弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1 被告は,別紙物件目録記載の所在地において同目録記載の産業廃棄物処理施設
を建設してはならない。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
主文同旨
第2 事案の概要
本件は,愛知県海部郡a村(以下「a村」という。)に住む原告らが,別紙物件目
録記載の所在地(以下「本件予定地」という。)における同目録記載の産業廃棄物
処理施設(以下「本件施設」という。)の設置につき,平成10年1月12日に愛
知県知事から廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」とい
う。)15条1項に基づく許可(以下「本件許可」という。)を受けた被告に対
し,本件施設はその性能自体に問題があり,被告には本件施設を適切に維持管理し
得る能力はなく,そもそも事業主体としての実体も有していないから,被告が本件
施設を建設して稼働すれば,ダイオキシン類を始めとする有害物質が多量に排出さ
れ,本件予定地の近隣に居住し,農業などを営む原告らが深刻な健康被害等を受け
るおそれがあるなどと主張
して,人格権又は財産権に基づき本件予定地における本件施設の建設差止めを求め
た事案である。
1 前提となる事実
当事者間に争いのない事実,甲72,107号証の1ないし3,乙1ないし7号
証,乙13号証の1及び2,乙14,28,29,33,41,42,45,6
9,85号証並びに弁論の全趣旨によると,以下のとおり認めることができる。
(1) 当事者
ア 原告らはいずれも,本件予定地から半径500メートルの範囲内に居住するも
のであり,原告A4及び同A9を除き,同範囲内に所在する農地において農業を営
むものである。
イ 被告は,平成7年7月24日,Bらが発起人となって設立した産業廃棄物の収
集運搬業,処理業等を目的とする株式会社であり,本件予定地に本件施設の建設を
計画しているものである。
(2) 廃棄物処理法にいう廃棄物(以下「廃棄物」という。)とは,ごみ,粗大ご
み,燃え殻,汚泥等の汚物又は不要物であって,固形状又は液状のものをいう(同
法2条1項)。廃棄物は,一般廃棄物と産業廃棄物とに分類され,このうち,産業
廃棄物は,事業活動に伴って生じた廃棄物のうち,燃え殻,汚泥,廃油,廃プラス
チック類等政令で定めるものであり,一般廃棄物は,産業廃棄物以外の廃棄物をい
う(同条2項,4項)。
(3) 平成9年3月13日,丸真建設のC(後に被告代表者)は,本件予定地におけ
る産業廃棄物処理施設の設置に関し,廃棄物処理法15条1項に基づく愛知県知事
の許可を受け,また,同年6月24日には,都市計画法43条1項に基づく建築許
可及び建築基準法51条ただし書に基づく特殊建築物の敷地の位置に関する許可を
受けたが,上記許可に係る事業運営については,C個人ではなく法人である被告が
行うこととし,平成10年1月7日,被告は,愛知県知事に対し,改めて廃棄物処
理法15条1項に基づく本件施設の設置許可を申請するとともに,大気汚染防止法
6条1項に基づき,愛知県津島保健所長に対して「ばい煙発生施設設置(使用,変
更)届出書」(乙13号証の1)を提出し,同月12日,本件許可を受けた。ま
た,被告及びCは,平
成10年3月30日,上記都市計画法43条1項及び建築基準法51条ただし書に
基づく各許可に関し,申請者名を「丸真建設C」から「丸真建設C,株式会社成和
代表取締役C」と変更すること及び処理能力を1日16トンから1日6.016ト
ンに変更することについての承認を受けた。
平成10年6月5日,被告は,愛知県から建築確認を得て,本件施設の建設に着工
した。
(4) 平成10年4月10日,原告A1を含む49人は,愛知県公害審査会に対し公
害調停の申立てを行った。同年6月12日の第1回調停期日において,原告A1ら
は,被告に対し本件施設の建設工事の中止を求めたが,被告は工事を続行した。
平成10年7月17日,a村又はその近隣に居住し,又は土地を所有する本件原告
ら17人を含む303人が債権者となり,被告及びCを債務者として本件施設の建
設禁止の仮処分命令を求める申立て(名古屋地方裁判所平成10年(ヨ)第682
号)を行い,また,同年10月1日には,161人が債権者となり,被告及びCに
対し上記同様の申立て(名古屋地方裁判所平成10年(ヨ)第947号)を行った
(以下,上記2つの申立てに係る仮処分命令申立事件を「本件仮処分事件」とい
う。)。同年11月5日,名古屋地方裁判所は,被告及びCに対し,本件施設の建
設を禁止する旨の仮処分命令を発した(以下「本件仮処分命令」という。)。
(5) 本件施設の計画概要
ア 被告は,本件施設において,廃自動車及び廃家電からなるシュレッダーダスト
並びに塩化ビニール類を除くあらゆる種類の廃プラスチック類を焼却することを予
定している。なお,シュレッダーダストとは,廃棄された自動車及び家庭用電気製
品からリサイクルが可能な部品が取り外され,シュレッダーによる破砕処理の後
に,鉄及びアルミニウムくずが回収された残りのものであり,プラスチック,銅
線,ガラス,種々の素材を異にする鉄片など雑多な内容を有するものをいい,廃プ
ラスチック類とは,合成樹脂くず,合成繊維くず,合成ゴムくず等のすべての合成
高分子系化合物をいう。
イ 本件施設において,シュレッダーダストを焼却するための焼却炉は,株式会社
木暮製作所製のKGR回転炉WJ-1610型(以下「シュレッダーダスト焼却
炉」という。)であり,廃プラスチック類を焼却するための焼却炉は,共栄工業株
式会社製の大型焼却炉HT-15型(以下「廃プラスチック焼却炉」といい,これ
とシュレッダーダスト焼却炉とを併せて「本件焼却炉」という。)である。
シュレッダーダスト焼却炉では1時間当たり357キログラムを,廃プラスチック
焼却炉では1時間当たり395キログラムをそれぞれ焼却し(以下「届出量」とい
う場合は上記の各量を指す。),いずれも午前8時から午後5時までの1日8時
間,1か月25日の稼働を予定している。
ウ 焼却するシュレッダーダスト及び廃プラスチック類は,本件施設内の保管用ピ
ットに保管し,(ア)シュレッダーダストについては,選別機によってプラスチッ
ク,ウレタン,ゴム等に分別し,廃棄する物は乾燥させ,有価物は安定型最終処分
場に処分されるものとRDF装置により固形化して燃料として再利用するものとに
分けてそれぞれ処理し,(イ)廃プラスチック類については,手作業で塩化ビニール
類を分別した後,破砕機で破砕するとともに乾燥させて処理することがそれぞれ計
画されている。
2 争点及び当事者の主張
(1) 争点
原告らは,被告に対し,人格権又は財産権に基づき,本件施設の建設差止めを求め
ることができるか。
(2) 原告らの主張
ア 本件施設の性能について
(ア) 本件施設の見積仕様書及び設計計算書に示された安全性について
焼却施設の性能を決定する基準として最も重要なものは,低位発熱量(1キログラ
ムの廃棄物が燃える場合に発生する熱量で,燃焼物質に含まれる水分などが気化す
る際に奪われる熱量が差し引かれたもの)及び炉内負荷(当該焼却炉が耐えられる
熱負荷の限界を示すもの)である。発熱量は廃棄物の乾燥の有無等の事情を考慮し
て定めるべきであり,また,炉内負荷は,炉内形成,廃棄物の質等の様々な要素を
考慮して経験値として決定されるべきである。
被告は本件施設の完成後にどのような種類の廃棄物を燃焼させるかについて具体的
な展望を持っていないから,本件施設の設計計算書及び見積仕様書に記載された低
位発熱量及び炉内負荷は,実際に焼却される廃棄物の質や実際のデータを考慮した
ものではなく,いずれも機械的に割り出したものにすぎない。したがって,上記の
設計計算書等は被告による本件施設の実際の稼働を前提とするものとはいえず,本
件施設が実際に稼働した場合の安全性を保障するものではない。
(イ) シュレッダーダスト焼却炉の問題点
a 被告はシュレッダーダスト焼却炉の焼却能力を1時間当たり357キログラム
としているが,実際はその2ないし3倍の焼却が可能であり,被告は当初から届出
量の2ないし3倍の焼却を予定しているものというべきである。
b 届出量の2ないし3倍の焼却能力のあるシュレッダーダスト焼却炉で届出量の
みを焼却した場合,炉内温度の上昇に時間がかかるため,不完全燃焼を起こして一
酸化炭素が増加したり,ダイオキシン類の前駆物質が生成されて高濃度のダイオキ
シン類が発生する可能性がある。特に,シュレッダーダストにはダイオキシン類生
成の触媒となる銅が含まれているため,より高濃度のダイオキシン類が発生するこ
ととなり,バグフィルターでは排出抑制基準を遵守できない可能性がある。
c 被告の計画通りにシュレッダーダストを長期間焼却した場合,炉壁にガラスが
成長して炉の内径が縮小し,炉内負荷が増加するために炉内温度が上昇して燃焼が
早まり,その結果,不完全燃焼を起こして黒煙やダイオキシン類が発生する可能性
が高くなる。
(ウ) 廃プラスチック焼却炉の問題点
被告は,廃プラスチック焼却炉の焼却能力を1時間当たり395キログラムとして
いるが,実際にはこの2ないし3倍の焼却能力がある。このような過大な焼却能力
のある焼却炉で届出量だけを燃焼すると,炉内負荷が小さいため炉内温度が上昇せ
ず,特に本件の焼却炉は水冷壁であり,その表面や近傍は摂氏100ないし400
