弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
原判決を取消す。
被控訴人の本件仮処分申請及び当審において拡張した申請をいずれも棄却する。
訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
       事   実
 控訴代理人は「原判決を取消す。被控訴人の本件仮処分申請(当審で拡張した仮
処分申請を含む)を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とす
る。」との判決を求め、被控訴代理人は「本件控訴を棄却する。(原審における仮
処分申請を拡張し)控訴人は被控訴人に対し、二二五万七三六〇円及び昭和四八年
七月一日以降本案判決確定に至るまで、毎月二〇日限り月額五万一〇四〇円ならび
に昭和五二年以降本案判決確定に至るまで、毎年六月と一二月の各末日限り各一〇
万八一六〇円の金員を支払え。控訴費用は控訴人の負担とする。」との判決を求め
た。
 当事者双方の事実上の主張及び疎明関係は、次のとおり付加する外は、原判決事
実摘示と同一であるからこれを引用する。
(被控訴人の主張)
(一) 被控訴人の文学部副手としての給与条件は、一般職五等級の八割が給与で
あり、一年ごとに一号俸づつ昇給し、賞与は毎年六月と一二月の各末日限り各給与
一か月分相当額ということであつたから、被控訴人が解雇されないでいるとすれ
ば、被控訴人は控訴人から昭和四八年度給与月額五万一〇四〇円、賞与一〇万二〇
八〇円、同四九年度給与月額八万三二〇〇円、賞与一六万六四〇〇円、同五〇年度
給与月額九万六五六〇円、賞与一九万三一二〇円、同五一年度給与月額一〇万八一
六〇円、賞与二一万六三二〇円を受領することができる。
 従つて昭和五二年五月末現在において、被控訴人が控訴人から受領すべき金額
と、拡張前の申請額との差額は、昭和四八年度賞与一〇万二〇八〇円、同四九年度
給与三八万五九二〇円、賞与一六万六四〇〇円、同五〇年度給与五四万六二四〇
円、賞与一九万三一二〇円、同五一年度給与六二万八三二〇円、賞与二一万六三二
〇円、以上合計二二三万八四〇〇円となる。
 よつて被控訴人は控訴人に対し、右合計額に昭和四八年六月分の給与残額一万八
九六〇円を加えた二二五万七三六〇円及び昭和四八年七月一日以降本案判決確定に
至るまで、毎月二〇日限り五万一〇四〇円の給与ならびに昭和五二年以降本案判決
確定に至るまで、毎年六月と一二月の各末日限り、各一〇万八一六〇円の賞与の支
払を求める。
(二) 控訴人の行つた神学科廃科の措置は、専ら控訴人殊にA院長と神学等につ
き見解の異なる神学科教員の学外追放を目的とするいわば擬装のものであつて、公
序良俗に反し無効である。
(三) 被控訴人と雇用関係にあるのは控訴人であつて、文学部神学科ではないか
ら、神学科が廃科になつたとしても、控訴人は被控訴人を文学部の他学科または他
学部に配転すべきである。即ち神学科廃科が決定した昭和五二年三月三〇日当時、
神学科に在籍した専任教員四名はその希望により、他の学科へ配転され、副手一名
(B)も大学中央図書館の勤務に変つているところ、被控訴人に関しても同人が配
転を希望する以上、副手の職務は専門分野に関係するものではあつても、その職務
内容は一般事務であり、特段の資格も不用であるから、文学部の他学科または他学
部へ配転するのが当然である。
(控訴人の主張)
(一) 控訴人の従来の抗弁が認められないとしても、控訴人は被控訴人に対し、
昭和五二年二月二八日付書面により、被控訴人を同年三月三一日限り解雇する旨の
意思表示をしたところ、その解雇理由は次のとおりである。
 神学科の学生数は、控訴人が昭和四七年一一月二一日同四八年度以降同学科の学
生募集を行わない旨決定して以来漸減し、昭和五二年三月末日現在で神学科に在籍
する学生九名中八名が卒業し、残り一名は退学したため、同年四月一日には同学科
の学生は皆無となつた。一方神学科専任の教員も次第に退職減員し 昭和四六年当
時同科の専任教員は一〇名で、そのうち五名が教授であつたところ、組織神学担当
のC教授は昭和四七年三月、新約聖書学担当のD教授は同五〇年三月、同担当のE
教授及び器学担当のF教授は、同五一年三月それぞれ退職し、神学科の教授は宣教
師として米国メソシスト教会より派遣された新約神学担当のG教授一名だけとな
り、昭和五二年三月三〇日当時同学科に在籍した専任教員四名中、H助教授はその
