弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 弁護人浅野憲一、同大西幸男連名の上告趣意第一章第一点について
 所論は、違憲(憲法三一条、三七条違反)をいうが、第一審における被告人らの
統一公判要求は、いわゆる昭和四四年一〇月一一月闘争と称されるところの多数の
事件と本件との併合審理を求めるもので、これら多数の事件と本件被告事件とは法
律上共犯関係にも立たないものであるから、第一審がその要求をいれなかつたこと
は正当であり、刑訴法三一三条所定の裁量権を不当に行使したとはいえないとした
原審の判断は正当として是認できる。それゆえ、所論は前提を欠き、適法な上告理
由にあたらない。
 同第二点について
 所論は、違憲(憲法三一条、三七条違反)をいうが、被告人らに対する退廷命令
は、被告人らが裁判長の訴訟指揮に従わず、法廷の秩序を乱したためやむなく採ら
れた措置であり、被告人らは自己の行為によつて反対尋問権等を喪失したとみられ
るだけでなく、被告人らの退廷後も弁護人が証拠調に終始立ち会つており反対尋問
の機会も与えられていたから、第一審の証拠調手続になんらの違法はないとした原
審の判断、及び刑訴法三四一条が同条所定の事由があるときは被告人の陳述を聴か
ないで判決をすることができると定めた趣旨は被告人の正当な防禦権の放棄を理由
とするものであり、この理は判決の前提となる審理を行う場合においてもなんら異
なるところはないから、いつたん公判期日に出頭した被告人が裁判長から法廷の秩
序維持のため退廷を命ぜられたときは、裁判所は同条に基き、被告人不在のまま当
日の公判審理を行うことができるものと解すべきであるとした原審の判断は、いず
れも正当である。それゆえ、所論は前提を欠き、適法な上告理由にあたらない。
 同第三点について
 所論は違憲(憲法三七条二項違反)をいうが、実質は原審の裁量に属する証拠の
採否に関する単なる法令違反の主張にすぎず、適法な上告理由にあたらない。
 同上告趣意第二章のうち、判例違反をいう点について
 所論は判例違反をいうが、所論引用の各判例は、いずれも事案を異にし本件に適
切でなく、適法な上告理由にあたらない。
 同上告趣意第二章のうち、黙秘権不告知の違憲性についてと題する部分について
 所論は違憲(憲法三八条一項、三一条違反)をいう点もあるが、実質はすべて単
なる法令違反の主張であつて、適法な上告理由にあたらない。
 同上告趣意第二章のうち、公判期日延期申請の不当な却下の違憲性についてと題
する部分について
 所論は違憲(憲法三七条一項、三一条違反、上告趣意に憲法三八条一項とあるの
は三七条一項の誤記と認める。)をいう点もあるが、実質はすべて単なる法令違反
の主張であつて、適法な上告理由にあたらない。
 同上告趣意第二章のうち、忌避申立を簡易却下したことの違憲性についてと題す
る部分について
 所論は違憲(憲法三一条、三七条違反)をいう点もあるが、実質はすべて単なる
法令違反の主張であつて、適法な上告理由にあたらない。
 同上告趣意第二章のうち裁判非公開の違憲性についてと題する部分について
 所論は違憲(憲法三一条、三七条違反)をいうが、原判示に沿わない事実を前提
として違憲をいうもので、適法な上告理由にあたらない。
 同上告趣意第三章、第四章について
 所論は、事実誤認、量刑不当の主張であつて、適法な上告理由にあたらない。
 よつて、刑訴法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、
主文のとおり決定する。
  昭和五〇年九月一一日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    岸   上   康   夫
            裁判官    藤   林   益   三
            裁判官    下   田   武   三
            裁判官    岸       盛   一
            裁判官    団   藤   重   光

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