弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を懲役六月及び罰金一万円に処する。
     右罰金を完納することのできないときは、金二百円を一日に換算した期
間被告人を労役場に留置する。但し、本裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を
猶予する。
     押収にかかる覚せい剤注射液四立方糎アンプル入二百二十九本(昭和三
十年当庁押第四九九号)は、これを没収する。
     原審における訴訟費用は、全部被告人の負担とする。
         理    由
 本件控訴の趣意は、弁護人向江璋悦及び同安西義明作成名義の控訴趣意書、被告
本人A名義の控訴趣意書にそれぞれ記載のとおりであるので、ここにこれらを引用
し、以下これらについて判断する。
 弁護人論旨第二点及び第三点
 <要旨>昭和二十九年六月十二日法律第百七十七号により改正された覚せい剤取締
法第四十一条第四項(以下旧法と略称する。)又は昭和三十年八月二十日法
律第百七十一号により改正された同法第四十一条の二(以下新法と略称する。)に
いわゆる営利の目的とは、同法が例えば覚せい剤の不法所持について、単純な不法
所持、営利の目的をもつてする不法所持、常習としての不法所持と三段階に区別し
てその犯罪構成要件を定めている点、あるいは、営業という字句を使用していない
点等を参酌して考察するときは、単に財産上の利益を得る目的を指称し、常に必ず
しも、所論のように営業的利益換言すれば反覆継続的に利益を得る目的を必要とす
るものではないと解するのが相当である。今本件において原判決挙示の証拠によれ
ば、原判示犯罪事実を肯認するに十分である。すなわち、被告人が本件覚せい剤を
不法に所持したのは、右証拠特に被告人の検察官に対する供述調書によれば金城な
るものが千円位御礼をするからといつたのでその御礼が欲しさに、この判示覚せい
剤を預つて売先を探しに出かけたためのものであることが明らかであるから、この
事実たるや正しく冒頭掲記の意味において被告人が営利の目的をもつて覚せい剤を
不法に所持したものと認められるのである。而して記録を精査検討するに、所論供
述調書の任意性が認められることについては前論旨において説明したとおりであつ
て、原判決の右事実認定には何らの過誤あることを発見できないし、又事実認定と
して右の如くならば、原判示法条違反の罪を構成するや勿論であつて原判決には法
令の適用の誤も存しない。この点に関する所論は要するに前記法条の営利の目的の
意味について独自の見解を展開しこれによつて原判決の正当な事実認定並びに法令
の適用を攻撃するに過ぎない。論旨はいずれも理由がない。
 (その他の判決理由は省略する。)
 (裁判長判事 工藤慎吉 判事 渡辺辰吉 判事 江碕太郎)

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