブリッジの製造に使用するのに適当な物質を製造するための方法であって,
(a)アルミノケイ酸塩を主成分とする長石を含むガラス類,金属酸化物,及びドーパント
を含有し平均粒子寸法約0.1∼10μmのセラミック粒子と,脱イオン水及びポリビニルア
ルコールを含むセラミック懸濁物を注型し,
(b)成型された懸濁物を焼結し,セラミック網状構造物を得,
(c)該セラミック網状構造物にシランを注入し,
(d)前記シランが注入されたセラミック網状構造物に,モノマーを注入させ,硬化させる
歯科用オンレー,インレー,歯冠およびブリッジの製造に使用するのに適当な物質を製造す
るための方法。
ここで『歯科用オンレー,インレー,歯冠およびブリッジの製造に使用するのに適当な物,
質を製造するための方法』は『歯科用材料の製造方法』と換言し得る」。,。
「また,上記(ウ)の『前記セラミック網状構造物の少なくとも一部にシランコーチンク
グ剤を注入する』との記載から,シランがコーチング剤(コーティング剤)として用いられて
いるが,これはシランカップリング剤の一用途であり,引用例にはシランカップリング剤を用
いることが示されていると言える」。
(2)引用発明の内容
「セラミック網状構造物にモノマーを注入して硬化させる工程を含む歯科用材料の製造方法
であって,
(a)アルミノケイ酸塩主成分とする長石を含むガラス類,金属酸化物,および,ドーパン
トを含有し平均粒子寸法約0.1∼10μmのセラミック粉末と,脱イオン水と分散剤を含む
セラミック懸濁物を注型し,
(b)成型された懸濁物を焼結し,セラミック網状構造物を得,
(c)該セラミック網状構造物にシランカップリング剤を注入し,
(d)前記シランカップリング剤が注入されたセラミック網状構造物に,モノマーを注入さ
せ,硬化させる
歯科用材料の製造方法」。
(3)引用発明と本願発明の一致点
「多孔質セラミックスにレジンが含浸されてなる歯科用材料の製造方法であって,『
(a)網目形成酸化物,中間酸化物,および,網目修飾酸化物を含有するセラミックス粉末
と,バインダーを含む混合物を所定形状に成型し,
(b)前記成型された混合物を焼成し,連通孔を有する多孔質セラミックスブロックを得,
(c)該多孔質セラミックスブロックの連通孔にシランカップリング剤,チタネート系カッ
プリング剤,ジルコアルミネート系カップリング剤のうちから選択された少なくとも1つのカ
ップリング剤を浸透させ,連通孔の表面をカップリング処理し,
(d)前記カップリング処理された多孔質セラミックスブロックの連通孔に,モノマーおよ
び/またはオリゴマーを浸透させた後,重合させる
歯科用材料の製造方法』である点」。。
(4)引用発明と本願発明の相違点
ア相違点1
「本願発明では,セラミックス粉末の平均粒径が『3.0∼50μm』であるのに対して,
引用発明では,セラミック粉末の平均粒径が『約0.1∼10μm』である点」。
イ相違点2
「本願発明では,カップリング剤やモノマーを浸透させるため『超音波中および/または減
圧下』という状態にするのに対し,引用発明では超音波や減圧を利用するとは示されていない
点」。
ウ相違点3
「本願発明では,モノマーが『エチレン性二重結合を含有する』のに対し,引用発明のモノ
マーがエチレン性二重結合を含有するのか否か,明記されていない点」。
(5)相違点に関する容易想到性の判断
ア相違点1について
「引用発明における平均粒径が『約0.1∼10μm』の範囲に収まるのであれば,本願発
明の範囲『3.0∼50μm』と一致する部分がある。
したがって,相違点1に係る本願発明の技術的事項は,実質的な相違点ではない」。
イ相違点2について
「多孔質材にモノマーを浸透させる手段として『減圧下』状態とすることは周知(例えば,
周知例1,周知例2参照)であり,前記周知技術を引用発明に適用することは当業者が容易に
なし得たことである」。
ウ相違点3について
「引用例には,‥‥,モノマーとして『アクリル系モノマー』が示されており,該モノマー
,,はエチレン性二重結合を含有するから相違点3に係る技術的事項は引用例に記載されており
実質的な相違点ではない」。
エ本願発明の効果について
「本願発明による効果も,引用発明及び周知技術から当業者が予測し得た程度のものであっ
て,格別のものとはいえない」。
(6)むすび
「本願発明は,引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたもの
であるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない」。
第3原告主張の取消事由
審決は,次に述べるとおり,認定及び判断に誤りがあるから,取り消されるべき
である。
1取消事由1(引用例の記載事項についての認定の誤り)
(1)「懸濁物」に関する記載の認定の誤り
審決は,前記第2の3(1)ア(オ)記載の引用例の原文のうち下線部分を破線部分
のとおりに認定しているが誤りである。これによれば「懸濁物」が「セラミック,
粒子」を意味することになり,意味が不明である。
引用例の前記記載は「懸濁物は,pH範囲約2∼6およびpH範囲約8∼11,
からなる群より選択されるpHを有する脱イオン水と,分散剤,例えば,濃度範囲
約0.1∼2重量%のポリビニルアルコールとを含有する媒体に分散された径範囲
約0.1∼10μmを有するセラミック粒子を含む」と認定されるべきである。。
(2)「歯科用充填物」及び「長石を含むガラス」に関する記載の認定の誤り
ア審決は,前記第2の3(1)ア(カ)記載の引用例の原文のうち下線部分の記載
「dentalrestorations」を「歯科用充填物」と認定しているが,誤りである。引
用例の前記記載は「歯科用修復材」と認定されるべきである。,
イ審決は,前記第2の3(1)ア(カ)記載の引用例の原文のうち下線部分の記載
「feldspathicglasses」を「長石を含むガラス類」と認定し,また,前記第2の
3(1)ア(ク)記載の引用例の原文のうち下線部分の記載「feldspathicglass」を
「長石を含むガラス」と認定しているが,いずれも誤りである。
そもそも「長石を含むガラス類「長石を含むガラス」は,引用例に記載されて」,
いない新たな別異の概念のものといえ,しかも,どのようなものか不明である。
引用例の前記記載は「長石ガラス」または「長石質ガラス」と解される。,
(3)「ポリマー」に関する記載の認定の誤り
審決は,前記第2の3(1)ア(エ)の「ポリマー類の優れた修復性をセラミックス
の修復性と組み合わせ,ポリマー類の欠点を回避する修復物質」との記載から,引
用例はポリマー(重合体)に言及しており,重合反応が示唆されているといえると
認定しているが,誤りである。
引用例の上記(エ)の記載は「さらに,ポリマー類の優れた修復性をセラミック,
スの修復性と組み合わせ,ポリマー類の欠点を回避する修復物質の必要性が生じて
いる」というものであって,これは引用例に記載された物の開発に至る背景とな。
る技術的事項の一部を示しているにすぎず,また,ポリマー類とは,広い概念であ
り,かかる記載から,直ちに重合反応が示唆されているということはできず,審決
の前記認定は,誤りである。
(4)「セラミック粒子の含有」に関する記載の認定の誤り
審決の前記第2の3(1)ウの認定は,誤りである。長石を含むガラス類が誤りで
あることは,前記(2)イで述べたとおりである。また,引用例の記載は「含んでも
よい」のであって「含有するもの」でもない。,
(5)「平均粒子寸法」に関する記載の認定の誤り
審決の前記第2の3(1)エの認定は,次のとおり,誤りである。
ア「歯科用充填物」が誤りであることは,前記(2)アのとおりである。
イ「懸濁物としては,径範囲約0.1∼10μmを有し‥‥媒体に分散された
セラミック粒子」との記載が「懸濁物は,‥‥径範囲約0.1∼10μmを有する
セラミック粒子を含む」であることは,前記(1)のとおりである。
ウ「粒子の径(diameter」と「平均粒子寸法(averageparticlesize」の))
技術的意味は相違する。すなわち「粒子の径」とは,個々の粒子の粒径を意味す,
るものであり,一方「平均粒子寸法」とは,平均粒径,すなわち,2種以上の粒,
径をもつ粒子群の代表径の大きさを意味するのであり,両者はその有する技術的意
味が相違するものである。引用例における,セラミック粒子は平均粒子寸法約0.
