弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

       主   文
 原告の請求を棄却する。
 訴訟費用は原告の負担とする。
       事   実
第一、当事者の求めた裁判
 原告訴訟代理人は、「特許庁が、昭和四三年一二月五日、同庁昭和四二年審判第
七〇六三号事件についてした審決を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」と
の判決を求め、被告指定代理人は主文同旨の判決を求めた。
第二、請求原因
一、特許庁における手続の経緯
 原告は、昭和四一年四月二日、ゴシツク体で「池田物産株式会社」の文字を左横
書きにして成る標章につき、特許庁に対し商標登録出願をしたが、昭和四二年八月
七日拒絶査定を受けたので、同年一〇月四日審判を請求した(同年審判第七〇六三
号)。これに対し特許庁は、昭和四三年一二月五日、「本件審判の請求は成り立た
ない。」との審決をし、その謄本は同月一六日原告に送達された。
二、本件審決理由の要点
 本願商標の「池田物産株式会社」と同一名称(商号)を有する他人である池田物
産株式会社(本店所在地、東京都千代田区<以下略>。以下「引用会社」とい
う。)が現存し、かつその承諾を得たことを確認することができない。そして、商
号は自己の営業上の人格を表彰する名称であるから、自由にこれを使用し得ること
は当然であり、商標法第四条第一項第八号は、出願人と同一商号を使用する他人が
現存する場合においては、当該他人の商号についての個人的権益を、その商号使用
開始の先後、著名度等に関係なく、保護する規定と解すべきである。したがつて、
本願商標のように他人の名称(商号)を含む標章は、これを商標として登録して特
定人の独占に委ねるべきでないことは明らかであるから、本願商標は右法条により
登録を拒否すべきである。
三、本件審決を取り消すべき事由
 引用会社が本願登録出願当時に存在したことは認めるが、本件審決は以下の点に
おいて判断を誤つたものであるから、違法として取り消されるべきである。
(一) 商標法第四条第一項第八号にいう他人の名称とは、その名称(商号)が著
名であることを必要とする。しかるに、引用会社の商号は著名であるとはいえない
から、その商号は右法条にいう他人の名称に当らない。
(二) 原告会社は、自己の商号である「池田物産株式会社」の文字から成る標章
を商標として登録出願したものであるから、たまたま他に原告と同一商号の引用会
社が存在しても、本願商標は右法条にいう他人の名称を含む商標に当らない。
(三) 登録出願人と同一名称(商号)の他人が存在する場合においても、その他
人の名称(商号)は、出願人の名称(商号)よりも先に使用を開始したものでない
限り、右法条にいう他人の名称に当らない。そして、引用会社は原告会社より約八
年後に設立されその商号の使用を開始したものであるから、引用会社の商号は右法
条にいう他人の名称に当らない。
第三、被告の答弁
 本件の特許庁における手続の経緯、本件審決理由の要点が原告主張のとおりであ
ること、引用会社が原告会社より約八年後に設立されたことは認めるが、その余の
原告の主張は争う。引用会社は本願登録出願当時存在していたものである。
第四、証拠関係(省略)
       理   由
一、本件の特許庁における手続の経緯、本件審決理由の要点が原告主張のとおりで
あること、ならびに引用会社が本願登録出願当時存在していたことは当事者間に争
がない。
二、そこで原告主張の本件審決を取り消すべき事由の有無についで判断する。
(一) 原告は商標法第四条第一項第八号にいう他人の名称とはその名称が著名で
あることが必要である、と主張する。しかし、右法条は、氏名および名称の略称、
ならびに雅号、芸名、筆名およびこれらの略称についてのみ、それが著名であるこ
とを要求しているのであるから、氏名、名称自体(フルネーム)については、それ
が著名であることを要しないことは右法条の文理上明らかである。のみならず、右
法条の立法趣旨は、同法条が当該他人の承諾がある場合を商標登録の禁止から除い
ていること、同法条のほかに同条同項第一五号の規定があることから考えると、他
人の商品と誤認、混同を招くことによる不正競争の防止にあるのではなく、他人の
氏名、名称に対する人格権を保護するにあると解するのが相当であるから、他人の
氏名、名称が著名であるかどうかによつて区別する実質上の根拠はない。そして、
商号権、特に会社の商号権は、財産権的性質を帯びるとはいえ、なお人格権的性質
を有することは否定できないから、氏名や他の名称に対する人格権と同様に解すべ
きである。したがつて、原告の主張(一)は理由がない。
(二) 原告は、「池田物産株式会社」は原告の商号であるから、同一商号の引用
会社が存在しても、商標法第四条第一項第八号の他人の名称に当らない、と主張す
る。しかし、右法条の立法趣旨は前叙のように他人(本件では引用会社)の人格権
(本件では商号権)の保護にあるのであるから、他に特段の規定がない以上、本願
商標は他人の名称を含む商標であるといわねばならない。したがつて、原告の主張
(二)は理由がない。
(三) 原告は、引用会社は原告より約八年後に設立されたものであるから、「池
田物産株式会社」は右法条にいう他人の名称に当らない、と主張する。しかし、右
法条の立法趣旨は前叙のとおりであり、人格権(本件では商号権)の保護は氏名、
名称(商号)の使用開始の時期いかんによつて区別されるべきものではない。した
がつて、原告の主張(三)は理由がない。
三、よつて、本件審決には原告主張の違法はないから、原告の請求を棄却し、訴訟
費用の負担につき行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八九条を適用して主文のど
おり判決する。
(裁判官 服部高顕 荒木秀一 瀧川叡一)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