後青山学院女子短大一般教育キリスト教学の専任教員へ、I助教授は青山学院大学
文学部フランス文学科の専任教員へ、J助教授は同文学部第二部一般教育の専任教
員へ、そしてK専任講師は同女子短大児童教育学科の専任教員へそれぞれ配転さ
れ、また神学科備付けの図書もすべて大学中央図書館へ移管された。そこで控訴人
は昭和五二年三月九日開催の文学部教授会及び同月三〇日開催の学校法人評議員会
の議を経て、同日開催の学校法人理事会において、同五一年度末(昭和五二年三月
三一日)をもつて神学科の廃科を決定し、これに伴う学則の一部改正は、同五二年
四月一三日開催の文学部教授会及び同月二三日開催の大学協議会の議を経て、同月
二八日開催の学校法人理事会において承認され、右廃科は同年一一月一五日文部省
において認可され、副手一名(LことM)も同年三月三一日限り退職するに至つ
た。
 被控訴人に対する解雇は、右のごとき神学科の学生募集停止及び神学科廃科に伴
うものである。
(二) 被控訴人主張の(二)の事実を否認する。
(三) 被控訴人主張の(三)の事実中、被控訴人と雇用関係にあるのは控訴人で
あつて、文学部神学科ではないこと及び神学科の廃科が決定した昭和五二年三月三
〇日当時同科に在籍していた専任教員四名が他学科に配転されたことは認めるが、
被控訴人を他に配転すべきであるとの点は否認する。
 控訴人が就業規則に基づき、業務縮小により生じた過剰人員を配転すべき義務を
負うのは職員についてであつて、嘱託(副手)についてではない。副手は職員が公
募されて、学校法人理事会の決定により採用されるのと異なり、その採用は当該学
科の学科主任がその学科の卒業生(当該学科の卒業生を副手採用の対象とするの
は、当該学科の卒業生はその学科の教員と知合が多く、またその学科の専門分野の
知識を有するところから、その学科の雑務的事務をその業務とする副手として適任
であるからである)の中から、適切な人物を選んで学部長に推せんし、学部長の上
申に基づき学長が決定採用するのであり、その労働条件においても、職員が雇用期
間の定がないのに対し、副手はその定があること、職員は週六日制であるのに対し
副手は週五日制であること、副手の給与は職員の八割であり、賞与も職員と異な
り、年間二か月分の給与相当額定率支給であること等において相違しているので、
副手は当該学科が廃科になると、他学科の副手となる可能性はなく、ましてや職員
の身分を必要とする他部門への配転は不可能である。
(疎明関係)省略
       理   由
一 当裁判所は、本件雇用契約は昭和四八年三月三一日の経過に伴い、雇用期間の
満了によつて終了したものではなく、また控訴人の被控訴人に対する同年四月一日
到達の書面による解雇の意思表示は無効であるとの疎明があると判断するものであ
り、その理由の詳細は原判決の理由と同一であるからその説示を引用する(原判決
三枚目表一三行目から同五枚目裏五行目の「無効というべきである」まで。但し原
判決四枚目表四行目の「証人N(第一、第二回)」の次に「、当審証人N」を加え
る)。
二 そこで進んで、控訴人の被控訴人に対する昭和五二年二月二八日付書面による
解雇の意思表示の効力につき検討するに、成立に争いのない疎乙第一九号証による
と、控訴人は被控訴人に対し、昭和五二年二月二八日付書面により、被控訴人を同
年三月三一日をもつて解雇する旨の意思表示をしたことが認められる。
 控訴人は、右解雇は、神学科の学生募集停止及び神学科廃科のためやむをえずな
したものであると主張し、被控訴人は、右神学科廃科は、控訴人殊にA院長と、神
学等につき見解を異にする神学科教員の学外追放を目的とする公序良俗に反する無
効行為であると抗争する。
 よつて案ずるに、神学科の入学者が過去一〇年間毎年約二〇名であつたこと及び
控訴人が昭和四七年一一月二一日昭和四八年度以降同学科の学生募集を行わない旨
決定したことは当事者間に争いがなく、成立に争いのない疎甲第三一号証(但し後
記措信しない記載部分を除く)、疎乙第一八号証の一、二、三、当審証人Nの証言
により成立を認める疎乙第一二号証、弁論の全趣旨により成立を認める疎乙第一三
ないし第一七号証、当審証人N、同J(但し後記措信しない部分を除く)、同Hの
各証言及び弁論の全趣旨によると、控訴人が前記(一)において主張する事実を認
めることができ、成立に争いのない甲第三一、第三二号証の各記載及び当審証人J
の証言中、神学科廃科はA院長と神学等につき見解を異にする神学科教員の排除を