1∼10mmを有するとは,平均粒子寸法が約0.1mmから10mmのセラミッ
ク粒子であることは明白である。
引用例には,審決が摘示した箇所以外に径範囲,平均粒子寸法に関する記載がな
い。実施例においてもどのような径範囲,平均粒子寸法のセラミック粒子を使用し
たのか一切記載がない。このような記載では,実施例の追試,その有効性等が確認
不可能であり,技術的意味がない。
エ引用例の出願は,欧州特許庁において審査され,欧州特許第701808号
明細書(甲24)として登録されているが,該欧州特許明細書には,引用例(欧州
特許出願公開第701808号明細書)に記載されていた前記の「懸濁物は,‥‥
径範囲約0.1∼10μmを有するセラミック粒子を含む」との記載や(セラミ,
ック粒子は平均粒子寸法約0.1∼10mmを有する」との記載,実施例等が削除
されている。このことは,引用例において,セラミック粒子の径範囲約0.1∼1
0μm,平均粒子寸法約0.1∼10mmを含め,これらの記載が不明瞭で,不都
合であって技術的意味を持たないものであることを裏付けている。
オ甲2は審査され登録されている(甲25。また,甲25の分割出願も審査)
を経て登録されている(甲26。これらによれば,セラミック粒子の径範囲は,)
約0.1∼10μmのままであり,平均粒子寸法は,約0.1∼10mmのままで
ある。
また,引用例の出願人は,セラミック粒子の径範囲約0.1∼10μmと,平均
粒子寸法約0.1∼10mmは別概念で,それぞれの技術的意味を有すると認識し
ていたことは明らかである「粒子の径(diameter」と「平均粒子寸法(average。)
particlesize」の技術的意味が相違するとの技術常識を無視し,また,引用例の)
出願人の認識を超える認定を行うことは許されない。
さらに,甲25及び26は,日本国特許庁の審査を経て登録されたものであるこ
とから,専門技術官庁である日本国特許庁は,セラミック粒子径範囲と平均粒子寸
法とは,別の概念であって,それぞれの技術的意味があると判断したものであるこ
とは明白である。引用例の認定において,日本国特許庁が,自ら下した認定と異な
る認定を行うことは,禁反言の原則からしても認められない。
(6)「焼結」に関する記載の認定の誤り
審決の前記第2の3(1)オの認定は,次のとおり,誤りである。
ア懸濁物が,約600℃に加熱されるのは,ポリビニルアルコールを燃焼して
除くためであって,懸濁物が焼結されるとは,記載も示唆もされていない。懸濁物
を構成するセラミック粒子が約600℃で焼結されるものを使用するとも限定され
ておらず,セラミック粒子が約600℃で焼結されることにはならない。
イまた,引用例においては「注型」であって「成型」ではない。,
(7)引用例の方法の認定の誤り
審決の前記第2の3(1)キの認定は,次のとおり,誤りである。
ア引用例において硬化させると認定することが誤りであることは前記(3)「」,
において述べたとおりであるから「セラミック網状構造物にモノマーを注入して,
硬化させる工程を含む歯科用オンレー,インレー,歯冠およびブリッジの製造に使
用するのに適当な物質を製造するための方法であって」と認定することは誤りであ
る。
「」,イ引用例において長石を含むガラス類と認定することが誤りであることは
前記(2)イで述べたとおりであり,また「セラミック粒子の平均粒子寸法約0.,
1∼10μm」と認定することが誤りであることは,前記(5)ウで述べたとおりで
ある。また,前記第2の3(1)ア(カ)の審決の記載によれば,ドーパントは,セラ
ミック粒子が金属酸化物,例えば,アルミナ又はジルコニアである場合に使用され
るものである。ドーパントが金属酸化物以外のセラミック粒子の場合に使用される
との記載も示唆もない。そうすると,セラミック粒子が「アルミノケイ酸塩を主成
分とする長石を含むガラス類,金属酸化物,及びドーパントを含有する」とするこ
とは誤りである。
したがって「a)アルミノケイ酸塩を主成分とする長石を含むガラス類,金属,(
酸化物,及びドーパントを含有し平均粒子寸法約0.1∼10μmのセラミック粒
子と,脱イオン水及びポリビニルアルコールを含むセラミック懸濁物を注型し」と
認定することは誤りである。
ウ引用例において硬化させると認定することが誤りであることは前記(3)「」,
において述べたとおりであるから,引用発明において「d)前記シランが注入さ(
れたセラミック網状構造物に,モノマーを注入させ,硬化させる」と認定すること
は誤りである。
(8)シランカップリング剤の認定の誤り
審決の前記第2の3(1)クの認定は,次のとおり,誤りである。
シランとは,甲27に記載されているようにSiHなる組成をもつ水素化n2n+2
ケイ素を総称するものである。一方,甲28に記載されているように,シランカッ
プリング剤はXSi(CH)(OR)で表されるものである(Rはメチル基33−nn
またはエチル基,Xは有機レジンと結合し得る有機反応基。したがって,そもそ)
も「シラン」と「シランカップリング剤」とが同一であるとはいえない。その他,
甲31,乙3ないし5の記載と,引用例の「懸濁物,すなわち,セラミック網状構
造物にコーチング剤,例えば,シラン,および,セラミックの屈折率に近い屈折率
を有するモノマーが注入され「前記網状構造物に前記モノマーを注入する前に,」,
前記セラミック網状構造物の少なくとも一部にシランコーチング剤を注入する」と
の記載があること及びコーチング剤の一般的機能を勘案しても引用例にシ,「」,「
ランカップリング剤」を用いることが示されているとはいえないから,審決の前記
認定は,誤りである。
(9)引用発明の認定の誤り
前記(2),(3),(5),(7)及び(8)のとおり,審決には引用例の記載事項の認
定に誤りがあるから,審決の引用発明の認定に誤りがあることは明白である。
2取消事由2(一致点の認定の誤り)
(1)前記第2の3(1)キの「硬化させる」に関する審決の認定が誤りであること
は,前記1(3)及び(7)アのとおりであるから「引用発明の『モノマーを注入し,
て硬化させる工程を含む』は本願発明の『レジンが含浸されてなる』に相当する」
と認定することは誤りである。
(2)審決が「引用発明の『アルミノケイ酸塩を主成分とする長石を含むガラス,
類』は本願発明の『網目形成酸化物』に,引用発明の『金属酸化物』は本願発明の
『中間酸化物』に,引用発明の『ドーパント』は本願発明の『網目修飾酸化物』に
相当する」と認定することは,次のとおり,誤りである。
ア「長石を含むガラス類」との認定が誤りであることは,前記1(2)イのとお
りである。
イ引用例に記載の「ドーパント」に属する化合物と本願発明における「網目修
飾酸化物」に属する化合物とが一部において重なるとしても,これをもって,単純
「」「」,。にドーパントは網目修飾酸化物に相当すると認定することは失当である
引用例には,そもそも,網目形成酸化物,中間酸化物,網目修飾酸化物との認識
がなく,当然のことながら,網目形成酸化物,中間酸化物,網目修飾酸化物を組み
合わせるとする技術思想が存在しない。
引用例においては「ドーパント」は,セラミック粒子が金属酸化物である場合,
に使用されるものであり,セラミック粒子が長石(質)ガラスの場合に使用される
ものではない。
実施例として,長石(質)ガラスセラミック粒子を使用する場合が記載されてい
るにすぎず,その他の組合せ,例えば,長石(質)ガラスと前記ドーパントとを組
み合わせることや,長石(質)ガラスと前記金属酸化物,および前記ドーパントと
を組み合わせること等について記載も示唆もない。引用例のこれらの記載は「ド,
ーパント」はセラミック粒子が金属酸化物である場合にのみ使用されるものでしか
ないことを示している。
「『』『』」,(3)審決の脱イオン水と分散剤はバインダーに相当するとの認定は
次のとおり,誤りである。
引用例に記載の懸濁液において,脱イオン水は分散媒であり,ポリビニルアルコ
ールは分散剤であり,セラミック粒子は分散質である。
「バインダー」とは,粉末等を互いに結合させるために使用するものであって,
本願発明における「バインダー」はセラミックス粉末を所定の形状に成型しやすく
するために用いられている。