度(以下,温度については摂氏を省略する。)程度となり得る。300度付近はダ
イオキシン類の最も発生しやすい温度領域であるから,被告の計画通りに廃プラス
チック焼却炉を稼働した場合でも高濃度のダイオキシン類が発生する可能性が高
い。
イ 本件施設の維持管理について
仮に本件施設が技術的に一定の性能を有していたとしても,維持管理の方法が適切
でなければ,本件施設の稼働によりダイオキシン類を始めとする有害物質が多量に
排出され,原告らの生命及び健康等が害される危険性がある。以下の各事情によれ
ば,被告は本件施設を適切に維持管理することができないというべきである。
(ア) 廃棄物の分別について
a シュレッダーダストの分別について
被告は,本件仮処分事件において,被告が予定しているシュレッダーダストの減容
固化装置が収まらないようなスペースをその設置場所として主張したり,上記装置
の費用について,実際は2億円を超えるものであるのに,約4000万円程度であ
る旨答えるなど,いい加減な主張を繰り返していた。なお,被告は固化した後に廃
棄物として焼却する旨主張するが,シュレッダーダストの減容固化は最終処分場へ
廃棄する目的で行われるものである。
また,シュレッダーダストは,これに含まれる鉄分の酸化により異常な高温となり
発火する危険性が指摘されているため,その保管には安全上の配慮が必要であると
ころ,本件において被告はそのような配慮をしていない。
b 廃プラスチック類の分別,破砕について
被告は,廃プラスチック類の焼却の前に塩化ビニール類を取り除く旨主張するが,
塩化ビニール類の分別は,塩化ビニール類が多いと思われる廃棄物を作業者の経験
的な勘によって手作業で選り分ける以外に方法がないのが現状であり,塩化ビニー
ル類を完全に分別するのは不可能である。また,分別をするためには集積した廃棄
物を保管する広大な場所が必要となるが,被告はこれを確保していない。
なお,被告は破砕装置としてコマツの自走二輪剪断機「ガラパゴスBR200S」
(乙61号証)を導入する旨説明していたが,被告は同破砕装置の設置に必要な廃
棄物処理法15条1項に基づく許可を得ていないから,同装置を設置する旨の被告
の説明は,裁判対策のためだけの偽りのものである。
(イ) コンピュータによる自動制御について
塩化ビニール類の除去は人手によるしかなく,種類によって発熱量の異なる廃プラ
スチック類の焼却はその性質に合った燃焼管理を行うことが重要であり,その他,
計器の管理,廃棄物の混合の割合,最適な発熱量,投入量等のいずれについても,
経験及び研究心が必要な作業である。加えて,機械にトラブルはつきものであるか
ら,コンピュータによる自動制御の下においても人による管理は必要である。
被告は,本件仮処分事件の際に,運転者は計器類のチェックだけを行えば済むから
初心者でも十分対応できる旨主張していたが,運転マニュアル(乙43号証)に
は,「塩化ビニール類を始めとするプラスチック類は,塩化水素などの有害ガスが
処理能力以上に発生する危険があるため,特に細心の注意を払って取り除いてくだ
さい。」旨記載されているから,この分別が十分に行われなければマニュアルを守
った運転にはならない。その他,上記マニュアルに記載された運転に関する注意事
項,点検事項等はいずれも最終的には人の判断を必要とするものであるから,マニ
ュアルを守って運転することは,被告の主張するように容易なことではない。
なお,被告は,別施設の測定結果を用いて,本件施設がダイオキシン類等に関する
排出抑制基準に適合するものである旨主張するが,本件焼却炉と同型の焼却炉であ
っても廃棄物の質,運転条件,管理等によって測定結果は異なるから,上記の測定
結果によって被告が本件施設を稼働した場合の安全性まで裏付けられるものではな
い。
以上のとおり,いかにコンピュータによる自動制御であっても,人の手による調整
は不可欠であるところ,被告は,自動制御に過度の信頼を寄せているから,むし
ろ,本件施設は有害物質を制御できない危険なものということができる。
(ウ) バグフィルターについて
200度以下に冷却された燃焼ガス(燃焼室において発生するガス)には,燃焼過
程で発生したダイオキシン類及び冷却過程で再合成されたダイオキシン類が大量に
含まれ,ダストと共存している可能性が高いため,これを除去するために,バグフ
ィルターによる集じんが必要となる。
バグフィルターは,ろ布によりばいじんを捕集するものであるが,ろ布の耐熱性に
は限界があり,他方,燃焼ガスの温度が低温になり過ぎると,凝縮水が生成してバ
グフィルターに結露してしまうから,バグフィルターが有効に機能するためには,
燃焼ガスの温度を150度以上170度以下に保つ必要がある。未整理,不均一な
廃棄物を高温で燃焼させた場合にこのような微妙な燃焼ガスの温度調整が可能か疑
問であり,特に稼働開始時及び終了時においては,点火及び消火に伴う温度変化が
避けられず,燃焼ガスの温度が上記の範囲内に保たれない可能性が一層高い。ま
た,バグフィルターはろ布の目詰まりが避けられないため,その対策は不可欠であ
り,これを適切に行わなければ,結局,大気中に多量のダイオキシンが飛散するこ
とになり,バグフィル
ターの意味は全くない。
以上のとおり,バグフィルターには問題点もあり,そもそも気化したダイオキシン
類に対してはバグフィルターは効果がないから,これに依存することは危険であ
る。
(エ) 本件許可について
本件では申請とは異なる質の廃棄物が燃焼されるおそれがある。また,本件許可の
際に,被告が正常に運転できるか否かまでは審査されていない。したがって,本件
許可を得ていることが本件施設の安全性を裏付けることにはならない。
ウ 本件施設の事業主体について
仮に本件施設自体は一定の性能を有していたとしても,以下の各事情によれば,被
告は,本件施設を適切に運営し得る事業主体たり得ないから,被告が本件施設を建
設,運営した場合は,ダイオキシン類を始めとする有害物質が排出され,原告らの
生命及び健康を脅かす危険性が高いというべきである。
(ア) 被告は,産業廃棄物処理業の許可を取得していない。
(イ) 被告は,平成10年7月以降は全く事業活動を行っていない。被告の登記簿
上の本店所在地には被告の表示は一切なく,事業継続に必要な人的物的設備も支払
能力もない状態であるから,そもそも被告は実体がないというべきである。
(ウ) 被告を実質的に経営しているのは前代表者のBであるが,B及び被告は,組
織的暴力団と密接なつながりがあり,平成10年に摘発された岐阜県美濃市におけ
る有限会社鳶森組による産業廃棄物の不法投棄に深く関与していた経緯を持つか
ら,被告には産業廃棄物処理施設の建設運営主体としての適格性がない。
(エ) 被告は,採算がとれるような事業計画を立てていない。シュレッダーダスト
は,最終処分場での処分が可能であるため,これとの価格競争となり,年間250
日稼働するとしても年間の売上額は3000万円程度である。これに対し,本件焼
却炉の購入代金4億2100万円はその全額が債務となっており,加えて,本件予
定地の取得費用やガラパゴスなどの破砕装置の購入費用等を考慮すると,被告が主
張する稼働計画では資金回収は不可能であり,当初から違法操業を予定していると
考えざるを得ない。
エ 建設差止めの必要性
廃棄物の処理に伴いダイオキシン類が不可避的に発生するが,ダイオキシン類は,
極微量でも大変危険なものであり,いったん体内へ入ると代謝,排泄されにくく蓄
積されるため,ダイオキシン類の摂取は,取り返しのつかない健康被害に結びつ
く。焼却過程では,ばいじん,窒素酸化物,硫黄酸化物及び塩素ガス等の有害物
質,並びに,水銀,カドミウム,クロム及び銅等の重金属類が排出される。
仮に,本件施設自体が技術的に一定の性能を有していたとしても,被告において,
ダイオキシン類等の排出の危険性を伴う焼却行為を適切に行うことは不可能である
から,被告が本件施設を建設,運営することによりダイオキシン類を始めとする有
害物質が排出され,大気,土壌及び地下水が汚染されるおそれがある。
原告らは,本件予定地から半径500メートル以内に居住しているから,上記の大
気汚染によって健康に深刻な被害を受ける危険性がある。また,原告らの中には,
井戸水を飲料水として使用しているものもあるから,地下水汚染によって健康を害
する危険性もある。さらに,原告らの中には,本件予定地から半径500メートル
の範囲内に農地を所有して農業を営むものもいるが,有害物質の飛散,地下水への
浸透によって,農作物に重大な被害を受けるおそれがあるだけでなく,農作物を通
じて人体に深刻な被害を受けるおそれもある。ダイオキシン類等の有害物質によっ
て,いったん健康が害されれば,事後的な被害回復は不可能である。また,汚染さ
れた農地等を回復させるためには客土しかないが,これを行うには莫大な費用を要
する。
したがって,上記の被害が実際に発生する前に本件施設の建設を差し止める必要性
がある。
オ よって,原告らは,被告に対して,人格権(生命及び身体の安全)又は財産権
に基づいて,本件施設の建設差止めを求める権利を有する。
(3) 被告の主張
ア 本件施設の性能について
(ア) 本件施設は,平成9年12月1日施行の廃棄物処理法施行令(以下「平成9
年の施行令」という。)及び同施行規則(以下「平成9年の施行規則」という。)
