弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

主文
1 被告吹田市長が,平成14年4月16日付けで選定者A及び同Bに対してし
た各転入届不受理処分を取り消す。
2 被告吹田市は,原告(選定当事者)に対し,選定者Aのために50万円,同
Bのために50万円及びこれらに対する平成14年4月16日から支払済みまで年
5分の割合による金員を支払え。
3 原告(選定当事者)の被告吹田市に対するその余の請求を棄却する。
4 訴訟費用は,原告(選定当事者)に生じた費用(選定前の原告らに生じた費
用を含む。以下同じ。)の2分の1と被告吹田市長に生じた費用を同被告の負担と
し,原告(選定当事者)に生じた費用の4分の1と被告吹田市に生じた費用の2分
の1を同被告の負担とし,その余の全費用を原告(選定当事者)の負担とする。
5 この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 請求
1 主文第1項と同旨
2 被告吹田市は,原告(選定当事者)に対し,選定者Aのために100万
円,同Bのために100万円及びこれらに対する平成14年4月16日から支払済
みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
 本件は,宗教団体アレフ(旧オウム真理教,以下「アレフ」という。)の信
者で,吹田市内に転居した選定者らが,被告吹田市長に対し転入届を提出したのに
対し,被告吹田市長がその不受理処分(以下「本件処分」という。)をしたとし
て,原告を選定当事者として,被告吹田市長に対して本件処分の取消しを求めると
ともに,選定者らが本件処分によって精神的損害を受けたとして,被告吹田市に対
し国家賠償法1条に基づき損害賠償を求めた事案である。
1 前提事実(争いのない事実及び証拠により容易に認められる事実)
(1) 当事者
 選定者らは,いずれもアレフの信者であり,平成14年3月1日,大阪府
吹田市a町b-c(以下「本件住所地」という。)に転居し,生活の本拠を定めた(甲
17ないし19)。
(2) 被告吹田市長による不受理方針の表明
 被告吹田市長は,平成12年3月28日,本件住所地で住民票の転入届が
提出されても受理しない方針を決定し,公表した。
(3) 転入届の提出
 原告(選定当事者)は,平成14年4月16日,吹田市役所において,選
定者らにつき,本件住所地を住所地として,原告(選定当事者)については自ら,
選定者Aについては代理人として,被告吹田市長に対して,転入届を提出した。
(4) 本件処分
 上記転入届の提出に対し,吹田市市民課課長は,「この住所へは受け付け
られません。」「吹田市の方針は変わりません。」と言って対応し,被告吹田市長
は,同日,選定者らがアレフ信者であることを理由に転入届不受理処分をした。
(5) 審査請求
 選定者らは,平成14年4月18日,大阪府知事に対し,本件処分の取消
しを求める審査請求をした。
2 争点及び争点に対する当事者の主張
(1) 本件処分の適法性
(被告らの主張)
ア 地方公共団体に関する法令の規定は,地方自治の本旨に基づいて解
釈,運用するようにしなければならないとされているところ(地方自治法2条12
項),同条項にいう「地方自治の本旨」とは,憲法92条及び地方自治法1条のそ
れと同義であって,その中に地方の政治や行政が当該地方の住民の意思に基づいて
行われるべきであるという「住民自治の原則」が含まれていることは明らかであ
る。また,地方自治法は,地方公共の秩序を維持し,住民及び滞在者の安全,健康
及び福祉を保持するとして地方自治体の負う責務を定め(旧地方自治法2条3項1
号参照),更に,市町村は,その事務を処理するに当たって,議会の議決を経てそ
の地域における総合的かつ計画的な行政の運営を図るための基本的構想を定め,そ
れに即して行うようにしな
ければならないとして議会の議決の尊重義務も定めている(地方自治法2条4
項)。これらの規定は,市町村長の行う転入届の受理に関する事務についても,解
釈指針として斟酌されるべきものである。
 住民基本台帳は,単に形式的に住所の登録と公証だけでなく,実質的
に当該地方公共団体の住民として,各種の行政上のサービスを受けるべき立場を付
与する事実上の効果を有する。これは転入届を受理して住民票を調製し住民基本台
