弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     当審における未決勾留日数中六〇日を本刑に算入する。
         理    由
 被告人の上告趣意は、量刑不当、事実誤認の主張であつて刑訴四〇五条の上告理
由に当らない。弁護人若林清の上告趣意第一点乃至第三点は、刑訴法違反と刑法違
反の主張であり、かつ、原審において主張判断を受けていない事項に関するから、
上告適法の理由とならない。同第四点は刑訴法違反をいうが実質は量刑不当の主張
であつて刑訴四〇五条の上告理由に当らない。なお、累犯加重の原由たる被告人の
前科は元来罪となるべき事実ではないから、必ずしも証拠によりこれを認めた理由
を示す必要のないことは当裁判所の判例とするところである。昭和二四年五月一八
日大法廷判決、刑集三巻六号七三八頁参照。本件においては適法に証拠調のなされ
ている記録中の被告人に対する前科調書によれば一審判決判示の所論各前科を認定
することができるから、論旨第一点は理由がない。また右前科調書には、論旨主張
の詐欺罪の刑の終期は昭和三一年三月一五日と記載してあり、所論の計算による終
期よりも二日早くなつているけれども、右は、前記調書に「控訴取下」と記載して
ある事実に徴すれば、上訴提起期間中の未決勾留日数中上訴提起前の二日間が刑訴
四九五条一項の規定により本刑に算入された結果であると認めるのを相当とするか
ら、同第二点も理由がない。次に、論旨第三点についてであるが、一審判決は、所
論指摘のとおり、「累犯となる前科」として「一、昭和二六年四月一一日確定、宮
崎簡易裁判所、窃盗懲役一〇月、一、昭和二九年一〇月二七日確定、宮崎地方裁判
所、詐欺懲役一年六月」と判示したのみであるから、右窃盗罪については、昭和三
一年三月中における本件各犯行当時、右刑の執行を受け終つていたことが算数上明
白であるといい得るけれども、右詐欺罪については、昭和三一年三月一六日から同
月二〇日までの間における判示第二乃至第五の各犯行当時、その刑の執行を受け終
つていたか否か、右判示自体からは明白でなく、従つて、かかる判示では、刑法累
犯加重の規定を適用すべき根拠不明であり理由不備の違法を免れないけれども、前
記前科調書には、右詐欺罪については、右の「控訴取下」の外なお「未決勾留日数
四〇日通算、刑の終期昭和三一年三月一五日のところ、昭和三〇年一二月二二日仮
出獄釈放」と記載してあり、これによれば、判示第二乃至第五の各犯行当時被告人
において右懲役一年六月の刑の執行を受け終つていた事実を認め得るから、上記の
違法はいまだ刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。その他記録を調べ
ても同条を適用すべきかどは認められない。
 よつて同四一四条、三八六条一項三号、刑法二一条、刑訴一八一条一項但書によ
り裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。
  昭和三二年四月六日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    池   田       克
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一

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