により定められた産業廃棄物処理施設の構造に合致したものであり,また,法令に
定められたダイオキシン類等の有害物質の排出抑制基準に適合する設備である。そ
れゆえ,被告は本件許可を受けたのである。
本件施設における廃棄物の処理工程は,外気を遮断した状態で,定量供給装置によ
り廃棄物を連続的に燃焼室に供給し,ダイオキシン類の発生が抑えられる800度
以上の状態で燃焼させた上で,燃焼ガスを燃焼室に2秒以上滞留させて完全燃焼さ
せ,その後,ダイオキシン類の発生率を低下させるために200度以下に急激に冷
却し,また,排ガス中の有害物質を除去するために,高度のばいじん除去機能を有
する排ガス処理施設で処理し,ばいじん及び焼却灰が飛散又は流出しないように分
離して排出,貯留するという過程を経るものであり,平成9年の施行規則の定めに
従ったものとなっている。また,燃焼過程では,温度の低下に備えて自動助燃装
置,空気供給装置及び燃焼ガスの温度の連続的測定記録装置が設置されている。
(イ) 被告は,共栄工業株式会社及び株式会社木暮製作所に対し,平成9年の施行
規則に定める基準に適合した処理過程に沿って,本件焼却炉の製作を発注している
から,本件施設は,上記基準に適合したものとなっている。これは,両社の過去の
実績や,本件焼却炉が行政上の認可を受けかつ同種のものが現に安全に稼働してい
ることからも十分に担保されている。
イ 本件施設の維持管理について
(ア) 本件施設は,選別機及び人手による分別以後は,コンピュータにより自動制
御され運用される。すなわち,焼却炉への廃棄物の投入はコンピュータにより定量
ずつ行われ,焼却炉内等における温度管理についても,温度センサーにより常時計
測され,温度が低い場合にはバーナーの燃焼により温度を上げ,高い場合には投入
量の制御や冷却設備の能力を高めて温度を下げるシステムとなっている。このよう
に,本件施設は,廃棄物の投入から排ガスの排出まですべてコンピュータによって
自動制御されているので,運用如何により本件施設が本来的に有する安全性を損な
う余地はなく,また,手作業で塩化ビニール類の分別除去を行うため,排出抑制基
準を超えるダイオキシン類が発生する可能性はない。
なお,被告は,コンピュータによる自動制御であるから人は何もしなくてよいと主
張しているのではなく,自動制御であるから,法令に定められた排出抑制基準を超
えるダイオキシン類が発生する可能性はないと主張しているものである。実際,本
件焼却炉とメーカーを同じくする焼却炉において,排出抑制基準を超えるダイオキ
シン類等の排出がないことは,本件焼却炉がメーカーの設計通りに稼働している証
左である。
(イ) バグフィルターについて
厚生省及び学者は,ダイオキシン類対策としてバグフィルターが望ましいとの見解
を示し,各自治体もこれを増設している。そうすると,バグフィルターは,完全無
欠なものではないとしても,現時点の技術水準からすればダイオキシン類の排出を
防止するための最善の方法というべきである。
ウ 本件施設の事業主体について
Bは,被告の経営から一切身を引いており,本件施設の設置事業には関与していな
い。Bが産業廃棄物の組織的な違法操業に深く関与した事実はなく,Bの過去の経
歴と,本件におけるダイオキシン類の発生の可能性とは無関係である。また,被告
は,組織的暴力団とは一切関係がない。
被告は現時点では経済的信用を有していないが,これは,本件仮処分命令により事
業遂行の目途が立たなくなったためである。しかし,被告は,本件施設の設置につ
いて行政上の許可を得ているから,本件訴訟が被告の勝訴に終われば,事業を再開
して具体的な計画を立て,それに伴い資金の融資を受けることも可能となり,本件
施設を健全かつ安全に設置及び運営することができる。被告は,事業を再開した時
点で,必要な機械等を準備する予定であるから,現段階で事業が中止状態であった
としても,本件施設を建設してこれを運営する能力がないものということはできな
い。
エ 建設差止めの必要性について
(ア) ダイオキシン類が有害なものであること,したがって,これに対する安全対
策には十分すぎるほどの配慮が必要であることは認める。しかし,原告ら自身も廃
棄物を生み出す現代消費文明の利益を享受しているのであるから,国が策定した安
全基準に従って廃棄物の処理を行うことを甘受すべきであり,これを拒否する原告
らの主張は,自己が公平に負担しなければならない責務を拒否し,自己の利益のみ
を追求するものである。
被告が本件施設を建設して廃棄物の処理を行った場合に,法令の定める排出抑制基
準を超えてダイオキシン類等の有害物質を排出する蓋然性はないから,原告らに本
件施設の建設差止めを求める権利はない。
(イ) 仮に本件施設から法令に定める排出抑制基準を超える有害物質が排出された
としても,住民の記録の閲覧(廃棄物処理法15条の2の3,8条の4),行政に
よる年に1回の排出物の検査及び廃棄物処理法に基づく立入検査等の事後的な手続
きにより,直ちにこれを発見し,施設の一時使用停止,許可の取消し等の処分によ
って,本件施設の稼働を中止させることができるから,安全性は十分担保されてい
る。
第3 争点に対する判断
1 前記前提となる事実,甲1,2号証,4号証の2ないし4,甲5,6号証,1
1号証の1,8,9,11,13,14,16,20,21,26,29,34,
35及び37,13号証の6,甲30,37,38,42号証,77ないし80号
証,102,105号証,107号証の1ないし3,甲122,123号証,乙1
ないし7号証,9号証の2ないし10,26,52,63,71,73,78,8
5号証並びに弁論の全趣旨によれば以下のとおり認めることができる。
(1) 原告ら
ア 原告らはいずれも,別紙原告居住地等一覧表のとおり,本件予定地から500
メートル以内に居住するものである。
イ 原告A1,同A2,同A3,同A5,同A6,同A8,同A10,同A12及び同
A13は,いずれも別紙原告居住地等一覧表のとおり,本件予定地から半径500メ
ートルの範囲内にある農地において,水稲,れんこん等の生産に従事する専業農家
である。
ウ 原告A7,同A14,同A15及び同A16は,いずれも会社員であるが,別紙原告
居住地等一覧表のとおり,本件予定地から半径500メートルの範囲内にある農地
において,自らも水稲,れんこん等の生産に従事する兼業農家である。
原告A17は,同A16の母であり,兼業農家であるが,自らは専ら農作業に従事して
いる。
原告A11は会社員であるが,別紙原告居住地等一覧表のとおり,本件予定地から半
径500メートルの範囲内に農地を有し,作業委託により水稲,れんこん等の生産
を行う兼業農家である。
エ 原告A4は,本件予定地から約100メートルの位置に居住し,同地において
建築板金業を自営するものである。
オ 原告A9は,本件予定地から約300メートルの位置に居住し,年金により生
活しているものである。
(2) 本件許可に至る経緯
ア 平成8年夏ころ,原告A2,同A6,同A10,同A17ら本件予定地の周辺30
メートル以内の地権者は,C又はその関係者らから本件施設の建設について,「最
新の施設であり,被害など出さない。」などと説明を受けて同意を求められたた
め,同年9月10日,Cに対し,本件施設の建設計画に関する同意書を提出した。
Cは,平成9年3月13日に愛知県知事から廃棄物処理法15条1項に基づく本件
予定地を設置場所とする産業廃棄物処理施設の設置許可を受け,同年6月24日
に,都市計画法43条1項に基づく建築許可及び建築基準法51条ただし書に基づ
く特殊建築物の敷地の位置に関する許可を受けたが,その後,上記許可に係る事業
については,C個人ではなく法人である被告が行うこととなった。
イ 平成9年7月ころに,上記の各許可が下りた事実を知ったa村の住民らは,同
年8月,「a村の環境を考える会」を発足させ,ダイオキシン類に関する講演会,
環境を考えるシンポジウム,廃プラスチック焼却施設の見学会等を開催したり,本
件施設の建設中止を求める署名活動を行うなどした。本件施設の建設計画について
前記同意書を提出した地権者らは,愛知県知事に対し,同意書の撤回等の申立てを
行い,また,原告A1らは愛知県知事及びa村村長に対し,産業廃棄物処理施設建
設中止の要望書を提出した。
同年11月22日及び同年12月13日の各日に,本件施設の建設に関する被告の
説明会が行われたが,同年11月22日の説明会では被告の代表者であるCが出席
せず,同年12月13日の説明会ではBが「被害が出れば私が責任を持つ。」など
と言うのみで,参加した住民らの納得のいく説明がされなかったため,住民らの間
に被告に対する不信感が強まり,本件施設の建設に反対する声がますます強くなっ
た。
ウ 平成10年1月7日,被告は,愛知県知事に対し,改めて廃棄物処理法15条
1項に基づく本件施設の設置許可を申請し,同月12日,本件許可を受けた。ま
た,同年3月30日,都市計画法43条1項及び建築基準法51条ただし書に基づ
く上記各許可について,申請者名及び処理能力の変更に関する承認を受けた。
(3) 平成10年2月7日,有限会社鳶森組が岐阜県美濃市の山中に許可の範囲を超
えて産業廃棄物を大量に野積みして放置した廃棄物処理法違反事件(岐阜地方裁判
所平成10年(わ)第56号。以下「鳶森組の不法投棄事件」という。)に,指定暴
力団下部組織の元幹部が実質的に経営する産業廃棄物処理業者が関与していた旨が
