弁護士法人ITJ法律事務所

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平成11年(行ケ)第374号 審決取消請求事件
平成13年2月20日口頭弁論終結
          判      決
       原      告     イーオーエス ゲゼルシャフト ミッ
ト ベシュレンクテル ハフツング イレクトロ オプティカル システムズ
       代表者          【A】
       訴訟代理人弁理士 後 藤 洋 介
       同            池 田 憲 保
       同            山 本 格 介
       被      告     ボード・オブ・リージェンツ・ザ・ユ
ニバーシティー・オブ・テキサス・システム
       代表者          【B】
       訴訟代理人弁護士     大 野 聖 二
       同            社 本 一 夫
            主      文
    1 特許庁が平成10年審判第35216号事件について平成11年
6月30日にした審決を取り消す。
    2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を
30日と定める。
      事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 原告
 主文1、2項と同旨
2 被告
 原告の請求を棄却する。
 訴訟費用は原告の負担とする。
第2 当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯
  被告は、発明の名称を「選択的焼結によって部品を製造する方法」とする特
許第2620353号の特許(1986年10月17日及び1987年10月5日
にアメリカ合衆国においてした出願に基づく優先権を主張して1987年10月1
4日に国際出願、平成9年3月11日に設定登録。以下「本件特許」といい、その
発明を「本件発明」という。)の特許権者である。
  原告は、平成10年5月22日、本件特許を無効にすることについて審判を
請求し、特許庁は、この請求を平成10年審判第35216号事件として審理した
結果、平成11年6月30日に「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決を
し、その謄本を同年7月24日に原告に送達した。なお、出訴期間として90日が
付加された。
2 特許請求の範囲1の項
  粉末第1層を目標表面に分与し;
  前記粉末第1層における部品の第1断面に対応する部分に、その部分の前記
粉末を焼結させるべくレーザビームを選択的に指向させ;
  前記レーザビームの選択的指向の後に前記粉末第1層上に粉末第2層を分与
し;
  前記粉末第2層における部品の第2断面に対応する部分に、その部分の前記
粉末を焼結させるべく、また前記粉末第2層のその部分において焼結した粉末を前
記第1層中の焼結した粉末に接合させるべくレーザビームを選択的に指向させ;
  以後必要な回数だけ連続して、直前の粉末層についてのレーザビームの選択
的指向の後に前記直前の粉末層上に次の粉末層を分与し、分与したその粉末層にお
ける部品の断面に対応する部分に、その部分のその粉末層の粉末を焼結させるべ
く、またその粉末層のその部分において焼結した粉末を前記直前の層中の焼結した
粉末に接合させるべくレーザビームを選択的に指向させる工程を反復し、
  そして、全工程を通じて目標区域の粉末を焼結温度より低い温度に加熱する
ことにより、焼結したおよび非焼結の粉末の温度を制御し、
  部品が製造された後、非焼結の粉末を取り除く、
 各工程を含む、粉末から部品を1層ずつ積層的に製造する方法。
3 審決の理由
  別紙審決書の理由の写しのとおり、本件発明を、国際出願日における国際出
願の明細書、請求の範囲若しくは図面(以下、これらをまとめて「出願明細書」と
いう。)に記載されている発明以外の発明とすることはできないと認定判断して、
本件発明は、出願明細書に記載されていない事項を含むから、本件特許は無効であ
るとの原告主張を排斥した。
第3 原告主張の審決取消事由の要点
  審決の理由1(本件発明)、2(当事者の主張)は認める。同3(当審の認
定・判断)のa(「目標区域」なる用語について)は争わない。同3のb(本件発
明における工程6について)は、8頁5行~6行(「との課題の下に、その実施態
様において」)、8頁10行(「そして」から)~9頁4行を争い、その余は認め
る。同3のcは争う。同4(むすび)は争う。
  本件発明の特許請求の範囲の「そして、全工程を通じて目標区域の粉末を焼
結温度より低い温度に加熱することにより、焼結したおよび非焼結の粉末の温度を