帳に記載した者については,当該地方公共団体の住民として受け入れることを意味
するものである。
 このような住民基本台帳の効果に照らせば,住民基本台帳法(以下
「法」という。)が,当該地方公共団体の地域の秩序が破壊され,住民の生命や身
体に対する安全が害される危険性が高度に認められるような特別な事情がある場合
にも,一律に住民票の調製と住民基本台帳への記録を義務付けていると考えること
は妥当でない。かかる特別な事情がある場合には,住民の安全確保のためにとった
措置によって,法が実現しようとしている記録の正確性,統一性が部分的に損なわ
れてもやむを得ないと評価される場合があり得ると考えるべきである。
イ 選定者らは,オウム真理教が改称したアレフの信者であるが,オウム
真理教はこれまで多数の残虐かつ卑劣極まりない事件を起こし,これらの凶悪犯罪
は同教団の組織的犯行としてなされたものであって,犯行に関与した信者に対する
刑事判決では重い有罪判決が下され,組織的犯行に加担したとして指名手配中の信
者が未だ逮捕されておらず逃亡中である。このようなオウム真理教による一連の事
件と状況を理由として,同教団には無差別大量殺人を行った団体の規制に関する法
律(以下「団体規制法」という。)が適用され,平成12年2月1日から3年間の
観察処分に付されている。このことは同教団が今なお無差別大量殺人行為に及ぶ危
険性があると認めるに足りる事実があり,その危険性が払拭されていないことを示
すものであるといえる
。もっとも,同教団は,団体規制法が適用されるに当たり,教団として一連の凶悪
犯罪に対する組織的な犯行を認め,被害者への補償の約束を打ち出したり,教団名
をアレフと改称し,教義を変更するなどしているが,これらの行動も団体規制法の
適用を回避するとともに住民の反対運動を和らげて組織の生き残りを図るための便
法に過ぎず,その教義の根本については実質的には全く変わりはなく,その具体的
な危険性は未だ払拭されていないというべきである。
 本件においても,平成12年3月にオウム真理教大阪支部が本件住所
地に移転したとの情報が寄せられて以来,地元住民は犯罪に巻き込まれることに強
い危険や脅威を感じ,自己の日常生活を犠牲にしつつ自己防衛的に住民運動を展開
している。そして,吹田市市議会は「オウム真理教大阪支部の立退き等を求める決
議」を全議員一致で可決し,地元の自治会連合協議会も同様の決議をなし,地域安
全・オウム真理教対策吹田市民会議も同様の趣旨の立退きを求める通告書を渡すと
ともに,大規模な署名運動を続けるなどしている。このような状況の中で,被告吹
田市長が選定者らの転入届を受理すれば,アレフ信者の本件住所地への居住を固定
化し,信者のさらなる転入を促し,地域住民の脅威や不安を殊更に大きくすること
になってしまうことは
明らかである。
 したがって,本件は,まさに当該地方公共団体の地域の秩序が破壊さ
れ,住民の生命や身体に対する安全が害される危険性が高度に認められる特別な事
情がある場合に当たり,被告吹田市長の本件処分は適法であるといえる。
(原告の主張)
ア 地方自治法10条1項は,「住民」の意義について,「市町村の区域
内に住所を有する者は,当該市町村及びこれを包括する都道府県の住民とする。」
と明確に規定し,その他に一切の要件を付加しておらず,法4条は,「住民の住所
に関する法令の規定は,地方自治法10条1項に規定する住民の住所と異なる意義
の住所を定めるものと解釈してはならない。」としているのであるから,法におけ
る「住民」の意義については「市町村の区域内に住所を有する者」との解釈以外に
はあり得ない。転入届等を受けた市長が,転入届に係る住民の居住の有無以外に,
その転入届等の目的,思想信条,所属団体の内容等を審査して,転入届等の受理を
しないことを認めることは,地方自治法10条1項の「住民」の意義に新たな要件
を加えるものであって
,絶対に許されない解釈である。
 日本国籍を有する者であって,当該市町村の区域内に居住の事実があ
り,居住の意思も認められる者は,その市長村長に転入等の届出をすべき法的義務
を負い(法22条,23条),かつ,市町村長は,法に基づき,その者の住民たる
地位に関する正確な記録を常に整備する法的義務を負っているのであって(地方自
治法13条の2),これ以外の法律関係は存在せず,市町村長に住民登録を拒否し
うる裁量権が認められる法的根拠はない。