新聞で報道されるとともに,その業者が被告であることも示唆されていた。そこ
で,Bは,被告の役員に暴力団関係者の名前があるのは不都合と考え,同月19
日,Dとの間で,成和の発行済み株式のうちBの有する120株をすべてDに譲渡
すること,B,E及びFが被告の取締役を,Bの妻であるGが被告の監査役をそれ
ぞれ辞任することなどを内容とする株式譲渡契約を締結した。
(4) 平成10年2月20日,被告は,中央物産株式会社(以下「中央物産」とい
う。)との間で,本件焼却炉を合計4億2100万円(税抜)で買い受ける旨の売
買契約を締結した。平成10年5月20日,被告は,有限会社深貝電気エンジニア
リング(以下「深貝電気エンジニアリング」という。)との間で,本件施設の新築
工事請負契約を締結し,同年6月5日,建築確認を得て本件施設の建設に着工し
た。
(5) ダイオキシン類について
ア ダイオキシン類の特性
ダイオキシン類とは,一般に75種類の異性体を持つポリ塩化ジベンゾパラジオキ
シン(PCDD)及び135種類の異性体を持つポリ塩化ジベンゾフラン(PCD
F)の総称であり,これにコプラナーポリ塩化ビフェニルを含める場合もある。ダ
イオキシン類は,無色無臭の固体で水にはほとんど溶けないが,有機溶媒には比較
的溶けやすく,また,他の化学物質,酸及びアルカリとは容易に反応しない安定し
た性質を有している。ダイオキシン類は,炭素,酸素,水素,塩素が熱せられるよ
うな工程で意図せず生成されるものであり,日本におけるダイオキシン類の総排出
量の8ないし9割が廃棄物の焼却過程で排出されているといわれている。廃棄物の
焼却炉におけるダイオキシン類の発生は,燃焼温度,燃焼室での燃焼ガスの滞留時
間,集じん器入口に
おける燃焼ガスの温度,煙突出口における排ガス中の一酸化炭素濃度等と関係があ
り,ダイオキシン類の発生を抑制するには,廃棄物の均質化を図り,廃棄物供給装
置の定量性を向上させることなどにより,炉内の熱負荷を一定に保ち安定した燃焼
を継続することが有効であるといわれている。
イ ダイオキシン類の危険性
ダイオキシン類の毒性の強さは種類によって異なるが,ダイオキシン類の中で最も
毒性の強い2.3.7.8-TCDDは,人工物質の中では最も毒性が強く,サリ
ンの2倍,青酸カリの1000ないし1万倍の毒性を有するといわれており,この
毒性を1として他のダイオキシン類の毒性の強さが換算されている。
焼却炉などから大気中に排出されたダイオキシン類は,大気中の粒子と結合して落
下し,土壌や川などを汚染し,さらに,食物連鎖により,プランクトンや魚に取り
込まれて生物内にも蓄積される。我が国における一般的な生活環境の下で人体に取
り込まれるダイオキシン類の量は,1日に体重1キログラム当たり0.52ピコグ
ラム(ピコグラムは1兆分の1グラム)から3.53ピコグラムと推定されてお
り,通常,その多くは,魚,肉,乳製品,卵などの食物からの取り込みであるが,
呼吸による空気からの取り込み,手についた土からの取り込み,飲み水からの取り
込みもある。ダイオキシン類がひとたび体に入ると,その大部分は脂肪に蓄積され
体内にとどまる。体外にダイオキシン類が排出される速度は非常に遅く,取り込ん
だダイオキシン類の半
量が体外に排出されるのに約7年を要するといわれている。
ダイオキシン類は,人の遺伝子に作用し,発がん,流産,胎児の奇形の原因となっ
たり,いわゆる環境ホルモン(体内のホルモンと似た働きをする内分泌かく乱物
質)として作用し,甲状腺機能の低下,精子数の減少,免疫機能の低下などの原因
となることが指摘されている。また,母乳からダイオキシン類が検出されることも
報告されている。平成9年2月,世界保健機構(WHO)は,ダイオキシン類が人
に対して発がん性を有するものであることを正式に規定した。
ウ ダイオキシン類に対する国の対策
厚生省は,平成7年11月ころからダイオキシン類の人体に対する毒性評価を検討
し始め,平成8年6月には,ダイオキシン類の当面の耐容1日摂取量(一生摂取し
続けても健康に影響のない量。TDI)を体重1キログラム当たり10ピコグラム
とすることを提案し,平成9年1月には,「ごみ処理に係るダイオキシン類発生防
止等ガイドライン」(新ガイドライン)をまとめた。また,環境庁は,平成8年5
月ころからダイオキシン類に関する検討を開始して,平成9年5月には,1日に摂
取するダイオキシン類の健康リスク評価指針値を体重1キログラム当たり5ピコグ
ラムと設定し,大気汚染防止法施行令の改正(平成9年8月29日公布,同年12
月1日施行)により,ダイオキシン類を規制対象物質に指定するとともに,一定規
模以上の廃棄物の焼
却炉等につきダイオキシン類の排出抑制基準(以下「ダイオキシン類の排出抑制基
準」という。)を定めた。本件焼却炉のように処理能力が1時間当たり200キロ
グラム以上2トン未満の焼却炉の場合のダイオキシン類の排出抑制基準は,新設炉
についてはダイオキシン類濃度1立方メートル当たり5ナノグラム(ナノグラムは
10億分の1グラム),既設炉については,平成10年12月1日から平成14年
11月30日までは1立方メートル当たり80ナノグラム,同年12月1日からは
同10ナノグラムとされている。上記大気汚染防止法施行令の改正に合わせ,厚生
省は平成9年に廃棄物処理法施行令及び同施行規則の一部改正を行い,許可の対象
となる産業廃棄物処理施設の規制範囲を拡大するとともに,同施設の構造及び維持
管理の各基準の強化
を行った。平成11年2月にダイオキシン対策関係閣僚会議が設置され,同年3月
「ダイオキシン対策推進基本方針」が策定され,耐容一日摂取量の見直しを始めと
する各種基準作りなど,排出抑制対策推進の方針が打ち出され,同年6月,環境庁
と厚生省の合同会議で,耐容一日摂取量を4ピコグラムに強化することなどが決定
された。そして,同年7月,ダイオキシン類による環境汚染の防止及びその除去等
を目的として,ダイオキシン類対策特別措置法が制定,公布された。
2 争点に対する判断
(1) 廃棄物処理法による規制強化について
廃棄物処理法は,廃棄物の排出抑制及び適正処理並びに生活環境を清潔にすること
により,生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的とするものであり
(同法1条),同法15条1項は,産業廃棄物処理施設を設置しようとする者は,
都道府県知事の許可を受けなければならない旨規定する。これは,産業廃棄物処理
施設の構造上の安全性及び維持管理の確実性等が確保されていなければ,産業廃棄
物が安定化,無害化されず,施設そのものが生活環境の保全に支障を生じさせるお
それもあることから,一定の産業廃棄物処理施設の設置を一般的に禁止した上で一
定の要件を具備するものと認められる場合に限って許可をすることにより,産業廃
棄物の適正な処理を確保し,生活環境の保全を図ることを目的とするものであり,
平成3年の同法の改正
において上記許可制が採用され,許可要件及び許可手続が定められた。
しかし,その後も,廃棄物を適正に処理するために必要な施設の整備が進まず,悪
質な不法投棄等の不適正処分が増大するなどの状況が続き,また,前示のとおり,
ダイオキシン類の排出が社会問題となって,その毒性評価,排出抑制対策等に関す
る検討が様々に進められ,加えて,平成9年2月には世界保健機構においてダイオ
キシン類が人に対して発がん性を有するものである旨正式に規定されたことから,
廃棄物について適正な処理体制を整備して不適正な処分を防止し,廃棄物の焼却に
伴うダイオキシン類等の排出を削減するために,平成9年の施行令及び同施行規則
により,許可対象施設に適用される施設の構造及び維持管理に関する各基準を改正
するなど,廃棄物の焼却に関する規制が強化された(乙63号証)。さらに,産業
廃棄物処理施設の設
置者の技術的能力や経理的基礎が不十分なことから不適正な処分等が行われること
を防止するため,平成12年の同法の改正により,申請者の能力に関する許可要件
が追加された(甲101号証の1及び2)。
(2) 本件施設の性能について
被告は,本件施設は,平成9年の施行令及び同施行規則に定められた産業廃棄物処
理施設の技術上の基準に適合するものであり,これは,本件許可を受けていること
及び本件焼却炉と同型の焼却炉が現に安全に稼働していることからも十分裏付けら
れる旨主張する。
ア 平成9年の施行規則12条の2第5項1号,同4条1項7号は,廃プラスチッ
ク類の焼却施設で1日あたりの処理能力が100キログラムを超える本件施設と同
等の施設に関する技術上の基準として,外気と遮断された状態で定量ずつ連続的に
ごみを燃焼室に投入できる供給装置が設けられていること,燃焼ガスの温度が80
0度以上の状態でごみを焼却することができるものであること,燃焼ガスが800
度以上の温度を保ちつつ2秒以上滞留できるものであること,燃焼ガスの温度を速
やかに800度以上にし,及びこれを保つために必要な助燃装置が設けられている
こと,集じん器に流入する燃焼ガスの温度をおおむね200度以下に冷却できる冷
却設備が設けられていること,燃焼室中の燃焼ガスの温度及び集じん器に流入する
燃焼ガスの温度を連
続的に測定,記録するための装置が設けられていること,煙突から排出される排ガ
ス中の一酸化炭素濃度を連続的に測定,記録するための装置が設けられていること
などを定めている。
イ 本件焼却炉の構造及び性能