制御し、」(以下「工程6」という。)を含む発明は、出願明細書に記載された発
明ではない。審決は、この点の判断を誤ったものであり、この誤りが審決の結論に
影響を及ぼすことは明らかであるから、違法として取り消されるべきである。
1 出願明細書には、工程6に関係して、技術的課題を示すものとしての「レー
ザービームによってまだ走査されていない粒子の温度と既に走査された粒子の温度
との差異の故に、製造中の製品の望ましくない収縮が生じる事が観察された」(甲
第3号証12頁24行~28行、甲第4号証13頁9行~12行)との、この技術
的課題の解決のための技術手段についての「温度制御された空気の目標区域を通し
ての下降流がこのような望ましくない温度差を調整できる事が発見された」(甲第3
号証12頁28行~30行、甲第4号証13頁12行~14行、同様の記載とし
て、「温度制御された空気が目標区域中の粉末に送られ、目標区域中の焼結粉末と非
焼結粉末の温度制御を成す」(甲第3号証7頁26行~29行、甲第4号証8頁1
行~3行)がある。)との、この技術手段の作用効果の説明としての「第11図に
示す温度制御された空気の下方送気装置132は焼結される粉末粒子の上層と空気
との間の熱交換によって前記のような収縮を低減させる。この熱交換が焼結される
粒子の上層の温度を調整し、上層の平均温度を制御し、製造される製品から体積熱
を除去する事によって製品が非焼結物質中に成長することを防止する。」(甲第3
号証12頁30行~13頁4行、甲第4号証13頁14行~20行)との記載があ
るのみである。上記技術的課題を解決する技術手段として、「目標区域を加熱する」
ことの記載は全くないし、それを示唆する記載もない。
2 審決は、①「上記課題を解決するには、『レーザービームによってまだ走査
されていない粒子の温度と既に走査された粒子の温度との差異』を加熱して小さく
すればよいこと」、及び②「その加熱手段としては、『温度制御された空気』を用い
る以外に種々の手段を採用し得るものであること」は当業者において自明なことで
ある」(8頁10行~18行)と認定したが、誤りである。
(1) 出願明細書に開示されている課題解決のための技術的事項は、「温度制御
された空気」と「焼結される粉末粒子の上層との間の熱交換によって前記のような
収縮を低減させる」、「この熱交換が焼結される粒子の上層の温度を調整し、上層の
平均温度を制御し、製造される製品から体積熱を除去する」というものであるから、
①は根拠がない。
もっとも、物体の局部加熱(冷却)に基づいて(すなわち温度差が生ずること
により)収縮等の歪が生ずること、この歪(ひずみ)の発生を解消するには、全体を
予備加熱(冷却)して温度差を小さくすればよいことは、グラスにお湯を注ぐとき
にあらかじめグラスを温めるという日常的に見られる「技術常識」であり、工業的
にも種々の技術分野で実施されている。①が当業者には自明であるとする審決の認
定の根拠は、この技術常識にあるとしか理解できない。ところが、本件発明に関す
る平成10年審判第35217号事件の審決は、「レーザービームによってまだ走
査されていない粒子と既に走査された粒子の両方」を加熱して両者の温度差を小さ
くすればよいことが、同事件の引用例1~7を参照しても、いまだ容易とはいえな
いと認定している。つまり、同じ事柄を、同事件の審決は容易とはいえないとし、
本件の審決は自明としているのであって、両審決の認定判断は矛盾している。
(2) また、単に粉末全体を「加熱」することでは、「熱交換」が必然的に起こ
るものではない。たとえば、輻射熱を加えるような加熱方法では、「熱交換」は達成
できないことである。したがって、②も根拠がない。
3 審決は、本件発明が出願明細書に開示されていたと認定するについて、出願
明細書に、「・・・との課題の下に、その実施態様において『温度制御された空気
が目標区域中の粉末に送られ、目標区域中の焼結粉末と非焼結粉末の温度制御を成
す。』(同第7頁第26~29行、同第8頁第1~3行)ことが記載されてい
る。」(8頁5行~10行)ことを根拠とする。
  しかし、「温度制御された空気が目標区域中の粉末に送られ、目標区域中の
焼結粉末と非焼結粉末の温度制御を成す。」ことは、出願時の主たる発明であるレ
ーザビームによる選択的焼結により三次元部品を製造する装置及び方法との関係に
おいては実施態様であるものの、その国際出願の明細書及びその出願翻訳文に記載
されている発明の「温度差による収縮の発生」という技術的課題との関係において
は、決して、その一実施態様にとどまるものではなく、この課題に対する発明その
ものである。
4 被告は、「上記技術的課題が記載されていれば、加熱手段として、『温度制
御された空気』を用いる以外に種々の手段を採用し得るものであることは、当業者
において自明なことである」と主張している。