目的とするものであるという趣旨の部分は措信できず、他に右認定を左右する疎明
はない。
 そうすると、神学科廃科は被控訴人主張のごとく擬装廃科ではなく、控訴人の被
控訴人に対する右解雇は、神学科の学生募集停止及び神学科廃科に伴うものである
ことが認められる。
三 被控訴人は、被控訴人と雇用関係にあるのは控訴人であつて、文学部神学科で
はないから、神学科が廃科されたとしても、控訴人は被控訴人を文学部の他学科ま
たは他学部へ配転すべきであると主張する。
 よつて案ずるに、被控訴人と雇用関係にあるのは控訴人であつて、文学部神学科
でないことは当事者間に争いがないが、成立に争いのない疎乙第一〇号証、原審証
人D、当審証人Oの各証言により成立を認める疎乙第三号証、原審証人N(第一、
第二回)、同D、同P、同E、当審証人N、同Oの各証言及び弁論の全趣旨によれ
ば、就業規則上控訴人が、業務縮小により生じた過剰人員を配転すべき義務を負う
のは、職員についてであつて、業務の必要に応じ置くことになつている嘱託(副
手)についてではないこと、文学部副手は研究室の諸施設及び同室配置の図書の管
理、講義、演習、実験等の実施に関する事務、当該学科に関する学会の事務、その
他文学部長及び学科主任が指示する事項といつた、いうならば当該学科に属する雑
務的事務を掌るものであつて、職員が公募の上学校法人理事会の決定により採用さ
れるのと異なり、その採用は当該学科の学科主任が、その学科の卒業生中から選ん
で学部長に推せんし、学部長の上申に基づき学長が決定採用するものであること、
その学科の卒業生を副手採用の対象とするのは、当該学科の卒業生はその学科の教
員と知合が多く、その学科の専門分野の知識を有するところから、その学科の右の
ごとき雑務的事務の処理に適しているがためであること、嘱託(副手)はその労働
条件においても、職員が定年制であるのに対して、雇用期間の定があり、職員の週
六日制に対し週五日制であること、その給与は職員の八割であり、賞与も年間二か
月分の給与相当額の定率支給であつて、この点も職員と異なることが認められる。
 右認定事実によると、文学部神学科副手である被控訴人は就業規則上配転の対象
とならないのみならず、その雇用関係にあるのは文学部神学科ではなく、控訴人で
ある点において職員ないし文学部他学科の副手と同一であるとしても、その採用及
び労働条件において職員ないし文学部他学科の副手と相違し、従つて右両者は労働
契約により約定された労働の種類が異なることが認められるので、神学科が廃科に
なつても、控訴人は被控訴人を文学部の他学科または他学部へ配転する義務はない
ものといわなければならない。
 なお原審証人M、当審証人Nの各証言及び弁論の全趣旨によると、神学科廃科当
時神学科に在籍していたBはその後大学中央図書館勤務に変つているが、同人は副
手ではなく、アルバイトであつたことが認められるので、このことは控訴人に配転
義務があることの証左とならない。
 そうすると、前記解雇の意思表示は有効であり、従つて被控訴人は昭和五二年三
月三一日をもつて、控訴人の従業員たる地位を喪失したものというべきである。
四 成立に争いのない疎甲第三三ないし第三八号証、原審及び当審における被控訴
人本人尋問の結果によると、以上のとおりであるから、被控訴人は控訴人に対し、
昭和四八年六月分の残賃金の外、同年七月一日以降右昭和五二年三月三一日までの
間の未払賃金債権を有することとなるが、右未払賃金は既に生活上やりくりのすん
だ過去のものであり、被控訴人が右賃金の支払を受けなかつたことから、その生活
費等にあてるため借金し、その弁済期が到来して、これを弁済しなければ著しい損
害を被る等の特別の事情があれば格別、被控訴人が右のごとき事情にあることは、
原審における被控訴人本人尋問の結果だけではこれを認め難く、他にこれを認める
に足りる疎明はないので、右未払賃金について仮払を認める必要性はないというの
外ない。
五 よつてこれと異なる原判決は失当であるからこれを取消し、被控訴人の従来の
仮処分申請を棄却し、当審での拡張申請を棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟
法第九六条、第八九条を適用し主文のとおり判決する。
(裁判官 渡辺一雄 田畑常彦 丹野益男)

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