(ア) 甲86号証,乙28ないし32,86号証によれば,シュレッダーダスト焼
却炉の処理過程は,別紙処理工程図1のとおりであり,コンピュータによる自動制
御の下,シュレッダーダストを定量ずつ一次燃焼室(回転炉)に投入した後,燃焼
ガスの温度が800度以上になるように温度センサー及びバーナーによって管理し
ながら燃焼させ,一次燃焼室及び二次燃焼室において合計2秒以上滞留させた燃焼
ガスを,熱交換器及び冷却器に通して200度以下になるように間接冷却し,その
後,バグフィルターに通して燃焼ガス中のばいじんを除去した上で排ガスとして排
気筒から排出するよう設計されており,燃焼過程及び冷却過程においては温度セン
サーによって燃焼ガスの温度が測定及び記録され,また,排気筒では排ガス中の一
酸化炭素濃度が測定
及び記録される仕組みとなっていることが認められる。
また,甲86号証,乙41,42,44,87号証によれば,廃プラスチック焼却
炉の処理過程は,別紙処理工程図2のとおりであり,外気との接触を断った状態で
自動投入装置により廃プラスチックを定量ずつ燃焼室に投入し,燃焼用送風機及び
炉内温度センサーによって空気量及び助燃バーナーの作動状況を調整しつつ常時8
00度以上を保つよう制御して燃焼させ,その後,燃焼ガスを熱交換器に通して2
00度以下になるように間接冷却し,バグフィルターによって燃焼ガス中のばいじ
んを除去した上で排ガスを煙突から排出するよう設計されており,燃焼過程及び冷
却過程では燃焼ガスの温度が,排出過程では排ガス中の一酸化炭素濃度がそれぞれ
測定及び記録される仕組みとなっていることが認められる。
以上によれば,本件施設は,平成9年の施行規則に定める技術上の基準にほぼ適合
する構造を備えているものとも考え得る。
(イ) しかし,甲106号証の1,128号証及び証人Hの証言によれば,本件焼
却炉は,いずれも以下のとおりの問題点があることが認められる。
a シュレッダーダスト焼却炉について
シュレッダーダスト焼却炉の設計計算書(乙29号証)では,同焼却炉の処理量を
1時間当たり357キログラムと算出しており,被告はこれを焼却能力として届け
出ている。しかし,上記処理量は,一般的には1立方メートルにつき1時間当たり
25万キロカロリーとされている炉内負荷を,8万キロカロリーとして算出したも
のであり,加えて,処理量の算出には一次燃焼室と二次燃焼室とを併せた全体とし
ての焼却能力を考慮すべきところ,一次燃焼室の容積(20.1立方メートル)の
みを考慮し,二次燃焼室の容積(8立方メートル)を考慮していないから,実際に
は上記処理量の4倍程度の焼却能力があるものと解される。したがって,届出量の
みを焼却した場合には,炉内温度が800度以上になるのに時間を要し,不完全燃
焼を起こして一酸化
炭素が増加したり,ダイオキシン類の生成原因となる前駆物質が生成する可能性が
あり,特にシュレッダーダストにはダイオキシン類生成の触媒となる銅が含まれて
いるため,より高濃度のダイオキシン類が発生する可能性がある。
また,燃焼ガスの冷却については,間接冷却方式であり,燃焼ガスの急激な温度変
化に対応できないため,燃焼ガスの温度を適切に制御することが困難となる。甲1
28号証及び証人Hの証言によれば,バグフィルターは,高温のガスを通した場合
にはろ布が破損し,他方,低温のガスを通した場合には水蒸気が凝結してろ布の目
詰まりが起きることから,廃棄物の焼却炉では,160度以上200度以下の範囲
を超える温度のガスは,バグフィルターを通らずに直接外部へ排出されるよう設計
されていることが認められる。そうすると,特に,本件のように届出量のシュレッ
ダーダストを焼却して燃焼ガスの温度が低下し過ぎたり,逆に届出量の数倍の量を
焼却して燃焼ガスの温度が上昇したりすることが懸念されるような場合には,燃焼
ガスの温度を上記の
適切な範囲内に制御することができず,その結果,ダイオキシン類を含んだ燃焼ガ
スがバグフィルターを通らずにそのまま外部に排出される可能性が高い。加えて,
ダイオキシン類の再合成を防ぐには燃焼ガスを急速に200度以下に下げる必要が
あるところ,本件では,熱交換器及び冷却器の2つの冷却設備が置かれ,いずれも
間接冷却方式であることに加え,その中間にサイクロン集じん器が設置されている
ため,冷却に時間を要し,ダイオキシン類の再合成を防ぎ得ない可能性が高い。
さらに,シュレッダーダストを焼却すると,これに混入しているガラス粉末と炉内
の耐火材のシリカとが反応するため,炉壁に溶融物(クリンカ)が生成して内径が
縮小する。その結果,炉内温度が上昇して燃焼が促進されるため,空気が不足して
不完全燃焼が起こり,黒煙やダイオキシン類が発生する可能性が高くなる。
b 廃プラスチック焼却炉について
廃プラスチック焼却炉の設計計算書(乙42号証)では,同焼却炉の焼却量を1時
間当たり395キログラムと算出しており,被告はこれを焼却能力として届け出て
いる。しかし,廃プラスチック焼却炉は,一次燃焼室が水冷壁であって通常より炉
内負荷が大きくなり得るにもかかわらず,一般的な炉内負荷の数値の2分の1にす
ぎない1立方メートルにつき1時間当たり12万5000キロカロリーを炉内負荷
とし,さらに,二次燃焼室の容積(34.56立方メートル)が一次燃焼室の容積
(22.14立方メートル)よりも大きいにもかかわらず,二次燃焼室の容積を考
慮せずに焼却量を算出しているから,実際には上記焼却量の2ないし6倍程度の焼
却能力があるものと解される。したがって,届出量のみの焼却では,炉内の温度が
上昇せず,補助バー
ナーの稼働が必要となって多大な費用を要することになる。
また,燃焼ガスの冷却については,間接冷却方式であるため,燃焼ガスの急激な温
度変化に対する制御が困難であり,加えて,廃プラスチック焼却炉の冷却設備に
は,届出量に対応する冷却能力以上の能力があるため,届出量のみの焼却では冷却
し過ぎとなり,燃焼ガスの温度を適切な範囲内に制御することができず,その結
果,燃焼ガスがバグフィルターを通らずに直接外部に放出される可能性が高い。
c したがって,本件焼却炉は,いずれも実際に稼働させた場合には,各設計計算
書に従った処理量(届出量)を焼却したとしても,燃焼室での燃焼ガスの温度を8
00度以上に保つことができない可能性,燃焼ガスを200度以下に冷却できない
可能性,又はバグフィルターによってばいじんを除去することができない可能性な
どがあるものと認められる。
ウ また,乙37号証の1及び2,38号証の2,39号証,48ないし50号
証,84号証によれば,本件焼却炉と同型の焼却炉を使用する産業廃棄物処理施設
では,ダイオキシン類の排出抑制基準に適合する測定結果を得ていることが認めら
れる。しかし,甲105号証及びIの供述によれば,上記測定結果のうち,シュレ
ッダーダスト焼却炉と同型の焼却炉における測定結果(乙37号証の1及び2,3
8号証の2,39号証)は,いずれもシュレッダーダストを焼却した場合の測定結
果ではなく,また,廃プラスチック焼却炉と同型の焼却炉における測定結果(乙4
8ないし50号証)には,廃プラスチック類のみを焼却した場合の測定結果は含ま
れておらず,廃プラスチック類を木くず及び廃油と混合して焼却したところ,ダイ
オキシン類濃度が4倍
程度上昇した例もあったことが認められる。
本件施設はシュレッダーダスト及び廃プラスチック類のみを焼却することを予定し
たものであるから,上記測定結果から直ちに,本件施設がダイオキシン類の排出抑
制基準に適合する性能を有するものであるとは断定できないというべきである。
エ 以上によれば,本件施設は,平成9年の施行規則に定める技術上の基準に従っ
て設計されたものであったとしても,これを実際に稼働した場合には,本件焼却炉
の各設計計算書に従った処理量を焼却した場合でも,上記技術上の基準に適合しな
い結果を生ずる可能性があるものと認められるから,本件許可を得たこと及び他の
施設において本件焼却炉と同型の焼却炉が問題なく稼働していることから直ちに,
本件施設が上記技術上の基準に適合する性能を有するものとは認めることができ
ず,被告の前記主張は採用できない。
(3) 本件施設の維持管理について
ア 廃棄物処理法15条の2の2は,産業廃棄物処理施設の設置者は同施行規則で
定める維持管理の技術上の基準等に従って,当該施設の維持管理をしなければなら
ない旨定めている。平成9年の施行規則12条の6,同12条の7第5項及び同4
条の5第1項2号は,本件施設と同等の施設における維持管理の技術上の基準とし
て,廃棄物の種類及び量が当該施設の処理能力に見合った適正なものとなるよう受
入れの際に性状の分析又は計量を行うこと,当該施設の処理能力を超えないように
廃棄物を投入すること,燃焼室中の燃焼ガスの温度を800度以上に保つこと,運
転開始時には炉温を速やかに上昇させること,集じん器に流入する燃焼ガスの温度
を200度以下に冷却すること,煙突から排出される排ガス中のダイオキシン類濃
度が燃焼室の処理能
力に応じて定める基準(1時間当たりの処理能力が2トン未満の場合は1立方メー
トル当たり5ナノグラム)以下になるようにすることなどを定めている。
イ 廃棄物の分別について
(ア) ダイオキシン類は,焼却炉における廃棄物の不完全燃焼に伴う未燃有機物が
比較的低い温度域で塩化銅などの触媒作用によって生成されるもの(乙74号証)
であり,燃焼状態の善し悪しと密接な関係があるため,ダイオキシン類の発生を抑