 法1条及び3条1項並びに住民基本台帳法施行令(以下「施行令」と
いう。)11条の文理自体から,また,その目的,趣旨からして,住民基本台帳に
記録されるべきか否かは,当該住民の住所が当該市町村の区域内にあるかどうかと
いう事実及び住民基本台帳に登録して管理すべき者かどうかのみを基準として判断
されるべきものである。
 地方公共団体がその住民の生命,身体,財産等の安全を確保すべき責
務があるにしても,転入届をした者が「住民」たる地位にあることを公証すること
を目的とする法の解釈を歪めて構わないという根拠にはならない。
イ 憲法は,22条1項において,居住移転の自由を保障しており,自己
が求める場所に移転し居住してもそのことにより何ら不利益を受けないことが保障
されているところ,選定者らの住居の移転及びそれに基づく居住について,被告吹
田市長がその届出を不受理とすることは,居住移転の自由を侵害することにほかな
らない。
 また,公職選挙法は住民登録制度と選挙制度を結合させ,選挙人名簿
又は在外選挙人名簿に登録されていない者は投票することができないところ(同法
42条1項本文),選挙人名簿の登録は,当該市町村の区域内に住所を有する年齢
満20年以上の日本国民で,その者に係る当該市町村の住民票が作成された日(他
の市町村から当該市町村の区域内に住所を移した者で住民基本台帳法22条の規定
により届出をしたものについては,当該届出をした日)から引き続き3か月以上当
該市町村の住民基本台帳に記録されている者について行われることとされているか
ら(同法21条1項),住民登録がされない以上選挙権の行使ができないのであ
り,選定者らは,本件転居届の不受理処分により,憲法15条の選挙権を侵害され
ている。
 更に,国民健康保険法も住民基本台帳法に基づく届出と国民健康保険
法に基づく届出を連動させており(法28条,国民健康保険法9条10項),その
結果,法に基づく届出がされないと国民健康保険法上の届出もされないこととな
り,国民健康保険の被保険者資格が得られないこととなる。したがって,選定者ら
は,本件処分により,国民健康保険の利用が不可能となることから,憲法25条の
生存権の自由権的側面を侵害されており,本件処分は憲法25条に違反する。
 加えて,本件処分においては,選定者らがアレフの信者であることを
もって差別的取扱いをされたのであり,思想の自由を侵害する点で憲法19条に,
また,法の下の平等に反する点で憲法14条に違反する。
ウ 被告らは,アレフの危険性を強調して本件処分が適法である旨主張す
る。
 しかし,アレフはオウム真理教を承継しつつも,数々の根本的改革を
行い,被告らが指摘するような危険性は全く存在しなくなった。すなわち,Cは教
祖でも代表者でもなく教団の運営や信者の指導には関与できないこととし,かつて
教団の最高意思決定機関であった長老部も廃止し,民主的方法で選ばれた者により
執行部を構成するものとして,教義の見直しも行われた。また,教団は,松本サリ
ン事件,地下鉄サリン事件の被害者等に対して謝罪し賠償を行っているほか,地域
住民や各自治体との融和の実現に努めているのである。
 以上によれば,被告らの上記主張は理由がない。
(2) 国家賠償請求権の成否
(原告の主張)
 転入者から転入届の提出があった場合には,法5条ないし8条の規定に
基づき,住民票に住民に関する記載をして住民基本台帳に記録すべき義務があると
ころ,被告吹田市長は,故意又は過失により,本件住所地で住民票の転入届が提出
されても受理しない方針を決定公表し,実際に選定者らの転入届を不受理とする本
件処分をしたのであるから,被告吹田市長は,その職務を行うにつき公権力の行使
を誤ったものと認められる。そして,選定者らは,被告吹田市長による転入届不受
理方針の決定によって,転入届の提出について萎縮してしまい,本件住所地に居住
後も転入届の提出ができなかっただけでなく,転入届提出後も,被告吹田市長によ
って本件処分がなされたことによって,健康保険が利用できず,選挙権の行使もで
きないほか,日常生活
の極めて広い範囲に渡って著しい不便を被り,甚大な精神的苦痛を受けた。このよ
うな選定者らの精神的苦痛に対する慰謝料はそれぞれ100万円を下らない。
 よって,被告吹田市は,国家賠償法1条により,これを賠償すべき義務
がある。
(被告吹田市の主張)
ア 被告吹田市長が行った本件処分は適法であるから,被告吹田市が国家
賠償責任を負うことはない。
