弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件抗告を棄却する。
     抗告費用は抗告人の負担とする。
         理    由
 本件抗告の趣旨及び理由は別紙のとおりである。
 本件においては、原決定が仮処分決定の執行のための取毀命令の申立を一部認容
したのに対し、債権者の側で更に、原審で認容されなかつた申立の部分の認容を求
めるのであつて、債務者の側よりは抗告がなかつたのであるから、原決定を抗告人
(債権者)の不利益に変更することは許されない。従つて、いわゆる現状維持の仮
処分の執行を受けた債務者が右仮処分に違反して、現状変更の行為をなした場合、
右仮処分決定そのものに基いて、直ちに執行吏の手で附加物の除去その他変更個所
の復旧をなし得るか、或は、取毀命令によるべきか、又は第二の更に強力な仮処分
決定を得る必要があるかの問題に付ては判断を省略する。
 <要旨>仍て抗告理由に付て考察する。所論は要するに、仮処分決定の主文はその
客観的表現に従い、厳格に解釈すべきものであるから、本件仮処分決定が、
建物の現状を変更しないことを条件として債務者に使用を許したにすぎず、而も債
務者に対し、現在施行中の模様替工事を中止すべく、これを続行してはならないこ
とをも明言しているに拘らず、すし屋営業の継続に必要な最小限度の施工を許すべ
きものとした原決定は不当である、とするものである。しかしながら、現状不変更
を条件として債務者に使用を許す仮処分決定の趣旨は執行吏の保管のままで、債務
者に使用を許容すると共に、一面において債務者に対し現状を変更してはならない
との不作為義務を課したものと解するのが相当である。従つて本件仮処分決定の主
文第四項には、重ねて、現在施行中の模様替工事を中止すべく、これを続行しては
ならないとの文言はあるが、之は同主文第二項の現状不変更を条件とする使用許可
の命令中に包含されるもので、それ以上の特段の意味を持つものと謂うことはでき
ない。
 それと共に、凡て裁判を解釈するについては必ずしもその主文の文言に形式的に
拘泥すべきものではなく、その不完全な個所は出来る限り合理的に補充して解釈を
要することは勿論であり、従つて本件仮処分決定を解釈する上においても、かよう
な考え方を必要とする。してみると、之を解釈するに付て、抗告人の主張するよう
に、建物の使用を許容された仮処分債務者の職業と全く無関係に、一率に現状変更
の有無を決することも、相当でないと解すべきである。ところで原審における検証
の結果及び証人Aの証言に依ると、本件建物は神戸市a通りの繁華街に面し、被抗
告人は之を以て従前よりすし屋営業をしていたことは明かであるから、仮処分決定
が現状不変更を条件としながらも、債務者に使用を許したことは、当然右営業の継
続を認容したものと解しなければならない。又成立に争のない乙第一号証及び原審
における被抗告人代表者B本人の供述によると、同人は仮処分の執行を受けて一応
工事を中止した上、執行吏に対し営業継続のため、什器カウンターを移動式とし、
壁は紙仕上げですませることにより営業の再開の許可を受け、次で所轄保健所に営
業設備変更の届出をしたところ、公衆衛生の点より、調理場に限り防じん、防水、
完全排水の工事をしなければ、食品衛生法第二〇条に基く営業上の施設基準に合致
しないため、改善の上再届出を要するとの理由を以て届書を返戻されたことが認め
られる。このような状況の下においては、保健所に於て右届書の受理されるため
の、すし屋営業上必要な最小限の工事をなすことをも許さぬものと解することは、
仮処分債務者に著しい苦痛を与えるものであり、現状不変更を条件として債務者の
使用を許した仮処分決定の趣旨に背馳する結果を生ずるわけである。従つてかよう
な場合には右のごとき最小限度の工事の施行を許容する旨を仮処分決定の主文に明
示することによつて全く疑問の余地を残さないことが最も望ましいところであるこ
とは謂うまでもないが、之を欠いたとしても、仮処分決定全体を合理的に解釈する
ことにより、同一の結論に到達するのであり、敢て債務者より仮処分異議或は特別
の事情による仮処分の取消の手続をとることを必要とするものではないと解する。
 更に抗告の趣旨中には、本件家屋に対する債務者の使用を禁止することをも求め
ているが、之は本件仮処分決定の執行処分として求めることのできる取毀命令の範
囲を明かに逸脱する事項の申立であつて、到底許容できないところである。
 以上の次第により本件抗告の理由はすべて失当であつて、採用できないところで
あり、その他本件記録を精査し、原決定の内容を検討するも、原決定が抗告の趣旨
に列記した申立を許容しなかつたこと、並に壁及び陳列台のあとに、紙仕上げ、及
び格子の設置をすることを許容した判断には何等違法の廉かない。
 仍て本件抗告を理由がないものとして、棄却すべきものとし、民事訴訟法第四一
四条第三八四条第八九条を適用し、主文のとおり決定する。
 (裁判長裁判官 加納実 裁判官 沢井種雄 裁判官 加藤孝之)

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