弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成8年(行ケ)第184号 審決取消請求事件
     判    決
  原   告        株式会社キーエンス
  代表者代表取締役     【A】
  訴訟代理人弁護士     村  林  隆  一
               松  本     司
  同    弁理士     【B】
  被   告        藍天電脳股・有限公司
  代 表 者        【C】
      主    文
 特許庁が平成6年審判第16013号事件について平成8年7月25日にした審
決を取り消す。
 訴訟費用は被告の負担とする。
      事実及び理由
第1 原告の求めた裁判
 主文第1項と同旨の判決。
第2 事案の概要
 1  特許庁における手続の経緯
 原告は、登録第1808822号商標(昭和58年6月13日商標登録出願、同
60年9月27日設定登録、平成7年9月28日存続期間の更新登録。本件商標)
の商標権者である。本件商標は「QUREPO」の欧文字を横書きして成り、旧第
11類「電気機械器具、その他本類に属する商品」を指定商品とする。
 被告は、平成6年9月22日、原告を被請求人として、「本件商標の指定商品中
『電子応用機械器具』についてその登録を取り消す。」との審決を求める審判請求
をし(平成6年10月18日予告登録)、平成6年審判第16013号事件として
審理されたが、平成8年7月25日、本件商標の指定商品中「電子応用機械器具」
についてはその登録を取り消す旨の審決があり、その謄本は同年8月8日原告に送
達された。
 2 審決の理由の要点
 (1) 審決の判断の前提となる当事者の審判における主張等は、別紙審決理由抜粋
のとおりである。
 (2) よって、本件審判請求に関し、当事者間に利害関係について争いがないの
で、本案に入って判断する。
 原告(被請求人)が本件商標を使用していると主張するのは、商品の包装に当た
るコンテナに商標を付することによって、これに収納されている商品「電子応用機
械器具」について使用していることになるというものであるが、審判乙第3号証の
1ないし3(写真)によれば、該コンテナは、その側面に、本件商標と社会通念上
同一といい得る「QUREPO」の文字から成る商標が付されていることが認めら
れるものである。しかしながら、商品を包装するための容器たる包装用容器といい
得るためには、包装に使用され、商品の取引の際その商品を入れるために用いられ
る容器であって、段ボール箱、コンテナ等をいうものと解されるところ、審判乙第
3号証の1ないし3に示されたコンテナには上面を覆うふたは見受けられず、ま
た、その形状、大きさからみても収納されている小箱専用の容器とは必ずしもいい
難いものである。さらに、該小箱には「KEYENCE」「PZ2-41」の表示
がなされており、この表示からみて該小箱が、審判乙第5号証及び第6号証の商品
カタログに掲載されている「アンプ内蔵型光電スイッチ」と認め得るところ、同商
品カタログには、「KEYENCE」の文字から成る商標は認められるものの、
「QUREPO」の文字から成る商標は何ら見いだし得ない点を合わせ考えれば、
該コンテナは、「アンプ内蔵型光電スイッチ」の包装に使用され、取引の際それを
入れるために用いられる容器とは判断し得ないものといわなければならない。
 そして、審判乙号各証において、審判乙第3号証(枝番を含む。)以外には、本
件商標はいずれも見当たらない。
 してみれば、仮にクレポ株式会社が通常使用権者であり、本件審判請求の予告登
録前3年の間に該コンテナを同人が使用していたことが認められるとしても、原告
提出の審判乙号各証をもっては、本件商標が請求に係る指定商品について使用され
たものということはできない。
 なお、原告の挙げる東京高裁昭和41年(う)第2318号昭和42年1月30
日判決は、原告が述べるように、商品を収納する容器たる段ボール箱は商標法にい
う「商品の包装」に当たることを判示したものであるところ、上記のとおり、審判
乙号証におけるコンテナが包装のための容器といえない以上、上記判決は本件の判
断に影響を及ぼすものではない。
 そうとすれば、原告提出に係る証拠によっては、原告又は通常使用権者が、本件
商標を本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、請求に係る商品につ
