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裁判例


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平成28年2月24日判決言渡
平成24年(行コ)第77号不開示決定処分取消請求控訴事件
主文
11審原告及び1審被告の控訴をいずれも棄却する。
2控訴費用は各自の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
11審原告
(1)原判決を次のとおり変更する。
(2)内閣官房内閣総務官が平成18年11月20日付けで1審原告に対し
てした行政文書の一部開示決定(閣総会第291号)のうち,平成17年1
0月31日から平成18年9月26日まで(以下「本件対象期間」ともいう。)
の内閣官房報償費(以下「報償費」という。)の支払(支出)に関する次の
アないしオの行政文書(以下「本件対象文書」という。)を不開示とした部
分を取り消す。
ア政策推進費受払簿
イ支払決定書
ウ出納管理簿
エ報償費支払明細書
オ領収書,請求書及び受領書(以下「請求書等」という。)
21審被告
(1)原判決中,1審被告敗訴部分を取り消す。
(2)上記部分について,1審原告の請求を棄却する。
第2事案の概要等
1事案の概要
(1)本件は,1審原告が,内閣官房内閣総務官に対し,行政機関の保有す
る情報の公開に関する法律(以下「情報公開法」という。)に基づき,平成
17年4月から平成18年9月までの報償費の支出に関する行政文書の開
示を請求したところ,内閣官房内閣総務官が,同年11月20日付けで上記
開示請求に係る行政文書につき,その一部を開示し,その余を不開示とする
決定(以下「本件不開示決定」という。)をしたため,同決定において不開
示とされた行政文書のうち,平成17年10月31日から平成18年9月2
6日まで(本件対象期間)の報償費の支払(支出)に係る本件対象文書を不
開示とした部分の取消しを求めた事案である。
(2)原判決は,1審原告の請求のうち,次のアないしウの行政文書の開示
を求める部分について理由があるものと認め,その限度で本件不開示決定を
取り消し,その余の請求を棄却した。
ア政策推進費受払簿
イ出納管理簿のうち,調査情報対策費及び活動関係費の各支払決定に
対応する各項目の記載を除いた部分
ウ報償費支払明細書
(3)原判決に対し,1審原告は,原判決で棄却された部分の取り消しを求
めて控訴を提起し,1審被告は,原判決で認容された部分の取り消しを求め
て控訴を提起した。
2関係法令等,前提となる事実,争点及び当事者の主張
これらは,次の3のとおり原判決を補正し,後記4のとおり1審原告の控訴
に関する主張及び後記5のとおり1審被告の控訴に関する主張を加えるほか
は,原判決「事実及び理由」中第2の1,2,第3及び第4(3頁13行目か
ら28頁22行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
3原判決の補正
(1)4頁1・2行目「次に掲げるおそれその他」を「(中略)」と改める。
(2)4頁9行目の末尾の次で改行し,以下のとおり加える。
「(4)情報公開法6条2項
開示請求に係る行政文書に前条第1号の情報(特定の個人を識別する
ことができるものに限る。)が記録されている場合において,当該情報
のうち,氏名,生年月日その他の特定の個人を識別することができるこ
ととなる記述等の部分を除くことにより,公にしても,個人の権利利益
が害されるおそれがないと認められるときは,当該部分を除いた部分は,
同号の情報に含まれないものとみなして,前項の規定を適用する。」
(3)15頁末行「不正な働き」を「不正な働きかけ」と改める。
(4)19頁16・17行目「被告第6準備書面」を「1審被告の原審第6
準備書面」と改める。
(5)20頁5行目「円滑化に」を「円滑かつ」と改める。
(6)20頁末行「相手方」を「支払相手方等」と改める。
(7)21頁15行目「そこに記載されている」から同17行目「ものであ
るから,」までを「『支払年月日』欄,『支払金額』欄及び『使用目的』欄
に記載された内容は,それぞれ政策推進費受払簿,支払決定書から転記され
たものであるから,」と改め,同21行目「とともに,」の次に「他国等と
の信頼関係が損なわれるおそれや,」を加える。
(8)23頁14行目「おそれがある」の次に「と行政機関の長が認めるこ
とにつき相当の理由がある」を加える。
(9)23頁24行目「これ開示すること」を「これを開示すること」と改
める。
(10)24頁22行目及び同23行目の各「政策推進受払簿」をいずれも
「政策推進費受払簿」と改める。
(11)25頁23行目「支払相手等」を「支払相手方等」,26頁8行目
「当該相手方等」を「当該支払相手方等」と各改める。
41審原告の控訴に関する主張
(1審原告の主張)
(1)情報公開法5条6号,3号の適用について
ア情報公開法5条6号について
同号の「支障」の程度は,名目的なものでは足りず,実質的なものであ
ることが必要であり,「おそれ」の程度も,単なる確率的な可能性ではな
く,法的保護に値する蓋然性が要求される。
したがって,開示された情報を基にして,さらに第三者による不正工作
を介在させたうえ,これによって生じるかもしれないという漠とした抽象
的な可能性があるにすぎない事情が想定,仮定されることをもって,同号
に該当するとはいえない。このような場合も同号に該当するものとする解
釈は,抽象的な不安感により,上記の「おそれ」を,抽象的・派生的事態
にまで無制限・連鎖的に拡大させることになり,不開示事由を5条各号の
場合に制限する情報公開法の趣旨に反するものである。
イ情報公開法5条3号について
同号の「害される」,「損なわれる」,「不利益」,「おそれ」につい
ても,上記アと同様であり,かつ,その判断に際し,行政機関の長に裁量
権を認めるのは相当ではなく,行政機関側が上記事情の具体的存在を主張
立証する必要があるというべきである。
ウ情報公開法5条6号,3号の「おそれ」判断時期について
同条6号,3号に該当することを理由とした不開示処分の取消しを求め
る訴訟においては,各号の「おそれ」の判断時期は,取消訴訟で認容判決
が出され,実際に開示が命じられることになる時期,すなわち,事実審の
口頭弁論終結時とされるべきである。そして,本件対象文書は,作成時か
ら口頭弁論終結時まで長期間が経過し,政権も交代しているから,現時点
においては,同条6号,3号の「おそれ」は消失している。
(2)原判決で不開示とされた本件対象文書について
ア領収書等について
調査情報対策費及び活動関係費のうち,会合,贈答品,書籍及び支払関
係費用等としての支出は,情報提供者やそれに準ずる者に直接支出するも
のではなく,間接的な類型(以下「間接支払類型」という。)であり,こ
の場合については,すべて開示したとしても,内閣の事務又は事業の適正
な遂行に支障を及ぼす具体的な「おそれ」は生じ得ない。また,会合に利
用する業者や振込みに利用する金融機関などが,不正工作により簡単に顧
客の情報を漏洩することなど考えられない。
特に,以下の領収書等については,上記の「おそれ」は,およそ存在し
ない。
(ア)書籍代の領収書等
一般の書店で書籍を購入した場合の領収書等については,支払の相手
方等である「書店」が,第三者の不正工作にかかって情報が漏洩したと
しても,その情報とは,せいぜい「どのような書籍をいくらで購入した
か」,すなわち,内閣が関心をもっている分野という,利用価値の乏し
い,極めて抽象的な情報にすぎない。これにより,内閣の事務又は事業
の適正な遂行に支障を及ぼす具体的なおそれがあるとは考えられない。
また,内閣が関心を寄せている政策課題など誰でも想定でき,かつ,
そのような政策課題は,国内外を問わず多岐にわたっているから,不正
工作を行おうとする者としては,書籍代の領収書等が開示されるかどう
かにかかわらず不正工作を実行するのであり,これが開示されることで,
支障が生じることにはならない。
(イ)交通費の領収書等
a別紙交通事業者目録記載の交通機関(以下「公共交通機関」ともい
う。)以外の交通事業者(タクシー,ハイヤー等)について
交通事業者は,利用代金が報償費として支払われているのかどうか
を把握しておらず,特に,タクシーの場合,領収書に宛名のない印字
されたレシートが添付されていることもあるが,この場合には,報償
費による支払であること自体を把握することができない。そうすると,
報償費による役務提供の際,どのような人物が乗車し,どのような話
がされていたのかを特定しようがないから,これらが特定されること
により,内閣の事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼす具体的なお
それがあるとは考えられない。
b公共交通機関について
公共交通機関の利用に係る交通費の支払に関する領収書等につい
ては,仮にこれが開示されたとしても,利用者が特定されるおそれは
抽象的なものにとどまる。例えば,路線の規模が小さく,地域性が高
いような鉄道の場合に,交通費を支払った利用区間や利用地域が判明
したとしても,タクシー,ハイヤー等乗車人数が限定される個別性の
高い交通機関と比較すれば,第三者が公共交通機関の交通事業者に不
正工作をかけることにより,当該公共交通機関の利用者を特定するこ
とは不可能か,少なくとも著しく困難である。また,上記の利用区間
や利用地域が判明することで何らかの憶測を呼ぶことがあっても,こ
れによって,内閣の事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼす具体的
なおそれはない。
(ウ)金融機関の振込手数料(支払関係経費)に係る領収書等
報償費の支払を金融機関の振込みで行うことは,不正工作を仕掛けよ
うとする者でなくとも容易に想定できるから,単なる振込手数料に係る
領収書等を開示したところで,内閣の事務又は事業の適正な遂行に支障
を及ぼす具体的なおそれがあるとは考えられない。
(エ)会合費の領収書等
会合場所が,不特定多数の者が日々出入りする旅館やホテルである場
合,会合場所を経営する業者が,会合の参加者や内容を把握していると
は考え難いから,当該業者に不正工作を行ったとしても,会合の参加者
や内容を特定することはできない。料亭やレストランでも,会合の内容
まで把握しているとは考えられない。したがって,このような領収書等
を開示しても,内閣の事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼす具体的
なおそれがあるとは考えられない。
なお,会合の中には,マスコミにより会合場所や参加者が報道されて
いるものもあるが,そのような会合については,領収書等が開示された
としても,上記支障はないから,このような会合の領収書等は,最低限
