弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中「当審における未決勾留日数中三〇日を右刑に算入する。」と
の部分を破棄する。
     その余の部分に対する本件上告を棄却する。
         理    由
 検察官の上告趣意について。
 記録によれば、被告人は、昭和四八年一月二九日本件業務上過失傷害、道路交通
法違反の罪で勾留のまま静岡地方裁判所に起訴され、同年二月二日保釈許可により
釈放されたが、同年五月二五日懲役一年の実刑判決が言い渡された結果、即日静岡
刑務所に収監され、同月二八日量刑不当を理由に控訴を申し立てていたところ、原
審裁判所は、同年七月四日被告人の保釈を許可し、同月六日被告人を釈放したうえ
で審理をすすめ、昭和四九年一月一六日「原判決を破棄する。被告人を懲役五月に
処する。当審における未決勾留日数中三〇日を右刑に算入する。」との判決を言い
渡したことが認められる。そして、原判決が右のとおり控訴審における未決勾留日
数中三〇日を本刑に算入する旨言い渡した点は、その理由中の記載に照らし、被告
人の控訴申立後の未決勾留日数の一部を、刑法二一条により裁量により算入した趣
旨であることが明らかである。
 しかし、本件のごとく、控訴審が被告人の控訴に基づき第一審判決を破棄する場
合には、控訴申立後の未決勾留日数は、刑訴法四九五条二項二号により、判決が確
定して本刑の執行される際当然に全部本刑に通算されるべきものであつて、控訴裁
判所には、右日数を本刑に通算するか否かの裁量権が委ねられておらず、したがつ
て、刑法二一条により判決においてその全部又は一部を本刑に算入する旨の言渡を
すべきでないことは、所論引用の当裁判所昭和四五年(あ)第一七七六号同四六年
四月一五日第一小法廷判決・刑集二五巻三号四三九頁の示すところであるから、原
判決中、控訴審における未決勾留日数の一部を本刑に算入した部分は、右判例に違
反して刑法二一条を適用したものであり、この点に関する論旨は理由がある。
 よつて、刑訴法四〇五条二号、四一〇条一項本文、四一三条但書により、原判決
中「当審における未決勾留日数中三〇日を右刑に算入する。」との部分を破棄し、
その未決勾留日数を算入しないこととし、原判決中その余の部分に対する検察官の
上告は、上告趣意としてなんらの主張がなく、したがつて、その理由がないことに
帰するから、刑訴法四一四条、三九六条により棄却することとし、裁判官全員一致
の意見で主文のとおり判決する。
 検察官外村隆 公判出席
  昭和四九年七月五日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    岡   原   昌   男
            裁判官    小   川   信   雄
            裁判官    大   塚   喜 一 郎
            裁判官    吉   田       豊

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