弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原審判を取り消す。
     Aの親権者を抗告人Bに変更する。
     相手方CはAを抗告人Bに引き渡せ。
         理    由
 本件抗告の趣旨並びにその理由は末尾添付のとおりである。
 よつて考えるに、(一) 記録第六十四丁C戸籍謄本によれば、事件本人Aは、
その父母である相手方Cと抗告人Bとの協議離婚届出にあたり、父Cをその親権者
とする届出により、現に相手方Cをその親権者としていることが明らかである。
 (二) しかして原審審判手続における関係人D、相手方C、申立人(抗告人)
Bの各供述、及び当審において抗告人並びに相手方の提出した書面を綜合すれば、
相手方は、事件本人の出生の後一日たりともその監護養育をなさず、抗告人との約
束によつて昭和二十九年四月五日事件本人を抗告人の手許から引き取るや直ちにこ
れをE、同D夫婦の手にゆだね、同夫婦の事実上の養子として養育せしめおり、事
件本人の親権者とは名ばかりで、親権者の権利であり、義務である子の監護教育の
責を尽さず、後記認定のようなE夫婦の家庭の事情から今日に至るまで同人らと事
件本人との養子縁組の手続をとつていないことを認めることができる。
 (三) 原審における家庭裁判所調査官補Fの調査報告書並びに当審における抗
告人提出の陳述書を綜合すれば、現在事件本人の養育をしているE、同D夫婦は、
Eの先妻亡Gとの間の現存の四男二女のうち長男、次男との間柄は必ずしもうまく
行かず、三男との将来の間柄も案ぜられるところから、事件本人との養子縁組を切
望しておるものの、その家庭の事情から今に至るも事件本人との養子縁組の手続を
なさず、殊にEは抗告人の義兄Hに対し「自分には子供が六人あり、ごたごたの起
きる子供は欲しくないが、家内が欲しがつている。IのAから話があれば子供は返
す。」と言明したことが認められる。
 (四) 前掲調査報告書、a町長J回答書、原審における関係人K、申立人(抗
告人)の供述を綜合すれば抗告人の父Kは、a町においては経済的には中流上位の
生活をなし、かつ家庭すこぶる円満であり、一家こぞつて事件本人の養育を熱望し
ていること、抗告人はその父Kのすすめで、事件本人を相手方に渡す約束をなし、
昭和二十九年四月五日生後満一年をやや越えた事件本人を相手方に引き渡したが、
五日の後事件本人がE方に養育せられていることを知るや、直ちにEに対し事件本
人の引取方を交渉し、爾来ここに一年有半熱心に事件本人の取戻方に奔走している
ことを認めることができる。
 <要旨>元来親権は、血縁関係(養親子にあつては血縁関係が擬制されている)に
基く親の未成年の子を養育するという人類の本能的生活関係を社会規範とし
て承認し、これを法律関係として保護することを本質とするものである。本件にお
いては以上(一)ないし(四)に認定した事実関係並びに原審判理由中に認定され
ている一切の事実関係を見ると、事件本人の父である相手方は未だかつて事件本人
の養育をなさず、事件本人に対する親権の行使をなすことなく、事件本人を第三者
夫婦をして養育せしめ、相手方の代諾によつて将来これと養子縁組をなすことによ
つて事件本人に対する親権行使の責任が終局的になくなることを期待しているのに
反し母たる抗告人は、事件本人の親権者となつてこれが養育をなし、実母の手によ
つてその幸福をさらに増し加えることを切に願うのみならず、事件本人の監護教育
の能力をも十分有するものと認められる。このような状況の下において、事件本人
が将来父たる相手方の代諾によつて養子縁組をなすまで現状のままに放置するより
は、むしろ今直ちに抗告人を事件本人の親権者として、事件本人の将来の運命を母
たる抗告人の手によつて決定せしめることが事件本人の利益であると考える。
 よつて、当裁判所は、家事審判規則第十九条第七十二条第一項第五十三条に則
り、原審判を取り消し、事件本人の親権者を抗告人に変更し、かつ相手方に対し事
件本人を抗告人に引き渡すことを命ずる旨の審判に代わる裁判をするのが相当であ
ると考え、主文のとおり決定する。
 (裁判長判事 大江保直 判事 草間英一 判事 猪俣幸一)

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