開示されるべきである。
イ支払決定書について
支払決定書は,ほぼ毎月1回,調査情報対策費で1枚,活動関係費で1
枚作成され,月の各支出をまとめて1枚で記載したものであるが,使用目
的や相手方については,複数ある支出のうち,基本的には1つ代表的なも
のを記載するにすぎず,しかも,使用目的は,会合費,交通費といった類
型的な記載にとどまる。このような支払決定書が開示されたとしても,情
報公開法5条6号,3号に該当する具体的な「おそれ」は生じないという
べきである。
また,代表的なものとして記載される使用目的や相手方が,間接支払類
型の場合には,上記アのとおり,開示されるべきであるし,そうでなかっ
たとしても,後記⑶の部分開示により,当該記載部分をマスキングして対
応すべきである。
ウ出納管理簿(調査情報対策費及び活動関係費の部分)について
出納管理簿の開示により支障が生じることがあり得ないことは,上記イ
と同様である。すなわち,出納管理簿には,「支払相手方等」の欄があり,
支払相手方の氏名等が記載されていると考えられるが,元となる情報が記
載されている支払決定書については,上記イの場合と同様,月ごとの各支
出をまとめて1枚で記載し,支払目的や支払相手方等については,基本的
に代表的なものを記載するにすぎず,かつ,支払目的は概括的な記載にと
どまっているから,情報公開法5条6号,3号に該当する具体的な「おそ
れ」があるとは認められない。
さらに,出納管理簿の場合,支払相手方等について,「(注)本欄は記
載した場合,支障があると思われる場合は省略することができる」と注記
され(以下「本件注記」という。),作成者自身が公務の遂行に実質的な
支障のおそれのある記載を除外することができるから,これが開示されて
も,実質的な支障を生じるおそれを生むことはあり得ない。そして,出納
管理簿に限って上記のようなルールが定められていることからすれば,そ
の部分を除いて公開することを予定していると解釈すべきである。
(3)部分開示について
ア情報公開法6条1項の解釈について
行政文書を原則的に公開するという情報公開法の趣旨に照らせば,同法
が部分開示を認めた6条1項に加えて,同条2項の規定を置いたのは,「個
人に関する情報」についても部分開示の趣旨が確実に実現されるように,
念のために置かれた確認規定としての意味を持つにすぎない。他方,これ
を創設的な規定とみて,部分開示の対象を,独立した一体的な情報を単位
として限定し,同項の場合を除き,独立した一体的な情報をさらに細分化
した部分開示を求めることができないと解釈することは不当である。
したがって,上記の解釈を採用する最高裁判所平成13年3月27日第
三小法廷判決(民集55巻2号530頁)は,法令の解釈を誤るものであ
り,変更されるべきものである上,情報公開法とは条文構造の異なる大阪
府公文書公開等条例に関するものであるから,本件とは事案を異にするも
のというべきである。
イ独立した一体的な情報の解釈について
(ア)本来,一つの文書には様々な情報が重層的に記録され,それらが集
積されることによって,より大きな情報を構成している。そうすると,
部分開示の対象につき,上記アの最高裁判決の解釈を採用するとしても,
「独立した一体的な情報」は,文書の作成名義,作成目的,記録内容等
から的確に判断する必要があり,それは,文書の作成目的とは必ずしも
一致しない。上記の情報の重層構造に照らせば,支払日や支払金額につ
いてのみみても,それ自体有意な情報として独立した一体的な情報であ
るから,本件対象文書に関しては,少なくとも支払日や支払金額につい
ては,独立した一体的な情報として部分開示義務がある。
(イ)また,特に,支払決定書及び出納管理簿は,以下のとおり,部分開
示が認められるべきである。
a支払決定書について
支払決定書は,内閣官房長官が,いつ,調査情報対策費もしくは活
動関係費のいずれの目的で,いくらの金額の支払を決定したかという
情報を記載するための文書であり,一般的には,公金支出の適法性・
妥当性を判断するため,支払相手方等を含めて検討する必要があるが,
支払決定書の作成に当たっては,支払決定に係る請求書等が添付され
ることになっており,これを確認することによって,支払相手方等の
適法性・妥当性判断が担保されている。このため,支払決定書には,
複数件が処理される場合,「支払相手方等」をわざわざ全件記載しな
くとも,文書として成立することになっている。
したがって,支払決定書に関する限り,誰に対する支払であるのか
は意味のある重要な情報ではなく,支払決定書の「支払相手方等」の
記載は,同文書の独立した一体的な情報を構成しないと考えるべきで
ある。
b出納管理簿について
出納管理簿は,報償費の出納状況を一覧できるようにするための文
書であり,その記載内容は,政策推進費受払簿及び支払決定書の記載
内容から引用したものである。そうすると,出納管理簿は,出納があ
った日付,出納の目的(国庫からの入金と支出類型),出納の金額,
出納後の残額が分かれば,その目的を果たすことができ,誰に対して
支払ったのかということは,出納状況とは関係がない。現に,出納管
理簿は,「支払相手方等」については,上記(2)ウのとおり,本件
注記により省略を認めており,出納管理簿自体,「支払相手方等」が
記載されないことも想定している。そうすると,記載してもしなくて
もよい「支払相手方等」の記載事項は,それ以外の記載事項とともに,
独立した一体的な情報を構成していると考えることは不可能である。
(4)支払相手方が公務員である場合について
ア公務員が報償費を受領する場合というのは,最終的な受領者である非公
務員に代わって,いわば使者として受領する場合に限られるものではない。
公務員自身が報償費の最終的な受領者となる場合があり得ることは,1審
被告自身が,意見交換・情報収集の相手方として,国・地方公共団体の関
係者を挙げていること,公務員への報償費の支払を排除する規定がないこ
となどから明らかである。そして,このような場合には,公務員への報償
費の支払が賄賂性を帯びたり,職業倫理上の問題を発生させる場合が存し,
事務又は事業の適正な遂行とは認められないから,不開示事由該当性が否
定されるべきである。
イ公務員が民間人の使者として報償費を受領する場合であっても,当該公
務員の氏名,受領日,受領金額,目的類型等からは,当該民間人や情報収
集の内容が明らかになるものではないし,当該公務員には守秘義務があり,
当該公務員が情報を開示することもあり得ない。
ウ公職の候補者(特に国会議員)に対し,政治活動に関して報償費を交付
すれば,交付側も受領側も,政治資金規正法に違反するものであり,脱税
に該当する場合もあるから,このような支出は,法的保護に値しない。
エ会計検査院の検査で指摘を受けていないとしても,検査に際して提出さ
れる報償費支払明細書からは,支払対象となった活動内容や相手方の氏名
は記載されておらず,報償費を使用した活動の具体的内容を知ることはで
きないから,そのような会計検査院の検査結果をもって,不当目的使用が
認められないとはいえない。
(1審被告の反論)
(1)情報公開法5条6号,3号の適用について
ア情報公開法5条6号について
同号にいう「事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」は,当
該事務又は事業に係る情報の目的,性質及び内容等によっては,当該情報
の内容が伝播して,これに接した者の興味,関心やある意図をもった行動
等との関係で,当該事務又は事業が行いにくくなり,あるいはこれが妨害
されるという事態が,蓋然性をもって十分に想定される場合を含むという
べきであり,第三者の行為が介在することによって,当該事務又は事業の
適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある場合等を除外する理由はない。そ
して,報償費の場合,内閣の政策等を妨げようとする第三者によって様々
な不正行為等が行われ,報償費を使用した事務の適正な遂行に支障を及ぼ
すおそれが生じることは,蓋然性のある事態として十分に想定されるとこ
ろである。
イ情報公開法5条3号について
同号該当性の判断は,事柄の性質上,優れて政策的な判断を含むもので
あるから,処分行政庁である内閣官房内閣総務官に広範な裁量が認められ,
内閣官房内閣総務官の判断が全く事実の基礎を欠くか又は事実に対する評
価が明白に合理性を欠くことにより,その判断が社会通念に照らして著し
く妥当性を欠くことが明らかである場合に限り,裁量権の範囲の逸脱又は
その濫用があるものとして,違法と評価されるものである。
(2)原判決で不開示とされた本件対象文書について
ア領収書等について
間接支払類型においても,上記(1)アのとおり,第三者が策を弄して
会合場所を提供する事業者や金融機関の従業員に直接又は間接に接触し,
働きかけを行うなどした場合に,機密が漏洩する事態が生じる具体的なお
それがあることは否定できないし,第三者が直接会合場所等に赴いて監視,
盗聴等を行うことも考えられる。
(ア)書籍代の領収書等
内閣官房長官が購入する必要のある書籍の中には,その事務の性質上,
一般的に書店等で販売されているような通常の図書とは異なる特殊なも
のや,その内容に,例えば諸外国との安全保障に関するもののような特
殊な事案や地域的問題に関するものが含まれるものがあり,そのような
書籍等については,その名称が明らかとなるだけでも,単に「内閣が関
心を持っている分野」が明らかになるのにとどまらず,内閣の政策運営
の方向性等を十分推知することができるから,これが「利用価値の乏し
い,極めて抽象的な情報にすぎない」などとは到底いえない。そして,
書籍類の購入先の事業者等に関する情報が明らかになると,それを悪用
し,あるいは,今後書籍類の注文があった場合に情報提供させるなどの
不正工作に及ぶことが十分に考えられる。また,様々な憶測が流布し,
関係者に不信感を抱かせたり,今後の内閣官房長官の情報収集等に支障
を及ぼすおそれもある。
(イ)交通費の領収書等
交通費に係る領収書等から交通事業者の氏名等が明らかになると,以
後,当該交通事業者を利用する際,関係者の安全確保等にも不安が生じ,
利用する交通手段によっては,当該交通事業者名と領収書等に記載され
た日付,金額等とを照合するだけで,内閣官房長官が行った重要政策の
関係者に対する協力依頼又は交渉の内容や情報収集等の活動の内容が推
知されることもあり得る。
a公共交通機関以外(タクシー,ハイヤー等)について
タクシー,ハイヤー等の領収書等には,その利用日付(日時),金
額,車両番号並びに当該領収書等の発行者の住所及び名称等が記載さ
れていると考えられ,領収書等によっては,さらに利用者名が記載さ
れることもある。したがって,これらが開示されると,利用者等が特
定され得るところ,このことにより,内閣の事務又は事業の適正な遂
