弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
     控訴費用は控訴人の負担とする。
         事    実
 控訴代理人は原判決を取消す別紙第一目録記載の不動産が控訴人の所有なること
を確認する。被控訴人は控訴人に対し右不動産に付為した松山地方法務局昭和二十
四年四月九日受付第三三一三号同年三月二十九日付贈与を原因とする所有権移転登
記の抹消登記手続を為すべし。被控訴人は控訴人に対し別紙第二目録記載の物件を
引渡すべし。若し引渡不能のときは金十三万円を支払うべく一部不能のときはその
掲記価格相当の金員を支払うべし。訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とする
との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。
 当事者双方の事実上の主張は控訴代理人において本件登記抹消請求は松山地方法
務局昭和二十四年四月九日受付第三三一三号による贈与を原因とする所有権移転登
記の抹消手続を求めるものである。昭和二十四年八月一日附内容証明郵便による本
件不動産贈与契約の取消原因は詐欺、強迫に基くものであるが、民法第七百五十四
条によつても取消したものである。尚本件不動産は登記簿上控訴人名義になりおる
も真実は控訴人の父訴外Aの所有であるから本件贈与は同訴外人の同意を停止条件
としたものであると述べ、被控訴代理人において控訴人主張の本件不動産が訴外A
の所有であるとの点及び本件贈与が同訴外人の同意を停止条件としたとの点は否認
すると述べた外いずれも原判決事実摘示と同一であるからここにこれを引用する。
 証拠として控訴代理人は甲第一乃至第十号証を提出し原審並びに当審証人A、同
B、当審証人Cの各証言並びに原審並びに当審における控訴本人(原告)の尋問の
結果を援用し乙第一、第二号証同第五乃至第八号証の成立を認め同第三、第四号証
については控訴人名下の印影が自己の印の印影なることのみ認め、爾余の部分を否
認し被控訴代理人は乙第一乃至第八号証を提出し原審並びに当審証人D当審証人E
の各証言並びに原審並びに当審における被控訴本人(被告)の尋問の結果を援用し
甲第一乃至第九号証の成立及び同第十号証中登記官署の印のみを認め爾余の部分は
不知と述べ同第三、第四号証を利益に援用した。
         理    由
 先づ別紙第一目録記載の不動産の請求につき判断する。
 本件不動産につき昭和二十四年四月九日松山地方法務局受付第三三一三号を以て
被控訴人名義に贈与を原因とする所有権移転登記のなされたこと及び控訴人と被控
訴人が未だ法律上夫婦関係にあることは当事者間に争のないところである。
 仍て被控訴人の本件不動産取得が真正な贈与契約に基くものであるか否かについ
て按ずるに成立に争のない甲第一、第三、第四号証、乙第一号証原審並びに当審証
人Dの証言によりその成立を認め得る乙第三、四号証に右証人D当審証人Eの各証
言並びに原審並びに当審における被控訴本人(被告)の供述を綜合すれば控訴人と
被控訴人は昭和六年結婚し爾来大阪市において同棲し洋服製造業を営み夫婦仲も円
満で相当収益もあり当時郷里の控訴人はその父訴外Aに依頼して本件不動産を買受
けその所有権を取得するに至り其の中昭和十年九月二十日正式に婚姻したが夫婦仲
に実子なく控訴人は取引の関係上遊里に出入する中訴外Fと懇意となり同訴外人を
身受してこれと妾関係を結び三人の子女を挙げ自然被控訴人を疎ずるに至り昭和二
十年六月戦災後は被控訴人との同居を拒むのみでなく被控訴人に生活費も十分に支
給しないので被控訴人は遂に控訴人と協議の結果事実上離婚するに至り控訴人はそ
の慰藉料として被控訴人に対し本件不動産と金五十万円を贈与すること(但右金員
は月二千円の月賦払とすること)を約し不動産については贈与契約書と不動産登記
申請に要する控訴人委任状等を被控訴人に交付したことを認定するに十分であつて