(1) しかし、この議論は本末転倒である。問題は、「温度制御された空気を用
いること」が開示されているところから、「加熱する」ことが課題を解決するため
の技術的手段であると読み取れるか否かである。
(2) 出願明細書の「粉末の温度制御の目的」は、①焼結の際の融合に伴う収
縮、②焼結の際の体積熱(バルク熱)による製品の非焼結物中への成長、を防止す
ることである。被告は、本件出願の審査段階において、拒絶理由通知を受けて「粉
末の温度制御」を請求項1に導入する補正を行った際、平成7年5月15日付けの
意見書を提出して、その旨主張している。
(3) 出願明細書の記載においては、「温度調整された空気の下降流を目標区域
に通すこと」が技術的課題を解決するための唯一の「技術的手段」であって、その
技術的手段によれば、温度調整された空気と粉末粒子との「熱交換」によって、低温
の粉末粒子は加熱され、高温の粒子からは熱が除去され、すなわち冷却され、粉末
層の温度が調整され、体積熱も除去され、これにより製造中の製品の望ましくない
収縮が低減され、かつ、製品の非焼結部分への成長が防止されるというものであ
る。
 したがって、上記の課題解決のために重要なポイントは、温度制御された
空気と粉末粒子との間で行われる「熱交換」による「低温粒子の加熱と高温粒子からの
熱の除去」による粉末温度の制御である。
 「『温度制御された空気』を用いること」は「加熱」ではなく、「熱交
換」であり、非焼結の低温の粉末は加熱するが、焼結された高温の粉末は冷却する
ものである。「加熱」による場合には、非焼結の低温の粉末が加熱されるばかりでな
く、焼結された高温の粉末も加熱されるか高温に維持されるかすることになる。
 このように、「加熱」することと「温度制御された空気」を使用して「熱
交換」を行わせることとは、全く異なる作用効果を奏する。非焼結の低温の粉末と
焼結された高温の粉末の共存するものに対して用いる「温度制御された空気」を
「加熱手段」とみなすこと自体誤りである。
 仮に、粉末層の該当部分を焼結した後、「目標区域を加熱する」こと、す
なわち、「粉末層の該当部分焼結後、焼結した粉末と非焼結粉末」を加熱すると、
焼結した粉末も非焼結の粉末も加熱を受けるから、非焼結の粉末は温度があがり、
焼結した粉末は温度がなかなか降下しないので、焼結による融合に伴う収縮がすす
むとともに、焼結が非焼結の部分に成長することが助長されることになり、「製品
の非焼結部分への成長が防止される。」という作用効果は奏さない。
第4 被告の反論の要点
1 出願明細書に、「レーザービームによってまだ走査されていない粒子の温度
と既に走査された粒子の温度との差異の故に、製造中の製品の望ましくない収縮の
生じる事が観察された」という本件発明の技術的課題が記載されていれば、加熱手
段として、『温度制御された空気』を用いる以外に種々の手段を採用し得るもので
あることは、当業者において自明である。
2 原告は、出願過程における被告の平成7年5月15日付けの意見書を根拠と
して、本件発明の技術的課題を限定的に解釈しようとしているが、出願過程の主張
によって、出願明細書の記載内容が変わるわけではないから、出願過程における被
告の主張は、本訴とは関係がない。
3 「熱交換」の作用効果の記載は、温度制御された空気を使用した実施態様に
関してのものであり、出願明細書のすべての内容をなすものではない。出願明細書
の、「製造中の製品の温度を制御するための他の実施態様を第11図に示す」(甲
第3号証12頁21行~22行、甲第4号証13頁8行~9行)との記載に示され
ているとおり、温度制御された空気を使用する方法は、出願明細書に示されている
発明の一実施態様にすぎない。
第5 当裁判所の判断
1 甲第3(出願明細書)、第4号証(本件特許に係る国際出願に関する特許法
184条の5第1項の規定による書面及びその添付書類)によれば、出願明細書に
おいて、工程6に関係する記載は、技術的課題を示すものとしての「レーザービー
ムによってまだ走査されていない粒子の温度と既に走査された粒子の温度との差異
の故に、製造中の製品の望ましくない収縮の生じる事が観察された。」(甲第3号
証の訳文12頁13行~15行、甲第4号証明細書13頁9行~12行)との、こ
の技術的課題解決の技術手段としての「温度制御された空気の目標区域を通しての
下降流がこのような望ましくない温度差を調整できる事が発見された。」(甲第3号
証の訳文12頁15行~17行、甲第4号証明細書13頁12行~14行、同様の
記載として、「温度制御された空気が目標区域中の粉末に送られ、目標区域中の焼結
粉末と非焼結粉末の温度制御を成す。」(甲第3号証の訳文7頁末行~8頁1行、
甲第4号証明細書8頁1行~3行がある。))との、この技術手段の作用効果の説
明としての「第11図に示す温度制御された空気の下方送気装置132は焼結され
る粉末粒子の上層と温度制御された空気との間の熱交換によって前記のような収縮