制するには完全燃焼を継続して達成することが必要であり,そのためには,投入す
る廃棄物の量及び質の均一化が重要である旨指摘されている(乙26,78号
証)。この点,被告は,廃プラスチック類は,本件施設内の分別ヤードにため,機
械(トロンメル)により分別をした後,4,5人の分別作業員が手作業で再度分別
する,シュレッダーダストも廃プラスチック類と同様に分別し,有価物を取り除
き,RDF装置により再利用できるものと安定型最終処分場で処分すべきものとを
分別する旨主張する。また
,甲64,84,86号証によれば,被告は,本件仮処分事件の際には,本件施設
内に設けた分別作業所(甲82号証)において自動分別機で分別し,分別もれのあ
ったものは可能な限り4,5人の分別作業員によって仕分け作業を行う,シュレッ
ダーダストについては,日本自動車工業会が開発した画期的なシステムによる最新
式の分別機を用いて,プラスチック,ウレタン,ゴム,木くず,紙くず,土砂,ガ
ラス及び金属類に分別し,このうちプラスチックのみを焼却し,金属類はリサイク
ル原料として売却し,ゴムくず,木くず等は廃プラスチック類と混合破砕してRD
F装置により固形化して燃料として再利用する計画である旨述べていたことが認め
られる。
(イ) 乙55号証及び弁論の全趣旨によれば,被告が廃プラスチック類の分別機と
して主張する機械は,株式会社小熊鉄工所製の選別装置トロンメルであると推認さ
れるところ,これを設置するには少なくとも17メートル×30メートルの場所が
必要になるものと解される。しかし,甲82,84号証によれば,本件仮処分事件
の際に被告が本件施設内に設ける予定であるとしていた分別作業所に上記機械を設
置することは不可能であると認められ,その他,上記機械の設置場所について被告
が具体的な計画を立てていることをうかがわせる事情は認められないから,上記機
械を本件施設内に現実に設置し得るものとは認め難い。
また,シュレッダーダストの分別については,被告のいう上記の最新式の分別機
は,甲64,85,86号証によれば,社団法人日本自動車工業会が研究開発に取
り組むシュレッダーダスト減容固化実証実験装置(甲85号証)を指しているもの
と推認されるが,甲72,85号証によれば,上記装置は,研究開発の段階にあ
り,実用化にまで至っていないものと認められ,その後に同様の分別装置が開発さ
れて実用化に至ったことを認め得る証拠もない。なお,被告は,シュレッダーダス
トのうちのゴムくず,木くず等は廃プラスチック類と混合破砕してRDF装置によ
り固形化し,燃料として再利用する旨主張するが,被告がこれを具体的にどのよう
に実施するかは不明であるから,実現可能性のあるものとは認め難い。
さらに,塩化ビニール類を燃やすとダイオキシン類生成の原因物質ともなる塩化水
素が発生する(甲108号証)ため,焼却する廃棄物の中には塩化ビニール類が含
まれていないことが望ましく,廃プラスチック焼却炉の運転マニュアル(乙43号
証)にも,塩化ビニール類を始めとしたプラスチック類については,塩化水素など
の有害ガスが処理能力以上に発生する危険があるため,特に細心の注意を払って取
り除く必要がある旨記載されているところ,被告は,手作業で塩化ビニール類の分
別除去を行うため,規制値以上のダイオキシン類が発生する可能性はない旨主張す
る。しかし,甲43号証及び証人Hの証言によれば,廃プラスチック類から塩化ビ
ニール類を完全に分別することは困難であり,外見上塩化ビニール類であることが
明らかなものを手作
業で分別しているのが現状であると認められ,塩化ビニール類の分別作業は経験等
を要する困難な作業と解される。この点,被告は,分別作業員として4,5人を配
置する旨主張するにとどまり,具体的な分別除去の方法,塩化ビニール類の分別を
適切に行い得る作業員の確保,分別しきれない塩化ビニール類の処理方法等につい
て具体的に検討しているものとは認め難いから,被告が実際に塩化ビニール類を適
切に分別し得るものとも,分別漏れの塩化ビニール類を適切に処理し得るものとも
認めることはできない。
(ウ) 以上の各事情を総合すると,被告の主張するシュレッダーダスト及び廃プラ
スチック類の各分別除去方法は,いずれも被告において実現可能性のあるものとは
認め難く,したがって,完全燃焼を継続して達成するため,シュレッダーダスト及
び廃プラスチック類の分別を被告が適切に行い得るものとは認められないというべ
きである。
ウ コンピュータによる自動制御について
被告は,本件施設では,ごみの分別後の工程はすべてコンピュータによって自動制
御されているので,被告の運用によって本件施設の安全性が損なわれる余地はない
旨主張し,また,甲64,65号証によれば,本件仮処分事件の際も,被告は一貫
して本件施設はコンピュータによる自動制御であるから,運転の際に従うべきマニ
ュアルは誰でも遵守できる簡単なものである旨主張していたことが認められる。
しかし,前示のとおり,本件施設は,その性能自体に問題がないとはいえず,実際
の稼働状況によっては,燃焼室内の燃焼ガスの温度を800度以上に保てない可能
性,燃焼ガスの温度を200度以下に冷却できない可能性などがあるものと解され
る。
被告が提出する「排出ガス保証書」(中央物産作成のもの。乙53号証)には,廃
プラスチック焼却炉及びシュレッダーダスト焼却炉の排ガス中のダイオキシン類濃
度,一酸化炭素濃度などがいずれも基準値以下である旨記載されているが,上記保
証書には,これとともに,「以上の保証値は維持管理基準及び運転マニュアル通り
に正常運転した場合に限ります。」とも明記されている。廃プラスチック焼却炉の
運転マニュアル(乙43号証)には,焼却物の投入に関しては,分別は十分に行
い,特に塩化ビニール類を始めとするプラスチック類などは細心の注意を払って取
り除くことなどの注意事項が,運転に関しては,炉内の温度及び煙の発生状況に応
じて投入を時々変化させ,運転中は,冷却水の水位,ポンプ,送風機及びバグフィ
ルターの各作動状況,
炉内温度並びに排ガスの状況等を常に点検しながら作業を行うことなどの注意事項
が記載されている。また,ダイオキシン類の発生を抑えるためには,焼却炉を運転
管理するオペレーターの教育も重要な課題であるとの指摘もされており,実際,廃
棄物の焼却炉に使用する運転訓練用シュミレーターを企業が開発し,自治体に納め
ている例も報告されている(甲74号証)。
そして,甲105号証,乙84号証及びIの供述によると,(ア)廃プラスチック焼
却炉と同型の焼却炉を実際に使用して,廃プラスチック,木くず及び廃油を焼却し
ている株式会社二瓶商店の担当者は,自動投入の場合は,事前の廃棄物の分別及び
破砕が重要であり,様々な種類及び大きさの廃棄物を扱う場合は自動投入では効率
的に焼却できないため,投入する廃棄物の種類,量及び順序を経験に基づき調整し
て焼却する必要がある旨述べていること,(イ)シュレッダーダスト焼却炉と同型の
焼却炉を使用している株式会社コーシンサービスの担当者は,炉内の温度が上がる
と自動制御装置が作動して燃え尽きるまでごみの投入が自動的に止まってしまうた
め,メーカーが言うようにはうまく燃やせない旨述べていること,(ウ)また,株式
会社東光では,シュレ
ッダーダスト焼却炉と同型の焼却炉で実際にシュレッダーダストを焼却したとこ
ろ,炉の内側にクリンカが生成し,廃棄物の投入が阻害されてその除去作業に多大
な手間を要したため,クリンカの生成を抑えつつ800度以上で焼却することを試
みたものの実現できず,シュレッダーダストの焼却をやめたことが認められる。
さらに,証人Hの証言によれば,日常生活から排出されるごみのように燃焼温度等
の条件が一定のものを燃やす場合はコンピュータによる自動制御装置がうまく作動
するが,産業廃棄物の場合は,上記の条件が一定していないため,制御範囲を超え
る場合が多いものと認められる。
以上によれば,本件施設がコンピュータによって自動制御されていても,廃棄物の
事前の分別,投入,焼却炉運転中の点検等,焼却炉の運転担当者が自らの判断で対
応しなければならない部分も少なくなく,廃棄物の分別状況,焼却される廃棄物の
内容,焼却状況等によっては,コンピュータによる自動制御の範囲を超える場合が
少なくないものと解されるから,本件施設を適切に稼働するためにはこれを運転す
る者が十分な知識及び経験を有している必要があるものと認めるのが相当である。
したがって,運用如何で本件施設の安全性が損なわれることはない旨の被告の前記
主張は採用できない。そして,前示のとおり,被告は,本件仮処分事件から一貫し
て,本件施設の安全性はコンピュータによる自動制御によって担保されている旨主
張するのみであり,
自動制御の範囲を超えた場合の対応について被告が具体的に検討していることをう
かがわせる事情は認められないから,自動制御の範囲を超えた場合に被告が適切に
対応し得るものとは考え難いというべきである。
エ また,被告は,燃焼ガスを200度以下に冷却した後,バグフィルターを用い
てダイオキシン類を除去する計画であり,甲64号証によれば,本件焼却炉のいず
れにおいても,バグフィルターでばいじんを除去する際に消石灰及び活性炭を噴霧
してダイオキシン類を95パーセント以上除去することを予定しているものと認め
られる。
しかし,前示のとおり,160度以上200度以下の範囲を超える温度のガスは,