引用例記載のものにおける「脱イオン水と分散剤」の機能又は作用と,本願発明
における「バインダー」の機能又は作用とは異なる。
(4)審決の「セラミック懸濁物を注型し』は『混合物を所定形状に成型し』に『
相当する」との認定は,次のとおり,誤りである。
ア引用例では,前記第2の3(1)ア(ア)のとおり「セラミック懸濁物‥‥を,
型に注型し;前記成形された懸濁物を乾燥」している。本願発明では「セラミック
ス粉末と,バインダーを含む混合物を」所定形状に成型している。
「注型」とは液状物を開放型に流し込むことを意味し「成型」とは金型等によ,
って材料に圧力を加え所定の形状とすることを意味し,両者は方法が異なるもので
ある。本願発明の成型が注型でないことは「金型等を用いて‥‥成型する。‥‥,
成型圧等によって‥‥(段落【0012)等の記載から明らかである。」】
イ「脱イオン水と分散剤」が「バインダー」に相当するものではないことは,
前記(3)のとおりである。
(5)審決における,引用発明の(c(d)が本願発明の(c(d)に相当す),),
るとの認定は,次のとおり,誤りである。
ア引用発明の(c)の認定が誤りであることは,前記1(8)及び(9)のとおり
である。さらに,引用例には,チタネート系カップリング剤,ジルコアルミネート
系カップリング剤について記載も示唆もないことは明らかである。
イ引用発明の(d)の認定が誤りであることは,前記1(8)及び(9)のとおり
である。さらに,引用例には,オリゴマーについて記載も示唆もないことは明らか
である。
(6)一致点の認定について
以上のとおり,審決の前記認定は誤りであることから,本願発明と引用発明との
一致点の認定が誤りであることは明白である。
3取消事由3(相違点1の認定の誤り)
本願発明では,セラミックス粉末の平均粒径が「3.0∼50μm」であること
は認めるが,引用発明の平均粒径が「約0.1∼10μm」であることが誤りであ
ることは,前記1(5)及び(9)において述べたとおりである。したがって,審決の
相違点1の認定は誤りである。
4取消事由4(相違点2の認定の誤り)
引用発明において,カップリング剤が使用されていないことは,前記1(8)及び
(9)において述べたとおりであるから,審決の相違点2の認定は誤りである。
5取消事由5(相違点1の判断の誤り)
引用発明の平均粒径が「約0.1∼10μm」であることが誤りであることは,
前記1(5)及び(9)において述べたとおりである。
したがって,審決の相違点1についての判断は誤りである。
6取消事由6(相違点2の判断の誤り)
(1)ア周知例1の記載によれば,第4工程において,コンクリート,バインダ
,,,ー煉瓦の三層構造の埋設型枠を重合性モノマー溶液中に浸漬し加圧することで
。,埋設型枠に重合性モノマーを含浸させることが記載されているといえるすなわち
埋設型枠に重合性モノマーを含浸させるのは,加圧手段によっているのである。周
知例1においては,第3工程は,乾燥・脱気工程と位置づけられている。この第3
工程において,脱気し,コンクリート1や煉瓦内部の微細な空隙を真空状態のもの
とするとしているが,これは,埋設型枠を加熱・乾燥させることにより,内部に含
有する水分を除去した後,さらに,空隙に介在していた水分を除去し,モノマーの
充填が行われ易くするために行っているのにすぎない。モノマー含浸・重合は,次
の工程である第4工程で「加圧下」状態において行われるのであり「減圧下」状,,
態で行われるのではない。したがって,審決は,周知例1に記載された事項を誤認
・看過したものである。
イ周知例2は,磁石の技術分野に属するものであり,本願発明は,歯科用材料
に関する技術分野に属するもので,技術分野が異なる。周知例2に記載のものは異
方性希土類ボンド磁石の製造方法を提供するものであり,本願発明は歯科用材料の
製造方法を提供するものであって,課題を異にする。そうすると,周知例2に記載
のものと引用発明とを組み合わせる動機付けがないというべきである。
審決は,周知例2の記載内容を,課題の相違,技術分野の相違を越えて,ことさ
ら一般化,抽象化,上位概念化して「多孔質材にモノマーを浸透させる手段として
『減圧下』状態とすることは周知である」としているのであって,このことは,証
拠に基づかずに周知技術を認定していることにほかならず,許されない。
(2)審決は,本願発明の特定事項である「c・・・カップリング処理」するこ()
とが周知技術であるかどうかについては,摘示していない。
本願発明は「c」と「d」の2つの処理操作を,その順で組み合わせて行,()()
うことにも重要な技術的意味がある。このように2つの処理操作を段階的に採用す
ることで,多孔質セラミックスブロックの連通孔の微細な箇所にまで,まず,カッ
プリング剤を,そして,レジンを含浸させることができ,段落【0048】記載の
効果を奏するのである。
,【】,このことは本願明細書の比較例3として示されている段落0045の記載
及び表4に示すように,カップリング処理を超音波を作用させて行ったが,混合液
の浸透は,超音波を利用しなかったものでは,実施例のような物理的性質等が得ら
れなかったことからも明らかである。
(3)前記1(5)エで述べたように,引用例の出願は,欧州特許庁において登録さ
れている(甲24)が,引用例に記載されていた「シランコーチング剤」等の記載
がすべて削除されている。引用例は,本願発明の引用文献としての価値を有しない
ものである。
審決が訳文として援用した甲2の出願及びその分割出願は,登録されている(甲
25,甲26)が「シランコーチング剤」等のままである。引用例の出願人は,,
シランをコーチング剤として認識していたことは明らかである。
甲25及び甲26は,日本国特許庁の審査を経て登録されたものであるから,日
本国特許庁が自ら下した認定と異なる認定を行うことは,禁反言の原則からしても
認められない。
7取消事由7(効果についての判断の誤り)
前記第2の3(5)エの本願発明の効果についての審決の判断は,次のとおり,誤
りである。
(1)人工歯,インレー,アンレー,クラウン,クラウンブリッジ等とされる歯科
用材料は,口腔内といった特殊な環境のもとで使用され,咀嚼や咬合を繰り返し受
けることになり,長期にわたって耐磨耗性,曲げ強さ等の機械的強度,耐変色性,
耐着色性,審美性を維持することができ,曲げ弾性率,衝撃強さ等の各種の要件を
バランス良く満たすことが必要である。
本願発明に記載の発明特定事項が相互・有機的に作用することで,多孔質セラミ
ックスブロックの連通孔の微細な箇所にまで,カップリング剤,そして,レジンを
含浸させることができ,長期にわたって耐磨耗性,曲げ強さ等の機械的強度,耐変
色性,耐着色性,審美性を維持することができ,また,セラミックス中の応力が緩
,,,和されるため曲げ弾性率衝撃強さ等において優れた歯科用材料を提供すること
加えてCAD/CAMシステムにも適した歯科用材料を提供することができる。ま
た,耐磨耗性,曲げ強さ等の機械的強度,耐変色性,耐着色性,曲げ弾性率,衝撃
強さ等といった特性は,セラミックス用素材原料,充填率,レジンの種類等を変え
ることにより種々設定することができるので,人工歯,インレー,アンレー,クラ
ウン,クラウンブリッジやCAD/CAM用のブロック等が必要とする特性のもの
を容易にかつ安価に提供することができるのである。このことは,実施例,比較例
によって具体的にも裏付けられている。
(2)本願に対応する特許出願は,欧州特許(甲29,米国特許として特許権が)
成立している。とりわけ,甲29は,引用例等の存在にもかかわらず,本願発明と
同等な請求項の発明として登録されている。
,,,同一の先行技術を踏まえた特許性の判断において諸外国と判断が異なるのは
独自の審査基準に基づくものであって,国際的調和に反し,信頼を損ねることにも
なる。
8取消事由8(審判手続の法令違背)
審決は,審査手続では示されていない周知例1及び2に基づき「多孔質材にモノ
マーを浸透させる手段として『減圧下』状態とすることは周知」と認定し「前記,
周知技術を引用発明に適用することは当業者が容易になし得たことである」と判。
断した。
すなわち,審査手続における「セラミックスブロックの連通孔に他の材料を超音