を低減させる。この熱交換が焼結される粒子の上層の温度を調整し、上層の平均温
度を制御し、製造される製品から体積熱を除去する事によってそのバルク温度を低
下させるとともに製品が非焼結物質に成長する事を防止する。」(甲第3号証の訳
文12頁17行~22行。甲第4号証明細書13頁14行~20行の記載も同旨で
ある。)との記載のみであることが認められる。
  そうである以上、出願明細書には、「焼結したおよび非焼結の粉末を温度制
御する」ために、「温度制御された空気の目標区域を通しての下降流」を用いて「熱
交換」を行わせる技術は記載されているものの、そこに、「全工程を通じて目標区域
の粉末を焼結温度より低い温度に加熱することにより、焼結したおよび非焼結の粉
末の温度を制御し、」という工程6の技術が記載されているということはできな
い。
2 被告は、「レーザービームによってまだ走査されていない粒子の温度と既に
走査された粒子の温度との差異の故に、製造中の製品の望ましくない収縮の生じる
事が観察された」という本件発明の技術的課題が記載されていれば、加熱手段とし
て、「温度制御された空気」を用いる以外に種々の手段を採用し得るものであるこ
とは、当業者において自明であると主張する。
  しかし、上記技術的課題が記載されているとしても、そのことから直ちに、
「加熱手段」が課題解決手段としてすべて自明であるということはできない。それ
ぞれの技術的手段が課題解決手段として自明であるか否かは、出願明細書に記載さ
れた技術的課題、これを解決する技術的手段、作用効果を総合して検討されるべき
ものである。
  出願明細書の「温度制御された空気が目標区域中の粉末に送られ、目標区域中
の焼結粉末と非焼結粉末の温度制御をなす」との技術的手段の記載並びにその作用
効果である「温度制御された空気の下方送気装置132は焼結される粉末粒子の上
層と空気との間の熱交換によって前記のような収縮を低減させる。この熱交換が焼
結される粒子の上層の温度を調整し、上層の平均温度を制御し、製造される製品か
ら体積熱を除去する事によって製品が非焼結物質中に成長することを防止する。」
の「熱交換」及び「製造される製品から体積熱を除去」という記載と整合するよう
に、上記技術的課題の記載を理解すれば、上記技術的課題は、①焼結の際の融合に
伴う収縮、及び②焼結の際の体積熱(バルク熱)による製品の非焼結物中への生長
の発生の防止であるものというべきである。
 ちなみに、甲第10号証(被告作成の平成7年5月15日付け意見書)及び
弁論の全趣旨によれば、出願人である被告は、本件出願過程で特許庁に提出した上
記意見書において、本件発明について、「明細書中に詳細に記載したように、積層
的に部品を製造するにあたっては、熱勾配により望ましくない収縮が生起し、又部
品の過剰バルク熱に起因して焼結融合部分の非焼結部分への生長がおこる。」(5
頁4行~6行)と述べ、この意見書は、排斥されることなく本件特許の査定がされ
たことが認められる。上記事実は、上記技術的課題を上記①、②のように解釈する
ことが正当であることを裏付けるものである。
  上記技術的課題をこのように解すれば、「粉末層の該当部分焼結後、焼結し
た粉末と非焼結粉末」を加熱すると、焼結した粉末も非焼結の粉末も加熱を受ける
から、非焼結の粉末は温度が上昇し、焼結した粉末は温度がなかなか降下しないの
で、焼結による融合に伴う収縮が進み、焼結が非焼結の部分に成長することが促進
されることになってしまい、上記①、②の技術的課題は解決されないことになる。
そして、このように、工程6に該当する他の方法であって、「温度制御された空
気」を用いる方法でないものには、①、②の技術的課題を解決することのないもの
も含まれる以上、工程6を上記技術的課題から自明であるとすることができないこ
とは、明らかである。
3 また、上記技術的課題を解決する手段として出願明細書に記載されている技
術と作用効果は、「温度制御された空気の目標区域を通しての下降流がこのような
望ましくない温度差を調整できる事が発見された」、「温度制御された空気の下方
送気装置132は焼結される粉末粒子の上層と空気との間の熱交換によって前記の
ような収縮を低減させる。この熱交換が焼結される粒子の上層の温度を調整し、上
層の平均温度を制御し、製造される製品から体積熱を除去する事によって製品が非
焼結物質中に成長することを防止する。」というものである。そして、上記出願人
により「発見された」とされた技術と、工程6に含まれる技術のうち、例えば、赤
外線加熱器を用いて加熱する方法とを比べてみれば、後者は、「熱交換」がなされ
ないから「製造される製品から体積熱を除去する」ということもないことは明らか
である。したがって、上記出願人により「発見された」とされた技術から、工程6
に含まれる技術すべてが自明ということはできないことは明らかである。