行に支障を及ぼすおそれがある。このような支障は,当該交通事業者
が当該タクシー,ハイヤー等の利用時に報償費による支出の有無を認
識するかどうかに関係なく生じるものである。
また,上記領収書等に宛名の記載がない場合であっても,タクシー,
ハイヤー等の交通事業者は,法令上,乗務運転者名,乗務車両,乗車
区間等の事項を運転者ごとに記録させることとなっており,一般に,
運転者は,各旅客の乗降日時,乗降場所及び運賃(料金)等を記録し
た運転日報(乗務記録)を作成しているから,領収書等の情報と,不
正工作により入手可能な上記情報とから,乗務車両,利用日時及び目
的地等が判明し,これらに,その時々に生じた内政・外政の状況等の
情報を照らし合わせることにより,報償費支払の相手方が特定ないし
推測されるおそれがあり,このような可能性は現実的なものである。
b公共交通機関について
公共交通機関を利用した場合の領収書等には,一般に,日付,金額
並びに当該交通事業者の住所及び名称に加えて,利用者名,乗車日,
利用区間(目的地),利用者の会員番号等が記載されることがあり,
それらが開示されると,報償費を利用して関係者が移動した日時や一
定期間における移動の頻度及び目的地等が明らかとなり,特に,当該
交通事業者の営業規模が小さく,地域性が高いような場合には,判明
した利用日時,目的地等とその時々に生じた内政・外政の状況等を照
らし合わせることにより,その利用目的や関係者等,ひいては内閣官
房長官が当時行っていた協力依頼又は交渉の内容や情報収集等の活動
内容が推知されることが十分考えられる。また,第三者が当該交通事
業者の職員に働きかけたり,当該交通事業者のシステムに不正にアク
セスするなどして,利用者等を特定することは十分に考えられる。こ
のことは,不特定多数の者が利用し,乗務員等が個々の乗客の人数を
把握することが困難であるという事情があっても,何ら左右されるも
のではない。
(ウ)金融機関の振込手数料(支払関係経費)に係る領収書等
上記領収書等には,一般に,金融機関名,取扱店名(店番号),振込
日時,振込手数料及び当該金融機関における管理番号等が記載されてい
ると考えられるところ,これらの情報をもとに,当該金融機関及びその
従業員に働きかけて,報償費の振込金額及び当該振込先(情報収集・協
力依頼の相手方,会合場所の業者,交通事業者及び贈答品の購入先の事
業者等)に係る情報を漏洩させたり,あるいは当該金融機関のシステム
に不正アクセスするなどして,上記情報を入手するなどの不正工作等が
されることが十分に考えられ,内閣官房における情報収集・協力依頼の
活動全般に支障を及ぼすおそれがある。このような可能性は,抽象的な
ものにとどまらない。
上記領収書等がなくとも,金融機関に対する不正工作等が実行される
可能性が全く否定されるわけではないが,上記領収書等が開示され,金
融機関名等が明らかになった場合には,それが明らかではない場合と比
較して,当該金融機関に対する不正工作等のおそれが格段に高まること
は明らかである。
(エ)会合費の領収書等
上記領収書等が開示された場合,不正工作等により関係者からの情報
の漏洩等を誘発するおそれがあること,マスコミで報道されるなどして
注目を浴び,当該会合場所が以後使用できなくなるおそれがあること,
会合の相手方が明らかになって,当該相手方との信頼関係が損なわれる
おそれがあることなどは,原審で主張したとおりである。
マスコミにより報道されている会合についても,これが報償費を使用
したものであるという情報自体が当該会合の特殊性を際立たせ,社会の
重要な関心事となり,その結果,会合の相手方やその関係者が報償費支
払の相手方としてマスコミ等で取り上げられるなどして困惑を覚えたり
態度を硬化させるなどして,当該事案について協力が得られなくなり,
さらに,そのような萎縮効果が生じることによって,広く報償費を使用
する事務に対する協力が得られにくくなり,将来の情報収集・協力依頼
等の活動全般に支障を及ぼすおそれがある。
また,マスコミ等で報道される会合が現に存在したのか,存在したと
して報償費を使用したものかどうかが明らかになっていないものと明ら
かになっているものとでは,前者と比較して後者において,上記不正工
作のおそれが格段に高まることは明らかである。
イ支払決定書について
支払決定書の作成頻度は月1回とは限らず,調査情報対策費又は活動関
係費の各支払について作成され,1枚の支払決定書により1件の支払を処
理しているものも含まれる。そのため,支払決定書に記載された情報が明
らかとなれば,個別に支払決定を行った場合は,その時期や支払額のほか
に,目的類型別の区分,具体的な支払目的・内容,情報収集・協力依頼の
相手方等が明らかになる。1枚の支払決定書により複数の支払を処理して
いる場合にも,支払相手方等や具体的な支払目的・内容等が個別に記載さ
れているものについては,これらが明らかとなる。その余の支払について
も,支払決定書が開示され,各月ごとの調査情報対策費や活動関係費の支
払決定状況や合計支払額が明らかになれば,その時点の内政・外政の状況
等を照合,分析することにより,特定の政策課題との関係が特定ないし推
測されるし,これらが特定ないし推測されないとしても,様々な憶測を呼
び,報償費を使用した活動に支障が生じるおそれがある。
ウ出納管理簿(調査情報対策費及び活動関係費の部分)について
本件注記は,支払相手方等の情報は,機微に触れる場合もあることから,
必要以上の記載をせず,慎重に取り扱うことを注意的に記載したものにす
ぎず,開示に支障のある支払相手方等の記載はすべて省略し,開示に支障
のない場合にのみこれを記載することとする趣旨ではない。実際に,本件
対象期間において,出納管理簿の支払相手方等の欄は省略されておらず,
全てにつき記載されている。
(3)部分開示について
ア情報公開法6条1項の解釈について
同法は,「情報」とその一部分を成す構成要素である「記述等」とを明
確に区別しており,部分開示の対象となる「情報」とは,「記述等」の複
合した一定のまとまりを持った単位の意味において用いられていることが
明らかである。最高裁判所平成13年3月27日第三小法廷判決(民集5
5巻2号530頁)が,「非公開事由に該当する独立した一体的な情報を
更に細分化し,その一部を非公開とし,その余の部分にはもはや非公開事
由に該当する情報は記録されていないものとみなして,これを公開するこ
とまでをも実施機関に義務付けているものと解することはできない」と判
示するのも同趣旨である。したがって,同法6条2項は,同法5条1項の
不開示事由に該当する個人識別部分のみを除いて開示するという態様の部
分開示を義務付けることができないことを前提に,特に,上記の態様の部
分開示をすることに対する法的根拠を与えた趣旨の規定であり,創設規定
にほかならない。
イ独立した一体的な情報の解釈について
問題とされる公文書について,独立した一体的な情報をどのように把握
すべきかについては,当該文書の作成名義,趣旨・目的,作成時期,取得
原因,当該記述等の形状,内容等を総合考慮の上,社会通念に照らして合
理的に解釈されるべきであり,最小限の意味のある記載によって決すると
いうものではない。したがって,当該公文書にそれなりに意味のある記載
があったとしても,文書の作成目的や機能との関係から,社会的に有意な
「情報」としての意味を持つものでなければ,開示の対象とはなり得ない。
(ア)支払決定書について
支払決定書には,調査情報対策費又は活動関係費の1件の支払又は複
数件の支払ごとに,いつ,誰に対し,いくらの額の支払をするのかが記
載され,その支払がいかなる事業者等や,情報収集・協力依頼の相手方
に対してされたかということが,支払の日付や金額と相まって,調査情
報対策費や活動関係費の支払に関する情報としての意味をもつものであ
る。したがって,1通の支払決定書に記録された情報は,その全体が相
まって,支払決定という社会的に有意な一つの情報を成すものであるか
ら,これをさらに細分化して部分開示の対象とすることはできない。
(イ)出納管理簿について
出納管理簿は,報償費の入出金状況を月ごと,年度ごとに一覧できる
ようにして,報償費の個々の入金,繰入れ及び支払のみならず,その総
計と残額の全体が適正に記録されているかどうかを確認する目的で作成
されるものである。したがって,個別の記載は,支払相手方等の記述(実
際には,この記載が省略されることなく,全てにつき記載されている。)
を含め,その余の記述とともに,その全体が独立した一体的な情報であ
るというべきであり,これをさらに細分化して部分開示の対象とするこ
とはできない。
(4)支払相手方が公務員である場合について
本件対象文書に公務員を支払の相手方とするものがあったとしても,それ
は,当該公務員が活動に要した実費を受領したものであるか,又は非公務員
である相手方に代わって公務員が金員を受領したものである。また,仮に,
内閣官房長官が行う協力依頼や交渉等の相手方が公務員であったとしても,
その立場や対価が支払われる対象となる活動の内容,当該活動に至った経緯
等は,様々なものが考えられるのであり,支払の相手方が公務員であるとい
うだけで直ちに,当該対価の支払が賄賂性を帯びるとか,公務員の職業倫理
に違反するということはできない。
公務員が非公務員である相手方に代わって報償費を受領した場合に,直接
の支払相手方である公務員の氏名や,支払時期及び金額が明らかとなっただ
けでも,当時生じていた内政・外政の状況等とこれらの情報とを照合するこ
とによって,最終受領者の氏名や具体的使途が明らかとなる可能性がある。
また,当該公務員に対する働きかけ等によって,最終受領者である非公務員
の氏名や具体的使途が公となることが想定されるし,そうなると,当該金員
を受領した公務員の行動等を監視し,関係者との面会や金員授受の事実を突
き止めたり,妨害工作を行ったりすることが想定され,報償費を使用した円
滑な情報収集や協力依頼の活動に支障が生じるおそれがある。さらに,最終
受領者と目される非公務員について憶測を呼ぶだけでも,報償費を使用した
円滑な情報収集や協力依頼の活動に支障が生じる。
本件対象期間中に,国会議員等公職の候補者に対して報償費が支払われた
とすることは,根拠のない憶測にすぎない。
51審被告の控訴に関する主張
(1審被告の主張)
(1)報償費の特殊性と情報公開法5条6号,3号該当性について
ア報償費は,国の事務又は事業を円滑かつ効果的に遂行するため,当面の
任務と状況に応じ,その都度の判断で最も適当と認められる方法により機
動的に使用する経費であり,その使用時期及び方法は,内閣官房長官によ
る優れて政策的な判断の下に決定されるという特殊な性格を有し,報償費
が使用される事務には,外交,安全保障等の機密性が強く要求される事務
に関するものも含まれる。
イしたがって,仮に,報償費の支払の相手方である情報提供者や協力者の
