弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人齋藤熊雄の上告趣意第一点について。
 共同被告人の供述は所論のように弁論を分離して証人として訊問し被告人に反対
訊問の機会を確保しなければ証拠とすることができないものではない。なぜならば
弁論を分離しなくても共同審理の際に共同被告人は相互に反対訊問の機会が与えら
れているのであるから(刑訴応急措置法一一条二項)他の共同被告人との関係にお
いて、その供述に証言としての証拠能力を否定すべき理由がないからである。そし
てこのことは当裁判所の判例の趣旨に照して明である。(昭和二三年(れ)第七七
号同二四年五月一八日大法廷判決最高裁判所判例集三巻六号七四三頁参照)されば
原判決が判示第一事実を原審相被告人Aの原審公廷における供述と他の挙示の証拠
とを綜合して認定しても所論の違法ありということはできないから論旨は採用でき
ない。
 同第二点について。
 しかし原判決に対する証拠の取捨判断の非難は事実認定の非難に帰するから上告
適法の理由ではない。
 弁護人鍛治利一の上告趣意第一点及び第二点について。
 所論第一点は原判決が採用しなかつた証拠を挙げて原判決は理由不備であるとし、
同第二点は原判決は被告人に共同犯行の事実があつたか否かについて審理を尽して
いないというのである。しかし右は何れも原判決の事実の認定の非難に帰するもの
であるから上告適法の理由ではない又原判決の証拠の取捨及びその判断については
経験則に反する点を認めることもできない。
 同第三点について。
 しかし共犯者たる共同被告人の供述であるからといつて全く証拠能力を欠くもの
でないことは、前示判例の示すところである。なお論旨は共同被告人の供述が半証
拠力を有するに過ぎないのは、他人への罪責転嫁の危険性に基くとするものである
が、所論のような事情は陪審裁判でなくて、裁判官自ら事実の認定をする裁判にお
いては裁判官の判断すべき証明力の問題に過ぎない。そして本件においては原判決
は判示事実を共犯者たる共同被告人Aの供述と盗難届その他の証拠とを綜合して認
めているのであるから憲法三八条三項に違反するという論旨は、前示大法廷の判例
の趣旨からいつても採用できない。
 よつて刑訴施行法二条、旧刑訴法四四六条により主文のとおり判決する。
 この判決は裁判官全員一致の意見である。
 検察官 平出禾関与
  昭和二六年六月二九日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    谷   村   唯 一 郎

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