弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件控訴を棄却する。
     当審における訴訟費用は全部被告人の負担とする。
         理    由
 本件控訴の趣意は弁護人樋渡洋三提出の控訴趣意書に記載されたとおりであるか
らここにこれを引用する。
 控訴趣意第一点について。
 所論は、本件のうるち玄米は、食糧管理法の施行に関する件(昭和二二年一二月
三〇日農林省告示第一九六号)三の(四)の統制外玄米である特定低品位米である
のに、原判決が本件のうるち玄米は未検査米であつたから、右告示三の(四)の例
外規定の適用はないとして、右玄米が特定低品位米に当らないものとしたのは判決
に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認をしたものであるというのである。
 よつて検討してみるのに、右告示三の(四)の規定は、米穀類の購入券による売
買に関する規定である食糧管理法八条の四についての例外を規定したものであるば
かりではなく、くず米又は砕米の売渡し又は買受けがその例外に当るとはしている
が、所論の特定低品位米が右例外に当るとはしていないのである。
 しかしながら、食糧管理法九条、同法施行令七条、同法施行規則四〇条等の主要
食糧の流通統制規定の例外として、前記告示九の二の(六)は、くず米、砕米又は
特定低品位米を買い受ける場合を右の例外に当るとしている。
 さて特定低品位米とは前記告示五の二の(三)によると、「農産物規格規程に規
定する規程外の品位に格付された玄米(くず米又は砕米に該当するものを除く。)
であつて、生産者が政府以外の者に売り渡すことにつき食糧事務所長の承認を受け
たものをいう」とされている。そして米麦の生産者はその生産した米麦を売り渡す
場合には先ず国の検査を受けなければならない(農産物検査法三条)のであつて、
農産物検査官が右の検査を実施し、品位の格付を行いその結果を農産物の包装又は
票せんに表示することになつており(同法一六条)、従つて特定低品位米であるこ
とは、国の検査による品位の格付け等があつてはじめて決定されるのであつて、未
検査米は右の格付けがなされていないわけである。
 本件うるち玄米が未検査米であることは、原判決挙示の証拠、当審の事実取調の
結果によつて明らかであるから、原判決が被告人の本件玄米の買受け行為には所論
のような特定低品位米の買受け行為等の法定の除外事由がないとしたのは正当であ
る。所論は理由がない。
 控訴趣意第二点について。
 所論は要するに、現今、自由米流通は商業組織化され、配給米流通と融和して定
着し、生産者および消費者の利益のために有機的に機能して社会的に正当行為とし
て是認されているのに、原判決はこの自由米流通の実態と機能を誤認し、ひいて自
由米流通の一環としてなされた被告人の本件所為に刑法三五条を適用しなかつた違
法があるというのである。
 <要旨>よつて、按ずるに、国による食糧の管理は、農家経済と消費者の家計に及
ぼす影響の大きい国民経済上の重要問題であるが、米穀の不足時代によくそ
の機能を発揮した食糧管理制度も米穀の過剰時代を迎え、政府管理米のほかに自主
流通米制度が認められたが、しかもなお余り米が生ずるなどの欠陥も露呈するに至
つていることは公知の事実であり、ここにおいて現行の食糧管理制度について関係
機関が種々の角度から検討中であるが未だ根本的な変革を加える段階に至らず食糧
管理法規が厳存している以上、いわゆる自由米流通が所論のごとく商業組織化され
ているとしても、米穀の流通統制についての関係食糧管理法規が被告人の本件所為
の如きはこれを違法としていること前段説示のとおりであるから、これを社会的に
是認された正当行為であるとする所論は採用できない。原判決のこの点の判断も正
当であつて、所論のような誤りはない。所論は理由がない。
 控訴趣意第三点について。
 量刑不当の所論であるが、記録、原審の取り調べた各証拠、当審の事実取調の結
果によつて認められる本件犯行の経緯、動機、態様、罪質、被告人の年令、経歴
等、とくに被告人は米穀業界においてA協同組合理事長の職にあつたこともある業
歴を有していること等諸般の情状を検討すると、原判決の量刑は相当で、過重・不
当とはいえない。所論は理由がない。
 よつて、刑訴法三九六条により本件控訴を棄却し、当審における訴訟費用は刑訴
法一八一条一項本文によりその全部を被告人の負担とし、主文のとおり判決する。
 (裁判長判事 田原義衛 判事 吉澤潤三 判事 中村憲一郎)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