弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人諌山博の上告趣意第一点について。
 所論は単なる法令違反の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。 
(爆発物取締罰則にいわゆる爆発物とは、理化学上の爆発現象を惹起するような不
安定な平衡状態において、薬品その他の資材が結合せる物体であつて、その爆発作
用そのものによつて公共の安全をみだし、または人の身体財産を害するに足る破壊
力を有するものと解するを相当とし、右理化学上の爆発現象というのは、通常、あ
る物体系の体積が物理的に急激迅速に増大する現象すなわち物理的爆発竝びに物質
の分解または化合が極めて急速に進行し、かかる化学変化に伴つて一時に多量の反
応熱および多数のガス分子を発生して体積の急速な増大を来たす現象すなわち化学
的爆発を指すものであるとすることは当裁判所大法廷の判例とするところである〔
昭和二九年(あ)第三九五六号、同三一年六月二七日大法廷判決、刑集一〇巻六号
九二一頁〕。そして、原審が認定したところによれば、本件ラムネ弾は、ラムネ瓶
におよそ三四瓦位のカーバイドを詰めたものであつて、これに水を数十瓦注入し傾
斜あるいは倒立させて直ちに投ずるときは、カーバイドと水の反応により急激多量
にアセチレンガスを発生し、且つその反応熱等により右ガスの膨張を伴い、一方前
記傾斜等の際瓶内のラムネ玉が瓶の口を密閉するので、瓶内で発生を続けるガスの
圧力が急速に高まり、ついに容器である瓶の外壁を破つて急激にその体積を増大し、
これがため瓶の破片を飛散させる現象を生じ、右経過におけるカーバイドと水の反
応によるアセチレンガスの発生は化学反応であつてもそれは化学上の爆発というも
のではないが、右のように発生したアセチレンガスが密閉された瓶内で急速に充満
増加するため高圧を生じそれが瓶の耐圧限界を越え前記のごとくこれを破裂させる
に至る現象は物理的爆発ということができ、しかも瓶内のカーバイドに注水すると
きは容易にガスを発生し前記爆発現象を示すものであるから、それは爆発現象を惹
起しうるような不安定な平衡状態において薬品その他の資材が結合されている物体
に該当するというのであり、またこれに水数十瓦を注入し傾斜または倒立させた後
五秒乃至十数秒で爆発し、原判決説示のような種々の危険が予想されるというので
あつて、右原審の認定はその挙示の証拠によりこれを是認できる。しからば、本件
ラムネ弾は、その爆発作用そのものによつて公共の安全をみだしまたは人の身体財
産を害するに足る破壊力を有するものと認めることができるから、原審がこれを爆
発物取締罰則にいわゆる爆発物に該当すると判示したことは正当である。)
 同第二点は量刑不当の主張であつて、同四〇五条の上告理由に当らない。
 弁護人今長高雄の上告趣意第一点について。
 記録によれば、原審の昭和三〇年七月一四日の公判期日の通知書と検察官の控訴
趣意書は、同月四日午後三時書留郵便に付して同弁護人宛送達した旨の報告書が存
在しているから(被告人に対する本件上訴記録二五六丁)、それらの書類の送達は、
適法になされたものということができる(刑訴規則六三条参照)。しかし弁護人は
「昭和三二年九月二八日」と記載すべきを「昭和三二年八月二八日」と誤記した公
判期日の通知書を同年九月七日に受領しており、従つて同年九月二八日の公判期日
の通知が適法に同弁護人になされていないことは所論のとおりであるが、その後同
年一二月二四日の判決宣告期日の通知書は、同年一一月二七日午前一〇時書留郵便
に付して弁護人に送達されたことが記録上明らかであるから、弁護人としては、判
決宣告までに弁論再開の申立をする等自ら弁論をする機会を得ることができた筈で
あるのにそのことなくして経過したばかりでなく、控訴趣意書は提出せられており、
これに基き国選弁護人によつて弁論がなされ、且つ検察官の控訴趣意に対しても国
選弁護人による答弁がなされていることが記録上明らかであるから、前記のごとき
九月二八日の公判期日の通知が適法になされなかつた違法があつたとしても、これ
によつて被告人が資格を有する弁護人を依頼することのできる権利が侵害せられた
り、弁護権の行使が不当に妨げられたりした事実は到底認めることはできない。さ
れば所論違憲の主張は前提を欠くものであつて採るを得ない。
 同第二点について。
 所論は事実誤認、単なる法令違反の主張であつて、その採るを得ないことは弁護
人諫山博の上告趣意第一点に対する説示において述べたとおりである。
 同第三点について。
 所論は量刑の非難で、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 被告人本人の上告趣意について。
 所論は事実誤認、単なる訴訟法違反の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に
当らない。
 なお、記録を調べても、所論の点につき、刑訴四一一条を適用すべきものとは認
められない。
 よつて同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
  昭和三四年五月七日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    下 飯 坂   潤   夫
            裁判官    高   木   常   七

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