弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主       文
本件控訴を棄却する。
当審における未決勾留日数中120日を原判決の刑に算入する。
理       由
第1 本件控訴の趣意は,弁護人角山正作成の控訴趣意書に記載のとおりであ
るから,これを引用する。
控訴趣意の第1は,事実誤認の主張であり,被告人には殺意はなかったの
に,強盗殺人未遂罪の成立を認めた原判決には事実誤認がある,というの
であり,控訴趣意の第2は,量刑不当の主張であり,懲役10年に処した原判
決の量刑は重すぎる,というのである。
第2 そこで,記録を調査し,当審における事実取調べの結果を併せて検討す
る。
 1 控訴趣意第1の事実誤認の主張について
所論は,被告人は,体重を乗せ手加減せずに勢いよく刺したりはしておら
ず,何度も強盗を実行しようとしながら度胸がなく実行できなかったのである
から,人の命を奪ってまで金銭を取ろうとする決意はなかったものであり,未
必の殺意を認める趣旨の被告人の供述調書も,取調官の理詰めの誘導によ
るもので信用性はなく,被告人に未必の殺意があったことを認定することは
困難である,と主張する。
 しかしながら,被告人が被害者を包丁で突き刺した状況は,原判決が(事
実認定の補足説明)の2で認定するとおりであり,先端の尖った刃体の長さ
約16.5センチメートルの鋭利な包丁でもって,被害者の後ろから,背部正
中線の右4センチメートル,右骨盤の上4センチメートルの臓器の存する右
腰背部を突き刺しており,そのため,包丁の約16.5センチメートルの刃体全
部が被害者の体内に没入し,体内の下大静脈を損傷し,腹膜を傷つけてお
り,包丁が抜かれた場合には下大静脈の損傷個所から多量に出血し,ある
いは集中している腎臓,腸管,下大動脈等の重要な臓器が損傷されていれ
ば,死亡する可能性が極めて高かったことが認められ,被告人は,長い刃体
を有する鋭利な上記包丁で,被害者の枢要部である右腰背部を相当の力を
込めてほぼ垂直に突き刺したといえるのである。しかも,被告人は,金銭を奪
うのによい相手が現れる機会を長時間にわたって待ち続け,是非とも金銭を
奪わなければとの強い意図を有し,そのため相手が声を出したり騒いだりし
ないよう当初から腹を刺そうと考えていたことも認められるのである。したがっ
て,被告人は,少なくとも被害者が死亡するかもしれないことを認識しなが
ら,それでも構わないとの思いで,金銭奪取のため包丁でその腰背部を突き
刺したものと十分に認定することができる。事実誤認をいう論旨は理由がな
い。
 2 控訴趣意第2の量刑不当の主張について
 本件は,金銭強取の目的で,殺意をもって所携の包丁で被害者の腰背部
を突き刺し,全治未定の下大静脈損傷等の傷害を負わせたものの,殺害す
るに至らなかったという強盗殺人未遂と,同包丁の不法携帯の事案である。
被告人は,自ら暴力団員として暴力団に関係する仕事をしたものの失敗し
て,地元の福井におれなくなり,逃げ出して方々を転々とし,妻や知人から
金銭の援助を受けたり,仕事先で不正に金員を得るなどして,それらを生活
費や遊興費に当てていたが,それにも行き詰まって所持金がごくわずかとな
ったことから,本件強盗を企てたものであり,その動機や経緯は誠に身勝手
で短絡的なものといわなければならない。被告人は,銀行のキャッシュコー
ナーに現金を引き出しに来る女性客を待ち受けて数時間にわたり機会をう
かがい,適当な女性客と見定めると包丁を隠し持って近づき,その背後から
いきなり腰背部を突き刺したものであり,目的のためには生命を奪うことも構
わず,抵抗の少ないと思われる女性を狙って襲いかかるという,冷酷非情で
凶悪な犯行である。被害者の負った傷害は,包丁の刃体全部が没入して奥
深くまで突き刺さり,下大静脈を損傷し,腹膜まで達するという重傷であり,
適切な医療措置により一命をとりとめたものの,死亡する可能性が極めて高
かったものであり,被害者は,生命の切迫した危険にさらされたばかりでな
く,長期間の治療を余儀なくされ,元の健康体に戻ることは望み得ず,その
被った肉体的,精神的苦痛は非常に大きく,被告人に対する厳重な処罰を
望んでいるのも当然である。被告人側から被害者に対して慰謝の措置は何
ら講じられていない。
 そうすると,被告人の刑事責任は非常に重いというべきであり,確定的殺意
があったとまでは認められず,金銭強取も未遂に終わっていること,被告人
なりの反省の言葉を述べていることなどの酌むべき事情を考慮しても,被告
人を懲役10年に処した原判決の量刑が重すぎることはない。論旨は理由が
ない。
第3よって,刑訴法396条により本件控訴を棄却し,当審における未決勾留の算
入につき刑法21条を,当審における訴訟費用を被告人に負担させないこと
につき刑訴法181条1項ただし書をそれぞれ適用して,主文のとおり判決す
る。
仙台高等裁判所第1刑事部
裁判長裁判官   松   浦       繁
裁判官   根   本       渉
裁判官   ・   木   順   子

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