波又は減圧下で浸透させることが周知技術である」との認定は「連通孔を有する。,
セラミックブロック」といった特定のものに「他の材料」という不特定のものを,
超音波又は減圧下で浸透させることが周知技術であるという意味であり,その認定
のために審査手続では甲5ないし9が提示されたしかるに審決における多,,。,「
孔質材にモノマーを浸透させる手段として『減圧下』状態とすることは周知」との
認定は,審査手続とは異なり「多孔質材」といった不特定のものに「モノマー」,
といった特定のものを浸透させる手段として「減圧下」状態とすることは周知であ
るということを意味し,その認定のために,審決では,新たに周知例1及び2だけ
が示されている。このように,審決は,審査手続における進歩性に関する論理付け
と異なる論理付けに変更したものである。
以上のとおり,原告は拒絶査定の理由と異なる拒絶の理由について意見書を提出
する機会が与えられなかったことになるから,審判手続には,特許法159条2項
で準用する同法50条の規定に違反する瑕疵がある。
第4被告の主張
次のとおり,審決の認定判断には誤りはなく,原告主張の取消事由はいずれも理
由がない。
1取消事由1(引用例の記載事項についての認定の誤り)に対して
(1)「懸濁物」に関する記載の認定の誤りに対して
引用例の原文の下線部分についての審決の訳文については,正しくは,原告が主
張するように「懸濁物としては,‥‥セラミック粒子が含まれる」である。
ただ,審決は,引用発明について「セラミック粒子と‥‥ポリビニルアルコー,
ルを含むセラミック懸濁物」と認定しており,実質的には「懸濁物としては,‥‥
セラミック粒子が含まれる」と同等の認定をしている。
したがって「懸濁物」の記載事項に関する原告の上記主張は,審決における引,
用発明の認定に影響しない。
(2)「歯科用充填物」及び「長石を含むガラス」に関する記載の認定の誤りに対
して
ア引用例の「dentalrestorations」について,審決は「歯科用充填物」との,
訳文を用いたが,正しくは,原告が主張するように「歯科用修復材」である。
ただ,審決は,引用発明について「歯科用オンレー,インレー,歯冠およびブ,
」,「」。,リッジと認定しており歯科用充填物なる記載を用いていないしたがって
上記原告の主張は,審決における引用発明の認定に影響しない。
「」,,「」,イ引用例のfeldspathicglassesについて審決は長石を含むガラス類
「長石を含むガラス」を用いたが,正しくは,原告が主張するように「長石ガラ,
ス」または「長石質ガラス」である。
ただ,審決は,引用発明の「長石を含むガラス(類」を「長石ガラス」または)
「長石質ガラス」と同等の意味で使用しており,上記原告の主張は,審決における
引用発明の認定に影響しない。
(3)「ポリマー」に関する記載の認定の誤りに対して
引用例の段落【0031】及び【0032】の記載によれば,引用例には,熱硬
化もしくは光硬化されるモノマー類として「トリエチレングリコールジメタクリ,
レート(TEGDMA「2,2−ビス[4(2−ヒドロキシ−3−メタクリロ)」,
イルオキシ−プロピルオキシ)−フェニル]プロパン(BIS−GMA「ヒド)」,
()」。ロキシエチルメタクリレートHEMAの3種類の具体的物質が示されている
そして,引用例の段落【0048】の記載によれば,これら3種類のモノマーを含
む溶液がセラミック網状構造物に注入されて,熱硬化及び光硬化することが記載さ
れている。一方,本願明細書の段落【0019】及び【0020】には,重合可能
な化合物として,①「2−ヒドロキシエチルメタクリレート,②「トリエチレン」
グリコールジメタクリレート」が例示されている。
上記の化合物名を対比すると,引用例の「HEMA「TEGDMA」は,本願」,
発明書の上記①,②に該当する化合物であり,当該①,②の化合物は,重合体を形
成しているのであるから,引用例に記載されたHEMA等のモノマーについても,
熱硬化又は光硬化により重合体を形成していることは明らかである。
そうすると,引用例に記載された「ポリマー類の優れた修復性をセラミックスの
修復性と組み合わせ,ポリマー類の欠点を回避する修復物質(引用例の段落【0」
013)の「ポリマー類」は,モノマーを重合(硬化)させることにより形成さ】
れた重合体であると理解するのが自然である。
したがって,審決の「引用例はポリマー(重合体)に言及しており,重合反応が
示唆されているといえる」とした認定に誤りはない。。
(4)「セラミック粒子の含有」に関する記載の認定の誤りに対して
「長石を含むガラス類」について,審決の引用発明の認定に影響しないことは,
上記(2)イで述べたとおりである。
また,引用例に記載された「含んでもよい」は,その字義からして「含有する,
もの」を包含することは明らかである。
したがって,原告の主張は,審決の引用発明の認定に影響を及ぼすものでない。
(5)「平均粒子寸法」に関する記載の認定の誤りに対して
ア原告の主張アに対して
「歯科用充填剤」に関する原告の主張アは,前記(2)アで述べたとおり,引用発
明の認定に影響を及ぼすものではない。
イ原告の主張イに対して
「懸濁物」に関する原告の主張イは,前記(1)で述べたとおり,引用発明の認定
に影響を及ぼすものではない。
ウ原告の主張ウに対して
原告は「引用例における,セラミック粒子は平均粒子寸法約0.1∼10mm,
のセラミック粒子であることは明白である」と主張するが,一般に,歯科用材料の
製造原料として用いられるセラミック粒子の平均寸法は,作製される製品の大きさ
,「」,。からみて最大10mmのようなmmの範囲ではなく通常μmレベルである
,「.」「」,そうすると引用例における平均粒子寸法約01∼10mmのmmは
「μm」の誤記であると解するのが合理的である。
原告は「粒子の径』と『平均粒子寸法』の技術的意味は相違する」と主張する,『
が,セラミック粒子の平均粒子寸法と径範囲とが別概念であるとしても,これらの
単位レベルが異なることにはならない。
そして,上述したように,一般に歯科用として用いられるセラミック粒子平均寸
法はμmレベルであるから,引用例において,平均粒子寸法約0.1∼10μmの
セラミック粒子を用いて実施例の追試等を行うことに困難性はない。
エ原告の主張エに対して
原告は,甲24を提示し,引用例において「これらの記載が不明瞭で,不都合,
であって技術的意味を持たないものであることを裏付けている」と主張する。しか
,。,し引用例はあくまで甲1である甲1の登録されたものが甲24であるとしても
審決における引用例の認定は,甲24の記載により影響を受けるものではない。
また,甲24の記載内容によれば,甲1の「懸濁物は,‥‥径範囲約0.1∼1
0μmを有するセラミック粒子を含む「セラミック粒子は平均粒子寸法約0.1」,
∼10mmを有する」の記載や実施例等が削除されたのは,技術的意味が不明瞭で
あるためではなく,引用例との重複を回避するために削除したと解するのが合理的
である。すなわち,削除された「セラミック粒子の径範囲や平均粒子寸法」につい
ては,既に知られている事項であるという点で,技術的意味を持たないにすぎない
ものである。
オ原告の主張オに対して
原告は,甲25及び甲26を提示し「技術的意味が相違するとの技術常識を無,
視しまた引用例の出願人の認識を超える認定を行うことは許されないとか日,,」「
本国特許庁が,自ら下した認定と異なる認定を行うことは,禁反言の原則からして
も認められない」などと主張する。
しかし,引用例は甲1であって,審決における引用例の認定は甲25及び甲26
の記載により影響を受けるものではない。
また,甲1に記載された「平均粒子寸法約0.1∼10mm」の「mm」が「μ
m」の誤記であることは,前記ウで述べたとおりであるから,甲25及び甲26に
おける記載も同じく誤記であることは当業者からみて明らかである。よって,原告
の主張は理由がない。
(6)「焼結」に関する記載の認定の誤りに対して
ア原告の主張アに対して
原告は,引用例において「懸濁物が焼結されるとは,記載も示唆もされていな,
い」と主張するが,失当である。
引用例(甲2)の段落【0041】及び【0042】によれば,①濃縮させた懸