バグフィルターを通らずに直接外部へ排出されるよう設計されているから,バグフ
ィルターによってダイオキシン類を除去するためには,燃焼ガスの温度を上記の適
正な範囲内に制御することが不可欠であると解される。また,バグフィルターを通
ってもダイオキシン類がすべて除去されるものではない以上,そもそもバグフィル
ターを通る燃焼ガス中のダイオキシン類濃度が高い場合は,結局,ダイオキシン類
の排出抑制基準を超える濃度のダイオキシン類が排出されることとなる(甲106
号証の1)。
前示のとおり,本件焼却炉はいずれも間接冷却方式であるために急激な燃焼ガスの
温度変化に対応できず,加えて,届出量の数倍の焼却能力があるために実際の処理
量によっては冷却能力を超える可能性もあるため,実際に稼働させた場合には,燃
焼ガスの温度が上記の適正な範囲内にコントロールされず,ダイオキシン類を含ん
だ燃焼ガスがバグフィルターを通らずにそのまま外部に排出される可能性がある。
また,シュレッダーダスト焼却炉においては,シュレッダーダストにダイオキシン
類生成の触媒となる銅が含まれているため,特に焼却過程で高濃度のダイオキシン
類が生成される可能性が高く,また,燃焼ガスの冷却に時間を要する構造となって
いることから,冷却過程でダイオキシン類が再合成される可能性も高い。加えて,
前示のとおり,コン
ピュータによる自動制御には限界があり,制御範囲を超えた場合に被告が適切に対
応し得るとは考え難いことを考慮すると,被告が本件施設を稼働した場合には,燃
焼ガスがバグフィルターを通らずに直接外部に排出される可能性が高く,バグフィ
ルターを通った場合でも燃焼ガス中のダイオキシン類濃度が高いために排出抑制基
準を超える濃度のダイオキシン類が排出される可能性があるというべきである。
オ 以上によれば,本件施設が平成9年の施行規則に定める技術上の基準に適合し
得る構造を備えていたとしても,被告が,同施行規則に定める維持管理の技術上の
基準に従って,本件施設を適切に維持管理し得るものとは認め難く,被告が本件施
設を実際に稼働した場合には,ダイオキシン類等の有害物質が排出抑制基準を超え
て外部に排出される蓋然性が高いものと認めるのが相当である。
(4) 事業主体について
ア 甲109,110号証及びIの供述によれば,被告の登記簿上の本店所在地に
は被告の事務所は存在していないものと認められる。また,平成14年10月2日
付けの被告の現在事項全部証明書(甲110号証)によれば,被告の役員は,D,
C,J,K及びLの5人であるところ,このうち,Jは平成11年6月2日に死亡
しており(甲125号証),Kは平成13年3月22日に被告に対して取締役辞任
の意思表示をしている(甲124号証の1,2)。そして,被告は,直近決算年度
までの貸借対照表等の書類について,平成13年6月4日,民事訴訟法220条4
号に基づく文書提出命令を受けたにもかかわらず,平成10年7月1日以降の上記
書類を提出しておらず,その他,本件証拠上,被告が企業としての活動を継続して
行っていることをう
かがわせる事情は認められない。この点,被告は,現段階で事業が中止状態であっ
ても,行政上の許可を得ている以上,今後,事業を再開し,具体的な計画を立てる
とともに資金の融資を受けて,本件施設を設置,運営することができる旨主張する
が,事業再開に向けた具体的な計画及び融資を受ける見込み等について全く明らか
にしていないから,被告の前記主張はにわかに採用できない。
以上の各事情を総合すると,被告は,経営活動を実際に行い得る独立した実体を有
するものとは認め難いというべきである。
なお,付言するに,被告は,平成14年7月18日の本件口頭弁論期日以降弁論終
結に至るまで出頭しなかったところ,この間には,証人Hの尋問が実施され,ま
た,職権による被告代表者尋問の実施が予定されていたのであるから,上記のよう
な本件訴訟の遂行に関する被告の態度は,被告が本件施設を適切に維持管理し得る
能力を有していないことをうかがわせるものであるにとどまらず,被告が法人とし
ての実体を有するか否かについても疑問を抱かせるものであるといわざるを得な
い。
イ 事業主体としての能力及び適格性の有無について
(ア) 廃棄物処理法及び同施行規則には,平成12年の改正により,産業廃棄物処
理施設設置の許可について,申請者が同施設の設置及び維持管理を的確に行うに足
りる知識及び技能,並びに,的確かつ継続して行うに足りる経理的基礎を有するも
のであることとの申請者の能力に関する要件についての規定が追加されるととも
に,申請者が,同法14条の3に基づき同14条1項の産業廃棄物処理業の許可を
取り消された法人の役員であり,取消しの日から5年を経過しない場合(同法7条
3項4号ニ),暴力団員等がその事業活動を支配する法人である場合(同法14条
3項2号ホ),又はその業務に関し不正若しくは不誠実な行為をするおそれがある
と認めるに足りる相当の理由がある場合(同法7条3項4号ホ)などのいずれにも
該当しないこととのい
わゆる欠格要件に係る規定が追加された(同法15条の2第1項3号,4号,施行
規則12条の2の3)。そして,いったん許可をした場合であっても,設置者が上
記の要件を満たさないものと認められるときは,都道府県知事は,許可を取り消し
たり,期間を定めて当該産業廃棄物処理施設の使用の停止を命ずることなどができ
る旨の規定(同法15条の3)も置かれたのである。上記の各規定は,技術的能力
や経理的基礎が不十分であることを原因として不適正な処分又は維持管理が行われ
ることを防止し,また,申請者の一般的適格性について,そもそも法に従った適正
な業務の遂行を期待し得ない場合を類型化して,可及的にこれを排除する趣旨であ
ると解される。
これに,前示したところの,産業廃棄物処理施設の設置に関し許可制度が採用され
た趣旨及び廃棄物の焼却に関する規制が強化されてきた背景等を考え併せると,上
記改正以前に産業廃棄物処理施設の設置許可を受けたものであっても,上記の要件
を満たさない場合は,産業廃棄物処理施設を設置し稼働する主体としての適格性を
有しないものと解するのが相当である。そこで,被告は,上記の改正以前に本件許
可を受けたものではあるが,被告の上記の要件該当性について,以下検討する。
(イ) 被告の知識及び技能について
前記認定事実を総合すれば,被告が本件施設の設置及び維持管理を的確に行うに足
りる知識及び技能を有しているものと認めることはできない。
(ウ) 被告の経理的基礎について
本件証拠上,被告が本件施設の設置及び維持管理を的確に行うために必要とされる
資産等を有しているとの事情はうかがわれず,かえって,甲102ないし104号
証によれば,深貝電気エンジニアリングに対する本件施設の新築工事請負代金75
00万円のうちの出来高分約6000万円が不払となっていることが認められる。
また,被告は,本件施設の稼働により少なくとも年間合計6億3000万円以上の
売上げを得ることができ,十分採算がとれる旨主張し,これに沿う証拠として売上
高計画書(甲88号証の1,2)を提出する。しかし,中央物産が本件施設と同型
の焼却炉を使用している産業廃棄物処理業者として挙げる6社のうち,利益が出て
いるのは許可の6倍以上の量を焼却している1社のみであることが認められる(甲
105号証,乙84号証,I)ことによれば,産業廃棄物の焼却のみによって利益
を出すことは容易ではないものと解されるところ,上記計画書が確実な根拠に基づ
くものであることを認めるに足りる証拠がないことに照らすと,被告の前記主張は
根拠のないものといわざるを得ない。
以上によれば,被告が本件施設の設置及び維持管理を的確に,かつ継続して行うに
足りる経理的基礎を有するものとも認めることはできないというべきである。
(エ) 被告の欠格要件該当性について
a 平成12年3月17日,三ツ葉環境産業株式会社は,平成8年7月8日に取得
した産業廃棄物収集運搬業の許可を廃棄物処理法14条の3,同7条の3に基づき
取り消された(甲116号証の2)が,被告の代表取締役であるDは,上記三ツ葉
環境産業株式会社の発行済み株式総数の100分の5以上の株式を有しているか
ら,産業廃棄物処理業の許可を取り消された法人の役員と評価することができ(甲
117号証,118号証の1ないし3),前記の欠格要件(同法7条3項4号ニ)
に該当するものと認められる。
b 被告は,Bは被告の経営から身を引いており,被告は暴力団と一切関係がない
旨主張する。確かに,甲20号証の2,甲77,78,80号証によれば,平成1
0年2月19日に,Bはその有する被告の株式120株をDらにすべて譲渡し,被
告の取締役を辞任したことが認められるが,前示のとおり,Bは,鳶森組の不法投
棄事件に被告が関与していた旨の報道がされたため,被告の役員に暴力団関係者の
名前があるのは不都合であると判断して被告の取締役を辞任したにすぎないから,
取締役辞任の事実のみをもってBが被告の経営に以後関与していないものと認める
ことはできない。被告はそもそもBが資本金1000万円の全額を出資して設立し
た会社であり,以後,Bがその代表者として活動してきたこと(甲46ないし49
号証),Bは,平成
10年2月20日の岐阜県関警察署での取調べの際に,自ら被告の実質的な経営者
である旨述べていたこと(甲49号証),本件施設の新築工事を請け負った深貝電
気エンジニアリングの代表取締役であるKは,Bが被告の取締役を辞任した平成1
