弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人久保田美英の上告理由第一点について。
 所論は要するに、原判決添付第一号第二号各物件は上告人が在村地主として自作
して来たものであり、かつ上告人が適法に所有し得る面積内の農地であるから、自
創法上これを買収し得る適格なく、従つて買収処分は実体上無効であり、またその
買収手続も所論の理由により無効である、特に原判決は、上告人が当時在村地主で
あることを認めながら、取消訴訟の出訴期間の徒過を理由として、実体上の無効を
認めなかつたのは、顕著な違法があるというに帰する。
 本件農地は、上告人が不在地主であるという理由で、昭和二三年七月中自創法に
基き買収処分を受けたが、上告人は、当時適法な出訴期間内に在村地主であること
を理由として本件買収処分の取消を求める訴を提起することなく徒過したのである
から、その後一年以上を経過した昭和二四年一〇月に至り提起された本訴によつて
は、裁判所ももはや右買収処分を取り消すことのできないことは説明するまでもな
い。ところで所論は、本件買収処分が当然無効であると主張し、特にそれが実体上
無効なることは原審で確定した事実であるというから、この点について考えてみる
に、原判決が上告人の住所を当時a村にあると認定した理由について、その引用の
証拠と判示説明とを具さに検討してみると、上告人の住所が当時いずれにあつたと
認むべきかは、たやすく判断し得る単純な関係ではなく、見解によつては反対の結
論に対することも必しも考えられないことではない。しかし原判決はその専権に属
する事実認定によつて、上告人を当時在村地主であつたと認めたのであるから、こ
の点において本件買収処分は違法たるを免れないけれども、住所の判定が前示のよ
うに困難な状況にあつたと認められる以上、この程度の違法をもつて直ちに買収処
分そのものを無効ならしめるものということはできない。それゆえ上告人が、在村
地主たることを理由として本件買収処分の取消を求めるため、法律上許された訴提
起の方法をとらず期間を徒過したような場合、その後において訴によりその違法を
主張することは許されないと解すべく、従つて本件買収処分は、その瑕疵にかかわ
らず無効となるものでないと解するを相当とし、所論は採用することはできない(
昭和二八年(オ)第六五七号同三〇年四月二六日第三小法廷判決、集九巻五号五六
九頁参照)。
 同第二点について。
 所論は、原判決が第三号物件の農地を仮装自作地と認定したことを非難し、かつ
右農地は保有面積以内の小作地であると主張する。しかし仮装自作地なることを争
う主張は、所論のとおりであるとしても、原判決認定のような事情の下においては、
本件買収を無効とする理由とはならないと認められるから採用できない。また保有
面積に関する規定は、自創法三条五項各号に定める事項には適用がないのみならず、
上告人が不在地主と認められ、その違法を主張できなくなつた現在では本件農地が
保有面積内であるかどうかは終局の判断に関係はない。
 同第三点について。
 所論は、第三号物件の農地を仮装自作地と認定するにつき審理不尽、理由不備の
違法があると主張する。その理由のうち((二)の(a))、耕作契約者B1の短
期間の請負耕作をもつて買収条件に合するものとしたのは違法であるというが、上
告人が本件土地を永く耕作していた事実があつて、B1に一時的に請負耕作させた
というような場合ならば、これを買収することは相当でないといえるかも知れない。
しかし上告人もまた永く他出し本来農をもつて業としていたものでないことは原審
の認定するところであるから、これを買収することが必しも違法であるとはいえな
い。その他所論(一)は、昭和二一年法律第四三号自創法附則二項による買収につ
いては、昭和二〇年一一月二三日現在の事実によるべきであるというが、本件買収
は、附則二項による遡及買収ではない。そして所論は、原審の認定に反する事実を
前提とするものである。所論(二)(a)は、仮装自作地であるかないかは、買収
計画承認のときを標準とすべきであるのに、原判決が買収計画樹立のときを標準と
したのは違法であると主張するが、法律が遡及買収までも規定している趣旨からい
つて、買収計画のとき仮装自作地であつたものが、その後そうでなくなつたからと
