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平成13年(行ケ)第515号 特許取消決定取消請求事件(平成14年9月2日
口頭弁論終結)
          判           決
       原   告      東レ株式会社
       訴訟代理人弁理士   岩 見 知 典
       被   告      特許庁長官太田信一郎
       指定代理人      三 浦   均
       同          森 田 ひとみ
       同          宮 川 久 成
          主           文
 特許庁が平成11年異議第73780号事件について平成13年9月
28日にした決定を取り消す。
      訴訟費用は被告の負担とする。
          事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
 1 原告
   主文と同旨
 2 被告
   原告の請求を棄却する。
   訴訟費用は原告の負担とする。
第2 当事者間に争いのない事実
 1 特許庁における手続の経緯
 (1) 原告は、名称を「ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の製造方法」とす
る特許第2879804号発明(昭和62年12月28日原出願、平成4年11月
30日分割出願、平成11年1月29日設定登録)の特許権者である。
    上記特許中、特許請求の範囲第1項及び第5項に記載された発明(以下
「本件発明」という。)に係る特許につき特許異議の申立てがされ、特許庁は、同
特許異議の申立てを、平成11年異議第73780号事件として審理した上、平成
13年9月28日、「特許第2879804号の特許請求の範囲第1項及び第5項
に記載された発明に係る特許を取り消す。」との決定(以下「本件決定」とい
う。)をし、その謄本は、同年10月19日、原告に送達された。
 (2) 原告は、本件決定の取消しを求める本訴提起後の平成14年1月9日、本
件明細書の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の各記載を訂正する旨の訂正審判
の請求をしたところ、特許庁は、同請求を訂正2002-39006号事件として
審理した上、同年8月6日、上記訂正を認める旨の審決(以下「本件訂正審決」と
いい、本件訂正審決に係る訂正を「本件訂正」という。)をし、その謄本は、同月
15日、原告に送達された。なお、本件訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲第
3、第4項を削除し、同第5項を本件訂正後の第3項に繰り上げるとの内容を含む
ものである。
 2 本件発明に係る特許請求の範囲の記載
 (1) 本件訂正前の特許請求の範囲の記載
   1.酸処理した後、水で洗浄する処理、100℃以上の熱水での熱水処理お
よび有機溶媒による洗浄の3つの中から選ばれた少なくとも一つの方法を用いて脱
イオン処理を施すことによりナトリウム含有量500ppm以下のポリフェニレン
スルフィド樹脂粉粒体を調製し、かかるポリフェニレンスルフィド樹脂1~99重
量%とポリアミド樹脂99~1重量%とを、ポリフェニレンスルフィド樹脂および
ポリアミド樹脂双方の融点以上の温度で溶融混練することを特徴とするポリフェニ
レンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
   5.酸処理した後、水で洗浄する処理、100℃以上の熱水処理および有機
溶媒による洗浄の3つの中から選ばれた少なくとも一つの方法を用いて脱イオン処
理を施すことによりナトリウム含有量500ppm以下のポリフェニレンスルフィ
ド樹脂粉粒体を調製し、かかるポリフェニレンスルフィド樹脂1~99重量%、ポ
リアミド樹脂99~1重量%および繊維状および/または粒状の強化剤をポリフェ
ニレンスルフィド樹脂およびポリアミド樹脂の合計100重量部に対して400重
量部を越えない量とを、ポリフェニレンスルフィド樹脂およびポリアミド樹脂双方
の融点以上の温度で溶融混練することを特徴とするポリフェニレンスルフィド樹脂
組成物の製造方法。
 (2) 本件訂正によって訂正された特許請求の範囲の記載(注、訂正部分を下線
で示す。)
   1.有機溶媒で洗浄した後、水で洗浄する方法を用いて脱イオン処理を施す
ことによりナトリウム含有量500ppm以下のポリフェニレンスルフィド樹脂粉
粒体を調製し、かかるポリフェニレンスルフィド樹脂1~99重量%とポリアミド
樹脂99~1重量%とを、ポリフェニレンスルフィド樹脂およびポリアミド樹脂双
方の融点以上の温度で溶融混練することを特徴とするポリフェニレンスルフィド樹
脂組成物の製造方法。
   3.有機溶媒で洗浄した後、水で洗浄する方法を用いて脱イオン処理を施す
ことによりナトリウム含有量500ppm以下のポリフェニレンスルフィド樹脂粉
粒体を調製し、かかるポリフェニレンスルフィド樹脂1~99重量%、ポリアミド
樹脂99~1重量%および繊維状および/または粒状の強化剤をポリフェニレンス
ルフィド樹脂およびポリアミド樹脂の合計100重量部に対して400重量部を越
えない量とを、ポリフェニレンスルフィド樹脂およびポリアミド樹脂双方の融点以
上の温度で溶融混練することを特徴とするポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の
製造方法。
 3 本件決定の理由
   本件決定は、本件発明の要旨を本件訂正前の特許請求の範囲の記載のとおり
認定した上、本件発明は、特公昭59-1422号公報及び本件原出願前に周知の
事実に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法2
9条2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許法等の一部を
改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)4条
2項の規定により、その特許は取り消されるべきものとした。
第3 当事者の主張
 1 原告
   本件決定が、本件発明の要旨を本件訂正前の特許請求の範囲の記載のとおり
認定した点は、本件訂正審決の確定により特許請求の範囲の記載が上記のとおり訂
正されたため、誤りに帰したことになる。そして、この瑕疵は本件決定の結論に影
響を及ぼすものであるから、本件決定は違法として取り消されるべきである。
 2 被告
   本件訂正審決の確定により特許請求の範囲の記載が上記のとおり訂正された
ことは認める。
第4 当裁判所の判断
   本件訂正審決の確定により、特許請求の範囲の記載が上記のとおり訂正され
たことは当事者間に争いがなく、この訂正によって特許請求の範囲が減縮されたこ
とは明らかである。
   そうすると、本件決定が、本件発明の要旨を本件訂正前の特許請求の範囲の
とおりであると認定したことは、結果的に誤りであったことに帰する。そして、こ
れが本件決定の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから、本件決定は、瑕疵が
あるものとして取消しを免れない。
   よって、原告の請求は理由があるから認容し、訴訟費用の負担につき行政事
件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。
     東京高等裁判所第13民事部
         裁判長裁判官 篠 原 勝 美
    裁判官 長 沢 幸 男
    裁判官 宮 坂 昌 利

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