氏名が明らかとなれば,その相手方との信頼関係はもとより,多数の関係
者との信頼関係も破壊され,相手方や関係者からの反発を招くことが予想
される。また,内閣官房の行う事務に対する妨害工作等を行おうとする者
が存することも容易に想定され,上記相手方等への第三者の不正工作を招
くなどして,内閣官房の行う事務に支障を生ずる。殊に外交案件等につい
ては,その相手方や当該相手方の属する国との信頼関係が損なわれること
はもとより,我が国は秘密保持ができない国とみなされて国際的信用が失
墜し,外交交渉等が立ち行かなくなる。
また,本件対象文書に記載された情報それ自体からは,報償費の支払の
相手方やその具体的使途が判明しない場合であっても,本件対象文書の記
載内容とこれに関連する他の情報や諸事情を総合し,更にはその時々に存
在した内政・外政の状況等を照合,分析することによって,その支払の相
手方や具体的使途が特定ないし推測される場合には,上記の支障が生じる
おそれがあるということができる。
さらに,報償費の支払の相手方や具体的使途までは特定ないし推測され
なかったとしても,これらの事項について様々な憶測がされること自体に
よって,支払の相手方や関係者と目された者がマスコミ等の注目を浴びる
などして多大な困惑を覚え,態度を硬化させるなどして,当該案件につい
て協力が得られなくなるばかりでなく,そのような萎縮効果が生じること
により,広く報償費を使用する事務に対する協力が得られにくくなるなど,
報償費を使用する事務の遂行に支障を及ぼす結果となる。
ウ情報公開法5条6号,3号該当性を判断するに当たっては,上記の事情
を踏まえて検討を行う必要がある。
(2)政策推進費受払簿について
ア本件対象期間中は,政策推進費への繰入れがほぼ各月ごとに2回又は3
回の頻度でされたものについて作成され,いずれの繰入れも,その次の繰
入れがされる時点では繰入残額が0円となっていることを示す記載がある。
そうすると,政策推進費受払簿の開示により,前回繰入時から今回繰入時
までの一定期間内における政策推進費の合計支払額が明らかになるが,こ
れにとどまらず,当該繰入額に相当する政策推進費の支払が,それぞれの
繰入日から近接した次の繰入日までの短期間(おおむね10日間から15
日間)に行われたことが容易に特定されることとなる。
これを,その当時の把握できる内政・外政の状況等と照合,分析すると,
特定の時期に支払われた政策推進費の具体的使途やその支払の相手方を特
定ないし推測し得ることとなり,相手方との信頼関係が損なわれたり,相
手方に対する不正工作を招くおそれもある。また,これらが特定ないし推
測できないとしても,上記の相手方や使途に関して様々な憶測がされるこ
とが容易に想定され,支払の相手方と目された者は多大な困惑を覚え,態
度を硬化させるなどして,以後の協力依頼や情報収集に支障を及ぼすこと
が容易に想定される。
イまた,政策推進費が外交案件等との関係で支出されたものである場合に
は,上記アのとおり,その支払相手方や具体的使途が特定ないし推測し得
る政策推進費受払簿について,情報公開法5条3号に該当すると認めた内
閣官房内閣総務官の判断に,裁量の逸脱・濫用があったとはいえない。
ウ以上によれば,政策推進費受払簿に記載された情報は,情報公開法5条
6号,3号に該当する。
エ部分開示について
政策推進費受払簿は,内閣官房長官が,いつ,どの程度の額を,政策推
進費として使用する額として繰り入れたかが記載されており,前回残額,
現在残額,前回から今回までの繰入額及び現在額計等の記載は,政策推進
費の個々の繰入れとの関係で意味を持つものであるから,これらの記載内
容は,社会通念上1通ごとに全体として独立した一体的な情報というべき
である。したがって,1審被告がこれをさらに細分化して部分開示すべき
義務はない。
(3)出納管理簿に記録された情報のうち,調査情報対策費及び活動関係費
に係る部分を除いたものについて
ア政策推進費の繰入れに係る各項目は,政策推進費受払簿に記録された情
報と同一内容であるから,上記⑵の政策推進費受払簿について主張したと
おり,情報公開法5条6号,3号に該当する。
イ月分計欄は,月ごとに報償費の受領額(国庫からの入金額)と支払額(政
策推進費への繰入額,調査情報対策費及び活動関係費の支払額)の各合計
額が記載されるところ,これが明らかになれば,月ごとの金額の推移や増
減を対比し,各月の支払の特徴を分析し,また,当時の内政・外政の状況
等を照合,分析することによって,一定の政策課題等との関係が特定ない
し推測される結果,内閣の行う事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼす
おそれがあるが,これは,単なる抽象的な可能性にとどまらず,蓋然性の
域に達するものである。また,特定の事案との関係が特定ないし推測され
ないとしても,これらが憶測されること自体によっても,相手方等と目さ
れた者が多大な困惑を覚え,態度を硬化させることなどが想定され,報償
費を使用した事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある。
累計欄には,年度当初から当該月までの報償費の受領額,支払額の各合
計額及び残額が記載されているところ,これが明らかになれば,前後の月
を比較することができるから,上記月分計欄の場合と同様の支障を及ぼす
おそれがある。
また,外交案件の支出に関する情報につき,情報公開法5条3号に該当
すると認めた内閣官房内閣総務官の判断に,裁量の逸脱・濫用があったと
はいえないことは,上記⑵イと同様である。
以上によれば,月分計欄及び累計欄の各記載は,いずれも情報公開法5
条6号,3号に該当する。
ウ部分開示について
出納管理簿は,月ごと,年度ごとの報償費をまとめ,入出金状況全体を
一覧できるようにして,個々の入金,繰入れ及び支払のみならず,これら
の入出金の総計及び残額の全体が相互に適正に記録されているかどうかを
確認する目的で作成されるものである。そのため,個別の入出金の項目は,
それぞれが個別の情報として独立した意味を持つものではない。出納管理
簿の全体を一体と捉えることによって,初めて,出納管理簿が月ごと,年
度ごとの報償費の入出金状況全体を一覧できる事項を記録したものである
との意味内容が明らかとなり,出納管理簿作成の趣旨・目的が達せられる。
このように,出納管理簿に記載されている上記各記述は,全体として相ま
って,独立した一体的な情報を構成しているから,1審被告がこれをさら
に細分化して部分開示すべき義務はない。
出納管理簿作成の趣旨・目的を離れて,個々の記述部分にそれなりの意
味があるかどうかによって,独立した一体的な情報であるかどうかが決定
されるものではない。
(4)報償費支払明細書について
ア政策推進費受払簿から転記した部分については,前記(2)の政策推進
費受払簿について主張したとおり,情報公開法5条6号,3号に該当する。
イ調査情報対策費及び活動関係費に係る各項目については,支払相手方や
使途の記載はないものの,支払日や金額が明らかになることから,金額の
推移や増減を分析し,その時々の内政・外政の状況等を照合,分析するこ
とで,支払相手方や使途が特定ないし推測され得るし,これらが特定ない
し推測されないとしても,種々の憶測を呼ぶことは避けられない。したが
って,上記各項目は,報償費を使用した事務又は事業の適正な遂行に支障
を及ぼすおそれがあるから,情報公開法5条6号に該当する。
また,外交案件の支出に関する情報につき,情報公開法5条3号に該当
すると認めた内閣官房内閣総務官の判断に,裁量の逸脱・濫用があったと
はいえないことは,前記(2)イと同様である。
ウ支払明細書繰越記載部分(原判決別紙5の④)についても,上記⑶イ(出
納管理簿の月分計欄及び累計欄に関する主張)と同様,情報公開法5条6
号,3号に該当する。
エ支払明細書は,会計検査院の検査のため,報償費を,いつ,いかなる目
的類型で,どの程度使用したのかに加え,前月からの繰越額,当月受入額・
支払額の各合計額及び翌月への繰越額等を明らかにする目的で,各月ごと
に作成される文書であり,その記載全体によって初めて,作成目的である
各月ごとの報償費の出納状況が明らかになるものである。したがって,報
償費支払明細書に記載されている情報は,社会通念上,1通ごとに,その
全体が独立した一体的な情報を構成するというべきであるから,1審被告
がこれをさらに細分化して部分開示すべき義務はない。
(1審原告の反論)
(1)報償費の特殊性と情報公開法5条6号,3号該当性について
報償費の特殊性を強調して,支払相手方や具体的使途の特定や推測だけで
なく,それらの単なる「憶測」によって,同条6号,3号の該当性を認める
ことは,法的保護に値する蓋然性をもって同条6号,3号の「おそれ」と解
する情報公開法上の不開示事由の取扱いを,報償費の支出関連文書について
のみ特別に変えることを認めるものであるが,このような「聖域扱い」を認
めるべき実定法上の根拠は存しない。報償費の支払に関して様々な憶測が生
じることは,文書開示の有無に関係しない現象であり,その憶測は,国民の
本来的自由の領域に属することである。
(2)政策推進費受払簿について
ア政策推進費受払簿に記録されている情報は,前回繰入時から今回繰入時
までの一定期間内における政策推進費の支払合計額であり,具体的使途や
支払相手方が明らかになるものではない。したがって,政策推進費受払簿
に記録されている情報が開示されたとしても,情報公開法5条6号,3号
に該当する具体的な「おそれ」はない。
イ政策推進費の繰入れが各月に2,3回で,繰入金が次の繰入れまでに全
額支出されているとしても,平均10日から15日間に1回支出があると
いうことを示すものでしかなく,仮に,個別的に繰入時期が近接していた
としても,支払時期が一定の期間に限定されるというにすぎない。そのこ
とは,支払先や具体的使途の特定とは,直接には無関係である。
また,政策推進費が,多数の政策案件のうち,前回繰入日から今回繰入
日までの期間内に生じた限られた1,2件の政策案件について,同期間内
に最終受取人にまで支払われているなどということは,何ら立証されてお
らず,政策推進費受払簿が開示されたとしても,どのような案件で,誰に
支払ったのかの特定ないし推測は,およそ不可能である。
ウ以上によれば,政策推進費受払簿に記載された情報が,情報公開法5条
6号,3号に該当する余地はない。
(3)出納管理簿に記録された情報のうち,調査情報対策費及び活動関係費
に係る部分を除いたものについて
政策推進費に対応する記載については,政策推進費受払簿に関する上記⑵
のとおりであり,開示による具体的な支障は生じないし,その余の部分も同
様である。
これらの部分は,調査情報対策費や活動関係費の各支出が記録されている
部分と容易に区分して除くことができ,かつ,それのみで有意の情報が記録