0年2月19日以降もBが被告の経営に関与していた旨述べていること(甲102
号証)などの事情を総合すると,Bは,被告の取締役を辞任した後も被告の実質的
な経営者であったものと認めるのが相当である。
そして,甲48,49号証によれば,Bは,昭和55年ころから組織的暴力団であ
る稲川会系中島一家中島組に所属し,平成7年6月に刑務所を出所した後,間もな
くして上記中島組を脱退したことが認められるが,平成8年9月30日から同9年
5月20日までの被告の監査役が,上記中島組組長のMの妻であるNであったこと
(甲20号証の2,50号証),前示のとおり,Bが被告の取締役を辞任したのは
被告の役員に暴力団関係者の名前があるのは不都合であると判断したためであるこ
と,平成10年3月ころ以降も,被告の事務所のBあてに上記中島組の関係者から
頻繁に電話がかかるなどしていたこと(甲102号証)などの事情を考慮すると,
Bが上記中島組を脱退したからといって,直ちにBと暴力団との関わりがなくなっ
たものと認めること
はできない。
以上の各事情を総合すれば,被告は,暴力団員等によってその事業活動が支配され
ている法人として前記欠格要件(廃棄物処理法14条3項2号ホ)に該当する可能
性があるというべきである。
c さらに,被告は,Bの過去の経歴は本件施設におけるダイオキシン類発生の可
能性とは無関係である旨主張する。しかし,前示のとおり,Bは,被告の取締役を
辞任した後も被告の実質的な経営者であったものと認められるのであり,甲46な
いし50号証によれば,Bは,鳶森組の不法投棄事件に,被告の代表者としての立
場で深く関与していた事実が認められる。加えて,Kは,Bらが「一晩中燃やせば
100トンは燃やせる。」などと話していた旨述べている(甲102号証)から,
被告は,許可の範囲を超えて廃棄物を焼却するなど,その業務に関し不正又は不誠
実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由があるというべきであ
り,前記の欠格要件(廃棄物処理法7条3項4号ホ)に該当し得るものと認めら
れ,被告の前記主張は採
用できない。
ウ 以上のとおりであり,被告は,そもそも独立して経営活動を行い得る実体を有
しているものとは認め難く,仮に実体を有していないとまではいえないとしても,
本件施設の設置及び維持管理を的確に行うに足りる知識,技能及び経理的基礎を有
するものとは認められず,加えて,欠格要件に該当し得る事情も認められるから,
被告が本件施設を設置,稼働した場合には,法に従わない不適正な処分又は維持管
理等が行われる可能性が極めて高いものと認めるのが相当である。
(5) 原告らの権利侵害の危険性
ア ダイオキシン類の危険性
前記認定事実によれば,ダイオキシン類の人体に及ぼす影響について,科学的に完
全に解明されたとまではいえないものの,耐容1日摂取量を大きく超えるダイオキ
シン類を人体に取り込むなどした場合には,甲状腺機能,免疫機能,生殖機能等に
重大な悪影響を及ぼす可能性が高く,また,世代を越えた被害が生じる可能性があ
るものと認めることができる。
イ 原告らへの影響
(ア) 前記認定事実及び甲107号証の1ないし3によれば,原告A1,同A2,
同A3,同A5,同A6,同A8,同A10,同A12,同A13及び同A17は,本件予
定地の南側500メートル以内に居住し,かつ,本件予定地から半径500メート
ルの範囲内にある農地等において,水稲,れんこん等の生産に常時従事する専業農
家(ただし,原告A17は兼業農家)であり,また,原告A4は本件予定地から南へ
100メートルの位置に居住し,同地で建築板金業を営んでおり,原告A9は本件
予定地から南へ300メートルの居住地で常時生活している年金受給者であるか
ら,上記原告らはいずれも,本件予定地から半径500メートルの範囲内で生活し
ているものと認めることができる。また,原告A7,同A14,同A15及び同A
16は,本件予定地の南側500メ
ートル以内に居住する会社員であるが,本件予定地から半径500メートルの範囲
内にある農地等において自らも農作業に従事する兼業農家であり,原告A11は,本
件予定地から半径500メートルの範囲内に所有する農地での農作業に自らは従事
していないものの,本件予定地から南へ約400メートルの位置に居住する会社員
であるから,上記原告らも,会社での勤務時間等を除く多くの時間を本件予定地か
ら半径500メートルの範囲内で過ごしているものと認められる。
そして,本件予定地周辺では,1年を通して北西ないし北北西の風が吹くことが多
い(甲115号証の1及び2,I)ところ,甲107号証の1ないし3及び原告A
1の尋問結果によれば,原告らの居住地はいずれも本件予定地の風下に当たる南側
にあり,加えて,原告A4及び同A9を除く原告らは,別紙原告居住地等一覧表の
とおり,本件予定地の南側に位置するa村b字c,同d及び同eのすべて又はいず
れかに農地を有しており,特に原告A5及び同A6は,本件予定地の南側に隣接し
て水田を有しているから,原告らはいずれも,本件予定地の風下に当たる場所にお
いて生活し,農作業等に従事することが多いものと認めることができる。
さらに,原告A1の尋問結果によれば,原告らは本件予定地周辺にある井戸及び共
同水源を主に農業用水として利用し,ときには農作業の合間の飲料としても利用し
ていることが認められる。
(イ) 前示のとおり,ダイオキシン類は,食物から取り込まれるだけでなく,吸い
込む空気,手についた土又は飲み水などからも体内へ取り込まれるものであるか
ら,本件施設と原告らの居住地及び農地との位置関係並びに原告らの日常生活など
に関する前記の各事情を考慮すれば,本件施設から高濃度のダイオキシン類が排出
された場合,原告らが空気,土,井戸水等から多量のダイオキシン類を体内に取り
込む可能性が高いといえ,その結果,原告らがその生命及び身体に重大な悪影響を
受けるおそれがあるものと認めるのが相当である。
(6) 人格権に基づく本件施設の建設差止請求権の有無について
生命及び身体は極めて重大な保護法益であり,これを害されない権利は人格権とし
て排他性を有する権利というべきであるから,生命,身体の安全に関する利益を違
法に侵害され,又は侵害されるおそれのある者は,人格権に基づき,加害者に対
し,現に行われている侵害行為を排除し,又は将来生ずべき侵害を予防するため,
侵害行為の差止めを求めることができるものと解される。
前示のとおり,本件施設は,その性能自体に問題がなくはなく,コンピュータによ
る自動制御やバグフィルターによるダイオキシン類の除去が十分機能しない可能性
があるものと認められるところ,被告はこれらに対し,実効的な対策を具体的に立
てているものとは認め難い。そして,本件施設の建設後は被告自らが産業廃棄物処
理業を営む計画であるところ,被告に本件施設を適切に維持管理し得る能力及び適
格性があるものと認めることはできないから,本件施設が建設され,被告によって
稼働されれば,ダイオキシン類を始めとする有害物質が排出抑制基準を超えて多量
に排出される可能性が高いものと認めるのが相当である。
そして,前示のとおり,高濃度のダイオキシン類などが本件施設から排出された場
合は,本件施設の周辺に居住し,農作業などを行う原告らの生命及び身体に重大な
悪影響を及ぼす可能性が高いというべきであり,その予想される被害の程度を考慮
すると,原告らがいったん上記の被害を被った場合は,これを事後的に回復するこ
とは極めて困難であるものと解される。
以上のように,侵害されるおそれのある原告らの利益は極めて重大であり,原告ら
の上記利益がいったん侵害された場合にはこれを事後的に回復することは極めて困
難であると解されるのに,被告は上記の侵害を防ぐための実効的な措置を採ってい
ないとの前記の各事情を総合すれば,被告が本件施設を建設しこれを稼働すること
によって,原告らの上記利益が違法に侵害されるおそれがあるものと評価するのが
相当である。そして,本件施設の性能,被告の維持管理能力及び事業主体としての
適格性に関する前記認定の各事情に,廃棄物処理施設の設置について許可制が採用
された趣旨等を併せ考慮すると,原告らに対する上記違法な侵害行為を予防するた
めには,本件施設の建設自体を差し止める必要性があるものと認めるのが相当であ
る。なお,被告は住
民による記録の閲覧及び行政による立入検査等の事後的な手続により安全性は十分
担保されている旨主張するが,本件施設の性能並びに被告の能力及び適格性に関す
る前記認定の各事情,侵害されるおそれのある原告らの利益の重大性,予想される
被害の程度等を考慮すると,被告の主張する事後的な手続のみによって,原告らに
対する違法な侵害行為を十分予防することができるものとは認められないから,被
告の前記主張は採用できない。
以上によれば,原告らは,人格権に基づき,被告に対し,本件予定地における本件
施設の建設の差止めを求めることができると解するのが相当である。
第4 結論
以上のとおりであって,その余の点について判断するまでもなく,原告らの請求は
理由があるから認容し,訴訟費用について民事訴訟法61条を適用して,主文のと
おり判決する。
名古屋地方裁判所民事第4部
裁判長裁判官佐久間邦夫
裁判官倉澤守春
裁判官松田敦子
(別紙省略)

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