濁物を圧力注型して圧力成形(圧力成型)すること,すなわち「懸濁物に圧力を加
,」。,()えて懸濁物を型内に押し込む成型工程が記載されているまた引用例甲2
の段落【0043】及び【0044】によれば,②成型された懸濁物を型から取り
出す前に乾燥させる工程,③乾燥された懸濁物を型から取り出し,焼結する工程が
記載されている。したがって,型に注型された懸濁物は,成型,乾燥,焼結という
各工程を経て,所定形状のセラミック製品が得られている。また「懸濁物は,約,
600℃で加熱される」は,型から取り出す前に行われており,乾燥工程に属する
加熱処理である。
そうすると,審決に記載した「懸濁物を所定の型に成型し,成型された懸濁物を
焼結し,セラミック網状構造物を得る」における「成型された懸濁物を焼結し」の
「成型された懸濁物」は「乾燥された懸濁物」を意味しており,当該「懸濁物」,
を焼結することが引用例に記載されていることは明らかである。
イ原告の主張イに対して
,「,『』『』」,原告は引用例においては注型であって成型ではないと主張するが
失当である。引用例に記載された「注型」は,上記引用例(甲2)の段落【004
1】及び【0042】に記載されているように「圧力注型「圧力成形」という手」,
段により行われるから,型内に注入された材料に圧力を加えて所定形状にする「成
型」に該当することは明らかである。
(7)引用例の方法の認定の誤りに対して
ア原告の主張アに対して
前記1(3)で述べたとおり,審決が前記第2の3(1)キにおいて「硬化させる」
と認定したことには誤りはないから「セラミック網状構造物にモノマーを注入し,
て硬化させる工程を含む‥‥製造するための方法であって」とした審決の認定に誤
りはない。
イ原告の主張イに対して
(ア)前記(2)イで述べたとおり「長石を含むガラス類」との認定は引用発明の,
認定に影響するものではない。
(イ)前記(5)ウで述べたとおり「セラミック粒子の平均粒子寸法約0.1∼1,
0μm」との認定には誤りはない。
(ウ)引用例(甲2)の段落【0039】の「セラミック粒子は,再度,金属酸化
物および長石を含むガラス類を含んでもよい「セラミック粒子が金属酸化物,例」,
えば,アルミナまたはジルコニアである場合には,‥‥約0.15∼5重量%のド
ーパントをセラミック粒子と混合し」との記載によれば,引用例には,セラミック
粒子が「金属酸化物および長石を含むガラス類を含むもの」である場合と「金属,
,」酸化物がアルミナまたはジルコニアであってこれにドーパントが混合されたもの
である場合という,2つの場合のセラミック粒子が示されている。
そして,上記段落【0039】の「数タイプのセラミック粒子の組み合わせを含
有してもよい」との記載に照らせば,これら2つの場合(タイプ)のセラミック粒
子を組み合わせたもの,すなわち,セラミック粒子として「アルミノケイ酸塩を,
主成分とする長石を含むガラス類,アルミナまたはジルコニアを含む金属酸化物,
及びドーパントを含有する」ものが示唆されているといえる。
上記(ア)ないし(ウ)のとおりであるから,引用例について「a)アルミノケイ(
酸塩を主成分とする長石を含むガラス類,金属酸化物,及びドーパントを含有し平
均粒子寸法約0.1∼10μmのセラミック粒子と,脱イオン水及びポリビニルア
ルコールを含むセラミック懸濁物を注型し」とした審決の認定に誤りはない。
ウ原告の主張ウに対して
前記(3)のとおり「硬化させる」との認定には誤りはないから,引用例につい,
「(),,てd前記シランが注入されたセラミック網状構造物にモノマーを注入させ
硬化させる」とした審決の認定に誤りはない。
以上のとおり,原告の主張アないしウは,いずれも失当である。
(8)シランカップリング剤の認定の誤りに対して
ア前記第2の3(1)ア(ウ)に摘示した審決の記載によると,セラミック網状構
造物にモノマーを注入する前に「シランコーチング剤(silanecoatingagent」,)
をセラミック網状構造物に注入している「コーチング(coating」が「被覆」を。)
意味することから「シランコーチング剤」は,注入されてセラミック網状構造物,
の表面を被覆するものである。
「カップリング剤」なる用語は,一般に,異種物質表面の結合度,強度を増すた
めに用いられる物質を意味しており,接着界面相を改質し有機と無機物質とからな
る境界層の接着強度を高くすることもできる(乙3。セラミック焼成体とモノマ)
ー重合体とからなる複合材料の場合は,その両者の結合性や接着性を向上させるた
,。めにカップリング剤が添加されると焼成体表面に改質処理が施されることになる
甲28においても「シランカップリング剤」の説明として「複合材料などで,主,
」,としてガラスと高分子との接着性を改良するために用いられる物質というように
乙3と同様の記載がある。
そうすると,引用例の「シランコーチング剤」は,モノマー注入前に,セラミッ
ク焼成体に注入されて,焼成体表面に被覆処理が施され,その結果,表面が改質さ
れることから「カップリング剤」と同等の目的で使用されているといえる。,
イこの点について,原告は「シランとシランカップリング剤とが同一である,
とはいえない」と主張するが,この原告の主張は審決の認定を左右するものではな
い。すなわち,カップリング剤は「シラン化合物がいい例(乙3)とか「シラ,」,
ン系,チタネート系,クロム系など多くの種類が開発されている(乙4)と記載」
され,本願明細書においても「多孔質セラミックスの連通孔の表面に,シランカ,
ップリング剤,チタネート系カップリング剤,ジルコアルミネート系カップリング
剤を用いて処理することが好ましい(甲13の段落【0014)として,シラン」】
化合物を含む種々の化合物からなるカップリング剤が例示されている。また,甲2
7及び甲28に記載されるように「シランカップリング剤」は,水素化ケイ素を,
意味する「シラン」と異なる化合物であるから「シランカップリング剤」の用語,
における「シラン」なる表記は,当該カップリング剤が「シラン」そのものである
ことを意味するのではなく,シラン化合物(乙3)やシラン系(乙4)を意味して
いることは明らかである。また「シラン」という用語は,水素化ケイ素の水素原,
()。子が炭化水素基などで置換した有機化合物を総称するときにも使用される乙5
そうすると,引用例の「シランコーチング剤」についても,水素化ケイ素を意味
する「シラン」ではなく,シラン化合物を意味すると解するのが合理的である。
ウしたがって,審決の「引用例にはシランカップリング剤を用いることが示さ
れていると言える」との認定に誤りはない。
(9)引用発明の認定の誤りに対して
前記のとおり,引用例の記載事項に関する審決の認定には誤りはないから,引用
発明の認定にも何ら誤りはない。
2取消事由2(一致点の認定の誤り)に対して
(1)原告の主張(1)に対して
前記1(3)及び(7)アで述べたとおり,審決の認定に誤りはない。
(2)原告の主張(2)に対して
ア原告が主張する「長石を含むガラス類」については,前記1(2)イで述べた
とおり,審決の認定に影響を及ぼすものではない。
イ原告は引用発明の化合物が本願発明の「網目形成酸化物」等に相当するとの
審決の認定が誤りである旨主張するが,失当である。
(ア)本願明細書の記載(甲13の段落【0009】及び【0010)の記載に】
よれば,本願明細書には,多孔質セラミックスを形成する「網目形成酸化物」とし
て,SiOを中心に,BO,PO,AlO,ZrO,SbO「中2232523225」,
間酸化物」として「AlO,ZrO,BeO,TiO「網目修飾酸化物」と2322」,
して「CaO,NaO,KO,MgO,LiO,CsO,BaO,LaO,222223
YO,ZnO」を含むことが例示されているものの,これら3種類の酸化物の定23
義,当該酸化物がいかなる機能・性質を有する酸化物であるのかという技術的意味
について,何も記載されていない。
他方「網目形成酸化物「中間酸化物「網目修飾酸化物」の各酸化物につい,」,」,
ては「セラミックス」材料の1つである「ガラス」であるが,乙6の「酸化ガラ,
スでは,SiO,BO,PO,AlO,GeOなどの成分がガラス形成22325232
の主たる要因であるので,網目形成酸化物(NWF,networkformers)と呼ばれ