されていると認められるから,情報公開法6条1項に基づき,部分開示をす
べきである。
(4)報償費支払明細書について
報償費支払明細書は,そもそも,会計検査院に提出するための二次資料で
あり,支出目的欄にも,報償費の3類型(政策推進費,調査情報対策費及び
活動関係費の別)が示されるのみであり,具体的使途や支払相手方の氏名等
が明らかになるものではない。また,支払決定日は,複数をまとめて処理す
ることもあり,役務提供日とも一致しないことから,ほかの記録や情報と照
らし合わせても,具体的な使途や支払相手方が特定ないし推測されることは
考えにくい。さらに,その開示により,何らかの憶測を呼ぶことがあったと
しても,それによって事務の遂行等に支障を及ぼす具体的なおそれがあると
はいえない。したがって,報償費支払明細書に記載された情報は,情報公開
法5条6号,3号に該当しない。
第3当裁判所の判断
1判断の骨子
当裁判所も,1審原告の請求は,原判決が認容した限度で理由があるものと
判断する。その理由は,次の2において原判決を補正し,後記3において1審
原告の控訴に対する判断,後記4において1審被告の控訴に対する判断をそれ
ぞれ加えるほかは,原判決「事実及び理由」中「第5当裁判所の判断」の1
ないし3(28頁24行目から67頁7行目まで)に記載のとおりであるから,
これを引用する。
2原判決の補正
(1)32頁17行目「同条2項においては,」の次に「同法5条1号の」
を加え,同18行目「同条1項」を「同号」,同19行目「同項」を「同法
6条1項」と各改める。
(2)32頁21・22行目「個人を識別することができる記述等の部分」
を「個人を識別することができる記述等の部分を除いた部分」と改める。
(3)33頁7・8行目「規程」を「規定」と改める。
(4)34頁2行目「(内閣法23条)」を「(平成25年法律第22号に
よる改正前の内閣法23条)」と改める。
(5)47頁末行「(乙20)」を「(乙20,証人A)」,同行「相手」
を「相手方」と各改める。
(6)52頁19行目「繰入れが」から同23行目「明らかにしていない。),」
までを削る。
(7)53頁22行目「不利益が被る」を「不利益を被る」と改める。
(8)59頁18行目「内閣官房費」を「報償費」と改める。
(9)62頁5行目及び同13行目の各「被告」をいずれも「1審被告原審」
と改める。
(10)63頁7行目「先月繰越額」を「前月繰越額」と改める。
(11)64頁9行目「政策推進費」を「報償費」と改める。
31審原告の控訴に対する判断
(1)情報公開法5条6号,3号の適用について
ア情報公開法5条6号について
(ア)1審原告は,第三者による不正工作の抽象的な可能性をもって,同
条6号に該当するとはいえない旨主張する。
(イ)しかしながら,同条6号の「支障を及ぼすおそれ」が,名目的,抽
象的なものでは足りず,実質的かつ具体的で法的保護に値する蓋然性が
あるものであることが求められるとしても,一般的に,我が国の行政全
般を担う内閣の動向に関心を有し,不正な手段によっても情報を得よう
とする第三者が国の内外を問わず存在することや,このような第三者が,
報償費支払の相手方や関係者等を探索した上で,これに接触して,買収,
監視,盗聴,脅迫等の様々な不正工作によって情報を得たり,相手方や
関係者等から情報を漏洩させたりすること,さらには,これらの者に対
してサイバー攻撃等の不正なアクセスを図ろうとすることは,十分に考
えられることである。
以上に照らせば,同条6号に該当する具体的なおそれの有無は,問題
となる情報の類型に応じて,第三者による不正工作が行われる具体的,
現実的な可能性や,これにより漏洩する情報の内容,性質等を検討した
上で判断すべきものであり,このような検討を経ずに,第三者による不
正工作の可能性が抽象的なものにすぎないとして,一律に同号に該当し
ないということはできない。
(ウ)したがって,1審原告の前記(ア)の主張は採用できない。
イ情報公開法5条3号について
1審原告は,同条3号の解釈として,行政機関の長に裁量権を認めるべ
きでない旨主張する。
しかしながら,同号の判断に際し,行政機関の長に裁量権が認められる
ことは,前記1(原判決29頁23行目から30頁末行までを引用)で認
定,判断したとおりである。したがって,1審原告の上記主張は採用でき
ない。
ウ情報公開法5条6号,3号の「おそれ」の判断時期について
1審原告は,本件口頭弁論終結時においては,本件対象文書について,
同法6号,3号の「おそれ」が消失している旨主張する。
しかしながら,行政処分の違法性判断は,当該行政処分がされた時点に
おける法規及び事実に基づいて行うものであり,裁判所が口頭弁論終結時
において,改めて当該行政処分の当否を判断するものではない。したがっ
て,1審原告の上記主張は採用できない。
(2)原判決で不開示とされた本件対象文書について
ア領収書等について
(ア)間接支払類型の場合について
1審原告は,間接支払類型(報償費支払の相手方が情報提供者や協力
依頼者ではなく,会合業者や交通事業者等の役務提供者である場合)に
ついては,情報公開法5条6号に該当する具体的なおそれが生じない旨
主張する。
しかしながら,間接支払類型の場合であっても,上記(1)アと同様,
不正な手段によっても情報を得ようとする第三者が,当該事業者に対し,
買収,監視,盗聴,脅迫等の様々な不正工作を行うことによって情報を
得たり,当該事業者等から情報を漏洩させたりすること,あるいは知り
得た情報を端緒に,不正なアクセスを行ったりすることは,十分に考え
られることであり,むしろ,情報提供者や協力依頼者である場合以上に
危険であるともいえるから,これが抽象的なおそれにとどまるものでは
ないというべきである。そうすると,間接支払類型であることのみをも
って,一律に同条6号に該当しないということはできず,同号に該当す
る具体的なおそれの有無の判断は,問題となる情報の類型に応じて,当
該事業者に対する不正工作が行われる具体的,現実的な可能性や,これ
により漏洩する情報の内容,性質等を検討して行うべきものである。
したがって,1審原告の上記主張は採用できない。
(イ)書籍代の領収書等について
1審原告は,書籍代の領収書等が明らかになり,第三者の不正工作を
招いたとしても,どのような書籍をいくらで購入したか,という程度の
情報しか漏洩されないことや,不正行為は,このような領収書等の開示
に関係なく行われるものであることなどを主張し,情報公開法5条6号
の該当性を否定する。
しかしながら,前記1(原判決48頁17行目から49頁15行目ま
でを引用)で認定,判断したとおり,上記領収書等には,書籍等を購入
した事業者や,購入した書籍等の名称が記載されている場合もあると考
えられること,内閣が活動関係費で購入する書籍等には,通常の図書等
とは異なる特殊な分野に関するものや地域的な問題に関するものが含ま
れていると考えられることなどが認められる。
そして,上記領収書等の開示により明らかとなるこれらの情報は,当
時の内政・外政の状況等と照合,分析することにより,内閣が関心を有
する特定の政策課題に関して行う情報収集に対する姿勢を推知させ,ひ
いては,内閣がこのような特定の政策課題に対し,情報収集活動や合意
形成に向けた協力依頼等の活動を実施していることやその方向性を推知
させることにつながるものということができ,その結果,内閣の政策運
営を阻害しようとする第三者により,当該特定の政策課題の実現を妨害
する動きを誘発する可能性も否定できない。そうすると,上記領収書等
に記載された情報をもって,根拠の薄い憶測や風聞を呼ぶ程度の抽象度
の高い情報にすぎないなどとみるのは相当ではなく,内閣の事務の適正
な遂行に支障を及ぼす具体的なおそれがあるものとして,情報公開法5
条6号に該当するものというべきである。
なお,一般の書店と専門的な書店との区別は,それ自体明確でなく,
書店の規模は様々であって,一般の書店においても,上記のような特殊
な書籍を取り扱っていたり,取次店等を介する取り寄せによって対応し
ている場合もあり得るから,上記の支障を及ぼすおそれの有無の判断に
際して,書店の特性を特に区別して論ずることは,相当ではないという
べきである。
(ウ)交通費の領収書等について
a公共交通機関以外(タクシー,ハイヤー等)について
①1審原告は,そもそも交通事業者が報償費による支払であること
を認識しておらず,報償費による役務提供であることを特定できな
いことから,乗車した人物等を特定することもできないなどとして,
タクシー,ハイヤー等の領収書等につき,情報公開法5条6号該当
性を否定する。
②しかしながら,前記1(原判決45頁9行目から46頁6行目ま
でを引用)で認定,判断したとおり,タクシー,ハイヤー等の領収
書等は,これを開示することによって,当該交通事業者の名称等が
明らかとなるから,これを端緒として行われる当該従業員に対する
働きかけや事業者に対する不正なアクセス等により,当該交通事業
者の利用者の氏名等が明らかになるおそれがある。
すなわち,このような領収書等が開示されれば,当該領収書等に
利用者名まで記載されていないとしても,報償費により利用した当
該交通事業者の名称・住所,利用日時,金額及び車両番号等が明ら
かとなるものと考えられる。そして,不正に情報を得ようとする第
三者において,これらの情報を基に,当該交通事業者の従業員等に
対する働きかけや事業者に対する不正なアクセス等を行うなどし
て,当該交通事業者が保有する乗務日報等のさらに詳細な情報を入
手し,これによって,当該役務を提供した運転手,利用区間及び目
的地等を割り出すことが考えられる。そして,このようにして明ら
かになった上記運転手に対してさらに接触等を行うことにより,当
該交通事業者の利用者の氏名や,車内での会話内容等についても,
明らかになるおそれがあるというべきである。しかも,当該交通事
業者が,機密保持等の観点から信用がおけるものとして選定されて
いる場合には,当該交通事業者は,他の機会においても反復継続し
て選定される可能性が高いことから,あらかじめ当該交通事業者や
その従業員に働きかけて情報提供を依頼する,あるいはこれらを標
的として不正なアクセスを行うという不正行為の態様が考えられ
る。また,このようにして明らかになった情報に基づき,当該交通
事業者の車両を監視,尾行するなどして,利用者の氏名等の情報を
不正に得ようとすることも考えられる。そして,このようなおそれ
は,抽象的なものにとどまるものではないというべきである。
③したがって,1審原告の前記①の主張は採用できない。
b公共交通機関について
①1審原告は,公共交通機関の利用に係る交通費の支払に関する領
収書等が開示され,第三者が不正工作を仕掛けたとしても,利用者
を特定することは著しく困難であることや,利用区間や利用地域が
判明しても,憶測を呼ぶにすぎず,情報公開法5条6号に該当しな