イ 仮に,本件処分が違法であると判断された場合であっても,被告吹田
市長は,地元住民から現実的な恐怖や不利益の声が多く寄せられる中,吹田市議会
においてアレフ信者の本件住所地への転入届不受理などを求める決議が全会一致で
可決されたことを踏まえて,住民自治により当該地域の秩序の維持と住民の安全と
健康を守るという地方公共団体の責務を果たすため,本件処分を行ったものであっ
て,本件処分について,被告吹田市長には故意はもとより過失も認められない。
第3 争点に対する判断
1 争点(1)(本件処分の適法性)について
(1) 法令の定め
 法は,市町村において,住民の居住関係の公証,選挙人名簿の登録その他
の住民に関する事務の処理の基礎とするとともに住民の住所に関する届出等の簡素
化を図り,併せて住民に関する記録の適正な管理を図るため,住民に関する記録を
正確かつ統一的に行う住民基本台帳の制度を定め,もって住民の利便を増進すると
ともに,国及び地方公共団体の行政の合理化に資することを目的としている(法1
条)。
 市町村長は,常に,住民基本台帳を整備し,住民に関する正確な記録が行
われるように努めるとともに,住民に関する記録の管理が適正に行われるように必
要な措置を講ずるよう努めなければならず(法3条1項),その住民につき,氏
名,出生の年月日,男女の別等法7条所定の事項を記録する住民票を世帯ごとに編
成して,住民基本台帳を作成する義務を負っている(法5条,6条1項)。
 一方,住民は,常に住民としての地位の変更に関する届出を正確に行うよ
うに努めなければならず,虚偽の届出その他住民基本台帳の正確性を阻害するよう
な行為をしてはならないとされ(法3条3項),出生以外の事由で新たに市町村の
区域内に住所を定めて転入をした者は,転入をした日から14日以内に,氏名,住
所,転入をした年月日等所定の事項を市町村長に届け出ることが義務付けられてお
り(法22条1項),正当な理由がなく,これに違反した場合には,5万円以下の
過料に処せられることとされている(法51条2項)。
 住民票の記載は,政令で定めるところにより,法の規定による届出に基づ
き,又は職権で行うものとされ(法8条),これを受けて施行令は,市町村長に対
し,転入をした者その他新たにその市町村の住民基本台帳に記録されるべき者があ
るときは,その者の住民票を作成することを義務付け(施行令7条1項),法の規
定による届出があったときは,当該届出の内容が事実であるかどうかを審査して,
住民票の記載を行わなければならないと定めている(施行令11条)。
(2) 以上の法令の定めからすれば,転入をした者について市町村長が住民票を
作成し住民基本台帳に記録する行為は,その者が新たに市町村の区域内に住所を定
めたという事実が存在する場合に,その居住関係を公証し,住民に関する記録の適
正な管理を図るという目的から行われるものであって,転入者についての住民票の
作成や住民基本台帳への記録自体によって,当該市町村への転入,居住が許容され
るなどの権利義務が形成されるという法的効果を生じるものでないことは明らかで
ある。そして,転入をした者が届け出なければならない事項は,氏名のほか,住
所,転入年月日及び従前の住所等の居住関係に関するものに限られ(法22条1
項),市町村長は当該届出の内容が事実であるかどうかを審査して住民票の記載を
行うものとされており(
施行令11条),それ以外の事項を住民票の作成及び住民基本台帳に記録するため
の要件とすることを定めた規定がないことを併せ考えると,転入の届出があった場
合に市町村長が住民票の作成及び住民基本台帳に記録するに当たって審査すべき事
項は,転入届に係る居住関係が事実であるかどうかに限られると解するのが相当で
ある。
 したがって,市町村長は,転入の届出があった場合,当該届出に係る居住
関係が事実である限り,その内容に従ってその者の住民票を作成し,住民基本台帳
に記録しなければならない義務を負っているものというべきである。
(3) 前提事実のとおり,選定者らは,平成14年3月1日以降,本件住所地に
居住しているのであるから,被告吹田市長が行った本件処分は違法なものであると
いうべきである。
(4) 被告らは,本件処分は,当該地方公共団体の地域の秩序が破壊され,住民
の生命や身体に対する安全が害される危険性が高度に認められる特別な事情があっ
たために行われたものであって,適法であると主張する。
