弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告代理人林武雄の上告理由について
 一 仮処分命令の被保全権利が当初から存在しない場合に、仮処分申請人が右命
令を得てこれを執行したことに故意又は過失があったときは、右申請人は、民法七
〇九条により、被申請人がその執行によって受けた損害を賠償する義務を負担すべ
きものである。しかし、仮処分命令の本案訴訟において原告敗訴の判決が確定した
としても、その一事をもって、直ちに右過失が存すると断ずることはできない(最
高裁昭和四三年(オ)第二六〇号同年一二月二四日第三小法廷判決・民集二二巻一
三号三四二八頁参照)。
 二 これを本件についてみるに、
  本件は、上告人及び被上告人の父である訴外Dから、土地の表示登記を経てい
た同訴外人所有の本件土地を贈与された上告人が、同訴外人の死後、その遺言の執
行により本件土地について所有権保存登記を経た被上告人に対して、真正な登記名
義の回復を原因とする所有権移転登記手続請求権を被保全権利として、本件土地の
譲渡、質権、抵当権、賃借権の設定その他一切の処分を禁止する旨の仮処分を申請
し、右申請に係る決定の執行としてその旨の登記がされたところ、本案訴訟におい
て上告人敗訴の判決が確定したので、被上告人が上告人に対して、右仮処分の申請
について上告人に過失があったとして、右仮処分の執行により本件土地を賃貸する
ことができなかったことにより失った賃料に相当する損害の一部の賠償を請求する
ものであるところ、記録によれば、上告人は、次の事実を主張していることが認め
られる。
 (1) 上告人は、訴外Dから、昭和三四年から昭和三六年までの間に本件土地の
贈与を受けてその引渡しを受け、以後、本件土地を占有、管理し、本件土地の地目
は、昭和五三年一一月二六日には畑から雑種地に変更された。
 (2) 訴外Dは、昭和五六年一一月六日、本件土地を被上告人に「相続させる」
旨の公正証書による遺言をして、その三日後の同月九日に死亡した。
 (3) 被上告人は、右遺言書の存在を上告人に知らせることなく、これを相続を
証する書面として、同年一二月八日、本件土地について被上告人を所有者とする所
有権保存登記手続をした。
 (4) 上告人は、被上告人が本件土地を相続により取得したものであり、訴外D
から贈与を原因とする上告人への所有権移転登記義務を承継するものであって、相
続を原因とするその所有権取得を上告人に対抗することはできないとして、本件仮
処分の申請をした。
 (5) 上告人は、右理由に加えて、仮に、上告人と被上告人とが対抗関係に立つ
としても、被上告人は上告人が本件土地の贈与を受けて以来、これを占有、管理し
てきた事実を知りながら、本件土地の所有権保存登記手続をしたものであり、上告
人の登記欠缺を主張することができない背信的悪意者に当たるとして本件仮処分の
本案訴訟を提起したが、第一審及び第二審においては、本件遺言の趣旨が遺贈であ
ることについて自白が成立したものとされ、推定相続人たる上告人は登記を具備す
ることなしには生前贈与により取得した所有権をもって本件土地の遺贈を受けた推
定相続人たる被上告人に対抗することができないとして、上告人敗訴の判決がされ
た。
 (6) 上告人は、本案の第二審判決に対して、本件遺言の趣旨は遺贈ではなく、
遺産分割方法の指定であり、その故に、訴外Dの相続人たる被上告人は相続開始前
に同訴外人から贈与を受けた上告人に対して権利を主張することができないとの事
実を主張して上告したが、この点は事実審の専権に属する事実認定に係るものであ
るとして上告が棄却され、上告人敗訴の判決が確定した。
 ところで、本件遺言の趣旨を遺贈又は遺産分割方法の指定のいずれと解すべきか
は遺言の解釈に関するものであるところ、上告人の前記主張によれば、上告人が右
遺言の趣旨を遺産分割方法の指定と解したことは首肯し得るところであり、上告人
主張に係る右事実経過に照らせば、本件仮処分命令の申請に際して、上告人が取得
した本件土地所有権を被上告人に対抗することができないとの判断を通常人に期待
することも困難であったことが窺われるのである。
 三 そうすると、右の点を審理することなく、仮処分命令の本案訴訟において原
告敗訴の判決が確定したこと及び仮処分申請における主張がその本案判決において
採用されなかったことを理由として上告人に過失ありとした原審の判断には、民法
七〇九条の解釈適用を誤ったか、審理不尽の違法があるものといわざるを得ず、右
違法が判決に影響を及ぼすことは明らかであるから、この点をいう論旨は理由があ
り、その余の論旨について判断するまでもなく、原判決は破棄を免れない。
 よって、右の点について更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すこと
が相当であるので、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官全員一致の意見で、主文の
とおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奧   野   久   之
            裁判官    島   谷   六   郎
            裁判官    藤   島       昭
            裁判官    香   川   保   一
            裁判官    草   場   良   八

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