い旨主張する。
②しかしながら,証拠(乙28,29)及び弁論の全趣旨によれば,
上記領収書等には,利用者名が記載されていない場合であっても
(これが記載されている場合には,利用者すなわち情報提供者の氏
名等が明らかになるから,政策推進費の領収書等と同様の支障が生
じ得る。),日付,金額,代金の支払方法,交通事業者の名称等,
乗車日,利用人数及び利用区間等の種々の情報が記載されることが
あることが認められる。
そして,一般に,公共交通機関といっても,料金体系と対比する
などして,その利用区間(目的地)が明らかとなれば(例えば,特
急料金が支払われているような場合),内閣が特定地域において協
力依頼や情報収集活動を実施したことを推知させるものといえる
し,その営業地域がごく限られている公共交通機関にあっては,利
用区間(目的地)が明らかとならない場合であっても,公共交通機
関の名称自体から,当該地域における活動等を推知することが可能
となることもある。これに,その当時の内政・外政の状況等とを照
合,分析することにより,内閣が特定の地域において,その関心を
有する特定の政策課題に対し,協力依頼や情報収集を行ったことを
推知させることにつながるものということができる。
また,内閣が協力依頼や情報収集活動を行う特定の政策課題は,
それが困難な問題を含むものであるほど,相当長期間にわたり,継
続して粘り強い活動をする必要があることが容易に想定されると
ころ,開示された上記領収書等から得られる上記の地域性や,往来
の頻度(一定期間の領収書等を分析することで,一定期間に同一地
域への移動がどの程度あったかが明らかになるといえる。)に関す
る情報をもとに,その当時の内政・外政の状況等を照合,分析する
ことにより,特定地域において,内閣が関心を有する特定の政策課
題に対する協力依頼や情報収集活動が,継続的に行われていること
が,相当程度の蓋然性をもって推知される場合がある。このような
場合には,例えば,第三者が当該交通事業者に事前に働きかけて情
報提供を依頼したり,当該交通事業者の施設や利用者を監視するな
どして,不正に情報を得ようとすることも考えられ,こうした工作
の結果,当該公共交通機関の利用者の氏名等が明らかになる可能性
も否定できない。
このように,上記領収書等が開示されることにより明らかとなる
情報は,根拠の薄い憶測や風聞を呼ぶ程度の抽象度の高い情報とみ
るのは相当ではなく,内閣の事務の適正な遂行に支障を及ぼす具体
的なおそれがあるものとして,情報公開法5条6号に該当するもの
というべきである。
③したがって,1審原告の前記①の主張は採用できない。
c以上によれば,交通費の領収書等は,公共交通機関の利用に係る交
通費の支払に関するものであるかどうかにかかわらず,情報公開法5
条6号に該当するものというべきである。
(エ)金融機関の振込手数料(支払関係経費)に係る領収書等について
a1審原告は,報償費の支払を金融機関の振込みで行うことは,不正
工作を仕掛けようとする者でなくても容易に想定できる旨主張し,上
記領収書等の情報公開法5条6号該当性を否定する。
bしかしながら,前記1(原判決49頁17行目から50頁7行目ま
でを引用)で認定,判断したとおり,上記領収書等が開示されること
により,報償費の支払を依頼した金融機関名及び当該金融機関が報償
費の振込先や金額に関する情報を有していることが明らかとなり,不
正に情報を入手しようとする者が,これらを端緒に当該金融機関の従
業員等に接触し,あるいは当該金融機関等を標的として不正なアクセ
スを行うなどして,上記の情報を入手し,悪用する可能性があること
などが認められる。したがって,上記領収書等は,情報公開法5条6
号に該当するものである。
また,金融機関については,国内外の機関,設置の根拠法令,その
規模の大小等様々な要素が異なっているため,その情報セキュリティ
等については,不正なアクセスに対する対応策に差異があるとも考え
られる。こうした状況に加え,不正に情報を入手しようとする第三者
にとっては,上記領収書等が開示され,当該金融機関の名称や支店名,
振込日時などが明らかになることにより,より容易に当該情報の対象
を絞り込むことができ,これに対する不正行為のおそれが高まるとい
うことができるが,このようなおそれは,抽象的なものにとどまるも
のではないというべきである。
cしたがって,1審原告の前記aの主張は採用できない。
(オ)会合費の領収書等について
a1審原告は,会合場所が不特定多数の者が出入りする旅館やホテル
の場合,会合場所の事業者が,会合の参加者や内容を把握していると
は考えられないことや,マスコミによる会合場所が報道されている場
合には,領収書等を開示しても悪影響がない旨主張する。
bしかしながら,前記1(原判決43頁18行目から44頁17行目
までを引用)で認定,判断したとおり,上記の領収書等が開示される
ことにより,会合場所を所有,管理又は設営する業者の名称等が明ら
かとなり,不正に情報を入手しようとする第三者が,これを端緒にこ
れらの業者等に働きかけ,あるいは不正なアクセスを行うことにより,
当該会合に参加した者が特定されるおそれがあること,当該会合場所
が,機密保持に適切であるとの理由から選定されている場合には,他
の会合でも反復継続して選定される可能性が高いと考えられるところ,
その場合,不正行為の態様についても,これらの従業員に対する接触
にとどまらず,会合場所に対して監視や盗聴を仕掛けるなどの工作が
行われるおそれがあることなどが認められるから,上記領収書等は,
情報公開法5条6号に該当するものと認められる。
また,マスコミにより既に報道されている会合についても,その取
り上げられ方は千差万別であり,報じられた会合相手や会合内容の確
度については,マスコミによる一定の推測を交えたものであることも
少なくないと考えられる。したがって,会合が既にマスコミに報じら
れたものであったとしても,そのことのみから,上記のおそれが生じ
ないということはできない。
cしたがって,1審原告の前記aの主張は採用できない。
イ支払決定書について
(ア)1審原告は,支払決定書は,調査情報対策費と活動関係費について,
概ね各月の支払をまとめて各1枚で記載され,使用目的や支払相手方等
には,代表的なものが記載されるにとどまるから,このような支払決定
書が開示されても,情報公開法5条6号,3号には該当しない旨主張す
る。
(イ)しかしながら,前記1(原判決36頁13行目から37頁3行目ま
でを引用)で認定,判断したとおり,支払決定書は,調査情報対策費又
は活動関係費の1件又は複数件の支払決定を行うために作成されるもの
であり,しかも上記各類型ごとに,毎月ごとの支払をまとめて支払決定
がされるというものでもない。そうすると,複数件につきまとめて支払
決定をした場合であっても,当該支払決定書には,少なくとも,複数件
を代表する1件の支払につき,支払相手方等及び上記各類型のほか個別
具体的な使途が記載されているものと認められる。
(ウ)そうすると,前記1(原判決54頁7行目から同19行目までを引
用)で認定,判断したとおり,支払決定書が開示されることにより,調
査情報対策費又は活動関係費に関する領収書等が開示された場合と同様
の支障を及ぼすおそれがあるから,情報公開法5条6号,3号に該当す
るものと認められる。
(エ)したがって,1審原告の前記(ア)の主張は採用できない。
ウ出納管理簿(調査対策費及び活動関係費の部分)について
(ア)1審原告は,出納管理簿に記載される内容が支払決定書の内容と同
様であるとして,情報公開法5条6号,3号の不開示情報に該当しない
旨主張する。
しかしながら,出納管理簿の記載が,支払決定書の記載内容と同様の
ものであったとしても,支払決定書は,上記イで認定,判断したとおり,
情報公開法5条6号,3号に該当するものと認められるから,出納管理
簿についても,同様に,同条6号,3号に該当するものと認められる。
(イ)1審原告は,出納管理簿には,本件注記があることから,開示され
た場合に支障のおそれのある情報は,記載されていない旨主張する。
しかしながら,本件注記の実際の運用は,前記1(原判決57頁6行
目から同23行目までを引用)で認定,判断したとおりであり,本件注
記に「省略することができる」と記載されているからといって,実際に
省略されているとは限らないこと,本件注記における「支障」の有無は,
開示されることを前提に判断されているものではなく,少なくとも,実
際の運用では,出納管理簿の全てについて支払相手方等が記載されてい
ることなどに照らせば,本件注記があることにより,支払相手方等の記
載が,情報公開法5条6号,3号に該当しないものとはいえない。
(ウ)したがって,1審原告の上記(ア)及び(イ)の各主張は採用できない。
(3)部分開示について
ア情報公開法6条1項の解釈について
(ア)1審原告は,情報公開法6条2項の規定は,単なる確認規定にすぎ
ず,同条1項に基づく部分開示の対象が,独立した一体的な情報を単位
とするものではない旨主張する。
(イ)しかしながら,前記1(原判決31頁2行目から33頁2行目まで
を補正の上引用)で認定,判断したとおり,1審原告の上記(ア)の主張
は採用できない。
すなわち,情報公開法5条1号及び6条2項をみると,氏名,生年月
日などの「記述等の部分」は,「情報」の一部分を構成する構成要素に
すぎないものとして扱われており,「情報」が上記「記述等の部分」の
複合した一定のまとまりをもった単位の意味において用いられている
ものと解される。このことは,同法6条2項が,上記「記述等の部分」
を同法5条1号の「情報」に含まれないものとみなして,同法6条1項
を適用する旨規定していることからも明らかである。したがって,上記
「記述等の部分」を除いた部分は,本来は,1個の情報を構成するとは
いえない記述等にすぎないが,同法6条1項の適用に当たっては,これ
が1個の「情報」を成すものと擬制することにより,行政機関の長に,
上記「記述等の部分」を除いた部分について開示する義務を負わせたも
のである。
(ウ)そうすると,同法6条1項の部分開示は,独立した一体的な情報を
単位として行うものであり,このような情報を更に細分化した上で,不
開示事由に該当する情報が記録されていない部分のみの部分開示を義務
付けるものとはいえないのであって,同条2項は,特定の個人を識別す
ることができることとなる記述等が含まれる情報について,特に独立し
た一体的な情報を細分化した上での部分開示を義務付けることを可能と
した創設的な規定であると解するのが相当である(最高裁判所平成13
年3月27日第三小法廷判決・民集55巻2号530頁参照)。
イ独立した一体的な情報の解釈について
独立した一体的な情報をどのように把握すべきかについては,前記1(原
判決33頁3行目から同8行目までを補正の上引用)で認定,判断したと
おり,当該行政文書の作成名義,趣旨・目的,作成時期,取得原因,当該