 しかし,前記のとおり,住民基本台帳制度は,住民の居住関係の公証や住
民に関する記録の適正な管理を目的とする制度であって,地域の秩序維持や住民の
安全確保を目的とするものではなく,しかも,市町村長が転入届を受理せずに住民
票の作成及び住民基本台帳に記録を拒否したからといって,当該転入届をした者の
当該市町村における居住が禁止される等の法的効果が生じるものでもなく,その者
が当該市町村の区域内に居住すること自体は可能であるから,当該転入届を不受理
とすることによって住民の安全を確保するという目的を達することができるという
ものでもない。そうすると,住民基本台帳法が,被告らが主張するような事情を考
慮して,適法に行われた転入届を不受理とし,住民票の作成を拒否する権限を与え
ていると解する余地は
ないといわざるを得ない。
 また,地域の秩序を維持し,住民の安全を確保することが地方公共団体及
びその長の責務であるとしても,何らの法令上の根拠に基づかない行政作用によ
り,国民の権利利益を侵害することは許容されるものではない。
 したがって,被告らが主張する事情をもって本件処分を正当化することは
是認できない。
(5) よって,被告吹田市長は,選定者らの転入届を受理して住民票を作成し,
住民基本台帳に記録しなければならない義務を負っていたものといわざるを得ず,
これに反してされた本件処分は違法なものである。
2 争点(2)(国家賠償請求権の成否)について
(1) 本件処分が違法であることは前述のとおりである。そして,既に,当庁に
おいて,被告吹田市長が他のアレフ信者に対して行った転入届不受理処分について
違法として処分の取消しを認めた判決がなされ,他の地方公共団体の同種事例にお
いても,アレフ信者であることを理由とした転入届の不受理処分は違法であるとの
司法判断が繰り返し行われていることから,被告吹田市長は,本件処分の違法性に
つき少なくとも過失があったというべきである。
(2) 被告吹田市長は,法に従った転入の届出があった場合,当該届出に係る居
住関係が事実である限り,その内容に従ってその者の住民票を作成し,住民基本台
帳に記録しなければならない義務を負っているのであるから,本件住所地で住民票
の転入届が提出されても受理しない方針を決定し表明した行為も違法であるといえ
る。そして,地域の秩序維持と住民の安全確保を理由として転入届を不受理とする
ことが許されないことは法令の文言から容易に認識することができたのであるか
ら,被告吹田市長には,不受理方針の表明の違法性について,少なくとも過失があ
ったと認められる。
(3) 証拠(甲17,18)によれば,選定者らは,被告吹田市長による不受理
方針の表明があったため,本件住所地に転居後も1か月あまりの間,転入届の提出
を躊躇しただけでなく,転入届提出後も被告吹田市長によって本件処分がなされた
ため,国民健康保険が利用できず(法28条,国民健康保険法9条10項),選定
者Aにおいて病院での治療を自制していること,各種行政サービスを受けられずに
いること,このような状況が継続することについて選定者らが不安を抱いたこと,
本来受理されるべき転入届がアレフ信者であることを理由に受理されなかったこと
等によって精神的な損害を被ったことが認められ,これらの精神的損害に対する慰
謝料としては,それぞれ50万円が相当である。
3 結論
以上によれば,原告(選定当事者)が,被告吹田市長に対し,本件処分の取
消しを求める請求並びに原告(選定当事者)が被告吹田市に対し慰謝料の支払を求
める請求のうち,選定者らそれぞれについて50万円及びこれらに対する平成14
年4月16日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を
求める部分については理由があるからこれを認容することとし,原告(選定当事
者)の被告吹田市に対するその余の請求は理由がないからこれを棄却することと
し,主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第7民事部
裁判長裁判官  山 下  郁 夫
裁判官  山 田    明
裁判官  小 泉  満理子
(別紙)
選定者目録
大阪府吹田市a町b-c
選定者   A
同所
同     B

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