右認定に牴触する乙第二号証の記載部分、原審並びに当審証人A、当審証人C並び
に原審並びに当審における控訴本人(原告)の供述は各証拠に対比し措信し難くそ
の他控訴人提出の全証拠によるも右認定を覆すに足らない。
 控訴代理人は本件不動産は登記簿上控訴人名義になりおるも控訴人の父訴外Aが
他より買受けたもので真実右訴外人の所有であるから本件贈与については同訴外人
の同意を停止条件となしたものである旨主張するけれどもこの点に関する前顕証人
A同Cの各証言並びに前顕控訴本人(原告)の供述は輙く措信し難く他に右事実を
認むるに足る証拠がないから控訴人の右主張は採用することができない。(もし本
件不動産が控訴人の主張するが如く訴外Aの所有であるならば右不動産に関する控
訴人の本訴請求はその主張自体失当である)
 更に控訴代理人は本件贈与は被控訴人側の詐欺又は強迫に因るものであるからそ
の取消をなす旨主張するけれども右贈与が詐欺又は強迫に基くものであるとの事実
を認むるに足る証拠がないから控訴人の右主張も亦採用することができない。
 然らば被控訴人の本件不動産の取得は真実な贈与に因るものであると謂わなけれ
ばならない。
 尚控訴代理人は仮に本件贈与が有効であるとしても夫婦間の契約であるから昭和
二十四年八月一日これを取消したので本訴請求を維持すると予備的に主張し被控訴
人において右は請求の基礎に変更ある原因の変更で許すべからざるものであると抗
争するけれども本件不動産に対する請求は該不動産が現に控訴人に属することを主
張しその所有権の確認並びに所有権に基く妨害排除として登記の抹消を求むるもの
で控訴人の右予備的主張は単に右不動産が現に控訴人に属する経過事実を附加した
るに過ぎず請求の基礎に変更がないから被控訴人との点に関する右主張は採用する
ことはできない。
 <要旨>しかし元来夫婦間において為した契約は婚姻中何時にても夫婦の一方より
これを取消すことができるけれども該契約の取消は正常な夫婦関係を前提と
してのみ容認せらるべきものであつて夫婦関係の既に破綻に頻し離婚することを当
事者双方が了解しているが如き場合には特別の事情の変更のない限り夫婦間の契約
を取消すもその効果を生ぜないものと解すべきところ本件についてこれを見るに控
訴人と被控訴人間の夫婦関係は円満を欠き既に破綻して離婚することを双方了解し
ていることは前段認定の如くであつてその後双方離婚の意思を翻したことその他特
別の事情の変更が認められないから本件贈与の取消はその効果なきものと謂うべく
この点に関する被控訴人の右主張も採用することができない。
 次に別紙第二目録記載の物件に対する請求について判断する。
 被控訴人が戦時中疎開の目的で控訴人より本件衣類中、お召丹前一枚、セル着物
一枚、お召羽織一枚及び冬物衣類二枚を除くその余の衣類の寄託を受けていたこと
は被控訴人の認めるところであり前顕控訴本人(原告)の供述によれば右除外の五
枚の衣類も同時に被控訴人が控訴人より保管を受けていたことを窺知することがで
きる。しかし終戦後における困難な社会生活の状態に前顕被控訴人本人(被告)の
供述を綜合すれば被控訴人が前述の通り終戦後原告と別居中控訴人から十分な生活
費の支給も受けられず困窮していた当時控訴人の了解を得てこれ等衣類を逐次売却
して生活費に充てたものであることを認めるに足り他に反証ない限りこれ等衣類の
寄託関係は被控訴人が控訴人からその処分を一任せられた当時終了すると共に控訴
人は被控訴人に対しその返還請求権を喪失したものと認めるを相当とする。
 然らば控訴人の本訴請求はいずれも失当であつて到底棄却を免れない。よつて右
と同趣旨に出てた原判決は相当であつて本件控訴は理由がないから民事訴訟法第三
百八十四条によりこれを棄却すべきものとし訴訟費用につき同法第九十五条第八十
九条七適用して主文のとおり判決する。
 (裁判長判事 前田寛 判事 近藤健蔵 判事萩原敏一)

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