いて使用していたものということはできない。
 したがって、本件商標の登録は、商標法50条の規定によりその指定商品中の
「電子応用機械器具」についての登録を取り消すものである。
 おって、原告は本件商標の使用を立証するための証人尋問を申請しているが、尋
問事項は、主として通常使用権及びコンテナの使用に関するものであって、本件に
関する使用の事実についての認定は上記のとおりであるから、証人尋問の必要を認
めない。
第3 原告主張の審決取消事由
 本件商標が、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、指定商品中
の「電子応用機械器具」について使用された事実が認められないとした審決の認定
は誤りであり、この誤りは審決の結論に影響を及ぼすものであるから、審決は取り
消されるべきである。
 すなわち、審決の判断中の争う箇所に即して述べれば、クレポ株式会社は原告の
下請会社であるが、同社はその容器に同社の商品を収めて、親会社である原告に納
入している。この容器は同じものを重ねて使用するコンテナであり、ふたがあると
いえる。この容器にふたがないとした審決の認定は誤りである。また、この容器が
小箱専用の容器とは必ずしもいえないとした審決の認定も誤りである。
第4 被告の対応
 被告は、公示送達により本件口頭弁論期日の呼出しを受けたが出頭せず、答弁書
その他の準備書面も提出しなかった。
第5 当裁判所の判断
 1 甲13及び認定中に掲げる各証拠によれば、以下の事実が認められる。
 (1) 大阪府高槻市に本店があるクレポ株式会社(甲4、5、14ないし17)
は、原告の代表取締役である【A】が代表取締役となり、原告が100%出資して
昭和60年9月に設立された会社であるが、平成2年4月、同社に対し、原告が有
する本件商標権についての独占的通常使用権が設定された。
 (2) 同社は、平成元年から2年にかけて「QUREPO」の標章が両側面に赤色
で付されたコンテナを100個製作し(甲6の1ないし3、7の1、2)、そのこ
ろから今日まで、このコンテナに、型番を「PZ2-41」とするアンプ内蔵型光
電子スイッチの商品(ケース入のもの。商品名「KEYENCE」。甲8)を20
数個入れるなどして(6の1ないし3)、同社と事務所を同じくするビル内の原告
事務所又は岩崎物流株式会社などに納入してきた。
 そして、このように上記商品が入った状態の上記コンテナは、さらに、そのまま
の状態で第三者の工場に搬送されてきている。
 2 以上の認定事実によれば、本件商標は、その指定商品中、「電子応用機械器
具」につき、平成6年10月18日の本件審判請求の予告登録前3年以内におい
て、原告から通常使用権の設定を受けたクレポ株式会社によって使用されていたも
のと認めることができる。
 なるほど、上記コンテナにはふたがないことが甲6の1、3から明らかである
が、ふたのないことのみから、当該コンテナが、商品の包装として、あるいは容器
として使用されていないものとすることはできず、上記コンテナは、積み重ねて搬
送される形状となっているものであること(甲10の1ないし4)からすると、商
品の容器として十分に機能していることが明らかであるから、そこに付されている
「QUREPO」の表示をもって、商標の使用として機能しているものと認めるの
に障害はないというべきである。
 もとより、コンテナが「電子応用機械器具」中の特定の商品についての専用の小
箱でなければ、そこに付された標章の表示が商標として使用されていることができ
ないというものでない。
 3 したがって、本件商標が、「電子応用機械器具」につき、原告又は通常使用
権者によって本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において使用されていた
ものということはできないとした審決の判断は誤りであり、この誤りが審決の結論
に影響を及ぼすものであることは明らかである。
第6 結論
 よって、原告の請求は認容されるべきである。
(平成11年9月7日口頭弁論終結)
 東京高等裁判所第18民事部
     裁判長裁判官   永   井   紀   昭
        裁判官   塩   月   秀   平
        裁判官   市   川   正   巳

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