る。板ガラスなどには,SiOのほかにNaO,CaO,AlOなどが使われ2223
るが,アルカリおよびアルカリ土類酸化物のように,立体網目状の重合度を下げ,
2粘度を下げるものを網目修飾酸化物(NWM,networkmodifier)とよび,Al
O,FeOなどのようにガラス形成剤の一部を置換するものを中間酸化物(int323
ermediates)とよぶ」との記載のとおり,セラミックス製造において,網目形成酸
化物が主成分となり,それに中間酸化物及び網目修飾酸化物が配合される。
ここで「アルカリおよびアルカリ土類酸化物」は,CaO,NaO,KO,,22
MgO,LiO,CsO,BaOなどが該当する。本願発明に例示された酸化物22
をみると,乙6に記載されたものと重複することは明らかである。
このように,本願発明の「網目形成酸化物「中間酸化物「網目修飾酸化物」」,」,
の技術的意味が明らかでなく,また,本願明細書に例示された具体的な化合物と,
周知の「網目形成酸化物「中間酸化物「網目修飾酸化物」に属する化合物とが」,」,
重複していることからすれば,本願発明の「網目形成酸化物」等は,周知の「網目
形成酸化物」等に相当するものであり,このような区分に格別の技術的意味がある
とはいえない。
(イ)そして,上記1(7)イ(ウ)で述べたように,引用例には,セラミック粒子が
「アルミノケイ酸塩を主成分とする長石を含むガラス類,アルミナまたはジルコニ
アを含む金属酸化物,及びドーパントを含有する」場合が開示されており,ドーパ
ントの酸化物として,アルカリ金属酸化物またはアルカリ土類金属酸化物も例示さ
れている(甲2の段落【0039。】)
そこで,本願明細書の段落【0010】の酸化物と対比すると,引用例の「アル
ミノケイ酸塩を主成分とする長石を含むガラス類」は「SiOを中心に,AlO22
」を用いたものに該当し「アルミナまたはジルコニアを含む金属酸化物」は「A3,
,」,「」「,,,,lOZrOに該当しドーパントはCaONaOKOMgO23222
LiO,CsO,BaO,ZnO」に該当するから,それぞれ本願発明の「網目22
形成酸化物「中間酸化物「網目修飾酸化物」に相当することは明らかである。」,」,
以上のとおりであるから,審決の「引用発明の『アルミノケイ酸塩を主成分とす
る長石を含むガラス類』は本願発明の『網目形成酸化物』に,引用発明の『金属酸
化物は本願発明の中間酸化物に引用発明のドーパントは本願発明の網』『』,『』『
目修飾酸化物』に相当する」との認定に誤りはない。
(3)原告の主張(3)に対して
原告は,引用発明の「脱イオン水と分散剤」が本願発明の「バインダー」に相当
するとした審決の認定が誤りである旨主張するが,失当である。
ア本願明細書(甲13)の段落【0012】の記載によると,本願発明は,バ
インダーとして,水,レジン等を用いることができる。
引用例(甲2)の段落【0016)の記載によると,引用発明は,セラミック】
,「(,網状構造物の製造においてセラミック粉とともに脱イオン水と分散剤例えば
ポリビニルアルコール」を用いて懸濁物を形成している。)
そうすると,引用発明の「脱イオン水と分散剤」が,本願発明の「水」等の「バ
インダー」に相当することは明らかである。
イ原告は「引用例記載のものにおける『脱イオン水と分散剤』の機能又は作,
用と,本願発明における『バインダー』の機能又は作用とは異なるものである」と
主張する。
しかし,本願発明には「a)‥‥セラミックス粉末と,バインダーを含む混合,(
物を所定形状に成型し」と特定されているだけである。そして,本願発明の「バイ
ンダー」の種類に「水」等が含まれることは上記アで述べたとおりであり,また,
引用例の懸濁液を用いた圧力成型が本願発明の成型に該当することは後記(4)「」,
,「,」のとおりであるから本願発明のセラミックス粉末とバインダーを含む混合物
「」,「」「」におけるバインダーは引用発明の混濁物における脱イオン水と分散剤
と差異はないというべきである。
以上のことから,審決における「脱イオン水と分散剤』は『バインダー』に相『
当する」との認定に誤りはない。
(4)原告の主張(4)に対して
ア原告は,引用例の「注型」と本願発明の「成型」について「両者の方法は異
なる」と主張するが,失当である。
前記1(6)イで述べたように,引用例の「注型」は,懸濁物を「圧力注型「圧」,
力成形」という手段により行われるから,型内に注入された材料に圧力を加えて所
定形状にする「成型」に該当する。また,引用例の「セラミック懸濁物」が「混合
物」であることは明らかである。
イ原告は「脱イオン水と分散剤」が「バインダー」に相当するものではない,
と主張するが,上記(3)で述べたとおり,原告の主張は理由がない。
以上のことから,審決の「混合物を所定形状に成型し」との認定に誤りはない。
(5)原告の主張(5)に対して
ア原告は,引用発明の(c)の認定が誤りである旨主張するが,前記1(9)で
述べたとおり,原告の主張は理由がない。
また,原告は「引用例には,チタネート系カップリング剤,ジルコアルミネー,
ト系カップリング剤について記載も示唆もない」と主張するが,本願発明の(c)
において「カップリング剤」は「シランカップリング剤」を含む択一的な記載に,
,,。より特定されているから原告の主張は審決における一致点の認定に影響しない
イ原告は,引用発明の(d)の認定が誤りである旨主張するが,前記1(9)で
述べたとおり,原告の主張は理由がない。
また,原告は「オリゴマーについて記載も示唆もない」と主張するが,本願発,
明の(d)には「モノマー」と「オリゴマー」が択一的な記載により特定されて,
いるから,原告の主張は,審決における一致点の認定に影響しない。
ウしたがって,引用発明の(c(d)は,本願発明の(c(d)に相当す),),
るとの審決の認定に誤りはない。
(6)原告の主張(6)に対して
以上のとおりであるから,本願発明と引用発明との一致点の認定について,審決
に誤りはない。
3取消事由3(相違点1の認定の誤り)に対して
引用発明の平均粒径が約01∼10μmであることは前記1(5)及び(9)「.」,
で述べたとおりであり,相違点1の認定に誤りはないから,原告の主張は理由がな
い。
4取消事由4(相違点2の認定の誤り)に対して
引用発明においてカップリング剤が使用されていることは,前記1(8)及び(9)
で述べたとおりであり,相違点2の認定に誤りはないから,原告の主張は理由がな
い。
5取消事由5(相違点1の判断の誤り)に対して
引用発明の平均粒径が約01∼10μmであることは上記1(5)及び(9)「.」,
で述べたとおりであり,審決の相違点1についての判断に誤りはないから,原告の
主張は理由がない。
6取消事由6(相違点2の判断の誤り)に対して
(1)原告の主張(1)アに対して
原告は,周知例1の記載について「モノマーの含浸・重合は‥‥『減圧下』状,
態で行われるのではない」と主張する。
しかし,仮にそうであったとしても,多孔質体にモノマーのような液状物質を浸
透させる場合「減圧下」状態で行うことは,例えば,周知例2及び甲5に,液状,
物質のモノマーや樹脂を「減圧下」状態という圧力差を利用して,多孔質材の焼,
成体に浸透させる手段が記載されていることからも明らかなように,周知の事項で
ある。
したがって,審決の「多孔質材にモノマーを浸透させる手段として『減圧下』状
態にすることは周知である」との認定に誤りはない。
(2)原告の主張(1)イに対して
ア原告は「周知例2に記載のものと引用発明とを組み合わせる動機付けがな,
い」と主張するが,失当である。
すなわち,引用発明は「カップリング剤」及び「モノマー」という液状物質を,
多孔質材に浸透させるものである。また,モノマーのような液状物質を多孔質材に
浸透させる場合「減圧下」状態で行うことが周知技術であることは,上記(1)で,
述べたとおりである。
そうすると,引用発明及び上記の周知技術は,液状物質を多孔質材に浸透させる
という点で共通しており,引用発明に周知技術を適用する動機付けがあるというべ
きである。
イ原告は「審決は,周知例2の記載内容を,課題の相違,技術分野の相違を,
超えて,ことさら一般化,抽象化,上位概念化して‥‥証拠に基づかずに周知技術