いつて、かかる事実を考慮すべきものではない。所論(二)(b)は、上告人とB
1との間の契約は、文面からいつて民法の請負契約ではないと主張するが、自創法
三条五項二号は「請負その他の契約に基き」と定め、必しも民法上の請負契約たる
ことを必要としない。その他原審の法律解釈ないし事実認定に所論のような誤は認
められない。
 同第四点について。
 所論は、本件買収手続の違法を主張し、買収処分の無効を主張する。しかし所論
の挙げるいずれの理由も、原判決の判断するとおり採用できないのみならず、所論
のような理由は、本件買収処分を当然無効とするに足りない。なお所論其の一(ハ)
(c)は、買収計画の決議に利害関係ある小作人B2が委員として加わつているか
ら、本件買収処分は当然無効であるというが、買収計画の決議は、売渡を受くべき
者を定める決議ではないから小作人は常に必ず直接の利害関係があるとはいえない
のみならず、このような違法の主張は、仮りに理由ありとしても取消の訴によつて
主張すべきものであり、そのことなくして買収処分を当然無効とする主張は認めら
れない。所論其の二の一は、買収計画の公告について被上告人の立証がないのに、
公告のあつたものと認定したのは違法であると主張する。しかしかりに所論のとお
り公告がなかつたとしても、ために上告人が本件買収処分の取消を求める訴を提起
するについて障害となるものではなく、右取消を求める訴をもつて、右手続上の違
法を主張するは格別、右違法のゆえをもつて本件買収処分を法律上当然無効のもの
ということはできない。したがつてこの点に関する原判示に妥当でない点があると
しても、判決の結果に影響がないものといわなければならない。所論其の二の二の
主張について、買収計画の公告には、買収計画を定めた旨の記載があれば足り、ま
た記録に存する公告文の写によれば公告の要項に欠けるところはない(昭和二五年
(オ)第一一三号同二六年八月一日大法廷判決、集五巻九号四八九頁参照)。また
買収計画は決議によるべきこというをまたないが、決議があれば公告は当然それに
基いて行うベき法律上必要な手続であつて、所論のように特別決議を要するもので
はない。(なお縦覧に供する書類を作成しなかつたという主張((三)(ロ))は、
原審で主張も判断もない)。所論其の三の第二は、買収計画の承認は行政処分であ
るという主張を前提として、細目にわたつて承認に関する手続上の違法を主張する
が、承認は行政処分に当らないとするのは、当裁判所の判例(昭和二五年(オ)第
一六〇号同二七年三月六日第一小法廷判決、集六巻三号三一三頁参照)とするとこ
ろであるのみならず、そのことは上告人の所論と直接関係あるものとは認め難く、
また各論点の違法の主張は、いずれもこれを是認するに足りない。所論其の四第二
の対価支払に関する事項を理由とする買収令書及びその発行の無効の主張は、いず
れも所論を直ちに肯認するに足りないのみならず、これらの事項は買収処分の適否
とは関係なく他の訴訟手続によつて争うベき問題である。所論同第三の買収令書発
行の無効を主張する理由は、いずれも所論を肯認するに足りない。そして以上の点
について原判決の判示するところはすべて正当である。
 同第五点について。
 本件買収処分が当然無効でない以上、農地の所有権はすでに国に帰属したのであ
るから、仮りに所論のように売渡計画が無効であつても、上告人の本件農地に関す
る権利になんら消長はない。従つて、原審が売渡無効確認の請求について上告人に
法律上の利益がないと判示したのは正当である。所論は理由がない。
 その他論旨は「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」(
昭和二五年五月四日法律一三八号)一号乃至三号のいずれにも該当せず、又同法に
いわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものと認められない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    本   村   善 太 郎
            裁判官    垂   水   克   己

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