弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を熊本地方裁判所に差し戻す。
         理    由
 本件控訴の趣意は、被告人Aにつき弁護人三橋毅一、被告人Bにつき弁護人諌山
博各提出の控訴趣意書記載のとおりであつて、これに対する当裁判所の判断は次に
示すとおりである。
 三橋弁護人の控訴趣意及び諌山弁護人の控訴趣意第一点について。
 所論はいずれも、被告人Aは刑法第二三五条ノ二施行前より本件土地を占拠して
いたものであるからその施行により犯罪となるいわれはないというものである。
 よつて按ずるに、原判決が認定した罪となるべき事実は「被告人Aは昭和三〇年
五月頃からその家族五名と共に、熊本市a町bのc番地C方に間借していたもので
あり、被告人BはAの義兄であるところ、被告人Aは昭和三六年二月頃右Cから間
借をことわられ、立退方を要求されたが、適当な立退先が見当らないので、昭和二
八年頃被告人Aは養豚するため南九州財務局長管理にかかる国有地たる同町bのd
番地宅地四二〇平方米の北東隅地上に、無断で豚小屋を建てていたから、それを取
除き、同地上に家屋を建てて居住しようと考え、同被告人から被告人Bにその建築
方を依頼し、被告人Bもこれが建築方を承諾し、ここに、被告人両名は共謀の上、
昭和三六年五月五日頃同地上に平家建木造バラツク一棟の家屋を建設し、もつて右
家屋の敷地一五、九一平方米の不動産を侵奪したものである。」というのである。
 <要旨>刑法第二三五条ノ二のいわゆる不動産侵奪罪の罪質は、継続犯ではなく即
時犯として理解すべきであるから、刑法第二三五条ノ二は昭和三五年六月五
日同法施行後の行為に対してのみ適用せらるべきものであることは憲法第三九条の
規定により明らかであり、この点については原判決も同一の見解を示している。
 ところで原判決は「次に、養豚の目的のための不法占拠の点につき考察するに、
前掲挙示の証拠を綜合して考量すれば、被告人Aは昭和二八年頃から昭和三六年五
月五日頃判示家屋を建設するに至るまで、判示国有地を養豚の目的をもつて不法占
拠していた事実が明らかであるから、その不法占拠は、養豚のため一時使用の目的
をもつてなされたもので、いわゆる使用窃盗の範疇に属するものとみるべきであ
り、その法理は動産に関する使用窃盗と何等逕庭がないものといわざるを得ない。
然りとすれば、被告人等が判示家屋を建設するに至るまでの被告人Aの判示土地の
不法占拠は、いまだ、不動産侵奪罪の成立する余地は全然なかつたものと解するの
が相当である。
 しかし、飜つて、被告人等が判示家屋を建設した目的について検討してみると、
被告人Aは判示土地上の養豚小屋を取除き、その跡に更めて家屋を建設し、その家
屋に家族と共に常住坐臥し、そこに生活の本拠をおく目的であつたことは、被告人
両名の当公廷における供述によつて明らかである。してみれば、判示土地の不法占
拠の目的、内容、状態等は、被告人両名が養豚小屋を取除き、同地上に判示家屋を
建設した前後により、自ら異つてきたものとみるべきであるから、被告人Aの判示
土地の不法占拠は、養豚の目的のための判示土地の動産におけるような使用窃盗の
形態から、判示居住目的のための判示土地の動産におけるような窃盗の形態にまで
移行してきたものであり、換言すれば、一時使用の目的である暫定的不法占拠から
恒常的不法占拠の形態即ち占得又は擅占の形態にまで発展してきたものといわざる
を得ない。」として有罪の判断をしている。
 しかしながらD、Eの司法警察員に対する各供述調書、被告人Aの司法警察員並
に検察官に対する各供述調書、被告人Bの司法警察員並に検察官に対する各供述調
書、当審における受命裁判官の検証調書を綜合すれば、被告人Aの豚小屋は床、屋
根、柱、板囲により造作されていた相当恒久的な建物であり、しかも同被告人は昭
和二八年頃から引続き右豚小屋を所有しその敷地部分を占有していたものであるこ
とが認められるのであるから、同被告人の右占有は他人の不動産の単なる一時的な
占有の妨害ではなく、占有の侵奪と認めるのが相当である。したがつて右占有を目
して単なる一時使用の目的をもつてなされたもので、使用窃盗の範疇に属するもの
とした原判決は、右占有状態についての事実を誤認したものであり、右誤認が判決
に影響を及ぼすものであることは前記不動産侵奪罪の罪質に照し明らかである。
(原審検察官は、被告人Aの前記占有は、同被告人が豚小屋を解体したときに終了
し、本件住宅を建築した際新たに不法占拠がなされたものである旨主張しているけ
れども、同被告人が豚小屋を解体したのは、その敷地の占有を拠棄したのではな
く、その占有を継続して豚小屋に代えて同被告人らが居住する本件バラツクを建築
するためのものであるから、豚小屋解体の一事により本件土地の不法占拠が終了し
たものとする主張は理由がない。)したがつて原判決はこの点において破棄を免か
れず、各所論はいずれも理由がある。
 よつて、諌山弁護人の被告人Bに関する量刑不当の主張に対する判断は之を省略
して刑訴法第三九七条第一項第三八二条に則り原判決を破棄することとするけれど
も、当審で取り調べた証人F、同Gの各供述、H有限会社作成名義の地積図、測量
士G作成名義の測量図、南九州財務局長の送付書並に測量図写を綜合すると、被告
人等が本件木造バラツク建居宅一棟を建築した場所は、一部は、被告人Aが前に建
築していた豚小屋の敷地部分であつたけれども、その大部分は豚小屋の敷地部分で
はなく、右バラツク建居宅一棟を新築した際即ち昭和三六年五月五日頃新たに占有
を開始したのではないかとの疑があり、この点については原審の審理経過と併せ考
えると更に尚審理を遂げる要あるものと認められるので、刑訴法第四〇〇条に従い
本件を原裁判所に差し戻すこととする。
 よつて主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 大曲壮次郎 裁判官 古賀俊郎 裁判官 中倉貞重)

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