記載等の形状,内容等を総合考慮の上,情報公開法の不開示事由に関する
規定の趣旨に照らして,社会通念に従って判断すべきものである。
(ア)支払決定書について
a支払決定書の作成名義,趣旨・目的,作成時期,取得原因,記述等
の形状,内容等については,前記1(原判決36頁13行目から37
頁3行目までを引用)で認定,判断したとおりである。
b1審原告は,複数件の支払につきまとめて支払決定がされる場合に
は,「支払相手方等」欄は,代表する1件以外を記載しなくともよい
ことになっているから,同部分の記載は,独立した一体的な情報を構
成するものではない旨主張する。
cしかしながら,前記a及び前記1(原判決54頁20行目から55
頁12行目までを引用)で認定,判断したとおり,支払決定書は,調
査情報対策費又は活動関係費の1件又は複数件の支払に係る支払決定
を行うために作成される文書であるから,1通の支払決定書に記録さ
れた情報は,支払決定という社会的に有意な1つの事実(調査情報対
策費又は活動関係費のいずれかにつき,いつ,誰に対する,何につい
て,いくらの支払決定を行ったか。)に関連した情報というべきもの
であり,1通の支払決定書に記録された情報は,社会通念上,独立し
た一体的な情報を構成するものと解される。なお,複数件の支払につ
き,1通の支払決定書が作成される場合があるものの,その場合は,
金額欄には合計額が記載され,支払目的及び支払相手方等については,
複数件の支払のうち代表的なものが記載されるにとどまることもある
というのであるから,このような1通の支払決定書に,複数の支払決
定に関する情報が,可分な状態で記録されているとも認め難い。
また,複数件の支払について1通の支払決定書が作成されている場
合には,上記のとおり,支払目的及び支払相手方等の欄には,代表的
なもののみが記載される場合もあるが,そうであったとしても,支払
決定書に関する上記認定に照らせば,支払目的及び支払相手方等は,
支払決定書の記載事項の1つとして,他の支払案件を代表して記載さ
れるものであるから,当該記載は,支払決定書に記載される情報とし
て,不必要であるとも,本質的な部分ではないともいえないのであっ
て,これらの記載は,支払決定書に記録された独立した一体的な情報
を構成しているものというべきである。
dしたがって,1審原告の前記bの主張は採用できない。
(イ)出納管理簿について
a出納管理簿の作成名義,趣旨・目的,作成時期,取得原因,記述等
の形状,内容等については,前記1(原判決37頁4行目から39頁
初行までを引用)で認定,判断したとおりである。
b1審原告は,出納管理簿は,報償費の出納状況を一覧できるように
するための文書であるから,誰に対して支払ったのかということは,
出納状況とは関係がなく,書式上も,本件注記により,支払相手方等
の記載の省略を認めているから,支払相手方等の記載は,独立した一
体的な情報を構成しない旨主張する。
cしかしながら,前記a及び前記1(原判決58頁21行目から60
頁19行目までを補正の上引用)で認定,判断したとおり,出納管理
簿は,報償費の各出納(国庫からの報償費の受領,政策推進費の繰入
れ,調査情報対策費及び活動関係費の支払決定)に関する記録を一覧
表にしてまとめ,月分計及び累計(各月ごと又は年度当初から一定時
期までの報償費の受領額,支払額の合計額等が記録される。)を記載
したものということができるところ,上記各出納に関する記録内容は,
社会的に有意な1つの事実,すなわち国庫からの報償費の入金,政策
推進費の繰入れ,調査情報対策費又は活動関係費としての支払決定の
いずれかにつき,いつ,いくらを,誰に対し,何の目的で受領又は支
出し,残額がいくらになったのかという事実に関する情報というべき
ものであり,上記各出納に関するこれらの情報は,社会通念上,独立
した一体的な情報を構成するものと解される。
また,出納管理簿における支払相手方等についても,本件注記があ
るものの,その実際の運用については,上記⑵ウのとおり,全件につ
いて記載されているところ,支払相手方等についても,報償費の出納
という事実の一部を構成するものであり,その記載が,出納管理簿に
記載される情報として,不必要であるとも,本質的な部分ではないと
もいえないのであって,支払相手方等の記載も,出納管理簿に記録さ
れた上記各出納の記載とともに,独立した一体的な情報を構成してい
るというべきである。
さらに,出納管理簿の支払相手方等の記載として,複数件を代表す
るものが記載されているにとどまることもあり得るが,そうであった
としても,上記判断を左右するものでないことは,上記(ア)cで認定,
判断したとおりである。
dしたがって,1審原告の前記bの主張は採用できない。
(4)支払相手方が公務員である場合について
ア1審原告は,支払相手方が公務員,とりわけ国会議員である場合には,
報償費の支払が賄賂性を帯びたり,職業倫理上の問題を発生させるし,当
該公務員が最終受領者でない場合には,その氏名を開示しても,当該公務
員が情報を開示することはあり得ないことや,報償費の使途について,会
計検査院の検査で指摘を受けていないことを重視すべきではないなどと主
張する。
イしかしながら,公務員に対する報償費の支払が,一概に賄賂性があると
か,職業倫理に反するとはいえず,支払相手方が公務員あるいは国会議員
であるということから,直ちに情報公開法5条6号,3号が適用されない
とはいえないことや,報償費が不適正な目的により支出されていると認め
ることができないことは,前記1(原判決63頁24行目から67頁7行
目までを補正の上引用)で認定,判断したとおりである。
また,会計検査院の検査に提出される報償費支払明細書には,具体的使
途や支払相手方等の記載はないものの,前記1(原判決39頁3行目から
同9行目までを引用)で認定,判断したとおり,会計検査院からの要求が
あった場合には,領収書等の証拠書類を提出して,検査を受けることも予
定されているし,さらに,「内閣官房報償費の取扱いに関する基本方針」
(平成14年4月1日内閣官房長官決定,乙7)においては,報償費の執
行に関して会計検査院が必要として会計検査院長から特に申し入れがあっ
た場合には,内閣官房長官自らが説明に当たることが定められていること
などに照らせば,本件対象期間における報償費の使途等が会計検査院の検
査において指摘を受けていないことは,それなりの判断要素となり得るも
のであって,これを重視すべきでないとはいえない。
ウしたがって,1審原告の前記アの主張は採用できない。
41審被告の控訴に対する判断
(1)報償費の特殊性と情報公開法5条6号,3号該当性について
1審被告は,本件対象文書の開示により,報償費を支払った相手方や情報
提供者が明らかになる場合や,他の情報やその当時の内政・外政の状況等を
照合,分析することにより,これらが特定ないし推測できる場合に,上記相
手方等との信頼関係が破壊されたり,上記相手方等に対する第三者による不
正工作を招くなどして,情報公開法5条6号,3号の支障を及ぼすおそれが
あることや,さらに,これらが特定ないし推測されないとしても,様々な憶
測を呼ぶこと自体によって,相手方と目された者から協力を得られなくなる
おそれがあり,あるいは,萎縮効果から,一般的に報償費を使用する事務の
遂行に支障を及ぼすおそれがあることなどを主張する。
しかしながら,情報公開法5条6号,3号の解釈については,前記1(原
判決28頁25行目から30頁末行までを引用)で認定,判断したとおりで
あり,開示によって支障を及ぼすおそれがあるとされる情報の性質を検討し,
内閣官房の事務又は事業の性質上,実質的な支障が生ずるかどうか,その支
障の程度が法的保護に値する蓋然性を有しているか(同条6号),また,行
政機関の長の判断が合理的なものとして許容される範囲内であるか(同条3
号)を,個別具体的に検討することにより,判断すべきものである。
(2)政策推進費受払簿について
ア1審被告は,本件対象期間中は,政策推進費の繰入れが1か月に2回な
いし3回の頻度でされ,いずれの繰入れもその次の繰入れがされる時点で
は,残額が0円となっている記載があることから,これをその当時の内政・
外政の状況等と照合,分析すると,特定の時期に支払われた政策推進費の
具体的使途やその支払相手方等を特定ないし推測することができ,あるい
は,これらが特定ないし推測できなくても,これらについて様々な憶測を
呼ぶことが容易に想定されるから,情報公開法5条6号,3号に該当する
旨主張し,証拠(乙24,証人B)中には,これに沿う部分があるので,
以下,検討する。
イ政策推進費受払簿の作成名義,趣旨・目的,作成時期,取得原因,記述
等の形状,内容等については,前記1(原判決36頁3行目から同12行
目までを引用)で認定,判断したとおりである。
ウ証拠(乙24,証人B)によれば,本件対象期間(平成17年10月3
1日から平成18年9月26日まで)においては,報償費の政策推進費へ
の繰入れがほぼ各月ごとに2回又は3回の頻度でされており,同繰入れの
都度作成される政策推進費受払簿には,いずれの繰入れもその次の繰入れ
がされる時点では繰入残額が0円となっていることを示す記載,つまり,
いずれの繰入金についても,その全額がその次の繰入れがされるまでの間
に支払われたことを示す記載がされていることが認められる(原判決別紙
2の書式では,②の「前回残額」と③の「前回から今回までの支払額」に
同額が記載され,④の「現在残額」に0円と記載され,⑤の「今回繰入額」
と⑥の「現在額計」に同額が記載されていることになる。)。
そうすると,このような政策推進費受払簿が開示されると,単に,前回
の繰入時から今回の繰入時までの間の政策推進費の支払合計額が明らかに
なるというのにとどまらず,ある特定日に繰り入れられた政策推進費の全
額が,繰入日からほぼ10日ないし15日程度の期間で支払われているこ
とも明らかになるものといえる。
エしかしながら,政策推進費受払簿が開示されたとしても,このことから
直ちに,政策推進費からの特定の支払に係る支払日や支払額が,事実上特
定ないし推測されるものでないことは,前記1(原判決51頁23行目か
ら52頁末行までを補正の上引用)で認定,判断したとおりである。
すなわち,内閣官房長官が,繰り入れた政策推進費のうち,いつ,誰に,
いくらの政策推進費を支払ったのか,あるいは,それが1回なのか,複数
回なのかは,上記政策推進費受払簿が開示されたとしても,何ら明らかに
なるものではない。そのことは,上記期間が概ね2週間や10日間前後の
短期間であったことや,繰入額の多寡によっても,異なるものではないと
いうべきである。また,内閣の政策課題は,特定の短期間には限られた件
数しか存在しないというものではなく,政策推進費は,将来あるいは過去
の内閣の政策課題に対して支払われる場合もあり得るし(証人B・9ない
