弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     第一審判決を次のとおり変更する。
     上告人は、被上告人に対し訴外Dから金三四五万円の支払を受けるのと
引換えに第一審判決添付別紙目録記載の建物を明け渡せ。
     被上告人のその余の請求を棄却する。
     訴訟の総費用はこれを二分し、その一を被上告人の、その余を上告人の
負担とする
         理    由
 上告代理人中村潤吉の上告理由について。
 第一審判決添付別紙目録記載の建物(以下、本件建物という。)は、その敷地(
以下、本件土地という。)とともに、もと上告人と訴外Eの共有であつたが、右両
名は、昭和四三年七月二〇日、これを代金六八〇万円で訴外Dに売り渡したこと、
右代金の支払方法としては、うち金四〇万円は本件土地建物の所有権移転登記と同
時に支払い、うち金一一〇万円は同年八月一〇日限り支払い、うち金一八五万円に
ついては上告人のF信用金庫に対する金一三五万円の債務およびG相互銀行に対す
る金五〇万円の債務をいずれも免責的に引き受けて支払う約であり、残金三四五万
円については、金員の支払に代えて、右Dにおいて他に土地(以下、提供土地とい
う。)を購入して建物(以下、提供建物という。)を新築し、これを上告人に譲渡
することとし、本件土地建物の明渡は右提供土地建物の引渡と同時におそくとも同
年一一月三〇日までにすることを約したが、Dはいまだ提供土地建物を上告人に譲
渡する義務を履行していないこと、被上告人は、昭和四四年二月一九日、Dの代理
人Hに対し金三四八万円を貸与し、その担保のため、本件土地建物を目的として抵
当権設定契約および停止条件付代物弁済契約を締結したが、Dは右借受金を所定の
期限に弁済しなかつたため、被上告人は、右代物弁済契約により同年三月一一日本
件土地建物の所有権を取得し、同月一三日その旨の所有権移転登記を経由したこと、
上告人が現に本件建物を占有していること、以上の事実は、原判決(その引用する
第一審判決を含む。以下同じ。)が適法に確定しているところである。
 そして、原審は、右認定事実のもとにおいて、買主であるDによつていまだ履行
されていないのは残代金三四五万円の支払に代わる提供土地建物の引渡義務であり、
売主である上告人は、売買の目的物の残代金債権を有するものではなく、売買の目
的物とは無関係な提供土地建物の引渡請求権を有するのであつて、右引渡請求権を
もつて被上告人に対抗することはできないから、これと売買の目的物である本件土
地建物との間には留置権発生の要件たる牽連関係はないと判示して、上告人主張の
留置権の抗弁を排斥しているのである。
 しかしながら、原審の右判断は首肯することができない。原審は、右確定事実の
もとでは、売主である上告人は売買の目的物の残代金債権を有しないというが、右
確定事実によれば、残代金三四五万円については、その支払に代えて提供土地建物
を上告人に譲渡する旨の代物弁済の予約がなされたものと解するのが相当であり、
したがつて、その予約が完結されて提供土地建物の所有権が上告人に移転し、その
対抗要件が具備されるまで、原則として、残代金債権は消滅しないで残存するもの
と解すべきところ(最高裁昭和三九年(オ)第六六五号同四〇年四月三〇日第二小
法廷判決・民集一九巻三号七六八頁参照)、本件においては、提供土地建物の所有
権はいまだ上告人に譲渡されていない(その特定すらされていないことがうかがわ
れる。)のであるから、上告人はDに対して残代金債権を有するものといわなけれ
ばならない。そして、この残代金債権は本件土地建物の明渡請求権と同一の売買契
約によつて生じた債権であるから、民法二九五条の規定により、上告人はDに対し、
残代金の弁済を受けるまで、本件土地建物につき留置権を行使してその明渡を拒絶
することができたものといわなければならない。ところで、留置権が成立したのち
債務者からその目的物を譲り受けた者に対しても、債権者がその留置権を主張しう
ることは、留置権が物権であることに照らして明らかであるから(最高裁昭和三四
年(オ)第一二二七号同三八年二月一九日第三小法廷判決。裁判集民事六四号四七
三頁参照)、本件においても、上告人は、Dから本件土地建物を譲り受けた被上告
人に対して、右留置権を行使することをうるのである。もつとも、被上告人は、本
件土地建物の所有権を取得したにとどまり、前記残代金債務の支払義務を負つたわ
けではないが、このことは上告人の右留置権行使の障害となるものではない。また、
右残代金三四五万円の債権は、本件土地建物全部について生じた債権であるから、
同法二九六条の規定により、上告人は右残代金三四五万円の支払を受けるまで本件
土地建物全部につき留置権を行使することができ、したがつて、被上告人の本訴請
求は本件建物の明渡を請求するにとどまるものではあるが、上告人は被上告人に対
し、残代金三四五万円の支払があるまで、本件建物につき留置権を行使することが
できるのである。
 ところで、物の引渡を求める訴訟において、留置権の抗弁が理由のあるときは、
引渡請求を棄却することなく、その物に関して生じた債権の弁済と引換えに物の引
渡を命ずべきであるが(最高裁昭和三一年(オ)第九六六号同三三年三月一三日第
一小法廷判決・民集一二巻三号五二四頁、同昭和三〇年(オ)第九九三号同三三年
六月六日第二小法廷判決・民集一二巻九号一三八四頁)、前述のように、被上告人
は上告人に対して残代金債務の弁済義務を負つているわけではないから、Dから残
代金の支払を受けるのと引換えに本件建物の明渡を命ずべきものといわなければな
らない。叙上の理由によれば、原判決は破棄を免れないが、一審判決も被上告人か
らの残代金の支払と引換えに明渡を命じているので、右の限度で、これを変更すべ
きである。(なお、被上告人がDに代位して残代金を弁済した場合においても、本
判決に基づく明渡の執行をなしうることはいうまでもない。)
 よつて、民訴法四〇八条一号、三九六条、三八四条、三八六条、九六条、八九条、
九二条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    大   隅   健 一 郎
            裁判官    岩   田       誠
            裁判官    藤   林   益   三
            裁判官    下   田   武   三
            裁判官    岸       盛   一

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