弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人小島徹三の上告趣意第一点について。
 公判請求書を見ると、被告人の罪名には、強盗、窃盗とあつて、詐欺の罪名がな
いことは所論の通りである。しかしその公訴事実の題下には明に「第三」として被
告人Aがギターを騙取したとして詐欺の事実が記載されている。かように公判請求
書に詐欺の事実が記載されている以上、詐欺についても公訴が提起されたものであ
つて、罪名を記載洩れしたことは公訴提起の効力に影響するものではない。次に第
一審判決でも明に同被告人について詐欺の事実を認定していること同判文で明かで
ある。たゞ詐欺に関する法律の適条を遺脱したのである。しかし第一審で詐欺に関
し審判している以上詐欺についても第二審へ移審の効果を生じたものであり且又公
訴事実はその全部が第二審の審判の対象となるべきものであるから、原審が判示第
一詐欺の事実に基き被告人を処断したのは正当であつて、所論のような違法はない。
論旨は理由がない。
 同第二点について。
 旧刑訴法第四〇三条にいわゆる「原判決の刑より重い刑を言渡す」というのは判
決主文における科刑を原判決にくらべて重くする意味であるから、被告人が控訴を
した事件について第一審判決後被告人から所論のように被害者に被害の弁償をした
ような事情があつても控訴裁判所は必ずしも第一審判決の刑より軽い刑を言渡さな
ければならないものではない。犯情その他諸般の事情によつて第一審判決と同一の
刑を言渡すことができ又之を言渡しても前記旧刑訴第四〇三条に違反するものでは
ない(昭和二三年(れ)第七四八号同年一一月一六日第三小法廷判決参照)。され
ば論旨は理由がない。
 弁護人定塚道雄の上告趣意について。
 しかし刑訴応急措置法第一二条が憲法第三七条第二項に違反していないことは当
裁判所の判例の示すところである(昭和二三年(れ)第八三三号同二四年五月一八
日大法廷判決参照)。所論は右判例と異る独自の見解を述べるに過ぎない。論旨は
採用することができない。
 よつて刑訴施行法第二条、旧刑訴法第四四六条により主文のとおり判決する。
 右は裁判官全員の一致した意見である。
 検察官 茂見義勝関与
  昭和二四年一〇月一日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎

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