し12頁,49頁),さらに,上記期間を超えて継続すべき案件も多々存
在するというのである(乙27の18頁)。そうすると,特定の短期間に
支払われた政策推進費の合計額が明らかとなったとしても,そのことによ
り,特定の政策推進費の支払日や支払額,ひいては,その支払相手方等や
支払目的が事実上特定ないし推測されるという関係にはないというべきで
ある。
また,政策推進費が支払われたことと特定の期間における内政・外政の
状況等とを照合,分析することにより,政策推進費の使途や支払相手方等
について憶測を呼ぶことも,あり得ないではない。しかしながら,このよ
うな憶測のみによって,関係者等の信頼が損なわれるなどして,内閣の事
務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼす具体的なおそれがあるとまで認め
られないことは,前記1(原判決53頁初行から同16行目までを引用)
で認定,判断したとおりであり,政策推進費受払簿に記載された情報が,
情報公開法5条6号の不開示情報に該当するとは認められない。
オ情報公開法5条3号該当性については,前記1(原判決53頁17行目
から54頁初行までを補正の上引用)で認定,判断したとおり,同号のお
それがあるとした内閣官房内閣総務官の判断は,裁量権を逸脱又は濫用し
たものというべきであり,政策推進費受払簿に記載された情報は,同号の
不開示情報に該当するとは認められない。
(3)出納管理簿に記録された情報のうち,調査情報対策費及び活動関係費
に係る部分を除いたものについて
ア出納管理簿の作成名義,趣旨・目的,作成時期,取得原因,記述等の形
状,内容等については,前記1(原判決37頁4行目から39頁初行まで
を引用)で認定,判断したとおりである。
イ1審被告は,出納管理簿に記録された政策推進費の繰入れに係る各項目
は,上記⑵の政策推進費受払簿におけるのと同様の理由により,情報公開
法5条6号,3号に該当する旨主張するが,同主張が採用できないことは,
上記⑵で判断したとおりである。
ウ1審被告は,出納管理簿の月分計欄及び累計欄に記載された情報につい
ては,これにより,月ごとの金額の推移や増減を照合,分析し,当時の内
政・外政の状況等と照合,分析するなどすることによって,一定の政策課
題等との関係が特定ないし推測され,あるいは,これらが特定ないし推測
されないとしても,様々な憶測を呼ぶとして,情報公開法5条6号,3号
に該当する旨主張する。
しかしながら,前記ア及び前記1(原判決57頁24行目から58頁1
8行目までを引用)で認定,判断したとおり,1審被告の上記主張を採用
することはできない。
すなわち,月分計欄及び累計欄の記載内容が明らかになったとしても,
これによって,特定の月における報償費の合計受領額,合計支払額及び残
額(月分計欄)あるいは,年度当初から特定の月までの報償費の合計受領
額,合計支払額及び残額(累計欄)が明らかになるにすぎず,これにその
当時の内政・外政の状況等を照合,分析するなどしたとしても,一定の政
策課題との関係が明らかになるとか,ひいては,支払の目的や相手方等が
特定ないし推測されるものとは認められない。また,上記の記載内容が明
らかになった場合には,報償費の月ごとの増減や推移が明らかとなること
から,内閣の抱える政策課題や,報償費の使用目的及び支払相手方等につ
いて,様々な憶測を呼ぶこともあり得ないではない。しかしながら,この
ような憶測のみによって,関係者等の信頼が損なわれるなどして,内閣の
事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼす具体的なおそれがあるとまでは
認められない。そうすると,出納管理簿の月分計及び累計欄に記載された
内容が,情報公開法5条6号,3号の不開示情報に該当するとは認められ
ない。
エ部分開示について
(ア)1審被告は,出納管理簿が,月ごと,年度ごとの報償費の出納状況
全体を一覧できるようにし,個別の入出金と総額の全体とが相互に適正
に記録されているかどうかを確認するための文書であることに照らせば,
出納管理簿に記載された内容の全体をもって,独立した一体的な情報を
構成しているとして,出納管理簿について部分開示を命じることは許さ
れない旨主張する。
(イ)しかしながら,出納管理簿の各出納に関する記録内容は,前記1(原
判決58頁末行から59頁11行目までを引用)及び前記3(3)イ(イ)
cで認定,判断したとおり,社会的に有意な1つの事実,すなわち国庫
からの報償金の入金,政策推進費の繰入れ,調査情報対策費又は活動関
係費としての支払のいずれかにつき,いつ,いくらを,誰に対し,何の
目的で受領又は支出し,残額がいくらになったのかという事実に関する
情報というべきものである。また,出納管理簿の月分計欄及び累計欄の
それぞれについても,前記1(原判決59頁12行目から同23行目ま
でを補正の上引用)で認定,判断したとおり,社会的に有意な1つの事
実,すなわち各月の,あるいは,年度当初から特定の月までの,報償費
の合計受領額,合計支払額及び残額を内閣官房長官が確認したことに関
する情報というべきである。
これに対し,1審被告は,出納管理簿の作成目的を強調して上記(ア)
のとおり主張する。しかしながら,出納管理簿の主な作成目的が1審被
告の主張するとおりであったとしても,一般の出納管理においては,個
別の入出金額の多寡やその目的,実際の現金残高等を把握する重要性も
否定することはできず,そのことは,報償費においても異なるものでは
ないというべきである。
そうすると,出納管理簿に記載された情報については,個別の入出金
(国庫からの入金,政策推進費の繰入れ,調査情報対策費又は活動関係
費としての支払)に関する記録,すなわち,各入出金ごとに記録される
年月日(原判決別紙4の①),摘要(使用目的等)(同②),受領額(同
③),支払額(同④),残額(同⑤),支払相手方等(同⑥)の部分は,
独立した一体的な情報を構成するものであるが,月分計欄(同⑦)に関
する記録及び累計欄(同⑧)に関する記録(それぞれに関する,受領額,
支払額,残額及び内閣官房長官の確認印〔同⑨〕の部分)も,これらと
は別に,独立した一体的な情報を構成するものというべきである。
(ウ)以上によれば,出納管理簿については,情報公開法6条1項に基づ
き,同法5条6号,3号の不開示事由に該当する調査情報対策費及び活
動関係費の各出金に係る部分を除いた一部開示を命じることができる。
したがって,1審被告の前記(ア)の主張は採用できない。
(4)報償費支払明細書について
ア報償費支払明細書の作成名義,趣旨・目的,作成時期,取得原因,記述
等の形状,内容等については,前記1(原判決39頁2行目から同24行
目までを引用)で認定,判断したとおりである。
イ1審被告は,報償費支払明細書のうち,政策推進費受払簿から転記した
部分は,前記(2)の政策推進費受払簿におけるのと同様の理由により,
情報公開法5条6号,3号に該当する旨主張するが,同主張が採用できな
いことは,前記(2)で判断したとおりである。
ウ1審被告は,報償費支払明細書のうち,調査情報対策費及び活動関係費
について記録した部分は,これが開示されれば,その支払日と金額が明ら
かとなり,これを当時の内政・外政の状況等と照合,分析するなどすれば,
使途や支払相手方等が特定ないし推測され,あるいは,これらが特定ない
し推測されないとしても,種々の憶測を呼ぶことから,情報公開法5条6
号,3号に該当する旨主張する。
しかしながら,前記1(原判決61頁12行目から63頁4行目までを
補正の上引用)で認定,判断したとおり,1審被告の主張を採用すること
はできない。
すなわち,報償費支払明細書のうち,調査情報対策費及び活動関係費に
ついて記録された部分が開示されたとしても,これらに係る領収書等,支
払決定書及び出納管理簿とは異なり,各支払決定の年月日及び金額が明ら
かになるにすぎない。しかも,各支払決定は,複数件まとめて行われる場
合もあるが,報償費支払明細書の記載からは,当該支払決定が複数件まと
めて行われたかどうかは明らかとはならないし,支払決定日は,役務提供
日と一致するとも限らない。そうすると,報償費支払明細書の開示により
明らかとなる情報に,その当時の内政・外政の状況等を照合,分析するな
どしても,一定の政策課題との関係が明らかになるとか,ひいては,支払
の目的や相手方等が特定ないし推測されるとは認められない。また,上記
のような照合,分析により,内閣の抱える政策課題や,報償費の使用目的
及び支払相手方等について,様々な憶測を呼ぶこともあり得ないではない。
しかしながら,このような憶測のみによって,関係者等の信頼が損なわれ
るなどして,内閣の事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼす具体的なお
それがあるとまでは認められない。
そうすると,報償費支払明細書のうち調査情報対策費及び活動関係費に
ついて記録した部分が,情報公開法5条6号,3号の不開示情報に該当す
るとは認められない。
エ1審被告は,報償費支払明細書のうち,支払明細書繰越記載部分(原判
決別紙5の書式中,④の前月繰越額,本月受入額,本月支払額及び翌月繰
越額の部分)は,出納管理簿の月分計欄及び累計欄におけるのと同様の理
由により,情報公開法5条6号,3号に該当する旨主張する。しかしなが
ら,1審被告の上記主張が採用できないことは,上記⑶で判断したとおり
である。
オ以上によれば,報償費支払明細書については,情報公開法5条6号,3
号の不開示事由に該当する情報は記録されていないものと認められる。
第4結論
以上によれば,1審原告の本訴請求は,上記第3の1の開示を求める限度で
理由があるから,これと同旨の原判決は相当である。
よって,1審原告及び1審被告の各控訴はいずれも理由がないから,これら
を棄却することとし,主文のとおり判決する。
大阪高等裁判所第2民事部
裁判長裁判官田中敦
裁判官善元貞彦
裁判官竹添明夫
(別紙)
交通事業者目録
1鉄道事業法による鉄道事業者(旅客の運送を行うもの及び旅客の運送を行う鉄
道事業者に鉄道施設を譲渡し,又は使用させるものに限る。)
2軌道法による軌道経営者(旅客の運送を行うものに限る。)
3道路運送法による一般乗合旅客自動車運送事業者(路線を定めて定期に運行す
る自動車により乗合旅客の運送を行うものに限る。)
4海上運送法による一般旅客定期航路事業(日本の国籍を有する者及び日本の法
令により設立された法人その他の団体以外の者が営む同法による対外旅客定期航
路事業を除く。)を営む者
5航空法による本邦航空運送事業者(旅客の運送を行うものに限る。)
6本邦外の国若しくは地域において公共交通機関を経営する上記1ないし5に準
じる事業者
以上

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