を認定している」と主張する。
しかし,液状物質を多孔質材に浸透させる場合「減圧下」状態で行う浸透手段,
が周知であることは,上記(1)で述べたとおりである。
審決はかかる浸透手段が周知技術であると認定した上で相違点2につき前,,,「
記周知技術を引用発明に適用することは当業者が容易になし得たことである」と判
。,,断した周知技術というものは当業者が当然に熟知している技術的事項であって
審決は,その一例として周知例2を提示したにすぎない。上記(1)のように,同様
の浸透手段は,周知例2のほかに甲5においても記載されている。
したがって「証拠に基づかずに周知技術を認定している」という原告の主張は,
失当である。
(3)原告の主張(2)に対して
ア原告は,本願発明の(c)のカップリング処理が周知技術であるかどうかに
ついて審決の摘示がない旨主張する。
しかし,審決は,本願発明と引用発明との対比において,カップリング剤を浸透
させ,モノマーを浸透させ,連通孔の表面をカップリング処理することを一致点と
して認定し,相違点2として,本願発明がカップリング剤やモノマーを浸透させる
ために「減圧下」状態とする点で相違すると認定したのであるから,相違点2の容
易想到性については,カップリング剤やモノマーが「減圧下」状態で浸透する点を
検討すれば足りるのであって,原告が主張する(c)という特定のカップリング処
理が周知技術であることについてまで示す必要はない。
イ原告は,本願発明の(c(d)について「2つの処理操作を,その順で),,
組み合わせて行うことにも重要な技術的意味がある」として,比較例3の記載及び
表4に示すように「混合液の浸透は,超音波を利用しなかったものでは,実施例の
ような物理的性質等が得られなかった」と主張する。
しかし,審決は,カップリング剤の浸透及びモノマーの浸透の順で処理すること
を一致点として認定しカップリング剤やモノマーの浸透手段として本願発明が超,「
音波および/または減圧下」状態で行うことを相違点2で認定した。そうすると,
相違点2の容易想到性の判断においては,審決が判断したように,少なくとも「減
圧下」による浸透手段に関して検討すれば足りるから,原告が主張する2つの処理
操作(c(d)での超音波利用による効果についても検討することは要しない。),
したがって,2つの処理操作を組み合わせて行うことに「重要な技術的意味があ
る」という原告の主張は前提において失当である。
(4)原告の主張(3)に対して
上記1(5)エで述べたように,引用例は甲1であり,審決の認定・判断は甲24
等の記載により影響を受けるものではない。原告の主張は失当である。
7取消事由7(効果についての判断の誤り)に対して
(1)原告の主張(1)に対して
原告は,本願発明の効果について,審決の判断が誤りである旨主張するが,失当
である。すなわち,本願発明において,相違点1ないし3に係る発明特定事項を採
用したことによる作用効果は,引用発明及び周知技術から予測できる程度のもので
あり,格別のものではない。
(2)原告の主張(2)に対して
原告は外国における特許権の成立を主張するが,外国特許の成立については,各
国によって,法制度も異なり,要請される判断が異なることから,本願発明の特許
性について審決の判断を左右するものではない。
(3)したがって,審決における効果についての判断に誤りはない。
8取消事由8(審判手続の法令違背)に対して
(1)拒絶査定で認定した「セラミックスブロック」については,拒絶査定に「セ
ラミックスブロックの連通孔」と記載されていること,また,平成18年8月16
日付け拒絶理由通知書(甲14)の時点で,引用例の認定に関して「引用文献1に
記載された発明は‥‥『多孔質セラミックスにレジンが含浸され』という事項を備
えている」と記載していることに照らせば,拒絶査定の「セラミックスブロック」
「」。,「」,が多孔質材に該当することは明らかであるまた含浸されるモノマーは
多孔質材との関係では「他の材料」の1つである。そうすると,多孔質セラミッ,
クスにシランカップリング剤又はモノマーを浸透させる手段において「超音波中,
および/または減圧下で」浸透させるとの相違点につき,拒絶査定及び審決の両者
はいずれも,そのような浸透手段が周知技術であるとの理由から,この相違点は容
易になし得ると判断し,本願発明の進歩性を否定したものである。両者における周
知技術の認定は,多孔質セラミックスに含浸させる物質を「他の材料」とするか,
「他の材料」の1つを例示するかの違いにすぎず,この違いをもって,進歩性に関
する両者の論理付けが異なるとは到底いえない。
よって「審決は,審査手続きにおける進歩性に関する論理付けと異なる論理付,
けに変更した」という原告の主張は失当である。
(2)また,審決が提示した周知例1及び2は,相違点2に係る事項が周知技術で
あることを示すために例示したものにすぎず,拒絶査定と異なる新たな論理付けを
展開するためのものではないから,原告に改めて意見書を提出する機会を与える事
情はない。
(3)以上のとおり,審判手続には,特許法159条2項で準用する同法50条の
規定に違反する瑕疵はなく,原告の主張は失当である。
第5当裁判所の判断
1取消事由1(引用例の記載事項についての認定の誤り)のうち「(8)シラ,
ンカップリング剤の認定の誤り」について
(1)引用例における「シラン」及び「シランコーチング剤」に関する記載内容
証拠(甲1,2)によれば,引用例における「シラン」及び「シランコーチング
剤」に関する記載は,審決の認定した前記第2の3(1)ア(ウ)及び(ケ)の他,次の
記載がある。
「Afourthdiscwasfiredat1050℃andinfusedwithasilanecoatingagentbefor
einfusionwiththemonomarsolution.」
(0049】第4の円板を1,050℃で燃焼し,モノマー溶液を注入する前に,シラン【
コーチング剤を注入した)。
(2)「シラン「カップリング剤」及び「シランカップリング剤」の意義」,
ア「化学大辞典4(甲27)には「シラン」に関し,次の記載がある。」,
「広義にはSiHなる組成をもつ水素化ケイ素を総称し,狭義にはn=1のモノ(ア)n2n+2
シランを指す。(1)水素化ケイ素(‥‥)メタン列炭化水素の炭素をケイ素に置き換えた形
のもので,ケイ素の数に応じてモノシラン,ジシラン,トリシランあるいは,シリコメタン,
シリコエタン,シリコプロパンなどとよばれる」。
(イ)モノシランの沸点についてとの記載がある。「−112(℃」)
イ「標準化学用語辞典第2版(乙5)には「シラン」に関し,次の記載があ」,
る。
「水素化ケイ素SiHの総称.単にシランというときは,n=1の化合物SiHを指n2n+24
す.n=2,3などの化合物はジシラン,トリシランなどという。SiHの水素原子が炭化4
水素基などで置換した有機化合物を総称するときもシランという名称が使われている」。
ウ「岩波理化学辞典第4版(甲31)には「炭化水素基」に関し,次の記載」,
がある。
n2「炭素と水素だけからなる基の総称.多重結合をもたない飽和鎖式基のうち,1価のCH
−はアルキル基と総称される」n+1.
「」(),「」,。エ高分子大辞典乙3にはカップリング剤に関し次の記載がある
「カップリング剤は,物質の表面をよくぬらし,流動性をもち,そのほかに結合に必要な性
質(‥‥)をもち,異種物質表面の結合度,強度を増すために用いられる物質である.また,
カップリング剤は,接着界面相を改善し有機と無機物質とからなる境界層の接着強度を高くす
ることもできる.有機機能性シラン(organofunctionalsilane)やメタクリル酸クロム錯体
は商業的にも重要なカップリング剤である(表1.)
接着の性質
カップリング剤は,有機と無機官能基からなる化合物であり,樹脂と補強剤との界面を架橋
する.有機機能性シラン中のアルキル基は樹脂と共有結合し,ヒドロキシル(あるいはアルコ
キシル)基は無機物質と結合する.
使用方法
ガラス繊維や目の粗い充填剤にシランカップリング剤を用いる場合は,カップリング剤を水
溶液中に分散し,懸濁液のpHを物質表面の等電点(IEPS)に調整して使用する」.
