弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人市原庄八上告趣意第一点について。
 原判決は、その事実理由の箇所で被告人が少年であることを判示せず、また、そ
の擬律の箇所で少年法の規定を示さなかつたことは、所論のとおりであつて、一般
の取扱例に反し粗笨であることを免れない。しかし、昭和二三年一二月一〇日言渡
された原判決書によれば、被告人の氏名表示の箇所で特に昭和六年六月五日生と記
載し、その主文の箇所で被告人を懲役八月以上一年以下に処する。旨不定期刑の言
渡をしているから、原判決は、その言渡の際被告人を一八歳に満たない少年である
と認め、旧少年法第八条第一項に従い処断したものであること明白である。そして
有罪判決に示すべき旧刑訴三二〇条にいわゆる「罪となるべき事実」とは具体的犯
罪構成事実を指し、また同条にいわゆる「法令の適用」とはかゝる具体的犯罪構成
事実に適用すべき実体法規をいうものである。従つて、少年法にいわゆる少年たる
ことは、特にこれを判決書の事実理由の箇所で明示しなくとも罪となるべき事実記
載を欠くものとはいえないし、また、犯罪事実に適用すべき実体法規以外の法規は、
現実にこれを適用したことが認められる限り、特にこれを法律適用の箇所に示さな
くとも法令の適用をしなかつたものともいえない。されば、原判決には所論の違法
があるものとはいえないから、所論は結局採ることができない。
 同第二点について。
 しかし、少年法にいわゆる少年であるか否かは、原判決言渡の時における年齢に
従うべきものであることは、既に々当裁判所の判例とするところである。そして、
論旨第一点について述べたとおり被告人は昭和六年六月五日生であり、原判決は昭
和二三年一二月一〇日言渡されたものであるから、原判決がその言渡の際被告人を
一八歳に満たない少年であると認め、被告人に対し旧少年法第八条による不定期刑
の言渡をしたのは正当であつて原判決には所論の違法は存しない。本論旨も採るこ
とができない。
 よつて旧刑訴四四六条に従い主文のとおり判決する。
 この判決は裁判官全員の一致した意見である。
 検察官 十蔵寺宗雄関与
  昭和二四年一一月一〇日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    沢   田   竹 治 郎
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    岩   松   三   郎

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