弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人熊谷康次郎の上告趣意第一点について。
 所論被告人に対する検察事務官の第一回聴取書の日附が昭和二三年三月二八日で
あり、同第二回聴取書の日附が同月二七日となつていることは所論指摘のとおりで
ある。しかし本件起訴が同月二七日であること等の点から考えて、右第一回聴取書
の日附も同月二七日の誤記と認められるのであるが、それはさておくも、右第一、
二回の聴取書は右日附頃適法に作成されたものであり、原審において右両聴取書が
証拠調べされた際も被告人も弁護人も所論の点につき何等の異議も述べていないの
であつて、右日附が右の如く逆になつていることの一事によつては、右各聴取書が
証拠能力のないものと論結し得ないことは勿論である。しからば所論は結局原審の
した証拠価値に対する判断を非難するに過ぎないものであつて、刑訴四〇五条所定
の上告理由に当らないことは勿論、同四一一条一号の事由にも該当するものとは認
められないから、論旨は採るを得ない。
 同第二点について。
 所論被告人及び原審相被告人Aの検察事務官に対する自供は、何れも不任意にな
されたものとは記録上認められないばかりでなく、原審挙示の右以外の証拠によつ
て、右自供はその真実性を裏付け得るものであるから、原判決には所論の違法は認
めることはできない。それ故論旨は採用することができない。
 同第三点について。
 所論は結局事実誤認の主張に帰するから、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 弁護人榎本九の上告趣意第一点について。
 記録を見るに、被告人に対する検察事務官の「第二回聴取書」と題するものが、
昭和二三年三月二七日附のものと、同年四月二〇日附のものとの二通りあることは
所論のとおりである。しかし、原審が証拠に採つた「第二回聴取書」とは右のうち
の三月二七目附のものであることは、同証拠説明中の括弧註記「記録第四二丁以下」
との記載に徴するも明瞭である(即ち、記録四二丁より五〇丁までは前示熊谷弁護
人趣意第一点において説明した「第一回」分の聴取書であり、次の五一丁以下が右
「三月二七日附の第二回聴取書」として続いて編綴されており、「四月二〇日附の
第二回聴取書」分はこの間他の書類を挿んでずつて飛び越えた記録一四九丁以下に
編綴されている)、またその内容から見ても三月二七日附のものを採証しているこ
とは明瞭である。その他の所論は熊谷弁護人趣意第一点において説明したとおりで
あるから、本点論旨はすべて採るを得ない。
 同第二点について。
 原判決挙示の証拠を検討すれば、本件犯罪事実の証明は十分である。所論は独自
の立場に立つて原審のした証拠の価値判断を攻撃し、もつて原判決の事実誤認を主
張するに帰するものと認められるから、上告適法の理由とならない。
 同第三点について。
 証拠を検討すれば、所論饗応額は金千円相当額のものと認定できるのである。し
たがつて本論旨も結局事実誤認の主張に帰し上告適法の理由とならない。
 同第四点について。
 所論前段は検察事務官の聴取書中の被告人の自供が不任意のものであることを強
調するのであるが、その理由のないことは、熊谷弁護人趣意第二点において説明し
たとおりであるから、採用することができない。
 同第五点について。
 所論も結局事実誤認の主張に帰する。
 以上の如く、本件上告は何れもその理由がなく、また記録を精査しても、本件に
つき刑訴四一一条を適用すべき事由あるものとは認められない。
 よつて、刑訴施行法三条の二、刑訴四〇八条により、裁判官全員一致の意見によ
つて、主文のとおり判決する。
  昭和二六年一二月二一日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    谷   村   唯 一 郎

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