4 被告は、出願明細書に、「製造中の製品の温度を制御するための他の実施態
様を第11図に示す」との記載があることを根拠として、出願明細書の前記「熱交
換」の作用効果の記載は、一実施態様にすぎず、出願明細書のすべての内容をなす
ものではないと主張する。
  しかし、甲第3、甲第4号証によれば、出願明細書には、
(1) 技術分野について「本発明は、粉末を選択的に焼結して部品を製造するた
めの指向エネルギービームを使用する方法および装置に関するものである。さらに
詳しくは、本発明は・・・コンピュータ支援レーザ装置に関するものである。本発
明は、粉末層分与機構と、粉末温度を調整するために目標区域に対して空気流を送
る機構とに関するものである。」(甲第3号証の訳文2頁4行~9行、甲第4号証
明細書1頁5行~11行)、
(2) 発明の開示について、①「本発明の部品製造方法は、粉末の第1部分を目
標面上に堆積する段階と、目標面に沿って指向エネルギービーム(好ましくはレー
ザビーム)の標的を走査する段階と、第1粉末部分の第1層を目標面上において焼
結する段階とを含む。」(甲第3号証の訳文6頁13行~16行、甲第4号証明細
書6頁7行~11行)、②「好ましい実施態様において、・・・レーザービームは
コンピュータによって制御される。」(甲第3号証の訳文7頁2行~5行、甲第4
号証6頁下から2行~7頁3行)、③「さらに本発明の他の実施態様は、目標区域
上に粉末を平坦層として分布する装置を含む。」(甲第3号証の訳文7頁12行~
13行、甲第4号証明細書7頁11行~12行)、④「さらに他の実施態様におい
て、粉末温度を調整するための下向き送気機構が配備される。この機構は、目標区
域を画成する支持体と、目標区域に空気を送る機構と、目標区域に達する前に空気
温度を制御する機構とを含む。・・・温度制御された空気が目標区域中の粉末に送
られ、目標区域中の焼結粉末と非焼結粉末の温度制御を成す。」(甲第3号証の訳
文7頁19行~8頁1行、甲第4号証明細書7頁20行~8頁3行)、
(3) 図面の簡単な説明に関して、「付図について述べれば、」(甲第3号証の
訳文9頁4行、甲第4号証明細書9頁11行)、「製造中の製品の温度を制御する
ための他の実施態様を第11図に示す。」(甲第3号証の訳文12頁12行~13
行、甲第4号証明細書13頁8行~9行)
との記載があることが認められる。
  以上の事実によれば、上記(2)の①の「粉末の第1部分を目標面上に堆積する
段階と、目標面に沿って指向エネルギービーム(好ましくはレーザビーム)の標的
を走査する段階と、第1粉末部分の第1層を目標面上において焼結する段階とを含
む」部品製造方法の実施態様として、上記(2)の②、③のもののほかに、「他の実施
態様」として④の「粉末温度を調整するための下向き送気機構が配備される」もの
が存在し、この「他の実施態様」が11図に示されているものと認められる。した
がって、上記「製造中の製品の温度を制御するための他の実施態様を第11図に示
す。」との記載の「他の実施態様」とは、「粉末の第1部分を目標面上に堆積する
段階と、目標面に沿って指向エネルギービーム(好ましくはレーザビーム)の標的
を走査する段階と、第1粉末部分の第1層を目標面上において焼結する段階とを含
む」部品製造方法の一実施態様であることを述べたものであって、「製造中の製品
の温度を制御する」ための他の技術手段があることを示唆するものではないという
べきである。
  甲第3、第4号証によれば、出願明細書中には、「製造中の製品の温度を制
御する」ための他の技術手段として、「温度制御された空気」によって「熱交換」
を行うもの以外のものに関する記載は、実施態様に関するものを含め、全くないこ
とが認められる。このことは、以上の認定を裏付けるものである。
  被告の主張は、採用することができない。
5 以上のとおりであるから、本件発明を、出願明細書に記載されている発明以
外の発明とすることはできないとした審決の認定判断は誤りであって、この誤りが
審決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。審決は、違法であって取消しを免
れない。
第6 よって、原告の本訴請求は、理由があるから認容することとし、訴訟費用の
負担並びに上告及び上告受理の申立てのための付加期間の付与について行政事件訴
訟法7条、民事訴訟法61条、96条2項を適用して、主文のとおり判決する。
      東京高等裁判所第6民事部
            裁判長裁判官   山  下  和  明
        
               裁判官    山  田  知  司
 
               裁判官   阿  部  正  幸

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