弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人鈴木一郎の上告趣意第一点について。
 原判決によれば原審の確定して事実は「被告人は昭和二一年一〇月一五日から同
二二年一〇月二日までの間法定の除外事由なくして日本刀一振(昭和二三年押第二
九七号の一)を東京都墨田区a橋b丁目c番地の自宅に隠匿所持した」というので
あつて、この事実認定は原判決挙示の証拠に照らし、これを肯認するに難くないの
である。論旨は原審の採用しなかつたと思われる証拠に基き又記録上主張されなか
つたと認められる事実に立脚して被告人が本件日本刀を所持していたと認定された
時期以前における右日本刀の所有又は所持の関係を云為し、被告人の兄Aが該日本
刀の所有者であり所持者であるかのように主張するのであるが、前説示の通り被告
人が一定の期間法定の除外事由なくして本件日本刀を所持していた事実が認定され
る以上、その日本刀の所有権が何人に属していたとか、或はその間接占有者が何人
であつたかというような事情は、本件銃砲等所持禁止令違反罪の成立には何等の消
長をも来たすものではない。論旨は畢竟事実審である原審の自由裁量に属する証拠
の取捨又は事実認定を非難するに帰着し上告適法の理由とはならない。
 同第二点について。
 しかし、所論原審認定の事実は、原審がその認定の基礎とした証拠と対照すれば
容易に了解し得るように、被告人はB外二名と共謀して東京都台東区d通行中のC
(当時一七年)に対し交々同人の穿いていた靴を指し貸して呉れ必ず返すからなど
申向け、若しその要求に応じなければ危害を加えかねまじき態度威勢を示して同人
を畏怖せしめた上、その所有にかかる短靴一足を交付せしめて喝取したというので
ある。
 従つて右被告人の所為は到底「単ナル戯レ」とはいい得ないのであつて、恐喝罪
を以て問擬せられたのは当然である。原判決には所論のような違法はなく、論旨は
理由なきものである。
 同第三点について。
 しかし、所論判示認定の趣意は、被害者Dが被告人と共謀しているEに殴打され
て恐怖心を抱いていた際、被告人において同人に対し「オトシ前を出せ」と申向け
これに応じなければ更に殴打しかねまじき威勢を示して同人を畏怖せしめた上金百
円を交付せしめたというにあること、判文上明白であつて、恐喝罪の構成要件とし
て何等欠くるところはない、しかも原審の為した右事実認定は原判決挙示の証拠に
照しこれを肯認するに難くないのである。論旨は結局事実審である原審の自由裁量
権の範囲に属する事実認定を非難するに帰着し上告適法の理由とならない。
 よつて刑訴第四四六条に従い主文の通り判決する。
 この判決は裁判官全員の一致した意見である。
 検察官 橋本乾三関与
  昭和二三年一一月四日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    沢   田   竹 治 郎
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    斎   藤   悠   輔

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