オ「新版高分子辞典(乙4)には「カップリング剤」に関し,次の記載があ」,
る。
「複合材料では,ゴム,プラスチック,熱硬化性樹脂などの有機材料と,ガラス繊維,カー
ボン繊維,炭酸カルシウム,各種金属などの無機材料を組み合わせることが多い.この場合,
高性能を引き出すためには,両者の界面での接着性が問題となるが,これを改良する材料とし
てカップリング剤が用いられる.カップリング剤の主要な働きは,分子の一方が,無機材料の
表面と反応し,化学結合を生ずると同時に,他方が有機材料と反応し,化学結合をつくり,両
材料の橋わたしとなることである.このため,シラン系,チタネート系,クロム系など多くの
種類が開発されているが,シランカップリング剤(通称シランカップラーsilanecoupler)が
最も広く利用されている.構造は(RO)−Si−R’型が多く,ROはメチル,エチルな3
どのアルコキシル基,クロム基,アセトキシル基,アルキルアミノ基であり,R’は有機官能
基である.ROが水分で加水分解されSi−OH基となり無機物質表面と反応し,R’が有機
物質と結合する」.
カ「新版高分子辞典(甲28)には「シランカップリング剤」に関し,次の」,
記載がある。
「,,複合材料などで主としてガラスと高分子との接着性を改良するために用いられる物質で
XSi(CH)(OR)で表される.ここでnは2または3で,Rはメチル基またはエ33−nn
,,,,,,チル基Xは有機レジンと結合しうる有機反応基でビニルメタクリルエポキシアミノ
メルカプトなどである.ORで示したアルコキシル基は,水溶液中や空気中の水分,ガラス表
面上に吸着された水分により加水分解されてシラノール基(SiOH)を生成し,これがガラ
スなどに対する結合性をもたらす.シランカップラー[silanecoupler]ともいう」.
(3)以上の事実等を前提として,審決が前記第2の3(1)クにおいて認定したよ
うに,引用例にシランカップリング剤を用いることが示されているといえるか否か
について検討する。
まず,上記(1)から明らかなように,引用例には「シランカップリング剤」なる
用語は使用されておらず「シランコチーング剤(請求項5【0049「コ,」【】,】),
,,」(【】),ーチング剤例えばシラン0045との用語が使用されているにすぎず
また,引用例全体の記載を精査しても,引用例には「シランコーチング剤」の意義
若しくは定義及び使用目的については何ら記載されていない。
したがって,これらの技術的意義は,有機材料,無機材料及び複合材料の技術分
野における技術常識に基づいて解釈するのが相当であるから「シラン「カップ,」,
リング剤」及び「シランカップリング剤」の一般的な技術的意義並びに引用例にお
「」(【】,【】)「,けるシランコチーング剤請求項50049あるいはコーチング剤
例えば,シラン(0045)との記載及び位置付けから読み取ることができる」【】
意味内容から,引用例に「シランカップリング剤」を用いることが示されていると
認められるか否かを検討する。
nところで「シラン」とは,上記(2)ア及びイ(甲27,乙5)によれば,Si,
Hという組成をもつ水素化ケイ素を総称するものであり,単にシランというと2n+2
きは,n=1の化合物SiHを指し,SiHの水素原子が炭化水素基などで置換44
した有機化合物を総称するときも「シラン」という名称が使われていることが認め
られる。ここで,上記(2)ウ(甲31)によれば「炭化水素」とは炭素と水素だ,
けからなる基の総称であり,1価のCH−はアルキル基と総称されるものでn2n+1
ある。そして,上記(2)ア(甲27)の記載から明らかなように,水素化ケイ素,
特に狭義のシランであるモノシランは常温では気体として存在することが分かるか
ら,このことを考慮すると,引用例に記載される「シランコーチング剤」は「水,
素化ケイ素の水素原子が炭化水素基などで置換した有機化合物」を用いた「コーチ
ング剤」である,ということができる。
一方,上記(2)エ,オ及びカ(甲28,乙3及び4)の記載から「シランカッ,
プリング剤」とは,一般式XSi(CH)(OR)に表されるような,特定33−nn
の化学構造を有する化合物であり「シランカップリング剤」のような「カップリ,
」,(,)ング剤の主要な働きは分子の一方例えばアルコキシル基などの無機官能基
が無機材料の表面と反応し,化学結合を生ずると同時に,他方(例えば,アルキル
基などの有機官能基)が有機材料と反応し,化学結合をつくり,両材料の橋渡しと
。,「」,なることであると理解されるさらにカップリング剤を複合材料に用いると
異種材料同士の物質表面の結合度が増し,境界層の接着強度が高められることも理
解される。
そこで上記理解に基づいて引用例に記載されたシランコーチング剤とシ,,「」「
ランカップリング剤」とをその成分の化学構造の観点から比較すると,両者の成分
は,いずれも「有機シラン化合物」である点では共通するものの「シランコーチ,
ング剤」の成分は「水素化ケイ素の水素原子が炭化水素基などで置換した有機化,
合物」に止まるものであって,その具体的な化学構造は,引用例の記載からは明ら
,,,,「」,かではなく甲27乙5甲31の記載を総合しても一般的にシランには
ガラスなどの無機物質と結合するためのアルコキシル基などの無機官能基を有して
いることは認められない。
したがって,上記(2)カ(甲28)に記載されるような特定の化学構造を有する
化学物質である「シランカップリング剤」は,化学構造が特定のものである点にお
いて「シランコーチング剤」と相違していると認められる。,
次に,その使用形態について比較すると「コーチング剤」とは,一般的に,そ,
の言葉どおり,被膜を形成する材料を含有する塗料や被覆材などを基材上にコート
(塗布,被覆)するための剤を意味する用語であると認められるから「シランコ,
ーチング剤」とは「シラン」を成分として含み,何らかの基材上にコートされる,
剤と解される。
一方シランカップリング剤については例えば上記(2)エ乙3に使,「」,,(),「
用方法」として,カップリング剤を水溶液中に分散してガラス繊維や目の粗い充填
剤に適用することが記載され,また「接着の性質」の記載から,この使用方法に,
よって,ガラス繊維や充填剤の表面とカップリング剤の無機官能基とが反応して,
結合することは理解されるものの「カップリング剤」を「コート(塗布,被覆」,)
して使用することについては何ら示されていないし前述のとおり引用例のシ,,,「
ランコーチング剤」に関する記載を総合しても,引用例においては「シラン」若し
くは「シランコーチング剤」を「カップリング剤」として使用していることを示す
記載はないから,引用例の記載からは「シランコーチング剤」が「シランカップリ
ング剤」であると認めることはできない。
以上によれば,引用例に記載された「シランコーチング剤」の「シラン」を,特
定の化学構造を有する「シランカップリング剤」と限定して解釈することはできな
いし「コート」という使用形態を特定する「シランコーチング剤」と,その使用,
方法が専ら「コート」であるとはいえない「シランカップリング剤」とを同一視す
ることもできないというべきである。
この点について,被告は,引用例の「シランコーチング剤」は,モノマー注入前
に,セラミック焼成体に注入されて,焼成体表面に被覆処理が施され,その結果,
表面が改質されることから「カップリング剤」と同等の目的で使用されていると,
いえるなどと主張するが,引用例には「シランコーチング剤」を使用する目的に,
ついては何ら記載されていないから,引用例記載の発明の目的は明らかでなく,ま
た他に被告が同等であるという根拠も見出せない。
よって,審決が前記第2の3(1)クにおいて認定したように,引用例に「シラン
カップリング剤」を用いることが示されているということはできないから,審決の
引用例の記載事項の認定には誤りがある。
2取消事由2(一致点の認定の誤り)について
上記1(3)のとおり,引用例には「シランカップリング剤」を用いることが示さ
れているとはいえないから「c)該多孔質セラミックスブロックの連通孔にシラ,(
ンカップリング剤,チタネート系カップリング剤,ジルコアルミネート系カップリ
ング剤のうちから選択された少なくとも1つのカップリング剤を浸透させ,連通孔
の表面をカップリング処理し」を一致点とした審決の認定にも誤りがある。,
3結論
以上のとおり,原告の主張する取消事由1及び2には理由があり,本願発明が引
用発明に基づいて容易に発明することができたと判断した審決は誤りであるから,
審決を取り消すこととし,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官
塚原朋一
裁判官
東海林保
裁判官
矢口俊哉

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