弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件再上告を棄却する。
         理    由
 弁護人小川益太郎同樫田忠美提出の再上告趣意第一点について。
 然し、第二審裁判所が被告人に対し、公開の法廷で所論の身上調書の要旨を告げ
てその証拠調を為し、更に所論摘録と同様の性行為に関する取調を為したのは、少
年法第六四条第三一条第一項所定事項を調査の必要上為されたものであることは明
らかであらう。而して右身上調書に所論性行為に関する記載があるとは云え、第二
審裁判所が右身上調書に関する証拠調並びに所論摘録の如き程度の取調を為したこ
とを目して、所論のように同裁判所が被告人に脅迫を加え、被告人が之に因つて畏
怖を感じた結果、同裁判所に於て被告人が本件犯行を自白するに至つたもの、即ち
第二審裁判所が断罪の証拠に採つた被告人の自白は、右脅迫に因る自白である等と
は、右身上調書の内容(記録一一五丁以下、長野少年審判所少年保護司調書)並び
に所論摘録の問答自体に徴し、到底之を諒解することを得ないのである。所論は畢
竟憲法違反に藉口して独自の立論を試むるものと解するの外なく、到底採用するこ
とができない。左れば結局右所論を憲法第三八条第二項の違反にあらずと判断した
原上告審の判示は適法であつて、論旨は理由のないものである。
 同第二点について。
 然し、所論の少年法第一四条第一項の規定は、人の資格に関する法令の適用に関
する規定であつて、刑の執行猶予等に関する法令の適用に関する規定ではない。又
本項は刑に処せられた者に関する規定であつて、所論のような少年審判所の審判に
依り保護処分に附された者に類推適用すべき規定でもない。又所論憲法第一四条第
一項の社会的身分とある中には、刑罰に処せられたこと或いは前示保護処分に附さ
れたことのような法律上の身分の如きを包含していないことは、憲法同条項の精神
並びにその明文に照しても寔に明らかと云うべきである。次に所論の身上調書は第
二審裁判所が証拠に採つてはいないのであるが、第二審裁判所が共犯者である他の
二名の共同被告人と異なり、被告人に執行猶予を与えなかつたことが、仮に前示曾
ての保護処分を受けたことを斟酌された結果であつたと仮定しても、此量刑をした
同判決は毫も所論のように少年法第一四条第一項並びに憲法第一四条第一項に違反
した違法の判決とは称することを得ないのである。所論は之又名を憲法第一四条第
一項の違反に藉り、以つて明らかなる誤論を敢て試むるものであつてすべて採るを
得ない。左れば原上告審の判決が所論に対し、結局憲法第一四条違反にあらずと判
断したのは正当である。論旨は理由がない。
 同第三点について。
 新刑訴第四一一条は上告裁判所の職権事項としての規定であつて上告申立理由と
しての規定でないことは、既に当裁判所の判例とするところである(昭和二十三年
(れ)第一五七七号、昭和二十四年五月十八日大法廷判決)。又量刑不当を上告裁
判所の審判事項とするや否やは、一に裁判所の審級制度並びにその事物の管轄に関
する訴訟制度上に関する問題であつて、憲法適否の問題でないとの解釈も亦当裁判
所屡次の判例とするところである(昭和二十三年(れ)第四三号、昭和二十三年三
月十日大法廷判決参照)。次に刑訴施行法第二条の規定、即ち昭和二十三年十二月
三十一日までに公訴の提起のあつた事件については、旧刑訴法並びに刑訴応急措置
法に依り審判すべきものであるとの規定が、憲法違反の規定でないことも亦当裁判
所の判例とするところである(昭和二十三年(れ)第一五七七号、昭和二十四年五
月十八日大法廷判決)。而して本件は刑訴応急措置法適用下の事件であるから同法
第一三条第二項の規定に依り所論の量刑不当の主張は上告適法の理由とはならない
のである。論旨は理由がない。
 仍つて、刑訴施行法第二条並びに旧刑訴法第四四六条に従い、主文のとおり判決
する。
 此判決は全裁判官一致の意見である。
 検察官 岡本梅次郎関与。
  昭和二四年五月二八日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
 裁判官藤田八郎は出張中につき、署名捺印することができない。
         裁判長裁判官    霜   山   精   一

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