弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人三島保の上告理由第一点について。
 原判決は、本件事故現場である市街地に上告会社の被承継人D株式会社が施設し
所有していた本件高圧架空送電線(五粍のゴム被覆硬銅線)のゴム被覆がひどく古
損し、各所においてその被覆物が電線から剥離垂下している状況であつたが、この
ゴム被覆の破損が本件事故の一因となつた事実を確定したものである。ところで、
昭和七年一一月二一日逓信省令五三号電気工作物規程四二条、五四条によれば、市
街地に施設する高圧架空送電線は、第三種絶縁電線を使用するか、第一種若しくは、
第二種電線のときは五粍の硬銅線又はこれと同等以上の強さ及び太さを有するもの
を使用すべきところ、戦時中の物資の需給調整その他の事由により右電気工作物規
程によることができない場合のため、特に制定された昭和一四年一月一九日逓信省
令一号電気工作物臨時特例一一条により、一定の設置規準の下に五粍の裸硬銅線又
はこれと同等以上の強さ及び太さを有するものの使用を許されるに至つたものであ
つて、本件事故当時は右規定が適用されていたから、五粍の硬銅線である本件送電
線がたといゴム被覆がなくても当時の取締規定に違反しないものであることは、所
論のとおりである。しかしながら、行政上の取締規定に違反しないという一事をも
つて、民法七一七条一項の規定による所有者の賠償責任を免かれることはできない。
また、以上の取締規定の変遷に徴すれば、市街地においては、本件のような事故を
防止するため、三五〇〇ボルト以下の高圧架空送電線にゴム被覆電線を使用するこ
とが裸線を使用することよりも本来望ましいものというべく、現に本件事故現場に
おいてもゴム被覆電線が架設せられていたのであるが、本件事故当時は終戦後の物
資の乏しい時代であつたので、前記会社管下にある破損したゴム被覆高圧送電線を
全部完全なものに取り替えることは資材および経済の点からいつて極めて困難な状
況にあつたにしても、本件事故現場の電線の修補をすること自体が科学及び経済の
許す範囲を超えて不可能なものであつたとは認められないのみならず、修補の困難
ということもまた所有者の前記賠償を免責せしめる事由とはならない。以上の判示
と同趣旨の判断にもとづいて、上告人の賠償責任を認めた原判決には所論の違法は
なく、論旨は採用できない。
 同第二点ないし第四点について。
 原判決は、前記会社は、本件高圧電線の断線事故に対する保安設備として、右電
線の引込用母線のある須賀川変電所内に油入自動遮断器と静電型検漏器を設置して
いたが、動作電流を二〇〇アンペア以上に調整してあつた右油入自動遮断器は、三
相短絡電流で一五三アンペア、線間短絡電流で一三二アンペアであつた本件事故に
対しては、自動遮断の動作をせず、また、右変電所の所員Eが右静電型検漏器によ
り接地事故を知り、手動で電流の遮断を行つて停電せしめたときは、断線事故が発
生してから少くとも六、七分後であつたこと、本件事故の被害者であるBの受傷、
Fの死亡は、電流の接触が多少とも長引いた結果であるから、もし本件高圧電線の
断線事故に対する保安設備として、瞬時ないし極めて短かい時間において自動的に
電流を遮断すべき装置、例えば前記静電型検漏器の代りに当時既に作成されていた
選択接地継電器を設置していたならば、本件遮断事故に際しても、直ちに、そうで
なくても二、三秒以内に、電流を遮断して前記被害を防止するかもしくは局限しえ
た旨を認定し、この場合、前記会社の設置すべき本件高圧電線の断線事故に対する
保安設備に瑕疵があるものというべきであり、前記会社の設置した右保安設備が監
督官庁の制定した取締規定に違反しないからといつて、右の結果を左右するもので
ない旨を判示したものであること判文上明らかである。そして、原判決所掲の証拠
によれば、原判決の右事実認定は肯認できなくはなく、その結論もまた正当である
から、原判決に所論の違法はない。所論は、原審の適法に確定した事実を争い、こ
れと異る事実関係を前提として原判決の違法をいうものであるから、いずれも採用
できない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    斎   藤   朔   郎
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    下 飯 坂   潤   夫
            裁判官    高   木   常   七

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